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公開日2019年11月15日/更新日2020年8月24日

普通借家契約は帰任時にトラブルが起こりやすい?更新に必要な正当事由とは?

普通借家契約は帰任時にトラブルが起こりやすい?更新に必要な正当事由とは?

一般的な賃貸物件の契約で用いられる普通借家契約。しかし、こと転勤時において、普通借家契約は持ち家を賃貸するのに向きません。その理由は、自宅の明け渡しトラブルが発生する可能性があるからです。今回は、普通借家契約における帰任時のトラブルをご紹介します。

帰任時に発生する可能性のある自宅の明け渡しトラブル

転勤中に自宅を賃貸したAさん。その当時はまだ、いつ帰任できるかがはっきりしていませんでした。しかし数年後、会社からの辞令で再び元の勤務地に戻れることとなります。

Aさんは持ち家の賃借人であるBさんに、不動産管理会社経由で早速連絡を入れました。しかし、帰任の日を伝えたにもかかわらず、Bさんは「まだ住み替え先が決まっていない」といった理由で明け渡しを拒否。結局Aさんは、Bさんが出て行ってくれるまで仮住まいを余儀なくされてしまいました。

転勤中に持ち家を貸し出すと、上記のようなトラブルが発生する可能性があります。もちろん、こうした事態が起こらないよう契約時には契約の種類や期間などを含めて注意をするため、頻発するようなトラブルではありません。

しかし、よく分からないまま普通借家契約による賃貸借契約を結んでいた場合には、明け渡しトラブルが発生する可能性があります。万が一、この事態に見舞われたとしたらどうすればよいのでしょうか。

契約期間中に自宅を明け渡してもらいたい場合

一般的に、普通借家契約では「期間の定めのある契約」が用いられます。この形式の普通借家契約では、賃貸人側から賃借人に対し、一方的な中途解約を申し入れることはできません。なお、契約書に中途解約に関する特例が記載されている場合もありますが、これは無効です。こうした条項は、借地借家法の規定に違反するものだからです。

ただし、賃借人が長期間に渡って賃料不払いや無断転貸などの契約違反を繰り返していたのであれば、明け渡しを要求することはできます。なお、この場合は契約の“解除”となります。

期間満了時に自宅を明け渡してもらいたい場合

では、期間満了のタイミングで契約更新を拒絶し、期間の定めのある普通借家契約を賃貸人側から終了することはできるのでしょうか?

結論から申し上げると、これは可能です。ただし、以下の条件を満たすことが求められます。

  • 期間満了の1年前から6カ月前までに更新拒絶の通知を出すこと
  • 借地借家法の定める正当事由があること

つまり、契約更新まで半年以内のタイミングだった場合は、その契約期間中の更新拒絶は行えません。次回の契約更新を済ませたうえで、期間満了の1年前から6カ月前までに更新拒絶の通知を出す必要があります。

上記に関してはあくまでタイミングの問題です。しかし、それ以上に条件を満たすのが難しいのが「借地借家法の定める正当事由」です。

更新拒絶に必要な正当事由とは?

それでは、「借地借家法の定める正当事由」とはどのようなものでしょうか? 以下が借地借家法28条に記載された、正当事由に関する条項です。

(借地借家法28条)

建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

たとえば、賃貸人が賃貸物件を自分で使う必要性が生じた場合や、商売の都合でどうしても建物を使わなくてはならなくなった場合が、正当事由に当たると解釈できます。しかし、いずれもケースごとに判断が異なるため、「これが正当事由」と一概に言い表すのは困難です。

また、普通借家契約は賃借人の都合がかなり重たく見られる傾向にあります。そのため、「ただ家に帰りたくなったから」といった理由は正当事由とは認められません。あくまでも、賃借人がその家を使用する理由よりも深刻な理由(家計困窮など)が、賃貸人には求められます。つまり、それぞれの都合が天秤にかけられ、どちらのほうが重たい理由かを測ったうえで判断されるということです。

ただし、賃貸人が立退料を支払い、賃借人の経済的損失を補うことで、更新に関わる利害のバランスを調整するようなケースもあります。簡単に言うと、「お金を支払うから、理由は深刻ではないけど正当事由を認めてください」といったイメージです。

確実な明け渡しをしてもらいたいならリロケーション

このように、普通借家契約は転勤時に持ち家を賃貸するのに適していない面があります。そこでご検討いただきたいのがリロケーションです。

リロケーションでは、一時使用賃貸借契約や定期借家契約という賃貸借契約が用いられます。それぞれに違いはあるものの、契約期間満了によって契約が終了し、更新がないという点が共通しています。そのため、期間満了時には必ず明け渡しをしてもらえます。

なお、一時使用賃貸借契約の場合は、事前に取り決めた条件が揃うことで賃貸人側から契約を終了することもできます。たとえば転勤時の自宅の場合だと、「転勤から本人、もしくは家族が帰ってくるまで」といった条件です。また、解約通知は最短で契約期間満了日の3カ月前に出せばよいため、よりフレキシブルに持ち家を賃貸できます。

まとめ

普通借家契約を転勤で用いるのは、現状おすすめできません。帰任時のトラブルを避けるためにも、リロケーションの活用を推奨いたします。また、一時使用賃貸借契約にしておけば、よりスムーズに自宅へと戻れますので、ぜひご検討ください。

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