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公開日2024年4月8日

家の一部を貸す|賃貸併用住宅のメリット・デメリットや注意点を解説

「家を貸し出す」というと、現居を空室にして物件を貸し出すという賃貸を想像される方が多いでしょう。しかし、「今の家に住み続けたいけど、どうにか収入は増やしたい」「暮らしていく家族の人数に合わせて家を減築したときに、余った土地を収入源として活用したい」といった状況の場合は、家を賃貸併用住宅に直してから貸し出すということがあります。

今回は、「賃貸併用住宅で行う賃貸」について解説します。やメリット・デメリット、注意点についても解説しているので、ぜひご覧ください。

賃貸併用住宅とは

賃貸併用住宅とは

賃貸併用住宅とは、貸主自身が自宅に住みながら、自宅の一部を賃貸に出すことで、家賃を得ることができる建物のことです

例えば、1階を賃貸物件、2階を自宅にして1階の賃貸部分を貸し出す賃貸物件などで、こうすることによって、将来的には二世帯住宅にすることなども考えられます。

また、同じ建物内ではなく、一つの土地の中で住居部分と賃貸部分が分かれている場合も賃貸併用住宅と呼ぶことがあります。

賃貸併用住宅は基本的に一戸建てが大半になりますが、中にはマンション一棟の内1階を事務所や店舗など、他を住居として貸し出し、貸主は最上階に住居を設けるようなタイプの賃貸併用住宅もあります。

賃貸併用住宅のメリット

賃貸併用住宅のメリット

賃貸併用住宅には、いくつかのメリットがあります。代表的なものを見ていきましょう。

自宅部分の床面積が50%以上なら住宅ローンが利用可能

住宅ローンの中には、賃貸併用住宅の場合でも自宅部分の床面積の割合が建物全体の50%を超えていることで利用できるものがあります。家や土地全体を貸し出すのではなく、半分以上を自宅にしておくことで「住宅ローンを活用しやすくなる」というメリットがあります。

ローンの中でも、金利が低く、借入期間も長期に設定できる住宅ローンを使えることは、毎月の返済額を小さくし、最終的な支払金額を減らすことにつながります

家賃収入はローン返済に充当可能

建て替えを行う際の費用について、資金を住宅ローンで借り入れる場合が多くあります。

賃貸併用住宅による家賃収入があれば、自宅に住みながら家賃収入をローン返済に充当できます。上手くいけば家賃で住宅ローンを相殺できる可能性もあります。慣れ親しんだ現居で生活しながらローンによる支出を抑えられることは賃貸併用住宅のメリットといえるでしょう。

固定資産税が安くなる可能性も

住宅が建てられている土地には、住宅用地の特例が適用され、固定資産税が安くなります。しかし、このなかにも「小規模住宅用地」と「一般住宅用地」という種類があり、それぞれ課税される額が異なります。

小規模住宅用地とは、ある住宅用地(1画地)について、その中の住宅1戸につき200平方メートルまでの範囲を指します。200平方メートルを超えた範囲は一般住宅用地として扱われます。小規模住宅用地には、課税標準額が価格(評価額)の1/6になる特例措置があります。一方、一般住宅用地の特例措置は、課税標準額が価格(評価額)の1/3になる、というものです。つまり、小規模住宅用地のほうが、固定資産税が安くなります。

たとえば300平方メートルの広い土地に戸建てが1戸だけある場合。200平方メートルまでの土地は小規模住宅用地として見なされますが、残りの100平方メートルの土地は課税標準額が高めの一般住宅用地として見なされてしまいます。

そこで、300平方メートルの住宅用地内に建つ住宅を賃貸併用住宅へと建て替えたとします。すると、自宅部分と賃貸住宅部分で住宅用地内の住宅の戸数はあわせて2戸となり、住宅1戸当たりの住宅用地を200平方メートル以下に収めることができます。300平方メートルの住宅用地全体について、小規模住宅用地として住宅用地の特例が適用されることで、自宅や賃貸物件が1戸のみである場合よりも固定資産税の節税になります

ライフスタイルの変化に対応でき家賃収入も期待できる

たとえば子供が独立して部屋が余っていたり、階段を昇る(降りる)のが億劫になっていたりする場合、そこでの生活や家の管理を楽にするひとつの手段として、家の減築を行うことが考えられます。持て余すようになってしまった家を家族の人数に合わせたサイズへと建て替えることで、家の管理も楽になり、水道光熱費なども無駄なく安く済むようになります。

このとき、単に減築によってコンパクトにするという考えもありますが、不要になった空間から貸し出せるだけの空間を確保できるのであれば、家を賃貸併用住宅へと作り変えることで家賃収入の獲得を狙えるようになるのは大きなメリットと言えるでしょう

賃貸併用住宅のデメリット

賃貸併用住宅のデメリット

次に、賃貸併用住宅のデメリットについても見ていきましょう。

入居者との関係性

賃貸併用住宅では、同じ建物に他人でもある入居者が生活することになり、必然的にオーナーと入居者との距離が近くなります。

入居者からすると何かあったときにすぐ相談できる安心面でのメリットがありますし、オーナーとしても入居者について住居の使い方に問題がないか気づきやすいという面はあるため、相性次第では必ずしも悪いことではないかもしれません。

しかし、金銭授受の関係性がありながら物理的、精神的にも距離感が近いので必要以上に気遣いが必要となる場合があります

そうしたことを考えると、自分たち家族だけで暮らすこと、住宅全体を賃貸に出すことよりも、賃貸併用住宅での賃貸は気楽とは言い難くなる場合が多いと思われます。

将来売却しづらい

建物の構造にもよりますが、一棟タイプの賃貸併用住宅はもともと自宅部分としていた部分の用途が制限される、あるいはそれぞれの部分について運用の方針を検討することの煩雑さなどから、投資家からは敬遠される傾向にあり、将来的な売却が難しくなる可能性があります

これを回避するためには、建て替えやリノベーションにあたって、オーナー自身が使用する期間の使い勝手だけを考えて工事を行うのではなく、予め売却時のことも想定した間取りにするといった工夫を考える必要があります。

賃貸管理に手間がかかる

家を貸し出す場合、賃貸管理会社に委託することが一般的です。しかし賃貸併用住宅は入居者が貸主と同じ建物に住んでおり、コミュニケーションが取りやすいことから、管理会社に委託せず自主管理をする貸主もいます。

自主管理とは文字通り入居者、物件の管理を自らが行うことです。具体的にはエアコンなどが故障した際の修理手配から、退去時の敷金精算、原状回復工事の手配など大小多岐に渡ります。あくまで一例ですが、自主管理の場合はこのような賃貸管理業務を貸主が行うので対応方法を考えておく必要があります

しかし、これらの管理業務における手間は賃貸管理会社に委託することで回避できることが一般的です。後ほど詳しく説明します。

家の一部を貸すときにも気を付けたい賃貸契約の種類

家の一部を貸すときにも気を付けたい賃貸契約の種類

家を貸すときの代表的な契約方法は普通借家契約と定期借家契約があります。賃貸では相場と近しい賃料になりやすい普通借家契約が一般的です。

しかし、賃貸併用住宅として貸し出している部分を将来「二世帯住宅にする」という予定があるなら、予め解約のタイミングを決めておける「定期借家契約」を検討すると良いでしょう

普通借家契約は、貸主が借主に解約を要求することが難しい契約方法ですが、定期借家契約は、賃料が相場に対して1~2割下がる代わりに契約期限を設けることができます。状況にあった契約方法を選択しましょう。それぞれの特徴については次の通りになります。

定期借家契約 普通借家契約
契約期間 契約時に契約期間を設定 1年以上の契約期間を設定
期間の定めのない契約も可
※契約期間が1年未満の場合は、期間の定めのない契約とみなされる
契約方法 書面(または電磁的記録)でのみ可
※契約書とは別に、予め「更新がなく、期間の満了により終了する」旨の書面の交付・説明が必要
口頭でも書面でも可
契約の更新 不可
※再契約は可
貸主からの解約 期間満了をもって解約可
※期間満了の6か月から1年前までの間に解約予告が必要
正当事由がない限り不可
賃料 普通借家契約の8~9割賃貸市場の相場

普通借家契約は契約更新を前提としており、比較的長期間の入居を想定した契約方法です。そのため賃料相場と同等の家賃が期待できることがメリットですが、二世帯住宅を見据えた賃貸併用住宅の場合、普通借家契約は解約時に立退料が発生することも考えられ解約リスクがあります。

一方、定期借家契約は契約更新のない一時的な賃貸をする際に適した契約方法です。予め契約期間を決めておき契約満了時に貸主から解約ができることがメリットです。二世帯住宅を考えるなら、契約満了でスムーズに契約を終了できます。

ただし、定期借家契約は普通借家契約よりも入居者が集まりにくいため、賃料が相場よりも1~2割安くなる傾向があり、賃料では普通借家契約に比べデメリットがあります。

家の一部を貸し、一定のタイミングで二世帯住宅に切替える場合は解約リスクがない定期借家契約がおすすめですが、将来の状況により異なるため収入とのバランスで決めましょう。定期借家契約の詳しい記事はこちらも確認ください。

なお、定期借家契約書の雛形については、国土交通省のサイトに雛形が用意されています。

参考:定期借家契約書雛形(国土交通省)

賃貸併用住宅に関する注意点

賃貸併用住宅に関する注意点

賃貸併用住宅ではどのような注意点があるか、こちらでご案内いたします。

自主管理ではなく賃貸管理サービスを利用する

通常の賃貸の場合、物件管理を賃貸管理会社に委託をすることが一般的ですが、家の一部を貸し出す場合は借主との距離も近いことから、貸主自らが物件を管理する自主管理を選ぶ場合も多いです。

しかし、退去時の敷金の精算、原状回復工事の費用負担の按分交渉など、専門的な知識が求められ、難しいことも多いので注意すべきです。特に最初は無理せず、賃貸管理サービスを活用した方が良いと考えられます。賃貸管理サービスを利用する中で、賃貸について分かることも多くなり、将来自主管理をする際にも役立つでしょう

なお、賃貸管理会社を委託する場合は、1社ではなく複数の賃貸管理会社への問合せをおすすめします。周辺の賃料相場からいくらで貸し出せそうか、貸し出す際に発生する費用、管理手数料と業務範囲、疑問などを各社に聞き、一番頼れそうな管理会社に依頼しましょう。

住居部分は住宅ローン基準の範囲か

住宅ローンを使って建て替えをする際、自宅部分が50%未満だと住宅ローンを受けることが難しくなるので注意が必要です。

複数戸の賃貸部分を用意するような場合、住宅部分が占める割合を50%以上にするということは、例えば自宅部分1戸と賃貸部分2戸の計3戸に分けるとき、それぞれの広さを「1:1:1」のような3等分にはできません。「2:1:1」のように床面積の割合が制限されることに伴い、敷地内の住戸の配置も制限されます。自宅部分が50%以上であることを保つことで住宅ローンの適用範囲になるため、50%以下にならないように注意しましょう

また、詳細は後述しますが、住宅ローン適用に拘るあまり、賃貸部分の居住性が悪くなっていないか注意を払う必要があります。

賃貸部分は住宅ローン控除の適用外

賃貸併用住宅の注意点として人に貸している間の賃貸部分は住宅ローン控除の対象外であり、賃貸部分であっても人に貸していなければ控除の対象になります。つまり人に貸しているかどうかで住宅ローン控除の対象か否かが決まります

住宅ローン控除の計算方法は自宅部分と賃貸部分の床面積にローンを按分して計算します。

仮に年末のローン残高が5,000万円で、自宅面積が55%としたら、2,750万円が住宅ローン控除の適用範囲になります。

自宅の一部を貸す際の確定申告について

自宅の一部を貸す際の確定申告について

賃貸併用住宅の家賃収入も不動産所得になります。不動産所得が年間20万円以上ある場合は確定申告が必要になります

1月1日から12月31日までの1年間分の所得について、翌年2月16日から3月15日までに税務署に必要書類を提出の上、所得税額を納付します。

所得とは、家賃収入から経費を引いたものになり必要経費は以下のようなものがあります

  • 固定資産税
  • 減価償却費
  • 損害保険料(火災保険、地震保険など)
  • リフォーム費用やハウスクリーニング費用、修繕費
  • 賃貸管理会社へ支払う手数料
  • ローンの利子
  • 交通費、通信料、消耗品費、交際費など賃貸経営のためにかかった費用

ただし、固定資産税や損害保険料など家屋全体にかかっているものは、自宅と賃貸部分を案分します。按分するときの計算方法は下記の通りになります。

賃貸部分の経費:賃貸部分の比率×全体の経費

※賃貸部分の比率は、家屋全体の面積÷賃貸部分の面積

賃貸併用住宅で後悔しないために

賃貸併用住宅で後悔しないために

ここでは賃貸併用住宅で後悔しないため、入居者を募集する前に確認しておくと良い項目をご案内します。

住宅ローンにこだわるとかえって収益性が悪くなることも

5-2. 住居部分が住宅ローン基準の範囲か」でお伝えした詳細についてご案内します。

賃貸部分が狭く居住性が悪いと、募集しても集まりにくくなり賃料を下げる必要が出てくるかもしれません。そうなった場合、住宅ローンが適用できても、収益性が悪化するリスクに繋がる可能性があります。

このことから、住宅ローンの恩恵を受けられても、賃貸部分が生活しにくい設計だと家賃収入とのバランスが悪く収支に影響が出ることも考えられます。

後悔しないためには、賃貸部分を広くしその分の賃料で収益性を高めることを優先するか、自宅を50%以上にして住宅ローンを利用したほうが良いか金利などを確認し、どちらがより良さそうか検討することが必要です

また居住性とは部屋の広さ以外にも、生活導線を分かれており借主と貸主のプライバシーが確保できているか、遮音性があるかなども挙げられます。

できない事があれば、プロの力を借りる

最後になりますが、賃貸経営は多岐に渡ります。入居して終わりではなく、入居中、入居後も入居者・物件の管理は続きます。

契約の締結や退去時の敷金の精算などは、初めて個人で行う賃貸であれば難しいでしょう。

また、リノベーションが必要であっても余計な箇所まで工事をして無駄な費用を掛ける必要はありません。どの程度のリノベーションであれば無理なく費用が回収できるか、プロである賃貸管理会社に相談することで、家賃収入の相場からリノベーションを行うべき範囲や掛けるべき費用の提案を受けられるでしょう。賃貸運営のシミュレーションも自分で考えようと思うと難しく、賃貸管理会社に頼る方が安心です。

賃貸管理会社は「どこも同じ」ではありません。経験豊富で規模の大きな管理会社であれば、不動産ネットワークが広いこと、大手の法人取引先があればその法人での転勤者に働きかけられるなど、入居者の質にも期待できます。賃貸併用住宅で後悔しない方法は、無理に自主管理せず、しっかりした賃貸管理会社に委託することです

まとめ

今回は家の一部を貸し出すことについて、賃貸併用住宅で賃貸経営をすることについてメリット・デメリットや注意すべき契約方法を解説しました。

一般的な賃貸と異なり賃料を得ながら自宅に住むことができ、住宅ローンの返済に回せるメリットがあります。デメリットはプライバシーの確保に注意することです。

二世帯住宅の切替えをするまで一時的に家の一部を賃貸併用住宅として貸し出すときには、更新前提の普通借家契約ではなく、賃料が多少目減りしても定期借家契約にすることで、賃料の期待は普通借家契約の場合に比べて下がりますが、代わりに解約できなくなるというリスクは回避でき、部屋を明け渡して貰えやすくなります。相場に近しい家賃収入と解約のしやすさのバランスもあるので将来なども考えて決めていきましょう。

また、注意点としては住宅ローンを利用する際は、自宅部分を床面積の50%以上にしなければ適用されません。賃貸部分を広くして、より賃料を得たい場合は事業者ローンになり金利が上がります。金利が上がることによる支出の増を家賃の増でカバーできるかどうか、前もって試算しておくと良いでしょう

賃貸併用住宅は入居者との物理的な距離が近いため、賃貸管理を自主管理でできそうだと考える人もいますが、賃貸管理の業務内容は多岐に渡り、円滑な運用には豊富な経験を要します。特に最初の賃貸では、賃貸管理会社に委託した方が手間やストレスも小さく済んで安心です。

まずは賃貸部分がいくらで貸し出せそうか、賃料査定を行い、賃貸管理会社に管理手数料や委託できる範囲、疑問などを諸々相談すれば、賃貸のことが少しずつ分かってきます。

賃料査定は無料です。複数の管理会社に査定を依頼してみることから始めてみましょう。

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