家を貸すときの注意点を場面別で解説!貸す前、賃貸中、退去時の気を付けるポイントを紹介
転勤で家を離れなければならない場合や実家に住む人がいなくなり空き家になってしまう場合など、家を貸すという選択肢が出てくることがあります。
家を貸せば毎月、定期的な家賃収入を得られるメリットがありますが、このときいくつかの注意点があります。
この記事では、家を貸す前、賃貸に出している間、退去時それぞれの場面別で気を付けておきたい注意点を解説していきます。さらに、古い家、自宅の一室を貸すときの注意点と家を貸す流れまでを解説します。
本記事を読めば、家を貸す際の注意点や流れの全般が分かるので、家を貸す際の不安も少なくなるでしょう。
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目次
1. 【貸す前】家を貸すときの注意点
家を貸す前の注意点には「住宅ローンの有無」や「賃貸の契約方法」、「貸し出す際にかかる費用や税金」など、さまざまな注意点があります。貸し出したあとに「こんなはずじゃなかった」とならないように、ひとつずつ確認していきましょう。
1-1. 原則として住宅ローンを組んでいる場合は賃貸に出せない
住宅ローンは、本人や家族が住むことを目的に土地や住宅を購入する際に利用できるローンです。そのため、自身や家族が居住しなくなり賃貸に出す場合には、住宅ローンの対象外となります。
金融機関への届け出を怠った場合には、金利が高いアパートローンへの変更や一括返済を求められる可能性もあります。住宅ローンのまま貸し出して良いかどうかは金融機関によって異なりますが、まずは、金融機関に事情を説明して相談をしてみましょう。
例外として、転勤中に自宅を一時的に賃貸に出す場合などやむを得ない事情の時には、住宅ローン返済中であっても自宅の賃貸を認めるケースもあります。次の章で解説していきます。
住宅ローンを組んだまま賃貸に出せる例外のケース
以下のような「やむを得ない事情」がある場合は、住宅ローンの返済中でも自宅を賃貸として貸し出すことが可能です。
- 転勤が決まり、帰任後に再入居する場合
- 両親の介護が必要となり、実家に引っ越す場合
- フラット35でローンを組んでいる場合(住所変更が必要)
一時的に家を貸し出し、貸し出す目的が終了後、元の家に再入居する場合に住宅ローンを組んだまま賃貸に出すことを認められる場合があります。ただし、先にも触れているとおり金融機関との相談は必須です。
なお、住宅ローン控除は例外なく対象から外れるため、賃貸中は控除を受けられなくなります。自宅に戻ってきた際に住宅ローン控除の適用期間が残っている場合は、再度控除を受けられるようになる点は留意しておきましょう。
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【事例で解説】再入居後に控除期間があれば住宅ローン控除は受けられる

家を一時的に貸すときの注意点
転勤終了後に再入居が考えられる一時的な家の貸し出しには契約方法に注意しましょう。
賃貸契約には3つの種類があり、最も一般的な契約方法は更新を前提とした長期的な契約方法であり、原則、契約の更新が拒めないため、帰任時に家を明け渡して貰う事ができなくなります。そのために、一時的な貸し出しに合わせた別の契約方法で賃貸借契約をします。
詳しくは、「1-4. 自身の希望に合った契約方法を選ぶ」で解説しています。
1-2. マンションを貸す際は管理規約に注意する
分譲マンションには、所有者全員で構成された管理組合があり、マンションごとの管理規約があります。
リフォームや駐車場の利用、引越しの搬出作業などにについて、管理組合への申請や許可が必要な場合があります。申請を怠ると、管理組合 からの許可が得られず、貸し出せなくなるおそれがあり管理規約の内容には注意が必要になります。
また、管理規約によって共用部分の範囲やペット飼育の可否、自転車置き場や駐車場、民泊利用の可否などが定められています。 各マンションで規約が異なるので、他のマンションで大丈夫だからといって大丈夫とは限りません。
規約の確認を怠り、申請を行ってしまうと予定通りに貸せなくなるどころか、共有施設の使用禁止やマンションの管理組合側から訴訟を起こされることもあり得ます。そのため、マンションを貸す際には必ずそのマンションの規約を先に確認するようにしましょう。賃貸の募集条件を設定する際は、管理規約違反とならないよう十分な注意が必要です。
1-3. 不動産管理会社は手数料の安さに注意する
不動産管理会社を選ぶ際、手数料の安さだけに着目するのは注意が必要です。なぜなら家を貸す際の目的によって、対応してほしい業務や重視したいポイントが異なるからです。
手数料を最優先にすると想定外の手間が発生する可能性や、管理会社の募集活動が少なく入居者が決まらないことで賃料収入が得られず、トータルコストが掛かってしまうことが注意点として挙げられます。
たとえば転勤の間のみ賃貸に出したい場合、賃貸中にトラブルが発生してもオーナーは赴任先にいるためすぐに駆けつけることはできません。トラブル時は対応が遅れることでさらなるトラブルに発展するケースも多々あります。そのため、こういった場合は、手数料が多少高くなったとしてもトラブルを始めとする管理業務のほとんどを委託でき、きめ細やかな賃貸管理サービスと充実した保証を提供している賃貸管理会社を選ぶのがおすすめです。
出費はできるだけ抑えたいところですが、手数料だけに着目してしまうと受けたいサービスが受けられない可能性が高くなります。状況や目的に応じて実績のある賃貸管理会社を選ばないと、賃貸経営にかかる業務負担が増す点には注意が必要です。
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賃貸管理での手数料の相場は?安さだけで選ばない相場に合った管理会社の選び方

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1-4. 家を貸す時の契約方法の注意点
家を貸すときの契約方法は大きくわけて「普通借家契約」「定期借家契約」「一時使用賃貸借契約」があります。
契約方法によっては再入居したくても元の家に住めなくなり、自身で家を探さないといけなくなるなどの注意点があります。例えば、転勤からの帰任後に元の家に再入居をする場合は「定期借家契約」「一時使用賃貸借契約」で締結しないと、家を明け渡して貰えず、退去をしてもらうには費用が発生することもあるため注意が必要です。
こちらでは契約方法の違いをご紹介します。
一時使用賃貸借契約 | 定期借家契約 | 普通借家契約 | |
---|---|---|---|
一般的な 契約期間 |
転勤であれば 帰任するまで ※ただし「短くとも〇年間」という保証期間を2年以上で設ける |
「〇年間」というように期限となる日付を予め定める |
2年ごとに 契約の更新がある ※解約できるとは限らない |
オーナーからの 解約 |
3か月前に 解約予告で可 |
契約期間満了に伴う解約 ※満了を迎える1年~半年前までに解約の意思を伝えなければならない |
解約には 正当事由が必要 |
適正とされる 賃料 |
普通借家契約の 相場の8割程度 |
普通借家契約の 相場の8割程度 |
最も多い契約なのでいわゆる相場とされる |
契約するための 特別な条件 |
転勤など一時的な賃貸を必要とする具体的な理由が要る | 特になし | 特になし |
用途 | 転勤(対象の家に再入居する意向がある) | 転勤(対象の家に再入居する意向がある) | 投資や相続した空き家など(対象の家に住まず永続的に貸し出す) |
・将来的に貸し出した家に住む予定はなく長期貸し出しを望む場合は「普通借家契約」
・将来貸し出した家に戻る予定があり戻るまでの期間が明確な場合は「定期借家契約」
・転勤など目的が明確で一時的な賃貸の場合は「一時使用賃貸借契約」
ですが、普通借家契約以外は、期間を限定した貸し出しのため、適正とされる賃料が相場に対して1~2割安くなることが多いので注意が必要です。
一時使用賃貸借契約の注意点
一時使用賃貸借契約とは、転勤のために一時的に家を離れるときなどに最適な契約方式です。賃貸期間は貸主側で設定できるうえに、期間満了後も使用目的が果たされるまでは契約期間が継続します。
たとえば一時的な転勤により賃貸に出す場合でも、定期借家契約で賃貸期間を2年に設定していれば2年で入居者には退去してもらうことになります。しかし、一時使用賃貸借契約の場合は、転勤期間が半年延びると、契約期間が帰任まで継続されるのです。
このような特徴を持つ一時使用賃貸借契約は貸主優位な契約であるため、借主を見つけにくい傾向にある点に注意が必要です。また、借主を見つけやすくするため、賃料も相場より低くなる点は留意しておきましょう。一方で、最初に設定した賃貸期間が過ぎれば、3ヶ月前までの解約予告で解約できるため、3つの契約方法のなかで最も臨機応変に対応できる契約方法と言えます。
関連記事
一時使用賃貸借契約とは?リロケーションで使われる転勤者におすすめの契約方法

定期借家契約の注意点
定期借家契約は、事前に決めた期間のみ賃貸として貸し出す方法です。後述する普通借家契約のように、入居者の意向のみで契約期間を延長することはできません。
定期借家契約の注意点としては、長く住みたい人からは敬遠されるため、家賃を相場の8割程度に抑える必要がある点です。また、解約通告は半年から1年前には行っておく必要があるため、一時使用賃貸借契約よりは臨機応変な対応が取りづらくなります。
普通借家契約の注意点
普通借家契約とは、一般的な不動産の賃貸契約に用いられている契約方式です。通常2年ごとの契約期間は定めるものの、入居者の意思のみで契約の更新が可能であり、希望する限り住み続けられます。
普通借家契約は借主優位な契約であり、貸主側からは「正当な事由」なしに解約の通告はできません。そのため、転勤などを終え、自宅に戻るタイミングで借主が契約の解除を申し出てくれない場合は仮住まいを探す必要があります。このように将来的に自宅に戻る意思がある人がこの契約方法を採ってしまうと、スムーズに自宅に戻れないおそれがある点に注意が必要です。
1-5. 管理方法の特徴を把握しておく
賃貸の管理方法と主な注意点を挙げていきます。
何故、注意が必要かというと、管理方法によって、賃貸経験者向けや一棟管理に適した管理方法であったり、途中解約の違約金が発生したりする場合があるためです。これらを知らずに、手数料の安さや空室時の家賃保証のようなサービスの有無で委託すると結果的に費用がかかる可能性があります。
管理方法 | 概要 | 注意点 |
---|---|---|
自主管理 | 入居者の募集から家賃の集金、契約・解約時の手続きなど、物件の維持管理に必要な作業をすべてオーナー自身が行う方法 |
|
管理委託 | 物件の管理作業を一部、またはほとんど不動産管理会社に委託する方法 |
|
サブリース | 業者がオーナーから物件を貸りて、第三者に転貸する管理方法 |
|
参考:サブリース契約に関するトラブルにご注意ください![消費者庁]
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賃貸管理とは?業務内容と管理会社を活用するメリット、デメリット、選定時のポイントを解説

1-6. 家を貸す際にかかる費用を把握しておく
家を貸す際には基本的に次のような費用が発生します。費用と収入のバランスを鑑みた家賃設定や収支に注意しましょう。
費目 | 費用相場 | 概要 |
---|---|---|
ハウス クリーニング費 |
2~10万円 | 物件内・外の清掃にかかる費用 |
リフォーム費 | 5~100万円 | 老朽化した設備の改修費用 |
仲介手数料・ 事務手数料 |
賃料の 1~2か月分 |
管理会社や不動産会社に支払う仲介手数料 司法書士、税理士、弁護士などに支払う手数料 |
損害保険料 | 契約内容に よって異なる |
火災保険、地震保険、施設賠償責任保険などの保険料 |
税金関係 | 貸主による | 固定資産税、都市計画税、所得税、住民税など |
これらの他に下記のような項目も、経費にできる費用となります。確定申告の際に費用計上を忘れずに領収書などを捨てないように注意しましょう。
費目 | 概要 |
---|---|
通信費 | インターネットのプロバイダ料金や携帯電話会社に支払う料金など |
旅費・交通費 | 公共交通機関の運賃や自家用車のガソリン、駐車場代など |
自動車関連費用 | 車両の購入代金、自動車税など |
新聞図書費 | 情報を得るために購入した新聞、書籍、セミナー代など |
交際費 | 管理会社や不動産会社との飲食代 |
減価償却費 | 固定資産の取得にかかった全額を耐用年数で割った金額 |
ローン金利 | 融資を受けた場合のローン金利 |
消耗品費 | 必要な資料を印刷するためのプリンターやカメラなどの代金 |
思った以上に支出はかかりますが、経費として計上すれば所得税の低減が見込めます。ただし、自家用車や携帯電話など、プライベートと兼用している場合は按分が必要です。すべての費用が経費計上できるわけではないことや完全に私的利用しているものに関しては、経費として計上できないことは留意しておきましょう。
1-7. 家を貸し出した場合は確定申告が必要になる
家を賃貸に出した場合、不動産収入が発生します。家賃収入などで20万円以上の所得があった場合は確定申告が必要になるので忘れないよう注意しましょう。対象となる所得は1月1日から12月31日までに発生したもので、申告・納税は翌年の2月16日から3月15日までに行います。
なお、家賃収入における不動産所得とは、家賃や礼金などの全収入から経費を引いた金額となります。経費とは、住宅ローンを受けている場合の支払利息、固定資産税・都市計画税、火災保険料、不動産管理会社へ支払う管理手数料などが該当します。また、建物は時間の経過とともに価値が下がっていきます。その目減りした分を減価償却と言い、減価償却費も税務上の必要経費として差し引くことができます。
関連記事
家賃収入で確定申告が必要なケースと適した確定申告の方法とは

確定申告を行うためには、月々の収支を計算しなければなりませんが、不動産管理会社に管理を委託している場合は、賃料や管理手数料、振込手数料などを記した収支報告書が届きます。リロケーション・ジャパンでは、一年ごとの収支明細報告書をインターネット上の貸主専用ページ「soraリロ」に掲載しています。
2.【入居者募集時】家を貸すときの4つの注意点
家を貸す前の注意点としては次のような点が挙げられます。
- ハウスクリーニングやリフォームの費用のかけ過ぎに注意する
- 家の状態を記録しておく
- 入居審査を行う
- 知り合いに家を貸す場合でも契約書を準備する
2-1. ハウスクリーニングやリフォームの費用のかけ過ぎに注意する
早期に入居者を決めるためには、家の状態は重要なポイントです。内見に来た入居希望者に好印象を与えられるよう、ハウスクリーニングを実施しましょう。また、設備が古くなっている場合は、リフォームやリノベーションも検討の余地があります
ただし、これらに費用をかけ過ぎてしまうと、収支のバランスが取れなくなります。かかった費用を回収したうえで相場以上の賃料が設定できるようリフォームは必要最低限に留めることをおすすめしますす。これらは、賃貸管理会社に相談すると過去事例などから適切な提案を貰えるでしょう。
2-2. 家の状態を記録しておく
ハウスクリーニングやリノベーションが終わったあとは、退去時にできている破損や劣化が故意のものであるか、経年劣化のものであるかを見極められるように原状を写真などに収めておき、退去時に比較できるようにしておきしょう。
これをしておかないと、退去時の原状回復における費用負担において、責任の所在があやふやになります。借主に請求できる費用も貸主が負担することになるため、壁や床など傷がつきやすい所は事前に記録してことをおすすめします。
2-3. 入居審査を行う
円滑に賃貸経営を行うためには、入居審査も重要です。家賃滞納や住民トラブルが発生し迷惑が掛からないよう注意が必要です。自主管理の場合はオーナー自身が、管理委託・サブリースの場合は賃貸管理会社に依頼してしっかり支払能力や過去のトラブルがなかったかなど入居者の人となりを見極めましょう。
2-4. 知り合いに家を貸す場合でも契約書を準備する
転勤などで一時的に家を貸すことになった場合、「信頼できる親類や友人に貸す方が安心できる。」という方もいると思います。しかし、信頼のおける仲であったとしても大切な資産を口頭でのやり取りだけで貸すのは非常に大きなリスクが伴い、家を明け渡して貰えないなどの事態も想定出来ます。トラブルだけで済めば良いですが、人間関係を傷つけてしまう恐れもあります
旧知の仲だったとしても知人や友人に家を貸す場合は、必ず契約書を作成しておきましょう。万が一トラブルが発生したとしても、あらかじめ同意を得たうえで作成した契約書があれば、その内容に沿ってスムーズに解決できます。
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転勤時に友人・知人へマンションを貸す際に起こる問題とは?

3.【賃貸中】家を貸すときの3つの注意点
賃貸中には次のような点に注意が必要です。
- 設備のメンテナンス代は原則、オーナーが負担する
- 家賃の遅延・滞納も想定しておく
- 騒音などのトラブルやクレームに対応する必要がある
3-1. 設備のメンテナンス代は原則、オーナーが負担する
物件の設備に関する費用は、入居者が故意に破損したケースを除き、原則オーナーが負担します。賃貸中に起こったからといって設備などの不備全てを借主に請求できないので注意が必要です。
退去費用の負担割合に関しては、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に記載してあります。設備によっては数百万円単位で費用がかかる場合もあるので、あらかじめ修繕費を積み立てるなどして対策しておきましょう。
入居者がメンテナンスやクリーニング費用を負担する可能性が高いケースは、以下のとおりです。
- 床や壁紙への落書き
- フローリングや畳の傷や汚れ
- タバコのヤニや臭い、焦げ跡
- ペットによる臭いや汚れ、傷
- 清掃を怠ったことによる水回りの汚れ
また、以下のようなケースでは入居者に費用負担の請求をできないため注意が必要です。
- 家具を設置していたことでついた床の跡
- 電化製品を設置していたことでついた壁の黒ずみ
- エアコンの内部洗浄
- 寿命による設備や機器の故障
- 自然災害による破損
原状回復は賃貸契約のなかでもトラブルになりやすい部分ですので、不安がある場合は賃貸管理会社の担当者や弁護士に相談しましょう。
3-2. 家賃の遅延・滞納も想定しておく
入居審査を行ったとしても何らかの理由で、家賃の遅延・滞納が発生する場合があります。家賃の滞納は不動産オーナーにとって死活問題ですので、問題が発生した際にどのように対処すべきなのかを事前に把握しておきましょう。なお、賃貸管理会社に委託している場合は、オーナー自身が入居者とやり取りすることはなく、基本的に管理会社が行なってくれます。そのため、保証会社を間に入れている管理会社を選び、万が一の場合に家賃の補填を行なってくれるかを確認しましょう。
3-3. トラブルやクレームに対応する必要がある
住民トラブルによるクレームが入るケースも考えられます。例えば、貸主と借主の間で家賃や敷金の返還についてトラブルになったり、入居者同士の騒音問題が発生したりするケースが多いです。また、上階からの水漏れや設備の故障などで、休日や真夜中に連絡が入ることもあります。
自主管理の場合は、オーナー自らがこれらの対応をしなければいけません。転勤で遠方に行っている場合は、すぐに対応できないことも多いです。そのため、自主管理なら管理委託や転貸に変更すること、賃貸管理会社が持つサービスとして24時間対応のコールセンターを運営している、緊急対応ができる工事会社との提携があるなどで、迅速にトラブルを処理できるでしょう。費用が発生する場合は貸主の判断が必要になりますが、自分で対応することがないため負担を減らせます。そのため、管理会社の選定にも注意する必要があります。
関連記事
家を貸したい人に管理会社をおすすめする3つの理由!賃貸管理会社を選ぶ際のポイントを5つ紹介

4.【退去時】家を貸すときの注意点
退去時には、原状回復について注意が必要です。
原状回復とは、国土交通省のガイドラインによると「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されます。
故意・過失とは、うっかり・わざとという意味であり、借主がうっかり、またはわざと壊したものに関しては借主に修繕義務があります。善管注意義務違反による損耗・毀損とは、借主が放置したことで状況を悪化または拡大させた損傷のことです。
例えば、クーラーからの水漏れを放置したことで生じた壁の腐食等が挙げられます。
その他通常の使用を超えるような使用とは、契約で禁止されていた行為を行って発生させた損傷のことです。
例えば、ペット禁止の物件であるにも関わらず、ペットを飼って傷つけた損傷等が挙げられます。
これらは借主が行わなければいけませんが、原状回復には「経年劣化による破損」は含まれません。そのため、貸す前の状態(原状)を写真でしっかりと記録に残すことで借主に修繕費用を請求しやすくなります。
しかし、ここで注意しておきたいことは入居者の過失による傷、汚れでも全てを原状回復費用として請求できないことです。これには、経年劣化と通常損耗の価値の減少は、入居年数と設備の耐久年数を鑑みて退去時の残存価値を計算するためです。
例えば、面積が一番大きくなる壁(クロス)の耐久年数は、6年と定義されています。
参考:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)12ページ
このため、入居期間が3年の家のクロスに15万円の費用が必要な場合、クロスの耐久年数は6年なので残存価値が半分となります。入居者が故意につけた傷を修繕する際の原状回復費用も半分の7万5,000円以上は請求できないので注意しておきましょう。
その他の主な設備の残存年数は以下の通りです。
- 耐用年数5年のもの:流し台
- 耐用年数6年のもの:エアコン、インターホン
- 耐用年数8年のもの:金属以外の家具(書棚、たんす、戸棚、茶ダンス)
- 耐用年数15年のもの:便器、洗面台等の給排水・衛生設備 ・主として金属製の器具・備品、
原状回復費は、敷金から引かれます。原状回復費用の方が敷金を上回れば上回った分を請求でき、残った分は返還しなければいけません。経年劣化、通常損耗のみの場合は、敷金は全額返還されるのが一般的なので原状回復費に敷金を全額充てられると思っていたら注意しましょう。
なお、以下の3つの要件を満たしている場合には、特約によって経年劣化や通常損耗の原状回復を借主に負担させることは可能です。
【経年劣化や通常損耗の原状回復を借主負担とできる要件】
- 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
- 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
- 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
原状回復については国土交通省より『「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について』が公開されているので、一度目を通しておきましょう。
5. 古い家を貸す場合
古い家を貸す場合に注意しておくことは、耐震性や配管の状態など「住居としての機能に問題がないか」物件の状態をチェックしておくことです。設備が古くなっていたら修理や交換が必要であり、場合によってはリフォームやリノベーションを検討します。
また、建物の耐震基準にも注意しましょう。1981(昭和56)年6月1日から適用されている新耐震基準と呼ばれる構造基準をもとに建築されている建物は、震度5強程度の地震では損傷を受けず、震度6強から震度7程度の揺れにおいては人命に危害を及ぼすような倒壊を防ぐ設計となっています。しかし、これ以前の旧耐震基準の建物もいまだ多く存在します。
旧耐震基準は、震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、たとえ破損しても補修することで生活できる構造基準で建てられています。近年では震度7を記録する大地震も度々発生しているため、旧耐震基準の建物では、不安に感じて入居者が集まりにくくなる可能性もあります。
旧耐震基準でも貸し出すことは可能ですが、入居者の不安払拭や震度5以上の地震発生を考えて、新耐震基準に適合する耐震リフォームを行ってから貸し出すことを検討しましょう。古い家を賃貸する際のポイントに関して、以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。
関連記事
古い家でも貸せる?すぐに借り手のつく方法と手順を解説

6. 自宅の一室を貸す場合
所有している自宅の一室(空き部屋)を貸し出す方法として、賃貸併用住宅があります。例えば、2階建ての一戸建て住宅に住んでいる人が、普段使用しない2階部分を賃貸に出すことです。自宅の一室を貸し出す場合、基本的に物件オーナーと入居者が同じ家に住むことになるため、お互いのプライバシーが確保できるか注意しましょう。
そのため、間取りと使い方を十分にイメージして、賃貸できるか判断する必要があります。またオーナーと入居者が仲良くなりすぎてしまい、賃料の支払いを遅らせる口約束をしたり無断でペットを連れ込んだりしてトラブルに発展するケースもあるので、契約書が必要になります。
賃貸併用住宅で友人や知り合いに貸し出す場合には、お互いが顔見知りということで自主管理を選ぶ人もいます。しかし賃貸契約では、退去時の敷金の精算や原状回復工事の費用負担の按分交渉など、不動産の専門知識を求められので、トラブル防止のためには賃貸管理サービスを活用するのがおすすめです。
また、住宅ローンの支払いをしている場合には、人に貸している部分は住宅ローン控除の対象外になるので控除額が変わる点に注意が必要です。賃貸併用住宅の特徴については、以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもぜひご覧ください。
関連記事
家の一部を貸す|賃貸併用住宅のメリット・デメリットや注意点を解説

7. 家を貸すときの流れ
一般的に家を貸す場合、次のような流れをとります。
7-1. 不動産管理会社で賃料査定をしてもらう
まずは物件の賃料を決めるために、賃貸管理会社に賃料査定を依頼します。賃料査定は次の2つの方法があります。
- 机上査定:物件のデータのみで賃料を査定する方法
- 訪問査定:不動産管理会社の査定担当者が現地に赴き、周辺環境も含めて物件の条件から賃料を査定する方法
賃料査定のポイントは複数社に査定を依頼することです。なぜなら賃料査定は不動産会社の査定担当者の経験則に基づくことが多く、1社だけに依頼してしまうと査定結果がかたよってしまうためです。そのため、査定の正確性と安定した賃貸運営を求めるには面倒でも複数社に賃料査定を依頼しましょう。
関連記事
【無料賃料査定あり】賃料査定の3つの方法と算出手順を解説!

当社でも無料の賃料査定を実施しています。東証プライム上場企業のグループ会社として複数の賃貸プランからお客様に合ったプランと充実したオプションメニューで賃貸経営をサポートします。賃料査定をお考えの際はお気軽にご連絡ください。
7-2. 物件の管理会社を決める
次に賃料査定を依頼した不動産管理会社のなかから、物件の管理を任せる会社を決めます。管理会社を選ぶポイントには次のようなものがあります。
- 希望する契約方法、貸し出したい家の種類(マンション・アパート・戸建て)に対して実績があるか
- サービス内容
- オプション対応
- 入居者を募集する方法
- 管理報告の頻度
賃料査定で提示された金額が高いほど、その管理会社を魅力的に感じてしまいがちですが、サービス内容や実績などを確認しておかないと、なかなか集客できなかったり、対応してほしいサービスが受けられなかったりします。そのため、上記のような点を確認して、総合的に頼りになりそうな管理会社を選ぶようにしましょう。なお、自主管理の場合は、オーナー自身で管理するため不動産管理会社の選定は不要です。
なお、委託管理を依頼する際は、家賃収入の5〜10%ほどの委託費用が必要です。また、管理委託費用に含まれる業務範囲は管理会社によって異なるため、賃貸業務の具体的な内容と別料金となる業務についても事前確認しておきましょう。
7-3. 物件の入居条件、賃料などを決める
物件の管理会社が決まったら、次は下記のような入居条件を詰めていきます。
- 賃料
- 敷金・礼金
- ペットの可否
- 喫煙の可否
- 原状回復費用の範囲
- 保証人の要否
- 火災保険の加入
これらの条件はオーナー自身で決めても良いですが、専門知識が豊富な管理会社に相談しながら決めた方が、早期に入居者が見つかりやすい条件を設定できます。
なお、賃料は賃貸管理会社の賃料査定をもとに決めるのが一般的ですが、オーナーの希望を反映することも可能です。家賃設定が高すぎれば借主が見つかりにくく、低い家賃で貸すと損をしてしまいます。一度貸してしまうと、あとから値上げするのは難しいため、賃貸管理会社と十分に相談して決めましょう 。
7-4. 物件の入居者を募集する
条件を決めたら、入居者の募集を開始します。管理会社に管理を委託する場合は、入居者の募集から内見も担当してくれます。自主管理の場合は、募集を掲載する媒体選びから問い合わせが来た際の対応、内見の立ち合いまですべてオーナー自身で対応することになります。
まだ居住中の場合は、立ち会うケースも多いので、物件の魅力や特徴(立地、築年数、間取り、設備など)が希望者に分かりやすいように、あらかじめ管理会社と打ち合わせしておくとよいでしょう。
7-5. 賃貸借契約を結ぶ
入居希望者から入居の申し込みがあったら、入居審査を行います。家賃の支払い能力や入居者の性格や属性などから総合的に「トラブルがない人か」を見極め、問題がなさそうであれば賃貸借契約を結びます。知人や友人などに貸す場合でも契約書を作成のうえ、賃貸借契約を結ぶことが大切です。
賃貸借契約書は管理会社が作成してくれるため、オーナーは内容に不備がないかしっかり確認しましょう。内容に問題がなければ、オーナーと入居者それぞれが署名押印して契約完了です。
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8. まとめ
この記事でお伝えした家を貸すときの主な注意点はこちらです。
- 転勤で自宅を賃貸するときは、住宅ローンを借りている金融機関への相談が必要
- マンションを貸す時は管理組合への確認が必要
- 不動産会社選びは提供サービスをよく確認する
- 収益を最大化するためには、賃料だけでなく入居期間も重要
- 期間を限定して家を貸したい場合は「定期借家契約」、転勤時の賃貸は「一時使用賃貸借契約」を用いる
- 入居者退去後の原状回復は事前に入居前の状態を記録しておくことが重要
- 家賃収入を得たら確定申告が必要
- 古い家を貸す場合は、耐震性を確認し必要に応じて新耐震基準への改修工事を実施する
- 自宅の一室を貸す場合はプライバシーを確保できるかが重要
家を貸すためには、どういう不動産会社に何を任せるか、選び方から考えて行きましょう。不動産仲介を本業としている会社を選ぶか、賃貸管理を総合的に依頼できる不動産管理会社を選ぶかによって、手数料の違いもありますが、解約精算時に至るまでの賃貸運用の手間も大きく変わってきます。
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