家を貸すと家賃収入が入りますが、実際には経費や税金が発生するため、家賃収入が全て手残りになるわけではありません。
家を貸して一定額以上の所得が発生すると確定申告も行わなければいけないことから、必要経費の知識についても知っておくことが求められます。
必要経費は、きちんと計上することで税金を節税することもできます。
また、家を貸すときに得られる収入を増やすコツも存在します。
家を貸すときに必要な税金に関する知識や収入を増やすコツにはどのようなものがあるのでしょうか。
この記事では、「家を貸すときの収入」について解説します。
家を貸すときに生じる税金は、大きく分けて「収入を得ることで生じる税金」と「保有しているだけで生じる税金」の2つです。
【収入を得ることで生じる税金】
【家を保有しているだけで生じる税金】
収入を得ることで生じる税金は、所得税や復興特別所得税、住民税の3つです。
給与所得者(サラリーマン)であれば既に所得税等を払っていることが通常ですが、家を貸して収入が入れば所得税等が加算されます。
家を保有しているだけで生じる税金は、固定資産税と都市計画税の2つです。
固定資産税等は1月1日時点の所有者に対して課税される税金であるため、仮に家を貸さずに空き家のまま放置したとしても生じる税金となります。
固定資産税と都市計画税は、貸しても貸さなくても税額は同じです。
不動産所得とは、家賃収入から必要経費を差し引いた利益のことです。
不動産所得 = 収入金額 - 必要経費
個人の所得は、得られる収入源により、給与所得や不動産所得、譲渡所得、事業所得、雑所得、山林所得、退職所得、利子所得、配当所得、一時所得の10種類に分類されます。
このうち、不動産を貸すことによって得られる所得が不動産所得です。
不動産所得はあくまでも利益ですので、収入金額よりも必要経費が大きければ赤字になることもあります。
不動産所得が赤字になれば所得は発生していないことになるため、家を貸していたとしても税金は発生しません。
家を貸したときに発生する所得税等は、あくまでも不動産所得がプラスのときのみに発生するということです。
この章では、不動産所得を計算するうえで必要経費になるものについて解説します。
まず不動産所得の必要経費に関しては、明確に「何が経費になって、何が経費にならない」ということは具体的に明示されていません。
国税庁は、必要経費になるものの考え方を示しているだけであり、考え方に合致する費目であれば必要経費にしても良いということになります。
国税庁は、不動産所得で必要経費に算入できる費目に関し、以下のようなものであれば必要経費にできるという考え方を示しています。
国税庁はあくまでも考え方を示しているだけですが、不動産の賃貸経営で必要経費として認められる費目は、一般的に以下のようなものが挙げられます。
【一般的に必要経費として認められるもの】
【公租公課】
公租公課とは税金のことです。
主に固定資産税や都市計画税が費用となります。
新築の場合は、登録免許税や不動産取得税、印紙税も必要経費とすることが可能です。
一方で、同じ税金でも所得税や住民税、復興特別所得税、贈与税、相続税等は必要経費にはなりません。
【損害保険料】
建物の火災保険料や地震保険料の損害保険料は、当該年分の掛け金が必要経費となります。
例えば、5年分を一括契約して10万円の保険料を支払っているとしたら、2万円(=10万円÷5年)が当該年分の必要経費です。
【管理委託料】
管理委託形式で管理会社に管理を委託している場合、管理会社に対して支払う委託料は必要経費です。
なお、サブリース(転貸)による管理方式を選択している場合、管理委託料相当額が差し引かれた賃料が管理会社より振り込まれるため、必要経費としての管理委託料は生じません。
その代わり、管理委託料相当額が差し引かれた賃料が収入として計上されます。
【修繕費】
修繕費に関しては、クロスの張替え費用等の軽微なものが必要経費に該当します。
具体的には、金額が20万円未満の修繕費であれば必要経費です。
【入居者募集費用】
空室が発生し、次の入居者を決めるための不動産会社に支払う仲介手数料やAD(広告宣伝費)は必要経費です。
入居者募集費用や修繕費に関しては、毎年発生するわけではなく、偶発的に生じる費用となります。
入居者募集費用や修繕費は、発生した年だけ必要経費として計上するということです。
【管理費および修繕積立金】
マンションを貸す場合、所有者が毎月支払う管理費および修繕積立金は、必要経費に算入することができます。
修繕積立金は、将来行われる修繕の積立金であり、本来その年の収入金額を得るために直接要した費用ではありませんが、国税庁は例外的に費用にできることを認めています。
出典:賃貸の用に供するマンションの修繕積立金の取扱い[国税庁]
【賃貸経営に必要な通信費・交通費・新聞図書費・消耗品費等】
通信費や交通費、接待交際費、新聞図書費、消耗品費等に関しては、賃貸経営に必要なものであれば経費です。
例えば、通信費は管理会社や入居者に宛てた手紙の切手代、交通費は管理会社との打ち合わせのために要した往復の電車賃等が該当します。
新聞図書費は賃貸経営を学ぶために購入した書籍や業界紙の費用、消耗品費は管理会社や入居者に送付した手紙の紙代等です。
通信費等は、家事消費(個人的な支出のこと)と混同しやすい経費であるため、家事消費と区分するために領収書や記録を残しておくことが必要となります。
【借入金利子】
借入金(ローン)に関しては、利子は必要経費になりますが、元本部分は必要経費ではありません。
借入金は借りても収入にならず課税されないのと同様に、返しても費用にならず節税できないことが経費にならない理由です。
例えば毎月の元利込みの返済額が10万円で、そのうち利子が1万円、元本が9万円である場合、利子部分の1万円を必要経費とすることができます。
【減価償却費】
減価償却費とは、建物の取得原価を各期に費用として配分することで生じる会計上の費用のことです。
実際にその期に支出される費用ではありませんが、会計上の費用として計上することができます。
減価償却費を計上することで、その期の不動産所得は少なくなるため、所得税等を節税することができます。
収入を得ることで生じる税金(所得税や復興特別所得税、住民税)は、総合課税方式によって計算されます。
総合課税方式とは、各所得の特質に応じた計算によって得た各所得金額の合算額に累進税率をかけて税額を出す方式のことです。
累進税率とは、所得が大きくなるほど率が高くなる税率のことを指します。
不動産所得以外に給与所得がある場合には、税率は不動産所得と給与所得を合算した所得で決まるということです。
例えば、不動産所得が120万円の場合、税率が5%になるのではありません。給与所得が仮に700万円ならば、給与所得を加算して所得税が計算され、所得合計は820万円になります。
この場合、所得税の計算は23%です。(所得合算が695万円超900万円以下)
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円以上330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円以上695万円未満 | 20% | 427,500円 |
695万円以上900万円未満 | 23% | 636,000円 |
900万円以上1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上4,000万円未満 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
所得税の計算式は、以下の通りです。
所得税 = 課税標準 × 税率 - 控除額
復興特別所得税は所得税に2.1%の税率を乗じて計算されます。
住民税の税率は自治体によって若干の差異がありますが、約10%です。
なお、不動産所得が赤字になれば、その赤字を使って所得税を節税することもできます。
不動産所得の赤字を使って所得税を節税する手続きを、損益通算と呼びます。
例えば、給与所得が1,000万円、不動産所得が▲200万円である場合、その年の所得は800万円(=1,000万円-200万円)です。
給与所得者は会社側が1,000万円の給与を前提に源泉徴収していますが、確定申告することでその年の所得は800万円に確定され、源泉徴収で払い過ぎていた税金の還付を受けることができます。
不動産所得が20万円を超えると、サラリーマンであっても確定申告が必要です。
確定申告の期間は、通常、翌年の2月16日から3月15日となります。
なお、損益通算を適用する場合も、確定申告は必要です。
不動産所得が赤字となった年は、確定申告によって損益通算の手続きを行うと節税ができます。
家を貸して収入を増やす3つのコツについて解説します。
収入を増やすには、空室を発生させないことが重要です。
空室を発生させないためには、適切な家賃設定を行うことが必要となります。
高過ぎる家賃設定をしてしまうと入居者が決まらなくなりますし、低過ぎる家賃設定を行うと損をします。
確実に借主を決め、かつ、損をしないようにするには、適切な家賃設定がコツです。
仮に高すぎる家賃で借主を決めてしまうと、すぐに退去されてしまう懸念があります。
すぐに退去されると再び空室となり、貸主には新たに入居者を決めるための仲介手数料やクロスの張替え費用等の入居者の入れ替えに伴う支出が生じます。
手残りを増やすためには、入居者の入れ替えに伴う支出を抑えることが必要です。
入居者の入れ替えに伴う支出を抑えるのは、借主に長く借りてもらう必要があるため、高過ぎない家賃設定を行うことも収入を増やす効果があるのです。
実績豊富な管理会社を選ぶことも、収入を増やすコツです。
管理の実績が豊富な会社は賃貸仲介にも強いため、空室が生じるとすぐに次の入居者を決めてくれます。
収入がなくなる空室期間を、極力短くすることができます。
また、管理の実績が豊富な会社は、賃貸借契約前に行われる入居審査も適切です。
適切な入居審査が行われば、家賃の不払いのリスクも軽減されます。
築年数が古い物件は、リフォームした方が貸しやすいといえます。
そのため、リフォームを行うことも収入を増やすコツです。
ただし、無駄にリフォーム費用をかけないためにも、現状のまま実績豊富な管理会社に賃料査定を依頼し、リフォームの必要性について意見を聞くことが望ましいといえます。
ここではマンションを貸すときの収入の手残りのシミュレーションを紹介します。
【条件】
年間家賃収入:120万円(月10万円)
固定資産税および都市計画税:22万円
損害保険料:6万円
管理費および修繕積立金:30万円
減価償却費:50万円
住宅ローン:なし
不動産所得以外の所得:1,000万円
【シミュレーション】
不動産所得
= 年間家賃収入 - 必要経費
= 年間家賃収入 - (固定資産税および都市計画税+損害保険料+管理費および修繕積立金+減価償却費)
= 120万円 - (22万円+6万円+30万円+50万円)
= 120万円 - 108万円
= 12万円
[家を貸す前の税金]
所得税
= 課税標準 × 税率 - 控除額
= 1,000万円 × 33% - 153.6万円
= 176.4万円
復興特別所得税
= 所得税 × 2.1%
= 176.4万円 × 2.1%
≒ 3.7万円
住民税
= 1,000万円 × 10%
= 100万円
家を貸す前の税金
= 所得税 + 復興特別所得税 + 住民税
= 176.4万円 + 3.7万円 + 100万円
= 280.1万円
[家を貸した後の税金]
所得
= 不動産所得以外の所得 + 不動産所得
= 1,000万円 + 12万円
= 1,012万円
所得税
= 課税標準 × 税率 - 控除額
= 1,012万円 × 33% - 153.6万円
≒ 180.4万円
復興特別所得税
= 所得税 × 2.1%
= 180.4 × 2.1%
≒ 3.8万円
住民税
= 1,012万円 × 10%
= 101.2万円
家を貸した後の税金
= 所得税 + 復興特別所得税 + 住民税
= 180.4万円 + 3.8万円 + 101.2万円
= 180.4万円 + 3.8万円 + 101.2万円
= 285.4万円
家を貸して増えた税金
= 家を貸した後の税金 - 家を貸す前の税金
= 285.4万円 - 280.1万円
= 5.3万円
[手残り]
手残り
= 年間家賃収入 - (固定資産税および都市計画税+損害保険料+管理費および修繕積立金+家を貸して増えた税金※)
= 120万円 - (22万円+6万円+30万円+5.3万円)
= 120万円 - 63.3万円
= 56.7万円
※手残りの計算では、実際に支出されない減価償却費は考慮せず、代わりに支出される税金を考慮します。
以上、家を貸すときの収入について解説してきました。
家を貸すときに生じる税金は、所得税や住民税、固定資産税等がありました。
不動産所得とは、家賃収入から必要経費を差し引いた利益のことです。
必要経費には、固定資産税や建物の損害保険料等があります。
不動産所得に対する所得税や住民税は総合課税方式が採用されており、他の所得と合算した所得で決まる税率を用いて計算されます。
家を貸して収入を増やすには、「適切な家賃設定を行う」と「実績豊富な管理会社を選ぶ」、「必要に応じてリフォームを行う」ことがコツです。
3LDK等の間取りであれば平均家賃は約7万円で、年間家賃収入は約84万円となります。
家を貸すときの収入や税金を計算するにあたり、参考にして頂けると幸いです。
カテゴリ:家を貸す 関連記事
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