リロケーションとは、転勤などで長期間留守にする間に、一時的に自宅を貸し出すことをいいます。「不動産を貸す」という意味では、リロケーションのほかに「一般的な賃貸」や「サブリース」などの方法があり、どれを選べば良いのか迷う方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、「リロケーション」「一般的な賃貸」「サブリース」のおもな違いを解説します。借地借家法の改正により注目されるようになったリロケーションのメリットやデメリット、利用時の流れも解説するので、自宅の貸し出し方に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
リロケーションとは、先述のとおり、留守にする自宅を期限付きで貸し出すことです。海外出張や転勤などで自宅を長期間留守にする際、戻ってくるタイミングで契約期間が終了するよう調整して貸し出すことで、持ち家を有効活用できるでしょう。
ここでは、リロケーションを行なう際の契約方法の種類を解説したうえで、リロケーションと一般的な賃貸・サブリースとの違いを解説します。
自宅を貸し出す際は、「賃貸人(貸す側)」と「貸借人(借りる側)」で契約を結ぶ必要がありますが、どの方法を選ぶかで、契約の種類や内容、当事者が変わります。これは、契約方法によって仕組みが異なるためです。
契約方法には、大きく分けて「代理委託方式」と「転貸借方式」の2つがあります。まずは、それぞれの違いを押さえておきましょう。
【代理委託方式】
代理委託方式は、物件の所有者が賃貸人、物件の入居希望者が貸借人となって賃貸借契約を結び、物件の管理を不動産会社が行なう賃貸方法です。
代理委託方式で自宅を貸し出す場合、共用部分の清掃など物件の管理業務を不動産会社へ委託できるメリットがあります。一方で、滞納家賃の回収や紛争解決などは、所有者が対応しなければなりません。
【転貸借方式】
転貸借方式は、所有者が不動産会社へ物件を貸し出したあと、不動産会社が入居希望者へ物件を貸し出す賃貸方法です。この場合、不動産会社と入居希望者が賃貸借契約を結ぶことになります。
転貸借方式は代理委託方式とは違い、所有者と入居希望者が直接契約しません。滞納家賃の回収や裁判などの紛争対応を含めた物件管理を不動産会社が担当してくれるので、所有者の負担が少なくなります。
代理委託方式と転貸借方式にはそれぞれメリット・デメリットがありますが、転勤などで物件の管理が難しい貸主にとっては、転貸借方式のほうが総合的なメリットが多いでしょう。このことから、多くのリロケーション物件では転貸借方式が選ばれています。
それでは、リロケーションと一般的な賃貸・サブリースには、どのような違いがあるのでしょうか。
リロケーションと一般的な賃貸のおもな違いは、「契約期間」と「家賃相場」です。
■リロケーションと一般的な賃貸のおもな違い
リロケーション | 一般的な賃貸 | |
---|---|---|
契約期間 | 明確な期限がある (2~3年程度の短期間が多い) |
入居者の希望次第で契約期間に幅がある |
家賃相場 | 相場の8~9割程度 | 相場通り |
リロケーションと一般的な賃貸で、契約期間や家賃相場にどのような違いがあるのか見ていきましょう。
リロケーションは、留守にする期間の貸し出しを前提としているため、契約期間に具体的な期限があり、多くは2~3年程度の短期間です。契約時、明確に「○年契約」と定められているため、入居者は契約期間満了時に契約更新をすることはできず、満了を迎えると入居者は必ず退去しなくてはなりません。
一方で、一般的な賃貸は、入居者の希望次第で契約が終了または継続します。契約期間は、単身者や学生で2~4年、ファミリー層で4~6年、高齢者で6年以上が多くを占めるなど入居者によって幅があるのが特徴です。一般的な賃貸にも契約期間の定めはありますが、リロケーションとは違い、契約期間満了時に入居者が契約を更新するかどうか決めることができます。
一般的な賃貸で自宅を貸し出している場合、所有者からの契約更新拒否や急な立ち退き請求は、基本的に認められません(※)。入居者から、契約期間満了のたびに契約更新を希望されると、長期にわたって自宅を貸し出すこととなります。
※建物の老朽化や家賃滞納といった正当な事由があれば、所有者から契約更新を拒否できる場合もあります。
リロケーションの場合は、一般的な賃貸に比べて賃料が安くなる傾向があります。これは、入居者が契約期間満了時に必ず退去しなければならないことから、一般的な賃貸と比べて需要が限定的になってしまうためです。
一般的な家賃相場よりも賃料を低くすることで集客しやすくなるため、多くの不動産会社ではリロケーション物件の賃料を相場よりも低く設定します。
ただし、条件によっては一般的な家賃相場と同程度の賃料で貸し出すこともあるため、一概に「リロケーション=家賃が安い」とは言い切れません。契約期間が比較的長い、駅から近い、築浅であるなど、好条件な物件であれば、一般的な家賃相場に近い賃料設定ができるでしょう。
リロケーションとサブリースのおもな違いは、「契約期間」と「各種保証」です。
■リロケーションとサブリースのおもな違い
リロケーション | サブリース | |
---|---|---|
契約期間 | 2~3年程度の短期間 | 十数年~数十年単位 |
各種保障 | サービスによって異なる | 家賃保証や滞納保証などがある |
サブリースとは、不動産会社が所有者の物件を借り、入居者へ貸し出す仕組みやサービスのことです。一般的に不動産会社が提供するサービスとしてのサブリースには、物件を一括で借上げ、入居者がいない間の家賃保証や滞納保証といった各種保証も含まれます。
上記をふまえ、リロケーションとサブリースの違いを見ていきましょう。
不動産会社が行なうサブリースでは、契約期間が長期(十数年~数十年単位)になる傾向があります。これは、一般的な賃貸契約に比べて長期の契約でないと、不動産会社の収益が見込めず、家賃保証ができなくなり、契約締結自体が難しいためです。
一方、リロケーションの場合は2~3年程度の短期契約が一般的です。加えて、入居者が希望したとしても、原則として契約更新はありません。そのため、転勤などで特定の期間家を空ける際、不動産を有効活用する方法として利用されています。
不動産会社が提供する一般的なサブリースサービスでは、家賃保証・滞納保証が附帯します。これは、空室が出た場合や滞納があった場合、不動産会社が家賃を保証してくれるというものです。
一方、リロケーションの場合、こうした家賃に関わる保証の用意は不動産会社によって異なります。なお、当社の場合ですと、入居者が家賃を滞納した場合でも支払いが保証される「家賃滞納保証」をご用意しております(空室時の家賃保証ではありません)。
2000年に借地借家法が改正されて以降、リロケーションは転勤者などにとって、よりメリットのある賃貸方法となりました。
年単位で自宅を留守にする場合、換気や掃除が行なわれないことによる住宅の劣化や、防犯面で不安が残ります。価値ある物件を有効活用するためにも、留守宅として放置せず、リロケーションを検討してはいかがでしょうか。
リロケーションには、次のようなメリットがあります。
リロケーションで自宅を貸し出すと、毎月定額の家賃収入が得られます。
長期旅行や転勤などで家を空ける場合であっても、住宅の維持にかかる支払いの多くは止めることができません。リロケーションによる家賃収入を支払いに充て、余裕があれば家賃収入をそのまま貯蓄に回すのもよいでしょう。
留守の間にかかる住宅の維持費には、以下のようなものがあります。
■留守の間にかかる住宅の維持費費用の項目 | 金額の目安/年額 |
---|---|
住宅ローン(残債がある場合) | 返済計画により異なる |
火災保険や地震保険などの保険料 | 1~3万円程度 |
固定資産税 | 10~15万円程度 |
都市計画税 (市街化区域のみ) |
3~5万円程度度 |
光熱費の基本使用料 (使用を停止していない場合) |
2~3万円程度度 |
長期間留守になるはずだった家をリロケーションで貸し出せば、人が住むことによって住居の劣化を抑えられます。実は、住居は人の出入りが少ないほど、以下のような理由で劣化が進んでしまうのです。
人の居住にともなうダメージがないとは言い切れませんが、長期的な住宅維持の観点からは、人が住むことで家の劣化を抑えられるでしょう。また、傷んだ部分を入居者に気づいてもらうことができるので、修理が必要な場合も早く対応することができます。
リロケーションには、防災や防犯の観点においてもメリットがあります。家具や家電などを置いたまま、長期間留守にしてしまうと、放火や不法侵入、盗難などのリスクが高まるためです。
消防庁が発表した「令和3年(1~12月)における火災の状況(確定値)について」によると、「放火」と「放火の疑い」が原因で出火した件数の合計は3,888件で、総火災件数の10%以上を占めています。
家に人が住んでいるだけで不審者が近寄りにくくなるため、家を空けないことは防災と防犯、どちらの観点からも大切です。
出典:消防庁「令和3年(1~12月)における火災の状況(確定値)について」
リロケーションには、メリットだけでなくデメリットもあります。リロケーションをする際、どのような点に注意すれば良いのかを知り、事前に対策を立てましょう。
ここからは、リロケーションをする際に注意するべきポイントを解説します。
基本的に、住宅ローンは「契約者自身が住むために契約をするローン」です。住宅ローン返済中の住宅を第三者に貸し出す場合は、金融機関の許可を得なくてはなりません。交渉次第で住宅ローンを継続できる場合もありますが、一括返済やローンの組み直しなどを命じられる可能性もあります。
なお、住宅を賃貸に出さず長期間留守にする場合でも、基本的には金融機関への報告が必要です。
住宅ローンが残っている状態でのリロケーションについて、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。
リロケーションの家賃収入(不動産所得)が、必要経費を引いて年間20万円を超える場合は、確定申告をして所得税を納める必要があります。なお、20万円以下の場合でも住民税は別途申告が必要なので、注意しましょう。
確定申告が必要になるのは、主となる収入以外の所得の合計が20万円を超えた場合なので、ほかにも副業をしている人は特に注意が必要です。
リロケーションの家賃収入と確定申告について、詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
リロケーションをする際、基本的にベッドや椅子、ソファなどの家具は残せないことが多いため、別の場所へ移動し、保管する必要があります。貸し倉庫やトランクルームを借りて家財を保管する場合は、搬出搬入やその契約にかかる費用といった負担を考慮しましょう。エアコンや照明など、入居者が使う可能性が高いものは残しておける場合もあります。
ただし、家具付き物件にまったく需要がないわけではありません。単身者用物件などであれば、必要な設備や家財を貸し出すこともあります。家財を貸し出す際は、破損時の対応などについてもよく協議し、明け渡し時にトラブルへ発展しないよう気をつけましょう。
リロケーションを利用する際の大まかな流れは、次のとおりです。
1. リロケーション会社の選定
2. 入居者の募集~契約
3. 帰任後の手続き
1.リロケーション会社の選定
不動産会社のなかには、リロケーションプランのある会社やリロケーションを専門とする会社があります。提供されるサービスや対応は会社によって異なるため、リロケーションを検討し始めたら、なるべく早い段階でリロケーション会社の比較を行ないましょう。
2.入居者の募集~契約
依頼するリロケーション会社が決まったら、契約期間や賃料などの条件を設定し、入居者の募集を開始します。入居希望者が現れ、支払い能力や人格に問題がなければ、晴れて契約締結です。
その後、会社によって内容は異なりますが、住居の管理はリロケーション会社が行ないます。修繕が必要になった場合など、相談が必要な際はリロケーション会社から連絡が入ることもあるため、連絡があれば都度対応しましょう。
3.帰任後の手続き
自宅へ戻ることが決まったら、早めにリロケーション会社へ伝えます。リロケーション会社や契約内容によって、解約を申し出なくてはならないタイミングが異なるため、しっかり把握しておきましょう。
転勤などで長期間留守にする間、自宅を貸し出したいが、最終的に手元に戻ってきてほしいという場合は、リロケーションが最適な方法でしょう。
一方、一般的な賃貸やサブリースは不動産投資としての側面が強い傾向にあります。所有する不動産を活用し、安定した家賃収入を長期的に獲得したいと考えている方にはおすすめです。
なお、家賃収入は期待せず、一定期間、現在の自宅の状況を維持したいという場合は空き家管理サービスなども選択肢の一つになりえます。ご自身の希望に合わせ、最適な方法を選びましょう。
■「リロケーション」「一般的な賃貸」「サブリース」の比較表
リロケーション | 一般的な賃貸 | サブリース | |
---|---|---|---|
契約タイプ | 代理委託契約 転貸借契約 |
代理委託契約 | 転貸借契約 |
契約期間 | 赴任期間など目的に合わせて2~3年程度 | 2~4年程度の短期、6年以上の長期など入居者の希望次第 | 十数年~数十年単位 |
賃料保証 | サービスによって異なる | サービスによって異なる | 家賃保証や滞納保証などがある |
※賃貸管理サービスの内容は、多岐にわたります。「リロケーション」「賃貸」「サブリース」と呼称されるすべてのサービスが上記に当てはまるものではありません。
リロケーションは、転勤中の自宅を賃貸に出し、帰任時にはスムーズにもとの生活へと戻れる点が大きなメリットです。しかし、賃貸に出すのであれば、できる限り家賃収入を得て、ランニングコストを減らしたいと考えるのが当然でしょう。
当社では、1万社を超える取引法人との連携や、8,000店舗にもおよぶ不動産ネットワークを活用し、入居者を募集しております。早期の入居実現・賃料発生をサポートいたしますので、リロケーション会社をお探しの方は、ぜひ一度ご相談ください。
リロケーションと一般的な賃貸・サブリースは、契約の仕組みや契約期間などさまざまな違いがあります。転勤などの間は自宅を賃貸として活用し、帰任した際にスムーズにもとの生活へ戻りたいと考えるのであれば、リロケーションがおすすめです。
リロケーションをする際、気を付けなくてはならない点もありますが、希望に合ったリロケーション会社を選ぶことで、デメリット以上のメリットを享受できるでしょう。それぞれのお客様に最適なご提案を差し上げますので、まずは当社までお気軽にお問い合わせください。
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