賃貸に出せるのはマンションだけではありません。引越しや転勤などにより、一戸建てが空いてしまうときも、賃貸物件として貸し出すことができます。
ただし、一戸建ては物件ごとに異なる特徴を持っているため、似た物件が少なく適切な賃料設定を見定めるのが難しいことや、その後の運用においても、戸別の事情を考慮しなければならず、マンションを貸し出すことに比べると、多少難度が高いと言えるでしょう。
しかし、いくつかの注意すべきことをおさえておくことで、一戸建てを賃貸に出して収入源とすることが可能です。いま一戸建てを空けてしまっている人や、これから一戸建てを空けるかも知れない人へ、一戸建てを賃貸に出すときの注意点や対策について解説します。
一戸建てを賃貸すれば、賃料収入を中心としたメリットが期待できますが、リスクも伴います。リスクには賃貸そのものに関することと、特に一戸建てを貸すときに気をつけなければならないことがあります。これらのリスクを適切に見積もり、メリットとの比較やリスクの分散・回避といった対策に活かすことが重要です。ここでは、一戸建ての賃貸における代表的なリスクを挙げていきます。
入居者が住むことによって家に傷や汚れが付いてしまわないか、初めて自宅を貸し出す場合は特に心配になると思います。賃貸には、物件に傷や汚れがついてしまうリスクがあります。このリスクを見積もる上で理解しておきたいことは次の2つです。
まず「家が受ける損傷のうち賃貸によるものはどれほどか」について説明します。
賃貸中の損傷には、賃貸によるものとそうでないものがあります。これらは区別して考えた方が良いでしょう。家の設備には、通常の使用で傷ついたり壊れたりしていくものがあります。
賃貸中の損傷には、次のようなものが考えられます。
このうち、一般的に貸主が負担して直さなければならない範囲は、経年劣化などに限られない「普通に使っていればそうなっていた」といえる範囲です。例えばこれまでよりも設備の使用頻度が増えたとしても、本来の用途通りに使っていて早く壊れることがあるならば修理の費用を貸主が負担することになるため、そのことは賃貸のリスクとして見込んでおくべきでしょう。
もう一つのポイントである「原状回復について、どの範囲が金銭的に補填されるか」ですが、概ね「その入居者が使ったからそうなった」といえる、「通常使用の範囲を超えた使用で生じた傷」「故意や過失による傷」こうしたものは精算時に入居者に請求します。このときに、どこからどこまでが入居者負担となるかが問題となりますが、国土交通省がガイドライン(国土交通省「住宅:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について」)で定めており、これに従うことが一般的です。
入居者に対して請求を行ったときに、支払いがなされないことや交渉が難航することがリスクとして考えられます。ペットやタバコの可否など、賃貸を認める条件については懸念される事項を契約書に記しておくことや、入居前の家の状態は(一戸建ては庭や門扉なども含めて)撮影などで記録を行い、賃貸前後の変化を確認できるようにしておくことが大切です。
賃貸には初期費用がかかります。また、募集を開始しても入居者が見つかり収入を得られるとは限りません。賃貸を成功させるには、支出を必要な支出に絞りつつ、適正な賃料設定を行うことが必要です。このとき一戸建ての賃貸はマンションの賃貸に比べ、難しいことがあります。
まずは支出について、賃貸で行う初期費用の中には、設備等の工事費があります。必ず行うものではありませんが、少額の工事で賃料を高めることや、入居を早めることができれば、収入を増やすことができます。一戸建ては設備の種類が多く、個性的であることが多い物件です。賃貸開始にあたっては賃貸管理会社に相談を持ち掛けることが一般的ですが、マンションに比べると一戸建ての賃貸は事例が少ないこともあり、管理実績が少ない会社も多いでしょう、相談先によってはマンション以上に良い提案をもらいづらいということが言えそうです。
収入に関して重要となる賃料設定についても、条件が似ている物件の事例を参考にすることが多いです。こちらもマンションに比べて一戸建ては参考となる情報が少なくなるため、丁度良い賃料を見極めづらいと言えるでしょう。
一戸建ての賃貸では、効果の小さい工事に費用をかけすぎてしまうこと、あるいは、賃料を高く設定し過ぎることや、安く設定し過ぎることで、利益をなかなか生み出せなくなるリスクが存在します。一戸建ての賃貸管理に強い相談先として、転勤時の賃貸を積極的に取り扱う当社のようなリロケーション会社を候補に加えることをおすすめします。
賃貸するということは、物件に自分以外の誰かが住むということです。住む人がどういう人であるかについて、事前の審査等でわかることは限られます。共有部がなく、各戸の隔たりがあり、家族で借りる入居者が多いであろうことなど、一戸建てはマンションに比べると近隣にまで迷惑をかけるようなトラブルになるリスクは低いことと考えられます。しかしそれでも、月々の家賃や退去時の費用の支払いを拒否する可能性など、貸主にとって良い入居者であるとは限らないリスクが潜んでいます。
なかなか解決しない大きな問題が実際に発生する可能性は、当社の管理実績から見てもかなり低いことと考えられます。しかし、事例が少ないということは対策しづらいということでもあります。
などがリスクの軽減につながります。
賃貸にはリスクが伴います。しかし、説明の中ですでにいくつか触れている通り、ほとんどのリスクは賃貸管理サービスを利用することで大幅に軽減することが可能です。選ぶサービスや業者にもよりますが、賃貸経営の業務と言える部分もほとんど「おまかせ」してしまうことができるサービスも存在しており、それほど多くのことに注意しなくても、比較的簡単かつ安全(ローリスク)に賃貸経営できてしまうことも多いです。理解も深めておきましょう。このようなサービスも含め、ここからは一戸建てを賃貸するときのリスクを軽減・回避する方法について、より具体的に説明します。
賃貸で家が損傷を受けてしまったとき、原状回復のための費用の一部は入居者に請求することができます。しかし、支払いを拒まれるなどのリスクが存在します。リスクへの対策において重要となるのは、契約書の記載内容と物件の賃貸前における状態の記録です。
原状回復について、何に従い、どの範囲について費用を請求するのか、契約書で具体的に明らかにされていることが重要です。事前に交わした契約書上で明文化されていることで、「オーナーと入居者の間でどちらが負担するべきか」という衝突を回避します。
また、損傷に関しては、「その損傷がいつできたのか」ということが重要となるため、貸し出し前に撮影などで記録を残しておきます。分譲マンションであれば記録するのは専有部である部屋の内側が中心となりますが、一戸建てであれば、門扉や庭、塀、これら一通りの設備の状態を記録しておく必要があります。
賃貸管理会社を利用する場合、契約書の準備や、事前の撮影といった準備に加えて、衝突時の交渉といった場面で協力してもらうことになります。サービスを選ぶ際には、それぞれどのような体制が準備されているのか確認しておきましょう。
加えて、当社サービスでは「
賃貸におけるリスクのうち、初期費用に対して十分な家賃収入が得られないリスクを回避するのに、一戸建ての賃貸においては、特に賃貸管理会社選びが重要となります。
前述の通り、一戸建ての賃貸はマンションの賃貸に比べると物件や事例が少ないです。賃貸管理会社によっては取り扱いが難しいことから、敬遠されることもあります。マンション以上に賃貸管理会社にとっての得意・不得意が分かれやすいのが一戸建てです。
たくさんの一戸建てを取り扱っている専門性が高い会社に賃貸管理の相談をすることで、効率的な費用のかけ方、入居者の目に留まる適切な賃料設定について、より多くの参考となる情報をもとにした提案を受けることができます。
経験が豊富ということは、多くのトラブルを対処しているということでもあります。それらを回避するためのサービスも充実していることが考えられ、実際にトラブルが起きたときにもスムーズな解決のために経験や専門知識が活かされます。
投資用の賃貸だけでなく、転勤時の賃貸を積極的に取り扱っているリロケーション会社と呼ばれる賃貸管理会社では、一戸単位での取り扱いが多く、一戸建ての賃貸管理実績も豊富です。実績豊富な会社のサービスを利用することで、一戸建ての賃貸において収支のリスクを抑えることができます。
入居者に関するリスクの中で、賃料が支払われない可能性を挙げました。賃貸管理サービスの中には、こうした家賃滞納時の賃料について支払いを保証するものがあります。こうした保証がついていれば、もし入居者が支払いを滞らせても、賃貸管理会社が家賃分を支払ってくれるので安心です。賃貸管理会社から説明を受ける際には、こうした保証サービスについて、どういうものが利用できるかを確認し、賃貸のリスク抑制を図りましょう。
ちなみに、リロの留守宅管理では「賃料支払保証サービス」がついているほか、賃貸期間中に発生し得る様々なリスクに備えた各種サービスが揃っています。
賃貸管理の実績も35年以上あり、戸建ての貸し出し事例も豊富にあります。もし戸建てを貸したいと考えているのであれば、賃料査定をすることでおおまかな賃料を知ることができるので、試してみてはいかがでしょうか。
ここまで、一戸建てを貸し出すことによるリスクとその対策を紹介してきましたが、さらにここで、一戸建ての貸し出しや賃貸全般に関して特に気をつけておきたい注意点をいくつか紹介します。
住宅ローンが残っている場合は金融機関に相談しましょう。
原則として住宅ローンは自身が住むことを条件として、金融機関が融資を行っています。転勤期間中に限った貸し出しであれば住宅ローンを継続できるケースもありますが、いずれにしても住宅ローンが残っている状態の物件で賃貸を始めようとする場合に、そのままの契約で住宅ローンを借り続けられるかどうかは、ローンの状態や金融機関によって対応が異なることが考えられます。もし確認をせずに賃貸を行い、後から金融機関に賃貸の事実が発覚した場合には、適切なローンへの借り換えや、最悪の場合一括返済などの重い要求に応じなければならなくなることも考えられます。金融機関には、事前に相談しておくことをおすすめします。
なお、住宅ローン控除は、家に住んでいない場合は、受けられなくなります。転勤等の事情がある場合、帰任後に控除期間が残っていれば、再適用ができます。ただし、賃貸を行っていた年は適用外となります。再適用には転居前に「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を提出しておかなければなりません。税務署に確認しましょう。
年間20万円以上の家賃収入があった方は、確定申告をしなければいけません。申告を怠ると、無申告加算税や延滞税などが課せられる可能性があるほか、悪質な場合は刑事罰が課せられます。
申告期間は毎年2月中旬から約1か月間であり、インターネットや郵送、または税務署窓口で申告をします。家賃収入は不動産所得として申告します。
海外赴任中の場合でも、国内で得た不動産所得については確定申告が必要です。事前に納税管理人を選定し、納税管理人を通して確定申告及び納税します。
賃貸の契約にはいくつかの種類があります。
転勤期間中の賃貸など、限られた期間のみ賃貸を行いたい場合は、定期借家契約、または一時使用賃貸借契約を利用しましょう。
定期借家契約は、契約時に定めた期間で必ず契約が終了します。「更新」はできず、賃貸の期間を延ばしたい場合は「再契約」となります。注意すべきこととして、期間満了の1年から6ヶ月前までに、借主への解約予告が必要です。
一時使用賃貸借契約は、転勤など利用できるケースが限定される契約です。一時使用の目的を果たしたことが解約の条件となります。借主への解約予告を3ヶ月前までに行えばよく、定期借家契約よりも緩やかな解約条件となっています。
一方、賃貸でもっとも用いられる契約として普通借家契約があります。普通借家契約では、貸主からの解約には正当事由が求められ、解約が難しくなっています。帰任による解約が正当事由にあたるかは難しい判断になり、借主の引っ越し費用の負担などの金銭補償が求められることも考えられます。
実際に賃貸を始める場合にはどういったことから始めればいいのでしょうか。一戸建てを貸し出すまでには、家賃を含めた入居のための条件設定、入居者の募集や契約など、さまざまな業務への対応が必要ですが、賃貸管理会社に依頼すれば、基本的にはどの業務もサポートしてもらえます。ここでは、これまで賃貸経営をされてきたことがない方に向けて、賃貸管理会社にサポートしてもらう場合の手順を中心に紹介します。
多くの場合、賃貸管理会社に問い合わせる最初の内容は、賃料査定の依頼になります。賃料査定をしてもらうときに、併せて色々な分からないことを確認していくような流れが一般的です。賃料査定を申し込む会社についてですが、初めから一社に絞らず、複数社を候補として挙げて比較検討することが多いです。参考までに、依頼する会社の選定基準をお伝えします。
前述した通り、一戸建てを貸し出すときの契約方法として、普通借家契約、定期借家契約、一時使用賃貸借契約があります。転勤で一時的に離れる期間だけ貸したい場合は一時使用賃貸借契約、戻ってくる予定がない場合は普通借家契約など、自分の状況によって最適な契約方法は異なります。賃貸管理会社とも相談して、目的に合った契約方法を選びましょう。
家賃や入居条件については、基本的にオーナーの意向を元に決定しますが、賃貸管理会社の専門的な意見や知識を参考にすることも重要です。一戸建ての築年数や立地、リフォームの状況など、複数の要素を考慮しながら、相談の中で適切な条件を設定しましょう。
入居者をスムーズに確保するためには、適宜リフォームやハウスクリーニングを行い、清潔で住みやすい状態にしておくことが重要です。オーナー家族の生活に合わせてパーソナライズされがちな一戸建てであっても、入居者の住み心地や使い勝手に大きな問題がないならば、必ずしも高額なリフォームを行う必要はありません。その一方で、床や壁に大きな傷がある、キッチンや洗面台などの設備が汚れている、といった場合は、借りる家を探して訪れた人の印象を良くするために、部分的にでもリフォームを行うことで、結果的にたくさんの家賃を得やすくなるということがあります。
リフォームを実施しない場合も、業者によるハウスクリーニングは基本的には行った方が良い結果につながるため、賃貸経営を行うのであれば、入居者募集に向けてほぼ必須となります。
契約方法や入居条件が決まったら、賃貸管理会社のネットワークを活用して入居者の募集を開始します。募集を開始すると、不動産ポータルサイトに入居者募集に関する情報が掲載されるようになります。家を探している人から応募があったときには、その入居希望者に内見をしてもらいますが、賃貸管理会社に鍵を預けておいて案内の対応をしてもらうことが一般的なため、基本的には所有者が立ち会う必要はありません。
内見後に入居希望の連絡が入ったときは、審査を経て契約を締結します。審査においては、入居希望者の勤務先や年収、保証人などを見ます。基本的には賃貸管理会社が審査もサポートしてくれます。
この記事では、一戸建てを貸すことによる注意点やリスク、その対策などについて、マンションなどの集合住宅とは異なる部分もピックアップしつつ採り上げ、最後は実際に一戸建てを貸し出すための手順を紹介しました。
一戸建てを貸すことで、大切な資産に傷が付いてしまうのではないか、家賃を滞納されるのではないか、といった不安を感じる人がいるかもしれませんが、しっかりと準備をしておけば、リスクを抑えて家賃収入を得ることができます。
カテゴリ:家を貸す 関連記事
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