家を貸し出そうと考えたときに、リフォームについて「このままで貸せるのか」「貸し出すためのリフォームはどこまでやればいいのか」迷う方も多いでしょう。
この記事では、家を貸すときのリフォームについて、水回り・建物・設備の3つにわけて解説します。
目次
1. 持ち家を貸し出すためのリフォームは必要?

貸し出すにあたっては、貸主は入居者が問題なく生活できるように物件を管理する義務があります。そのため設備の故障があれば修繕し、入居者が生活に困らないよう部屋の状態を整え、必要であればリフォームも検討すべきです。
また、空室期間を短くしたり、家賃を上げたりしたいと考えているのであれば、物件の価値を上げるようなリフォームが求められます。
代表的なものは次の通りです。詳細は各章にて紹介しています。
水回り設備 | リフォーム内容 |
---|---|
最低限すべきリフォーム | ・給湯器の設置 [浴室] ・洋式便座 [トイレ] |
入居率を高めるためのリフォーム | ・システムキッチン(コンロの設置)[キッチン] ・浴室、トイレ、独立洗面台の分離 [洗面・浴室・トイレ] ・追い炊き機能 [浴室] ・ウォシュレット [トイレ] |
賃料を上げるためのリフォーム | ・食洗器[キッチン] ・パントリー [キッチン] ・浴室乾燥機 [浴室] |
詳細は「2.清潔感が重要な水回り設備のリフォーム」にて解説しています。
建物・内装 | リフォーム内容 |
---|---|
最低限すべきリフォーム | ・壁紙の貼り替え [壁・天井] ・カーテンレール、網戸の設置 [窓・建具] ・コート収納 [収納] |
入居率を高めるためのリフォーム | ・畳からフローリングへの変更 [床] ・機能性壁紙への変更 [壁・天井] ・二重窓の設置 [窓・建具] ・押入からクローゼットへの変更 [収納] ・DK+1室をLDKへ変更 [間取り] |
賃料を上げるためのリフォーム | ・床補強 [床] ・防音構 [壁・天井] ・WIC、シューズボックス [収納] |
詳細は「3.建物や内装のリフォームで住み心地を快適に」にて解説しています。
機器 | リフォーム内容 |
---|---|
最低限すべきリフォーム | ・照明のLED化 [照明] ・地上波放送受信設備 [インターネット・TV] |
入居率を高めるためのリフォーム | ・エアコン [冷暖房] ・TVモニタ付きインターホン [セキュリティ] ・コンセントの増設 [コンセント] |
賃料を上げるためのリフォーム | ・床暖房 [冷暖房] ・防犯カメラ [セキュリティ] ・宅配ボックス [セキュリティ] |
詳細は「4.機器のリフォーム」にて解説しています。
2. 清潔感が重要な水回り設備のリフォーム
水回りの設備は汚れやすく、物件の印象を大きく左右します。また、毎日の生活に欠かせない設備が多いため、必ず貸し出し前に点検をし、不具合がある箇所は修繕を行いましょう。
2-1. キッチン
コンロやIHクッキングヒーター、レンジフードなどのキッチン設備の寿命は約10年です。設備の耐用年数を超えている場合は事故の危険性がありますので、必ず交換しましょう。ガスコンロが備え付け設備となっていない場合は、ビルトインタイプのシステムキッチンに交換することも検討しましょう。
子どものいる世帯では、安全性や掃除のしやすさからIHクッキングヒーターが好まれることもあります。また、食洗機やパントリーも、ファミリー層や共働き世帯に人気です。
設備を増やさなくても、設置可能なスペースやコンセントの確保をしておくと、調理家電などを持ち込みたいと考えている層にも喜ばれるでしょう。
2-2. 洗面
洗濯機は可能な限り、室内洗濯機置き場を準備しましょう。
ファミリー層向けの物件では、独立洗面台の設置も検討しましょう。単身者向けの物件では浴室内洗面器の場合もありますが、複数人での入居は化粧品などの小物が多くなるため、収納が求められます。
2-3. 浴室
築古物件でバランス釜を使用している場合は、給湯器に変更しましょう。また、混合水栓が2ハンドル式の場合、サーモスタット式へ変更することも検討しましょう。
ファミリー層向け物件では、追い焚き機能や浴室乾燥機も人気があります。浴室乾燥機があれば、花粉シーズンや梅雨でも気にせず洗濯が可能になります。
2-4. トイレ
和式の場合は洋式便座に変更しましょう。単身向け物件で見られるバス・トイレ同室物件は不人気です。浴室・洗面とは異なる空間として用意できるとよいでしょう。
トイレそのものの機能として、暖房便座や温水洗浄便座も人気があります。
3. 建物や内装のリフォームで住み心地を快適に
3-1. 床
カーペットやクッションフロアは耐用年数が短く、また畳やカーペットは液体をこぼすと汚れとして残りやすいため、フローリングへ変更しておくと手入れが楽になります。
また、グランドピアノは床補強がないと搬入できないため、もし床補強されているのであれば、入居者募集の際にアピールポイントとして記載しましょう。
3-2. 壁・天井
壁紙は部屋の大部分を占めるため、内見時の印象を大きく左右します。新たな入居者を迎える際には壁紙も新しくし、気持ちよく住んでもらえるように整えましょう。
部屋全体として白基調にすることで明るく広く見せることができますが、一面だけ色や柄を変えるアクセントクロスや、マグネットやホワイトボードなど機能的な壁面を導入することで、オシャレな雰囲気を出すことができます。スイッチプレートやコンセントプレートの交換もあわせて行いましょう。
また、ペット飼育を想定している物件は、汚れ防止、消臭機能など機能性クロスの利用も検討するとよいでしょう。
楽器演奏可能な物件として募集する場合は、防音対策が十分かも確認しておきましょう。
3-3. 窓・建具
各窓には、カーテンレールや網戸の設置をしておきましょう。また、開きにくいドアやクローゼット扉は交換し、ペンキの剥がれなどが見られる場合は補修しましょう。
窓や建具は壁紙とあわせてデザイン性の高いものを選ぶことで、部屋をより魅力的に見せることができます。
電車や飛行機などの騒音がある地域では、二重窓の設置も検討するとよいでしょう。二重窓は騒音の軽減だけでなく、断熱や結露の軽減にも効果的です。
3-4. 収納
収納が2段以上の押し入れのみの場合は、少なくともコートが掛けられる高さの収納を用意しましょう。複数段や引き戸など、収納方法が制限される押し入れは、クローゼットへ変更することで、利便性が向上します。さらに、扉をなくしたオープンクローゼットにすることで、建具分の費用を削減できます。
広さに余裕があれば、ウォークインクローゼットや、シューズボックスの設置も検討するとよいでしょう。
3-5. 間取り
古い物件では、1部屋が4畳半となっており、現在の一般的な部屋よりも狭い場合があります。壁をなくして部屋をつなげ、DK+1室をLDKへ変更するなどの間取り変更を行うことで、1部屋を広くすることができます。同じ広さでも家具レイアウトのバリエーションが増え、生活しやすくなります。
4. 機器のリフォーム
賃貸物件とともに貸し出すものは「設備」と「残置物」の2つにわけられます。
「設備」は物件に設置されているもので、入居者が生活する上で必要なものです。そのため、故障した場合は貸主に修繕義務が発生します。
一方「残置物」はオーナーの好意で置いていくもので、修繕義務はありません。入居者が必要としないのであれば貸主に対して撤去を求めることもできます。
4-1. 照明
シーリングタイプであれば入居者で用意してもらうことが可能ですが、ダウンライトの場合は設備となり、故障時には修繕対応が必要です。電球などの消耗品部分は借主の負担で交換となります。
なお、2027年末までに蛍光ランプの生産終了することが決定しています。まだ蛍光ランプの器具を使用している場合は、LED照明器具へ変更しましょう。
4-2. 冷暖房
エアコンは「設備」としてすることが一般的です。賃貸から賃貸へ引っ越す入居者はエアコンを持っていないケースもあり、新たに購入すると費用がかさむことから候補から外されてしまうこともあります。
部屋数が多い場合、全室にエアコンを設置することは難しいかもしれませんが、昨今の気候を鑑みると、リビングだけでも設置しておくと喜ばれるでしょう。
床暖房がついている場合は「残置物」として貸し出すことをおすすめします。床暖房が故障した場合、フローリングを剥がしての修理が必要となる可能性があり、修繕費用が高額化する可能性があるためです。
4-3. コンセント
コンセントは入居者自身での設置ができません。家電が増加している現代では、築年数の古い物件の場合コンセントが不足する場合もあります。自分が生活すると想定してみて不足していると感じる場合は、調理家電のあるキッチンまわりや電子機器の充電を行うデスク周りなど、生活動線や家具配置を考慮した位置を中心に、増設を検討しましょう。
コンセントだけでなく、スマートフォンなどを直接充電可能なUSBポートもあわせて検討するとよいでしょう。
4-4. インターネット・TV
ファミリー世帯であれば、TVを見る世帯は多くあります。最低でも地上波を見られるよう、受信設備を設置しましょう。
インターネット回線は、マンションの場合は建物全体で決まっていることが一般的です。戸建ての場合は個別での契約となり、借主が契約することが一般的ですが、エアコン同様工事に伴い物件に穴をあけることがあります。開通までは時間を要するため事前に導入されていると喜ばれるでしょう。
4-5. セキュリティ
マンションの場合は共用設備として設置されているので、設備内容を確認の上、入居者募集の際にアピールしましょう。
戸建ては独立しているためTVモニタ付きインターホンで、来訪者の顔が見えるようにしましょう。人通りの少ない立地の場合などは、道路から死角となる場所に防犯カメラを設置するとより安心です。
また、近年は戸建てに設置するタイプの宅配ボックスも発売されているので、アピールポイントとして設置してもよいでしょう。
4-6. スマートホーム
スマートホームを導入すれば、スマートロックやスマート照明、ロボット掃除機など、スマートフォンから操作することができます。
建具の取り換え不要なスマートロックも販売されており、顔認証で解除できる機能は子供や荷物を持っている場合でも開錠できるため、利便性が向上します。
5. リフォームを成功させるポイント
5-1. ターゲット層の明確化
どのような人に住んでほしいのかを決め、そのターゲット層に響くリフォームを優先しましょう。
例えば、単身者であれば宅配ボックスやエアコン付物件が人気ですが、ファミリー層では子育てのために在宅している時間が長く、エアコンや家具は既に持っている場合もあります。一方で、単身者には不要な追い炊き機能や、手際よく料理をするための2口以上のコンロなどにニーズがあります。
5-2. 周辺競合物件の調査
周りの物件がどのような間取りや内装、設備があるかを調査し、差別化できるポイントを見つけましょう。
例えば、周辺に和室が含まれる物件が多い場合は、現代的なデザインの琉球畳に変更したり、フローリングのみに改装したりすることで、和室を必要としない層に訴求できます。
また古い団地などで同じ間取りの競合物件が多数ある場合は、2DKを1LDKに変更するなど間取りを変更し、1部屋あたりの広さを確保するといったリフォームも検討できます。
ただし、リフォームの内容はターゲット層のニーズも合わせて検討しましょう。
5-3. 清潔感を出す
設備の更新や間取りの変更までしなくとも、清掃やメンテナンスによって物件の印象を変えることが可能です。
中でも、壁紙・クロスは部屋の面積の多くを占めるため、新しいものへ貼り替えるだけで、部屋全体の印象が良くなります。費用は1,000円台/㎡であり、一般的な住宅であれば設備の交換よりも安く抑えることができます。
ほかにもスイッチカバーなど、プラスチックが黄ばんでしまったものを交換することも、清潔感のある印象を与えられます。
5-4. 費用対効果の検討
リフォームにかけた費用に対して、家賃アップや空室期間短縮の効果が見込めるかを考えましょう。
前述したように、壁紙・クロスの貼り替えは費用対効果の高いリフォームです。一方で、最新設備への更新は費用がかさみますが、人によっては重視しない場合もあり、また費用の回収にも時間がかかります。
入居希望者に与えるインパクトが大きいながらも、低予算で手をかけられる箇所からリフォームしましょう。
5-5. デザインの統一感
リフォームを実施する際は、部屋全体でデザインのテイストを合わせるようにしましょう。
リフォーム計画は全体で考えることが重要です。一度にリフォームしない場合でも、今後のリフォーム計画をあわせて検討しておくことで、デザインがブレにくくなります。
また、部屋の印象を左右しやすい壁紙については、アクセントクロスの使用を1面1色にとどめておくことや、白色で明るく広い印象を与えることで、統一感のある部屋を演出できます。
6.リフォーム事例と費用相場
実際にリロケーション・ジャパンが行ったリフォーム事例をご紹介します。
6-1. フローリングの部分補修
フローリングの剥がれについて部分的な補修を行った事例です。大きな貼り替えは行わず、該当部分に対してのみ施工をしていますが、既存部分と木目がなじみ、補修部分がわかりにくい仕上がりとなっています。

費用は対象部分の大きさや数にもよりますが、高くても数万円程度で済むことがほとんどです。
6-2. 和室の畳の変更
和室の畳を琉球畳に変更した事例です。
建具デザインなどはそのままですが、部屋全体が現代的な印象になり、隣のリビングの白い床とも調和が取れています。

琉球畳へと新調する場合は、素材にもよりますが1~3万円程度/半畳(琉球畳1枚)程度の費用がかかります。琉球畳は通常の畳の半畳で1枚となっており、素材によって耐久性も異なるため、採寸や素材の選定をしっかりと行うことが重要です。
6-3. フルリフォーム/リノベーション
次はフルリフォームの事例です。家全体をフルリフォームする場合の費用は、広さや規模によって大きく異なりますが600~1,000万円を超えることもあり、特に間取りの変更によって壁の設置や造作などがあると費用がかかる傾向にあります。
長期間リフォームせずに住んでいた場合や、設備などが古く、使い勝手が悪い場合は、フルリフォームによって物件の価値が向上する可能性があります。
なお、今回の事例では、工事完了から1ヶ月で申込が入り、家賃は従来よりも約8%upしました。
玄関
リフォーム前は玄関の正面にリビングへと続く扉が設置されていましたが、今回新たに正面に壁を設置しました。玄関開けて目の前がリビングへ続く建具があるより、グレーの壁紙をアクセントにし、カウンターをセットすることで小物置きや花瓶や絵画を飾る空間を作りました。

リビングの床と天井の貼り替え
床を少し明るい色へ変更することで、空間を広く見せています。また、壁紙の貼り替えにより天井に残っていたシーリング後や壁面の汚れがなくなり、清潔感のある部屋になりました。

キッチン設備の入れ替え
システムキッチンを入れ替えました。
以前はL字型だったキッチンをI型に変更し、空間を広く導線を短くし、使いやすさを向上させました。

キッチンパネルで用いられているアースグレーのカラーリングは、家全体のカラーリングのベースとなり、水回りの床やアクセントクロスにおいてもグレー系の色でまとめています。
トイレ設備の一新と壁・床の貼り替え

便器や手洗いの設備を更新しただけでなく、収納を扉付から棚へ変更したり、配管部分をオープンにしたりして、窮屈になりがちな空間を広く見せる工夫をしています。
このほかのリフォーム費用の相場については、次の記事で解説しています。
関連記事
マンションを貸すときのリフォーム相場はいくら?費用を抑えるポイントやリフォームするタイミングを解説

7. まとめ
持ち家を貸す前に行うリフォームについて、「最低限すべきリフォーム」「入居率を高めるためのリフォーム」「賃料を上げるためのリフォーム」の3つに分けて紹介しましたが、リフォーム箇所は一例で、物件ごとに入居者のニーズは変わり、求められるリフォームも異なります。
多くの不動産会社では、賃料査定とともにリフォームが必要な箇所についてアドバイスを行っています。リフォームすべき箇所について知りたい方は不動産会社に予算やリフォーム後のイメージ等を伝えた上で、訪問査定を申し込むとよいでしょう。
「予算の都合などでリフォームすることが難しいけれど、持ち家を貸し出したい」と考えている場合は、下記の記事を参考にしてみてください。
関連記事
リフォームなしで家を貸すにはどうしたらいい?方法と判断基準を解説

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