マイホームや相続した家を貸そうとすると、様々な悩みが出てきます。
例えば、住宅ローンが残っている家は貸せるのか、貸すとどのような税金が発生するのかといった悩みがあります。家を貸すのであれば、典型的な悩みと解決方法を知っておくことが望ましいです。
また、家を貸すときは基礎知識として賃貸借契約や管理方式の種類も知る必要があります.
家を貸すときの悩みには、どのようなものがあるのでしょうか。
この記事は、「家を貸すときの悩み」をテーマについて解説します。
1. 家を貸すときの5つの悩みQ&A

最初に、家を貸すときによくある悩みについて解説します。
1-1. 住宅ローンが残っている家を貸すことはできますか?
住宅ローンが残っている家は、原則として貸すことはできません。
理由としては、銀行との間で締結している金銭消費貸借契約(住宅ローンの契約のこと)の資金使途違反になるからです。
資金使途とは、お金の使い道のことを指します。
住宅ローンの資金使途は、マイホームの購入です。
住宅ローンが返済中の物件を他人に貸してしまうと、賃貸物件の購入と同じ状態になります。
賃貸物件を購入する際は、不動産投資ローン(もしくはアパートローン)と呼ばれる別のローンを組む必要があり、住宅ローンでは賃貸物件は買えません。
ただし、 住宅ローンを返済中の物件でも、例外的に転勤等の必要やむを得ない事情がある場合には貸すことができる場合があります。
また、銀行にもよりますが、住宅ローンから不動産投資ローンに借り換えれば賃貸を認めてくれる場合もあります。
住宅ローンが残っている家を貸すときは、融資先の金融機関に確認しましょう。
1-2. 家を貸すとどのような費用や税金が発生しますか?
まず、家を貸すと、以下のような費用が発生します。
家を貸す時に生じる費用
- 損害保険料(火災保険、地震保険)
- 修繕費
- 管理委託料
- 入居者募集のための仲介手数料やAD(広告宣伝費)
- 管理費および修繕積立金(マンションの場合)
また、家を貸すと以下の税金が発生します。
家を貸したときの税金
- 固定資産税 および 都市計画税
- 所得税・復興特別所得税 および 住民税
固定資産税および都市計画税は、毎年1月1日時点の不動産の所有者に対して課されます。
家を貸しても所有者は変わりませんので、固定資産税と都市計画税は引き続き貸主が納税する必要がある税金です。
所得税および住民税・復興特別所得税(以下、所得税等)は、家を貸して不動産所得が生じた場合に生じます。
不動産所得とは、賃貸経営で得られる利益のことです。
不動産所得 = 収入金額 - 必要経費
収入金額とは、家賃収入のことです。
必要経費とは、以下のような費目が該当します。
【必要経費】
- 固定資産税および都市計画税
- 損害保険料(火災保険、地震保険)
- 修繕費
- 管理委託料
- 入居者募集のための仲介手数料や広告宣伝費
- 管理費および修繕積立金(マンションの場合)
- 減価償却費
所得税等は、原則として給与所得等の他の所得と合算した所得に対して税率が決定されます。
所得税の税率は、所得が上がるほど税率が上がる累進課税方式が採用されています。
所得税の税率は、以下の通りです。
【所得税の累進課税率】
| 課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円未満 | 5% | 0円 |
| 195万円以上330万円未満 | 10% | 97,500円 |
| 330万円以上695万円未満 | 20% | 427,500円 |
| 695万円以上900万円未満 | 23% | 636,000円 |
| 900万円以上1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円以上4,000万円未満 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
参考:所得税の税率[国税庁]
住民税の税率は、所得に対して10%程度が一般的です。
復興特別所得税は、所得税に2.1%を乗じて計算されます。
1-3. 借主が壊したものやキズは直してもらえますか?
賃貸中に借主の故意(わざと)または過失(うっかり)によって壊したものや発生させたキズは、借主の費用負担で直してもらうことができます。
また、借主が善良な管理者としての注意を怠ったことで生じた損傷も、借主負担で修繕を要求できる内容です。
例えば、クーラーからの水漏れを放置したことで広がったカビ等が対象となります。
さらに、禁止事項の違反によって生じた汚れや傷等も借主が修繕すべき内容です。
例えば、禁煙物件であるにも関わらず喫煙したことで付着したクロスのヤニや、ペット不可であるにも関わらずペットを飼ったことで生じた壁のキズ等が対象となります。
一方で、経年劣化や通常損耗の修繕は、原則として借主に請求することはできません。
経年劣化とは、時間が経ったことにより建物や設備等に自然に発生した劣化や損耗のことで、クロスや畳、フローリングの変色等が該当します。
通常損耗とは、借主の通常の使用による損耗等のことで、画鋲の跡や家具の設置によるカーペットのへこみ等のことです。
なお、賃貸で家の破壊を予防するには、管理会社に適切な入居審査を実施してもらい、悪質な借主に貸さないことが対策となります。
1-4. 古い家でも貸せますか?
古い家でも貸すことはできます。
一般的には古い物件はリフォームした方が貸しやすくはなりますが、物件によってはリフォームせずにそのまま貸せる場合もあります。
リフォームや修繕をすべきかどうかは、一度、管理会社に見てもらい、意見を聞いた上で判断することが適切です。
自分で判断してリフォーム等を行うとリフォーム費用が無駄になってしまう可能性がありますので、まずは現状のままで賃料査定を依頼することをおすすめします。
1-5. 家を貸すときに入居者を決めやすくするにはどうしたら良いですか?
入居者を決めやすくする方法としては、「3月の引っ越しシーズンに募集する」、「照明やエアコン等は備え付けの状態で募集する」等が挙げられます。
また、2人目以降の借主を見つける場合には、賃貸中の借主から退去の申出があった時点から入居者を募集することが望ましいです。
多くの賃貸借契約書では、借主からの解約予告は1ヶ月前となっており、解約予告が出た段階から募集を開始すれば、空室期間を短くすることができます。
入居者が決まるまでの期間は、適切な家賃設定であれば早くて1ヶ月、長くても6ヶ月程度です。
2. 家を貸すメリットとデメリット

家を貸すメリットとデメリットについて解説します。
2-1. メリット
家を貸すメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 家賃収入が入ってくる
- 家の管理が自然に行われる
- 再び住むことができる
1つ目は、家賃収入が入ってくるという点です。
家は保有しているだけでも固定資産税等の費用が発生します。
家賃収入があれば費用の負担を軽減できますし、家賃が支出を上回ればプラスの収入を得ることができます。
2つ目は、家の管理が自然に行われるという点です。
家は、定期的な換気や通水をしないとカビや悪臭が発生し、痛んでいきます。
借主が生活していれば日常的に換気や通水が行われ、自然と建物価値を維持することができます。
3つ目は、再び住むことができるという点です。
転勤等で一時的に離れる場合には、売ってしまうと戻ってきたときに再び家探しを行う必要があります。
貸していれば戻ってきたときに再度住めますし、新たに購入するよりも経済的な負担は軽いです。
2-2. デメリット
家を貸すデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 入居者が決まらないことがある
- 修繕費用が発生する
- ずさんに扱われることがある
1つ目は、入居者が決まらないことがあるという点です。
空室期間が長引くと、その間に発生する固定資産税等の費用の負担感が重くなります。
また、換気や通水が長期間行われないことで家が傷む可能性もあります。
2つ目は、修繕費用が発生するという点です。
貸主には修繕義務があり、設備や建具等が寿命で自然に壊れた場合には貸主の費用負担で修繕する必要があります。
3つ目は、借主に家をずさんに扱われることがあるという点です。
悪質な借主に貸してしまうと、汚部屋にされる等のずさんな扱いをされてしまうことがあります。
綺麗な築浅物件の場合には、他人に貸すことに抵抗を覚える人も多いです。
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3. 賃貸借契約の種類
賃貸借契約には、以下のように「普通借家契約」「定期借家契約」「一時使用賃貸借契約」の3つがあります。
| 普通借家契約 | 定期借家契約 | 一時使用賃貸借契約 | |
|---|---|---|---|
| 契約期間 | 基本的に1年以上の期間を設定(※1) | 契約時に契約期間を設定 | 一時使用の目的を果たすまでの期間 |
| 契約の更新 | 可 | 不可 | 不可 |
| 貸主からの解約申し出 | 正当事由がない限り不可 | 期間満了をもって解約可(※2) | 一時使用の目的を果たすことにより解約可(※3) |
| 契約方法 | 口頭でも書面でも可 | 書面(または電磁的記録)でのみ可 | 口頭でも書面でも可 |
| 賃料 | 賃貸市場の相場 | 普通借家契約の8~9割 | 普通借家契約の8~9割 |
| 用途 | 対象の家に住まず永続的に貸し出す場合 | 転勤などの場合 | 転勤などの場合 |
- ※1:期間の定めのない契約も可
- ※2:期間満了の6ヶ月〜1年前までの間に解約予告が必要
- ※3:解約日の3ヶ月前までの事前告知が必要
契約方法を選ぶ際にポイントになるのは「貸主自身が再び住む予定があるか」です。 例えば、普通借家契約では借主の権利が強く守られるため、入居者が更新を希望すれば貸主は断れません。そのため貸主が数年後に再び住みたいと思っても、入居者に退去してもらうのが難しい可能性があります。
定期借家契約や一時使用賃貸借契約であれば、更新が不可能なため、確実に返還してもらえます。 戸建て住宅を賃貸に出す目的に合わせて、賃貸管理会社と相談しながら最適な契約方法を決めましょう。
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4. 家を貸すときの管理の種類

家を貸すときの管理の種類としては、自主管理と管理委託、サブリースの3種類があります。
自主管理とは管理会社に物件の管理を頼まず、自分で全て管理を行うことです。
管理委託とは、管理会社に物件の管理を委託する管理方式を指します。
サブリースとは、転貸による管理方式のことです。
それぞれの特徴は下表のようになります。
| 管理の種類 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 自主管理 | 管理費用を節約できる | 管理の手間がかかる(遠方に物件がある場合は非現実的) |
| 管理委託 | 契約を解約しやすく管理会社を切り替えやすい | 借主とは別途賃貸借契約が必要となる |
| サブリース | 契約が管理会社との賃貸借契約の1本で済む | 家賃保証型は管理委託よりも収益性が低くなる |
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5. 家を貸すときの流れ

家を貸すときの一般的な流れについて解説します。
5-1. 不動産管理会社を探し、持ち家の賃料査定を依頼する
まずは管理を依頼する不動産管理会社を探します。
「賃貸に強みがある」会社を洗い出し、そのなかから保持する物件の種類や、貸し出したい期間に応じた実績のある会社を選定します。特にファミリー向けの物件や一戸建ての賃貸や期間限定で貸し出す定期借家契約を用いた賃貸は取扱いが少数であるため、実績がない会社だと借主を見つけられない可能性が高くなります。
不動産管理会社の候補がある程度絞れたら、賃料査定を依頼しましょう。賃料査定は物件データのみで査定を行う「机上査定」と、実際に家の中や周辺環境などを確認して行う「訪問査定」の2種類があります。より精度の高い査定金額を知りたい場合は、査定材料が多い「訪問査定」の依頼がおすすめです。
査定額は不動産会社の担当者の経験則から算出している部分が大きいので、相場を知るためにも賃料査定は複数社に依頼するようにしましょう。
弊社は東証プライム上場 株式会社リログループのグループ企業です。賃貸管理の実績も40年以上あり、大切な資産であるご自宅の賃料査定を行う際は、弊社にもご用命をいただければと思います。
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5-2. 物件の管理会社を決める
次に、賃料査定を依頼した会社の中から、依頼する不動産管理会社を決めます。
物件の査定額や査定額の考え方、取り扱い実績などを踏まえて、総合的に判断します。
複数の不動産管理会社に依頼することも可能ですが、入居者募集の条件は揃えなければなりません。また、入居者決定後の賃貸管理は、入居者を見つけた賃貸管理会社に任せることとなります。
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5-3. 物件の入居条件、賃料などを決める
依頼する不動産管理会社を決めたら、入居者募集に向けて条件や賃料を決めていきます。
不動産管理会社に提示された査定額を目安として、貸主の希望や他の募集条件と調整しながら決めていきます。もちろん相場より高く貸し出すことも可能ですが、入居者が見つかりにくくなります。
また、「ペット飼育」や「喫煙」などに関する条件も付すことができますが、多すぎる条件は入居者候補を狭めてしまうため、最低限の条件を設定しましょう。
5-4. 入居審査を経て賃貸借契約を結ぶ
入居希望者から申し込みが入ったら、入居審査を実施します。また、入居希望者が募集条件とは異なる条件を希望する場合は、条件交渉も行われます。
入居審査は保証会社や賃貸管理会社独自の基準により行われ、職業、収入、過去の家賃滞納歴などの支払い能力が審査対象です。そして、最終的な入居の可否は貸主が決めます。
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6. まとめ
以上、家を貸すときの悩みをテーマについて解説してきました。
家を貸すときに生じる悩みとしては、住宅ローンが残っているときの貸し出しや、税金および費用等がありました。
家を貸すときの賃貸借契約の種類としては、普通借家契約や定期借家契約、一時使用賃貸借契約があります。
家を貸すときの流れとしては、まずは賃料査定を依頼することがスタートラインです。
家を貸す際の参考にして頂ければと思います。
筆者の見解
良い管理会社は、貸主の悩みに対して適切なアドバイスをくれます。家を貸すときの悩みは、信頼できる管理会社を選ぶと解決しやすいです。そのため、管理は実績が豊富な管理会社に委託することが望ましいです。