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公開日2020年8月27日/更新日2022年8月19日

自宅の賃貸で注意したい6つのポイント

自宅の賃貸で注意したい6つのポイント

ひと口に自宅の賃貸といっても、その目的は人それぞれです。長く賃貸経営を続けたいと考えるケースから転勤中の一時的な貸出を希望する場合まで、いろいろなパターンが見られます。オーナーの意向によって、どんな運営方法が適しているかは変わってきます。しっかりポイントを押さえておけば、自宅を賃貸物件として円滑に活用できるでしょう。そこで今回は、自宅の賃貸でとくに注意したい6つのポイントをご紹介します。

自宅を賃貸する時の契約に関する注意点

自宅を賃貸する際の契約方法は、大きく分けると普通借家契約、定期借家契約、一時使用賃貸借契約の3種類です。契約時には、いずれかの方法をシチュエーションに合わせて選びましょう。

今後、積極的に賃貸経営を行いたいのなら「普通借家契約」

普通借家契約は、多くの賃貸物件で採用されている賃貸借契約の方法です。賃貸する物件について、将来における賃貸以外の用途への転用のし易さはさほど重視せず、より多くの家賃収入が得やすくなることを第一に賃貸経営を行っていきたい方におすすめです。

普通借家契約の契約期間は多くの場合で2年です。しかし、普通借家契約は入居者の保護を重要視する借地借家法に準拠した契約であり、入居者が希望するのであれば、原則としてその契約は更新されることになっています。後述するほかの契約方法で考える賃料設定が「地域相場に対してどれくらいまで減額すればあまり空室にならず妥当か」という検討の仕方になりがちなことに比べると、シンプルに「地域相場通りに定めた賃料設定」としても入居者募集を行いやすい点は、物件を貸すオーナーにとってこの契約を選択する上でのメリットとなります

賃貸期間を決めたいのなら「定期借家契約」

定期借家契約は、決められた期間で契約が終了する賃貸借契約の方法です。

この契約では、契約期間の満了とともに契約が終了します。普通借家契約のように定期的な契約更新を繰り返すのではなく、契約期間を満了してから賃貸を継続するためには再契約を行います。再契約するには、双方による合意が必要です。オーナーが再契約に合意しなければ、入居者が住み続けたいと望んでいても契約は終了します

定期借家契約を選んだ場合、契約終了のタイミングで自宅を明け渡してもらえます。一時的に自宅を離れなければならない場合でも、その期間が定かであるならば、期間に合わせて契約を結んでおくことで、自宅に戻って住めなくなってしまう心配がありません。あらかじめ賃貸期間を決めておきたいなら定期借家契約が便利な契約方法となります。

将来的に戻ってくるつもりなら「一時使用賃貸借契約」

転勤のような特別な事情で一時的に家を空けるとき、いつ帰宅するかがはっきりしていなくても、将来的に任期を終えたときには帰任に合わせて自宅へ戻ってくるつもりなら、一時使用賃貸借契約がおすすめの選択肢です。

定期借家契約の場合、契約時に賃貸期間を設定します。入居者募集がしやすい範囲で、オーナーの都合に合わせて任意の契約期間を設定できますが、契約終了は期間の満了を待たなくてはなりません。仮に契約途中で急に転勤を終えてしまっても、そのとき自宅に戻るのは難しいといえます。

一方で、一時使用賃貸借契約も、入居者募集がしやすくなる範囲で、契約開始から一定期間、賃貸借契約が継続することを保証する期間を設けることが多いですが、保証期間を過ぎていれば、オーナーの都合に応じてフレキシブルに賃貸借契約の期間を短縮あるいは延長できます(解約には解約3カ月前までの解約予告が必要)。互いに解約の通知をしなければ、その間自動で継続する契約となっており、予定通りに終わるとは限らない転勤であっても、一時使用賃貸借契約であれば、帰任に合わせた帰宅がしやすくなります。

自宅を賃貸する時の管理業務に関する注意点

自宅を賃貸する場合、管理方法についての検討が必要です。管理方法の種類は、賃貸管理業務をどの程度までアウトソースして、賃貸管理に伴うリスクをどの程度まで分散させるかによって、自主管理、委託管理、サブリースの大きく3つに分けることができます。

専業大家として活躍するのなら「自主管理」

自主管理とは、賃貸物件に関わる管理のほとんどをオーナー自身が行う方法です。建物の管理から入居者対応まで、幅広い業務が含まれます。

自主管理を行う場合、そのためにたくさんの知識と手間が必要です。保証されることが少なく、自己責任とされる範囲が広いためにリスクも高いですが、賃貸から得られる利益を最大化する方法です

管理業務を委託せずにオーナー自身が行う場合、入居者から支払われた家賃収入から管理費等が引かれません。支払われた家賃収入のほとんどをオーナー自身のものにできることが自主管理のメリットとなります。また、建物や入居者の状況は自己責任でチェックしていくことになります。物件の実際の利用状況や、被災時の被害状況などを確認して、問題が感じられれば自身の判断のもとで入居者への交渉や修繕の手配といったことを適宜行っていきます。賃貸経営について十分な知識が身についているオーナーであれば、こうした賃貸運用のハンドリングを自ら行うことが、委託によって対応してもらうよりも楽で安心という場合もあるかも知れません。

ただし、業務内容はこのほかにも多岐に渡ります。不具合が起きた設備のメンテナンス手配、原状回復のための費用負担をどこまで負ってもらうかという入居者退去時の交渉、家賃の入金が滞った場合の督促など、賃貸運営で発生する様々なことに都度適切に対応することは、決して容易なことではありません。月々など定期的に行っていかなければならないことがあるだけではなく、予測できないトラブルによって、思わぬ手間や、急いで解決しなければならないことも起こり得るため、自主管理を実践するには、基本的に専業の大家でなければ難しいと考えられます。

副業として家賃収入を期待するのなら「委託管理」

委託管理は、賃貸物件の管理業務のうち一部もしくは全部を外部業者に任せる方法です。すでに仕事があり副業として家賃収入を期待するなら、この賃貸運営の方法が適しています。

手間のかかる多様な業務を委託することで労力や時間の面で負担の軽減につながります。仮に本業で転勤となった場合に、転勤先が物件から離れていても、必要なメンテナンスの手配は委託した賃貸管理会社に行ってもらえるため安心です。自主管理をしようとすると、トラブルへの対処を行うに当たって、オーナー個人に専門的な知識や経験が必要になりますが、委託管理であれば、トラブルが起きてしまった際も、解決に必要な業者の手配などで直接対応を行う必要がなくなり、自主管理で必要だった手間の大部分は不要になります。知識の面でも、専門性の高い知識を持っていなくても、リスクを抑えた賃貸運営が行えます。賃貸運営を続けていく中で、状況によっては賃貸管理会社から受けた提案に対してオーナーの判断を要するような場面もありますが、困りごとが生じたときには、委託先の賃貸管理会社に説明や相談を求めることや、問題解決に向けた協力をしてもらえるので安心です。賃貸管理会社によっては、賃貸運営中に起こるトラブルに備えて、一定の保証サービスをつけている場合もあります。

委託管理で賃貸運営のための業務を依頼すると、そのための手数料が支出として発生するため、得られる利益は減少してしまいます。しかし、自主管理を行うことの難しさを考えると、委託管理は本業と両立させて賃料収入を得る上で効果的な選択肢です。委託できる管理業務の内容は賃貸管理会社やリロケーション会社によって異なり、基本的には減らせる手間やリスクの程度に応じて手数料も大きくなるため、賃貸管理サービスを選ぶ際には、サービス内容や付けられる保証サービスなど、オーナーがイメージしている運用の仕方に合わせたサービスを利用して委託する必要があります。

まるごと借り上げてもらうなら「サブリース」

サブリースとは転貸のことであり、賃貸管理会社、サブリース会社に物件を貸し、そこから入居者に又貸しする形を採ることで、賃貸物件の賃貸運営におけるより広い範囲を賃貸管理会社、サブリース会社に任せてしまう方法です。転貸を用いた賃貸管理のサービスにも様々なものがありますが、その中でも、マンション1棟やアパート1棟など大規模に、また長期的に借り上げてもらい、入居者から得る賃料の設定といったことも含め、賃貸経営を全般的に委託し、オーナーはそうした賃貸経営の舵取りを行う権利を一部手放す代わりに、空室になって賃料が発生していなくても、一定の収入がオーナーに入るように家賃保証を行うような形のサービスに限定してサブリースと呼ばれるようなことも多いです。

そうした空室時の家賃保証がついているサブリースを利用する場合、より手厚い保証が付いているほど、空室リスクは賃貸管理会社が肩代わりすることで軽減されますが、その分、賃貸が順調で入居者が入っている間に得られる収入も減ってしまいます。保証の条件など、契約内容が複雑になりやすいため、利用時には保証によって軽減されるリスクだけではなく、保証されない範囲など、残存するリスクにも注意して申し込みを検討する必要があります。

直接の借主を賃貸管理会社にすることで、賃貸運営中に保証される範囲が拡がるなど、基本的にはリスクを軽減するための転貸借契約ですが、委託管理同様に手数料がかかり、空室保証を伴うような場合には特に、入居者や賃料をオーナー自身ではコントロールできないといった、空室リスクとは異なるリスクが代わりに生じる場合もあるため、サービスごとに、委託管理のみとは異なるどういったメリットとデメリットが想定されるのかといったことを確認しながら、オーナーの状況や物件の状態に合ったサービスの利用を検討しましょう。

自宅を賃貸する時の住宅ローンについての注意点

住宅ローンを使って家を購入した場合、残債の有無次第で物件を賃貸するときに必要となる手続きが変わります。状況によっては、ローンの借り換えが必要になるかもしれません。経済的な負担を軽くするには、住宅ローン控除についても知っておくと役立ちます。

残債があるなら事業用ローンへの借り換えが原則

住宅ローンを物件購入に活用する際、購入者は融資の対象となった物件に住むことを金融機関から求められます。金融機関が融資を行う上で、物件は自己居住用で用いられている方が、投資用などの目的で用いられているよりもリスクが低く、ローンを組むオーナーが実際に住んでいることを、金利を安く抑える上での重要な要件としているためです。例えば、急に転勤が決まったからといって、マイホームを勝手に賃貸すると、住宅ローンの適用外になってしまう可能性があるのです。

残債があるうちに自宅を貸し出してしまうと、金融機関からは賃貸経営がローンの利用目的と見なされます。住宅ローンの利用条件を満たしていないため、残債の返済を求められる可能性があります。例外もありますが、通常は、住宅ローンの残債がある状態の物件で賃貸を行いたい場合、予め残債を返済しておくか、投資用や事業用といった住宅ローン以外のローンへの切り替えが必要となります

転勤の場合は金融機関へ相談

住宅ローンの残債があるまま自宅を賃貸する場合、事情によっては金融機関で柔軟な対応を検討してもらえることがあります。

よく知られる事例としては、ローンの返済期間中に転勤が決まるようなケースです。やむを得ない事情があれば、そのことを事前に相談しておくことで、自己居住をしていなくても住宅ローンの利用継続を承諾される場合があり、転勤はそのような「やむを得ない事情」とみなされる場合があります。突然の辞令などで転勤による家族全員での転居が必要とされた場合、そうした事情を金融機関に相談します。その賃貸が家に戻るまでに一時的に必要となる賃貸だと認められれば、住宅ローンを継続できる場合があります。

住宅ローン控除の再適用を把握

住宅ローンを組むと、減税措置として控除を受けられます。適用条件は、ローンの利用者もしくは家族による居住です。

家族が住み続けないと、控除対象から外れます。転勤により家族全員で引っ越して自宅を賃貸した場合も住宅ローン控除は非適用です。ただし、自宅に帰ってきて再入居する場合、控除期間が残っていれば住宅ローン控除は再適用が可能です。なお、控除期間は居住開始から10年間であり、先送りはできません。

自宅を賃貸する時の家賃収入に関する注意点

多くのオーナーにとって、自宅を賃貸することに期待する最大のメリットは、家賃収入を得られることではないでしょうか。しかし、より多くの賃料を得ようとしたとき、高額な家賃設定を行うことが有効であるとは限りません。時には高額な家賃設定が資産運用におけるリスクにもなるということを理解しないまま、あるいは忘れてしまったままで賃貸経営を続けていると、実は思っていた以上に損をしていたというようなことがあり得ます。

家賃は現実的な設定が大切

家賃の設定は、入居希望者を見つけられるかどうかに大きく影響を及ぼします。通常、借りる物件を探している方は少しでも出費を抑えたいと望んでいるでしょう。たくさん収入を得たいからとむやみに高額設定すれば、それだけ入居者の確保は難しくなります。

家賃を設定する際には、不動産のスペックについて、調査したいくつかの類似物件と多面的に比較することで相対的に判断するのが一般的な方法です。

投資用などではない居住用物件の賃貸であれば、そこで長く暮らしてきたオーナーほど、自宅に対する愛着もあるものではないかと思われます。しかし、物件に対しては、入居者視点で客観的に見ても無理のない現実的な賃料を設定できるかということが、安定的に賃貸収入を得るためには重要です

賃貸管理サービスを利用する場合で、オーナーの希望する賃料と市場の相場の間で乖離が大きい場合は、それらサービスを提供する賃貸管理会社やリロケーション会社から、適切な賃料の範囲について情報提供を受けることや、賃料以外の条件を緩める、リフォームなどの工事で価値を高めるといった方法で、どのようにすれば希望の賃料に近づけられるかといった相談も可能です。

家賃収入ゼロのリスク

家賃相場を踏まえた上で十分リーズナブルな金額を設定していても、入居者を確保し続けられるとは限りません。今まで毎月安定的に得られていた家賃収入がその後いつまで途切れないで得られるかについては予測が難しいものです。

賃貸経営を行っていれば、入居者が何かのきっかけで退去するということは十分あり得ます。学生なら卒業に合わせて、社会人は転職や転勤で、部屋を退去するきっかけは様々です。退去の時期が重なりやすい引っ越しシーズンではなく、人々の移動があまり盛んではない時期の退去があると、次の入居者を獲得するのに苦戦することもあり得ます。

賃貸物件に空室が生じると、入居者が決まるまでの期間は収入が途切れてしまいます。空室時の家賃保証が付いているサービスでない限り、常に一定の家賃収入が入るとは限りません。家賃収入が入らない期間、空室リスクがあることは、将来の収支計画を考える上では頭の中に留めておくべきことでしょう。

家賃減少のリスクを理解しておく

賃貸収入を見込んで先々の収支を考えるときに、前述のように空室期間が生じて家賃収入がゼロになってしまうリスクがあることとともに理解しておきたいリスクとして、空室の期間がそれほどなくても家賃収入が減少してしまうリスクもあります。

賃貸物件の家賃相場は、社会に変化が起きること、周辺環境が変化すること、物件の状態も経年劣化などで変化すること、そうした影響を受けて変動します。以前はリーズナブルと歓迎されていた金額設定が、そのままいつまでも賃貸物件を探している人々から受け入れられ続けるとは限りません。例えば、退去が発生し、入居者募集を再開する際に、エリアにおける賃貸需要が前回の入居者募集時よりも低下していれば、周辺の家賃相場も下がっており、相場に合わせた家賃の値下げを検討しなくてはならなくなります。入居者が住んでいる賃貸期間中であっても、その入居者が退去することを避けるためには、賃貸市場においてその物件を借りることが入居者にとっても「お得」な状態で維持されていることが望ましいと考えられます。

相場の変化に応じて賃料を安くすれば、得られるかも知れない最大の家賃収入という点では妥協することになりますが、新たな入居者を見つけやすくなり、一度住み始めた入居者にも長く居ついてもらいやすくなります。結果としては賃料を下げてしまった方が長期的に見たときのトータルの収支は改善するといった場合もあるので、実際に賃料をいくらに設定していれば利益が最大化されるかといったことは、将来の変化を予測しなければならず、なかなかに難しいことなのですが、このあたりの難しい判断も、経験や情報を豊富に持つ賃貸管理会社に相談できると、いくらか検討が楽になります。いずれにしても、賃貸市場における家賃相場が変化することや、賃貸物件の賃料を変更しなければならない場面は、賃貸運営中に起き得ることなので、考えていた収支計画通りにはいかないリスクということを考慮に入れて、少しでも余裕のある計画を組めるようにしておきましょう。

自宅を賃貸する時の建物・設備に関する注意点

物件に空室の状態が続くと、通水がなかったり、密閉が続いたりすることで劣化が進むものなのですが、オーナーがそこに住んでいても、自宅を誰かに貸して住んでもらっていた場合でも、どのようにしていても建物・設備の故障や経年劣化を完全に防いだり止めたりすることはできません。賃貸を行う場合、そうした物件の価値や機能性に変化が起きたときの対処が重要になります。賃貸経営を円滑に行うために、入居者の入居前・入居中・退去時には、それぞれのタイミングで注意しておきたい点があります。

入居前には原状回復に関する取り決めを確認

賃貸物件を退去する際、借りた側には原状回復義務が課されます。とはいえ、どの物件、どの賃貸借のケースでもスムーズに話がまとまるわけではありません。

入居者に原状回復が求められる範囲は、故意や過失による汚れやキズです。国土交通省が1998年に発行したガイドラインには、通常の使用状況を超えるような使い方で生じた損耗や毀損と示されています。

具体的に入居者負担となる事例は、過剰なシミやカビ、簡単には除去できない汚れや明らかに目立つキズです。

貸し出しを始める賃貸借契約時には、入居者には普通に住居として使ってもらえさえすればあまり大きな問題にはならないだろうと考えて契約を結び、実際には解約が訪れた際にトラブルへと発展してしまうようなケースが散見されます。そうしたトラブルを回避するために、オーナー(あるいは賃貸管理会社)は、入居者に物件を預ける前に物件の状態を映像や画像で記録・保管しておくこと、賃貸借契約の契約書において内容をしっかり理解しておくこと、適宜リスクを回避するための特約を定めておくこと、こうした注意が必要となります

入居中、火災保険への加入は必須?

住宅ローンの返済が済んでいるなど、火災保険に加入していない場合や、解約してしまっているような場合、オーナーは通常、火災保険に加入しておく必要があります。

住宅ローンを組むときに、同時に火災保険にも加入している場合は多く、住宅ローンの返済中に、そのまま賃貸が行えるようなときには、既に加入している火災保険で十分という場合もあります。住宅ローン完済後に火災保険の契約が切れていたり、契約を解除していたりするといった場合に、家を賃貸するときには、火災保険へ改めて加入する必要があります。

オーナー自身が住まない物件について、火災保険への加入が求められる理由の一つとして、入居者側で加入する保険には、「借家人賠償責任担保特約付き家財保険」というのがあるのですが、これは本人の不注意による出火にのみ適用され、「隣家で発生した火災による延焼」の場合、基本的に家主負担での修繕になってしまうということがあります。実際に賃貸期間中にそうした火事の被害に遭う可能性は高くないかも知れませんが、延焼被害の損害賠償は出火元の隣人に請求できないため、そうした大きなリスクへの備えとしても、オーナー自身の火災保険加入も不可欠と言えます

退去後のリフォームは必要?

賃貸運営で初めて入居者を募集する際と同様ですが、入居者が部屋を退去した後は部屋が空きます。住まいを引き続き賃貸運用に役立てるのであれば、次の入居者募集を開始するにあたって、この空室期間でどの程度のハウスクリーニングやリフォームをしておくかが重要な検討課題として挙げられます。

上手にリフォームを実施すれば、物件の価値が上がります。最新設備が整っていた方が、新しい入居希望者の目には魅力的に映るでしょう。次の入居者を見つけやすくするリフォームは、賃料を上げる方法や空室対策のひとつとも言えるのです

しかし、当然のことながら、リフォームを行うには規模に応じたコストがかかります。住居の状態から、各部屋のどの部分に手を加えられるかを見定め、それらの中で「やらなければならないこと」、「できればやりたいこと」といった、およその優先順位を決めてから、予算内でどこまでリフォームの手を加えれば費用に見合った効果となるかといった検討を行います。

オーナーが長く住んでいた家でも同様ですが、長期入居者の退去後など、とくにキッチン・バス・トイレといった水回りは、これから借りる部屋を探している人から注目されやすく、また、いつの間にか機能が衰えているといったことも起こりがちです。クリーニングで解決する汚れだけでなく、劣化・故障が発生していないかを確認し、ここで改修を見送った場合に次の賃貸中に改修が必要にならないかといったことについては設備の耐用年数なども参考にすることでリフォーム範囲の検討を行いましょう。

自宅を賃貸!その他のトラブルに関する注意点

上記のほかに、賃貸運営でトラブルを回避するために知っておきたい注意点として、家賃収入を得たときに確定申告が必要なことと、友人・知人に賃貸するという特別な状況における注意点をここで挙げておきます。

家賃収入を得た場合は確定申告が必要

賃貸で得た家賃収入はオーナーの所得の一部と見なされます。本業として賃貸経営する場合はもちろん、副業であってもそこから生じた所得次第で確定申告を行う必要があります。

副業の場合、申告手続きが必要になるケースは給与以外の年間所得が総額20万円を超えたときです住宅ローンなど借入金の利子やリフォームに伴う修繕費は必要経費と認められるので、これらを収入から差し引いたものが所得となります。経費となる範囲を把握できていると、正しく確定申告が行えるので、必要以上の税金を払わなくてよくなります。リフォームなどの工事で経費がさらに大きくなり、不動産所得が赤字になった場合には所得がマイナスとなることで、これが節税に寄与するといったこともあります。

また、会社に勤務していると、給与所得に対して源泉徴収が行われ、所得税の過不足に対しては年末調整がなされますが、副収入はこれらとは別に確定申告を行わなければなりません。手続きを行わずに申告漏れとなった場合、ペナルティとして、延滞税や重加算税といったものが課されてしまうため注意が必要です。

確定申告を行う際には二通りの方法があります。誰でも行える「白色申告」と呼ばれる方法と、事前に所轄税務署の税務署長から承認を受けて行うことができるようになる「青色申告」と呼ばれる方法です。青色申告を行う条件に「不動産所得、事業所得、山林所得のいずれかを得ている個人事業主」というものがあり、賃貸によって不動産所得を得ているオーナーも承認を得ることで青色申告を行うことができます。

青色申告を行うと白色申告を行うよりも節税することができます。まず、青色申告では「青色申告特別控除」という特典が適用されます。青色申告で確定申告することで、所得から10万円または最高で65万円までの特別控除を受けられるようになる制度です。また、青色申告を行うことで、費用のうち経費として認められる範囲が広くなります。これにより課税の対象となる所得が小さくなり、課される納税額もさらに少額に抑えられるようになります。

友人・知人への賃貸

賃借人となる入居者は、募集広告などを見た希望者の中から、不動産仲介会社を介して決まることが一般的ですが、もし友人・知人といった身近に自宅を借りたい人が見つかって賃貸を行う場合、特に気を付けておきたいことは、通常の賃貸借契約と変わらない内容でしっかりとした契約を交わしておくことです。中には当たり前のことと思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、一方で、お互いの関係性から遠慮の気持ちが生じてしまったり、手間が煩わしくて細かなことを省いてしまったりといったことがあり得ないことではありません。しかし、きちんとした契約を結ばずに賃貸の約束をして家を貸した場合、家賃滞納や明渡しの拒否など、万一のトラブルが起きてしまったときに、事態の解決が困難になってしまうような可能性や、賃貸中の物件に何かしらの不具合や問題が起きた際に、責任の所在が予め定められていなかったり曖昧であったりすると、そのことで互いの利害に関する交渉が長引いてしまうような恐れがあります。

信頼をしているが故に行ってしまうようなことではありますが、長い期間続く契約で、その間にお互いの状況が変わっていくということもあり得ます。結果として親しい方との関係がより深刻にこじれてしまうといった恐れもあるので、お互いに辛い思いをするようなリスクを軽減するためにも、契約は口約束など簡単な方法だけで行わず、必要なことが一通り書かれた契約書を準備した上で、しっかりとした内容の契約を結んでおいたほうが、余計な気がかりを抱える必要もなく安心して賃貸中を過ごすことができます

契約書を作成するときには、例えば、契約期間、家賃の金額、納付方法、支払い期限、契約解除の要件、禁止事項といったように、多くの場合で明記していないとリスクになる、書いておいた方が良い項目というのが多数存在します。そこで、まさに「賃貸借契約をめぐる紛争を防止し、借主の居住の安定及び貸主の経営の合理化を図る」ということを目的に作成された「賃貸住宅標準契約書」「定期賃貸住宅標準契約書」といったものを、国土交通省が契約書のモデルとして公開しているので、これらを参考に必要事項を検討していくと、一から考えていくよりずっと契約書の作成が楽になると思います。参考にしてみてはいかがでしょうか。もし、特に期限のことは考えず、貸せるだけ貸したいというのではなく、一時的に賃貸をしたいというのであれば、普通借家契約では思い通りの時期に解約することが難しいので、「定期賃貸住宅標準契約書」を参考にして契約書を準備し、定期借家契約を締結します。

参考:住宅:『賃貸住宅標準契約書』について(国土交通省)

参考:住宅:定期賃貸住宅標準契約書(国土交通省)

まとめ

自分に合った契約方法や管理方法を選ぶとともに、物件へのメンテナンスやリフォームを適切に施していけば、入居者探しの負担を軽くできます。入居者探しには適切な賃料設定も重要なポイントです。収支計画を先々まで検討する際には、賃料が今後ずっと一定とは限らないことも念頭に入れておきましょう。

住宅ローンが残っている場合は、賃貸中もそのままのローンで継続できるかについて、金融機関には必ず相談しましょう。住宅ローンを既に完済している場合など、賃貸を行うにあたって、新規に火災保険への加入が必要となる場合もあります。また、ペナルティを受けないために、確定申告のことも忘れてはいけません。友人・知人に賃貸する場合も、予めきちんとした契約書の作成を行い、賃貸経営のトラブルを回避しましょう。

自宅の賃貸でとくに目を向けておきたいポイント、代表的な6点をご紹介しました。

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