賃貸借契約の1つである「定期借家契約」。国土交通省の「令和4年度住宅市場動向調査報告書」によると賃貸市場において占める割合は約2%と多くはありませんが、転勤期間中の自宅や空き家となっている実家など、空いている家を一時的に活用したいと考えている方におすすめの契約方法です。
この記事では「定期借家契約」の特徴やメリット、利用における注意点などを解説します。空いてしまっている家を活用したいと考えている方は、ぜひご一読ください。
定期借家契約とは、借地借家法で定められた賃貸借契約方法の1つです。2000年に施行された定期借家制度にもとづいた契約で、転勤中の自宅の賃貸や建て替え中の仮住まいなど、賃貸期間を限定して貸し出したい場合に用いられます。
定期借家契約の大きな特徴は、契約時に定めた賃貸期間満了をもって、契約を終了できることです。入居者が契約の継続を望んだ場合でも契約の更新はできないため、新たに契約を結ばない限り、退去しなくてはなりません。
賃貸契約の期間満了で契約は解除されますが、貸主と借主が互いに賃貸を継続したい場合には、解約を経て再契約が可能です。契約期間や賃料などの条件については改めて交渉を行い、双方合意の新しい条件で契約を結び直します。
定期借家契約は、契約時に賃貸期間を任意に定めることができるため、計画的な賃貸運営が可能です。しかし、賃貸可能な期間が短すぎる場合には入居者募集の難易度が跳ね上がります。短期間の賃貸需要も一部には存在しますが、短くとも2年程度は期間を設けることが一般的です。
あらかじめ契約に期限が設定される点において借り手から敬遠されることが多いため、このような条件のない普通借家契約の物件よりも、家賃を低めに設定して入居者を募集することが一般的です。
定期借家契約も普通借家契約も「借地借家法」によって定められている賃貸借契約です。大きく異なるのは、契約期間と解約におけるルールです。
定期借家契約 | 普通借家契約 | |
---|---|---|
契約期間 | 契約時に契約期間を設定 |
1年以上の契約期間を設定 期間の定めのない契約も可 ※契約期間が1年未満の場合は、期間の定めのない契約とみなされる |
契約方法 |
書面(または電磁的記録)でのみ可 ※契約書とは別に、予め「更新がなく、期間の満了により終了する」旨の書面の交付・説明が必要 |
口頭でも書面でも可 |
契約の更新 |
不可 ※再契約は可 |
可 |
貸主からの解約 |
期間満了をもって解約可 ※期間満了の6か月から1年前までの間に解約予告が必要 |
正当事由がない限り不可 |
賃料 | 普通借家契約の8~9割 | 賃貸市場の相場 |
普通借家契約について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
定期借家契約と一時使用賃貸借契約は、どちらも期間を限定して賃貸したい場合に用いられる契約方法です。ただし、一時使用賃貸借契約はその名前の通り、用途が一時使用目的に限定されている点で定期借家契約とは異なります。このほかには、解約時の予告期間の設けられ方も両契約では大きく異なっています。
定期借家契約 | 一時使用賃貸借契約 | |
---|---|---|
借地借家法の適用 | あり | なし |
契約期間 | 契約時に契約期間を設定 | 一時使用の目的を果たすまでの期間 |
貸主からの解約 |
期間満了をもって解約可 ※事前の解約予告が必要 |
一時使用の目的を果たすことにより解約可 ※事前の解約予告が必要 |
解約予告期間 | 期間満了の6か月から1年前までの間 | 解約日の3か月前まで |
利用目的に関する条件 | なし | 一時使用目的であること |
一時使用賃貸借契約について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
定期借家契約で家を貸すメリットは次の通りです。
定期借家契約は契約時に賃貸期間を定めます。期間満了後は貸主借主双方の合意がなければ、再契約できません。定期借家契約を用いれば、転勤中の自宅や将来住む予定のある実家など、一時的に空いてしまう家を活用することができます。
定期借家契約は数か月単位での契約締結が可能です。
一般的な賃貸借契約である普通借家契約では、契約期間1年未満の契約は期間の定めのない契約とみなされてしまいますので、1年未満の賃貸借契約を締結したい場合は定期借家契約を選びましょう。
賃貸市場で一般的に用いられている普通借家契約の場合、入居者が契約更新を希望すれば、貸主に正当事由がない限り契約は更新されます。
しかし、定期借家契約の場合は契約時に定めた契約期間の満了をもって契約を終了することができます。仮に入居者が家賃滞納やトラブルを起こした場合でも、契約期間満了をもって契約を終了することができ、家を返してもらえないといったリスクを減らすことができます。
定期借家契約は契約時に賃貸期間を定める契約です。契約の内容にもよりますが、建て替えやリフォームなど契約期間が数か月の場合は、家賃を一括前払いで受け取れる場合があります。
また、あらかじめ契約期間を定めることで、収入の見通しを立てやすくなります。
定期借家契約で家を貸すときの注意点は次の通りです。
賃貸期間が決まっている定期借家契約は、長く住みたいと考える入居希望者から敬遠されます。そのため、一般的な賃貸物件よりも借主を見つけづらくなります。
前述した理由により定期借家契約は入居希望者から敬遠されがちです。契約条件による借り手の見つけづらさを補うために、普通借家契約の物件よりも家賃を低めに設定して入居希望者を募ることが一般的です。
定期借家契約を締結する際は、書面によって契約締結を行うことが義務付けられています。
また、「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書等とは別に、予め書面を交付して説明しなければなりません。
これらを怠った場合は定期借家契約と認められず、期間の定めのない普通建物賃貸借契約として扱われます。
契約時にあらかじめ期間を定める定期借家契約ですが、契約期間が1年以上の場合、契約期間満了の1年から6か月前までの間に解約予告が必要です。
万が一、予告期間内に解約予告を怠った場合は、改めて解約予告を行った日から6か月後に解約することができます。
定期借家契約で家を借りるのは、どのような人なのでしょうか。定期借家契約で家を借りる理由には次のようなものが挙げられます。
建て替えや大規模なリフォームを行う場合、自宅から荷物を搬出し、一時的に自宅以外で仮住まい生活しなければなりません。
リフォームの場合は数か月~半年、建て替えの場合は4か月~1年半程度の仮住まい期間が必要になります。特に建て替えの場合は、家具も含めてすべての荷物を搬出しなければならないため、一戸建てなどある程度収納力のある家が好まれる傾向にあります。
住んでいる家を売却して新しく購入した家に住み替えようとした場合、新しい家の入居日より早く、住んでいた家を引き渡さなければならないことがあります。この時、住んでいた家の引渡日から新居の入居日までの仮住まいが必要になります。
建て替え同様にすべての荷物を搬出しなければならないため、戸建てやファミリー物件などの需要が高まります。
あらかじめ転勤期間が確定している場合に、転勤期間に合わせて定期借家契約で物件を借りることが考えられます。ただし、雇用主である会社名義で契約を締結する法人契約の場合は、会社の規定により「普通借家契約での契約」と定められている場合もあります。
定期借家契約は一般的な普通借家契約の賃貸物件よりも家賃が低く設定されていることが多いため、引っ越しに抵抗がない場合やいろいろな場所で暮らしてみたい場合には、毎月の家賃や初期費用を抑えるために選ばれることがあります。
本記事では、定期借家契約の特徴や、定期借家契約を利用する上でのメリット、注意点などを紹介しました。
定期借家契約は契約時に定めた賃貸期間満了をもって、契約を終了できる点が大きな特徴です。契約の更新はできませんが、貸主借主双方の合意があれば、再契約できます。
おもに転勤時の自宅の賃貸で用いられるなど、目的によって用途が限定される一時使用賃貸借契約と異なり、どのような理由でも賃貸できます。
貸主によって賃貸期間を自由に定められるメリットがある一方で、その分借主に不利な契約となるため、割安な家賃でなければ入居希望者を見つけづらいというデメリットもあります。また、契約時には書面の交付と説明が必要な点や、解約予告が必要な点にも注意が必要です。
定期借家契約は、建て替えやリフォームによる仮住まいや毎月の家賃を抑えたい入居者に利用されています。一般的には利用されることの少ない定期借家契約ですが、一定の需要は存在しています。
一時的に空いている家を活用したいと考えている場合は、定期借家契約での賃貸を検討してみるとよいでしょう。
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