リロの留守宅管理 > リロケーション基礎知識 > 家を貸す > 家賃収入のために家を貸すのは副業になる?税金や家を貸す際に必要なものも解説
公開日2023年5月8日

家賃収入のために家を貸すのは副業になる?税金や家を貸す際に必要なものも解説

会社員や自営業などのであったり本業がありながら、家を貸すことは副業になるのでしょうか?転勤など、やむを得ない事情で家を貸して家賃収入を得ることも副業になるか気にされる方も多いかと思います。

そこで当コラムでは、家を貸して家賃収入を得ることは副業になるか、ならないかを解説していきます。

家賃収入は副業にならない?

家賃収入は副業にならない?

会社では、自社の従業員がその会社以外で働いて収入を得ることについて、一定の制限を設けていることが多いです。しかし、家を貸すこと、いわゆる不動産投資で家賃収入を得ることは、副業にはならないことがほとんどです

就業規則や労働契約などにおいて二重就労として禁止されている場合は、会社から何らかの処分を受ける可能性がありますが、 一般的には家を貸して家賃収入を得る行為は副業とみなされないことが多いです。理由として、個人としておこなう賃貸は、一般的な他の副業とは異なり、各社の規約や契約に記載されている二重就労の条件に当てはまりづらいということが言えます。

二重就労を禁止や制限するための規則には、「他の職務」「他の事業」「他社での雇用・就業」などを対象とするものが考えられますが、個人で賃貸をしている限り「他社での雇用や職務」には該当しないでしょう。「事業」に当たるかに関しては明確な線引きが難しいものの、事業らしさには継続性や営利性が求められるなかで、賃貸においても一定の規模がないと事業とは認めづらいので、禁じられないことが一般的です。

もし会社が、家を貸して賃料を得る行為まで禁止しようと思った場合、禁止の対象に「社外で収入を得ること」「賃貸をおこなうこと」「投資・資産運用をおこなうこと」などが含まれますが、次のような理由からも稀であると考えられます。

・本業への悪影響が少ない

公務員を除き、副業をすること自体に法的な問題はないなかで、あえて企業が就業規則や労働契約の中に二重就労を制限する事項を盛り込むのは、従業員が副業することで発生し得る会社のリスクを軽減したいからです。

会社が恐れているリスクとして最もわかりやすいものが、副業による仕事のパフォーマンス低下など、業務への支障を与えるリスクです。副業には、長時間の拘束や高度な集中を要するものも考えられます。副業の業務量次第では、過度の疲労による生産性の低下、事故、体調不良を誘発する恐れがあります。

一方で、家を貸して収入を得る場合、賃貸運用に必要な業務は賃貸管理会社に任せることが一般的です。その場合に必要とされる手間や時間は限られ、本業に支障を与えるような大きな負担とはなりづらいことから、こうした資産運用にまでおよぶ規制は設けづらいと言えます。

逆に言えば、賃貸であっても、複数室・複数棟などの大規模なことや、自主管理をおこなうなどして、負荷が大きい取り組みとなっている場合には、事業として認められて禁止される場合もあるということです。

・情報漏洩のリスクが低い

副業によっては、本業で得ている機密情報を副業先やそこを介した誰かに漏洩させてしまうリスクが存在します。各仕事の関係性によってはリスクの大きさが変わるものの、個人で家を貸す限りにおいては、他社に就業することもなく、新たに接する人も限られ、情報の転用も想定し難いことから、リスクはかなり限定的です。

・従業員にとって規制のデメリットが大きい

就業規則や労働契約の条件を厳しくすることは、リスクへの対策として行われる場合が多いですが、これらは採用や勤続といった人材運用に対するリスクを高めることにもつながります。

副業による収入を認めることで、自社が与える給与に対する従業員の依存度が下がり、人材流出のリスクを高めることも考えられますが、一定範囲の副収入を認められていることが、従業員がその会社に留まる理由ともなり得ます。

そのため、本業への悪影響やリスクが小さいと見られる範囲で家賃収入を得るための行為は、規制されないケースが多いです。

家を貸すことが事業的規模とみなされる基準

就業中の賃貸について、事業とみなされて規制される賃貸は例外的です。

前述の通り、事業的かどうかに明確な線引きはなく、個別のケースにより判断されます。そのため、会社に確認をとってからおこなうことがもっとも確実ですが、賃貸が事業的かどうかは会社が副業として認めるかだけでなく、所得税の計算上の取り扱いに関する基準が存在しているため、これを参考とされることが考えられます。

次のような場合には、原則として事業として取り扱われます。

  • 戸建てやアパート物件の独立家屋の所有数が5棟以上
  • 区分マンションなど独立的に区画された物件数が10棟以上

副業か確認せずに家を貸すリスク

前述したように、家を貸すことが副業として認められることは少ないですが、実際に副業になるかどうかは、就業規則を確認することや会社に確認してみることが確実な手段です。確認せずにおこなって、もし規則や契約に抵触していた場合、住民税の通知によって会社に知られることとなります。後から発覚した場合には、規則通りに罰則が科されるだけでなく、信用へ与えるリスクもあることでしょう。

住民税の通知

多くの会社員の方は、毎月の給与から住民税が自動的に天引きされ、会社経由で住民税を納税する特別徴収によって支払っていることでしょう。特別徴収を選択すると、毎年6月に会社へ住民税の特別徴収税額決定通知書が送付されます。この通知書には、総所得金額のほか住民税額の計算根拠となる所得の有無についても記載があり、家賃収入があると不動産所得が発生するため、家賃収入がある事が発覚します。また、住民税は前年の1~12月の所得に応じて決定しますが、家賃収入が発生すると所得が増えるため、これも副業が発覚する原因になります。

なお、給与支払いを受けている場合は、特別徴収の方法による納税が定められており、副業を知られたくないからといって、普通徴収への変更をおこなうことはできません。

家を貸すために必要なこと

家を貸すために必要なこと

個人で行われる賃貸が副業として扱われることは稀であるため、多くの従業員は家を貸すことができます。では家を貸せるとして、まずは何を知り、何をすべきかでしょうか。

家を貸すために最初にやること

家を貸すために最初にすべきことは「家をいくらで貸せるか」を知ることです。事業として行わないとしても、赤字になりづらいことなど、やはり収支は重要でしょう。まずは不動産会社に査定を依頼します。査定は「机上査定」と「訪問査定」の2種類があり、訪問査定の場合は間取り図などの書類も必要です。

机上査定(簡易査定)

机上査定は簡易査定ともいわれ、現地調査をせずにデータをもとに想定賃料を算出する方法です。住所、間取りや面積、築年数などの物件情報から、類似物件の取引相場や市場動向などをもとに算出します。短時間で査定額を算出できるのが特徴です。

訪問査定(詳細査定)

不動産会社が物件に訪問しておこなうのが訪問査定です。物件の状態を確認し、設備や周辺環境などの条件やオーナーからの聴取も踏まえて想定賃料を算出します

訪問査定では、物件の状態や周辺環境、一戸建てでは土地の形状、隣地との境界など、データでは見えない部分を確認し、実際の相場に近い想定賃料を知ることができます。

実際に利用できるサービスの案内や、実際の募集に向けたアドバイスや質疑応答が含まれることが一般的であり、それらも含めた訪問査定にかかる時間の目安は60~90分くらいです。

尚、訪問査定では建物の図面が必要になります。

訪問査定後の流れ

訪問査定後の流れは、次の通りです。

  1. サービス申込
  2. 募集条件設定
  3. 入居者募集開始
  4. 入居者と契約締結
  5. 入居前物件の状態をチェック
  6. 鍵を渡し入居開始

賃料査定は無料で利用できます。その後の訪問査定も無料です。家を貸したいと考えたら、まずは査定を行い、期待できる賃料を知ることからはじめましょう。

家を貸すために必要な準備

家を貸す前に貸主がおこなうこととして「ハウスクリーニング」があります。

ハウスクリーニングは入居者が決まる前に実施します。入居者は家賃を払って家に住むので、多くの場合はできるだけ綺麗な家を借りたいと考えるでしょう。入居希望者の内見前におこなうことで、入居申し込みの可能性を高めることができます。ハウスクリーニングは自分でおこなうのではなく、業者に依頼することがほとんどです

ハウスクリーニングの内容には、次のようなものが挙げられます。

  • エアコン洗浄
  • 壁紙の張替え
  • キッチンや浴室など水回りの汚れ落とし(カビやぬめりの除去)
  • レンジフードの油汚れの除去
  • トイレ清掃

業者に任せることで、ただ楽になるだけではなく、通常の清掃では落ちにくい汚れも除去してもらえます。

不動産会社の種類について

不動産会社の種類について

家を貸そうとしたときに査定などの相談を持ち掛ける不動産会社には、大まかに2種類の系統があります。様々な会社があるため明確な区分があるわけではありませんが、おおよその違いは次の通りです。

仲介会社

仲介会社では、入居者の募集から、入居希望者の審査、賃貸借契約の締結までを行います。契約後の入居中の賃貸管理業務は、オーナー自身でおこなう自主管理となるため、サービスの範囲が限定されて手数料は安く済みます。事業的に賃貸をおこない、利益をより大きくしたい場合、仲介のみを依頼するのがいいでしょう

賃貸管理会社

賃貸管理会社は仲介業務に加えて、入居中の管理、解約手続きまで、賃貸に関するほぼ全工程を一連のサービスとして提供します。本業以外で家を貸す場合は特に、手間や時間がかからない賃貸管理会社のサービスが利用されます。

賃貸管理会社の選び方のポイントについて

賃貸管理会社の選び方のポイントについて

賃貸管理会社を利用すれば賃貸運営の手間を減らすことができますが、代わりに賃貸管理手数料が発生します。賃貸管理の管理手数料は、提供されるサービスの内容や質によって大きく変わります。金額だけで判断せず、下記のポイントもチェックしましょう。

  • 業務範囲が管理手数料に見合う
  • 賃貸管理の実績・情報が豊富
  • 提供業務の幅に不足がないか
  • 集客力、入居率に期待できるか

選んだ賃貸管理会社に査定を依頼し、査定とあわせて担当者に話を聞いてみると違いが見えてきます。より詳しい選び方は、関連記事をご確認ください。

賃料査定は「一括査定サイト」での申し込み、または「賃貸管理会社」へ直接依頼します。

一括査定サイトは、一度にまとめて複数社に査定依頼ができて便利です。ただし、どういう会社か確認せずに申し込めば、それだけ不要な連絡も届いてしまうため注意がいります。自動で表示された会社が小規模な会社などに偏ることも考えられるので、申し込み先に特に話を聞きたい会社が含まれているか確認することをおすすめします。

自身で調べた賃貸管理会社に、直接査定を依頼することも可能です。どういう会社があるか一社ごとに調べる手間はかかりますが、関心を持った会社と確実にやりとりできます。

家を貸すときに支払う税金

家を貸すときに支払う税金

家を貸す際の収支に関して、税金の変化が気になる方も多いかと思います。

固定資産税・都市計画税

固定資産税は、1月1日時点で所有している土地や建物などの固定資産に対して課税される税金のことです。新たに物件を相続したり、賃貸用に購入したりすれば、その分の固定資産税がかかります。

都市計画税は都市計画法による都市計画区域のうち、市街化区域内に不動産を持つと課されます。市街化区域かどうかは、自治体窓口や不動産業者にて確認できます。

また、毎年4~6月に、固定資産税と都市計画税の税額が記載された納税通知書が届きます。支払いについては年4回に分納する方法と一括で支払う2通りの支払いパターンがありますが、一括にしても安くはなりません。

支払い方法は、コンビニ支払いやクレジットカードのほか、PayPay、LINEPayなどのキャッシュレス決済があります。地域によって扱いが異なるため、注意が必要です。

固定資産税は市町村税です。不動産が所在する市町村のホームページをご確認ください。ただし、東京都23区内においては、特例で都が課税をすることになっていますので、ご注意ください。

東京都23区

都税:固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 都税Q&A | 東京都主税局

大阪市

大阪市:固定資産税・都市計画税の概要(償却資産の申告、縦覧制度、納付方法・納期限)

名古屋市

名古屋市:固定資産税・都市計画税(暮らしの情報)

所得税

所得税とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間のすべての所得から所得控除によって差し引いた金額に、一定の税率を適用して算出される税金のことです。家を貸して家賃収入が発生した場合は「不動産所得」となり、所得額に応じた所得税を納税します。

なお、2037年までは復興特別所得税額(基準所得税額に2.1%を乗じた金額)が加算されます。

不動産所得の計算方法は、関連記事をご確認ください。

家を貸す際のよくある質問

家を貸す際のよくある質問

古い家でも貸せる?

築年数が長い家について、寝かしておくにはもったいないと考えていても、本当に資産として運用できるのかが分からないまま躊躇している人も多いと思います。一般的には新しいほど借り手がつきやすく、古くなるほど借り手が見つかりにくいため、貸し出しづらいと言えるでしょう。しかし、貸し出しやすさを決めるのは、築年数だけではありません。まずは、賃料をいくらに設定するかが重要です。「いくらならば借り手がつきそう」という金額がないとも限りませんので、まずは査定を試してみましょう。また、そのままでは貸し出せずとも、リフォームの内容次第では初期費用を賃料で取り戻せる算段が立つかもしれません。

古い家での賃貸を検討する場合は、どれくらい手を加えたらいくらで貸し出せそうかということも含めて賃貸管理会社への相談や検討を行ってみましょう。

住宅ローン返済中の物件でも家を貸せる?

原則として、住宅ローン返済中の家を金融機関の承諾なしに貸すことはできません

通常、居住用の住宅を賃貸用とするには借り換えなどが必要です。住宅ローンの用途は、自己居住用の土地や家の購入に制限されており、ローン返済中の家を貸し出すことは、銀行との契約に違反してしまいます。

ただし、転勤のような場合には、事情を鑑みて家を貸すことが認められることもあります。転勤期間中の間、家を貸すことはリロケーションとよばれ、契約方法も一般的なものとは異なり、貸主の転勤期間中を賃貸期間として定める「一時使用賃貸借契約」を用います。

リロケーションの場合も、状況によって可否が異なります。確認をしてから賃貸を始めましょう。金融機関への相談なしに住宅ローンのままで賃貸を行った場合、残債の一括返済を求められる場合もあります。

入居中に発生した室内の損傷などはどうする?

家を貸すことで、室内が傷つくことを懸念する場合もあるでしょう。損傷が発生することも、損傷を元通りに復元できないことも、賃貸で発生し得るリスクとして理解しておく必要があります。

ただし、損傷のうち、入居者の故意や過失によってついてしまった傷は、退去時に入居者へ原状回復費用を請求することができます

そのため、多くの賃貸管理会社は入居前の状態を記録しておきます。入居後の損傷範囲を確認できるようにして、解約時の請求が適切であると主張できるように準備しているのです。

得られた原状回復費用は、修理や次の貸し出しの準備に充てることができます。

まとめ

家を貸すことがどういう場合に副業になるかとあわせて、実際に貸す場合の知っておきたいことについて解説しました。

家賃収入を得るために家を貸すことは、副業にあたらないことがほとんどです。ただし、5室以上の部屋を貸し出すなど、場合によっては副業とされることがあります。また、所得が増えると、住民税額通知書に記載の所得金額や項目が増えることで、会社が副業と認知する場合もあります。いずれにしても、会社の規則や契約を見返すこと、あるいは会社に相談することが必要でしょう。

家を貸せるか考えるときには、賃料査定を受けて収支を知ることから始めましょう。賃料を踏まえて家を貸し出せそうかを確認したうえで、入居者募集の条件設定など、必要な手順を進めていきます。

不動産会社には、入居者募集や賃貸借契約の締結といった仲介業務を中心におこなう仲介会社と呼ばれる会社もありますが、小さな手間で家を貸したいときには、入居期間中の賃貸管理も頼める賃貸管理会社に相談を持ち掛けることが良いでしょう。賃貸管理会社を選ぶ際には、サービスの内容や質が管理手数料の額が見合っているかどうかを確認します。

家を貸すための費用には税金があります。新たに物件を得た場合にはその分の固定資産税がかかり、賃貸で得た所得には所得税がかかります。

築古物件でも貸し出せる場合はありますが、その場合にはリフォームなどでどれほどの手をかければ、どれくらいの賃料になり得るかを調べる必要があります。この場合も賃貸管理会社に相談することをおすすめします。住宅ローン返済中の物件で賃貸をする場合には、金融機関への相談が必要です。賃貸中に物件が負った損傷は、貸し出す直前の状態を記録しておくことで、そのうちの一部について原状回復費という形で請求できます。

家を貸そうと考えている場合は、まず会社の規定や自身との契約を確認しましょう。家を貸すことは就業規則等で規制されないことが多く、相続した家など空いている家がある場合には、大きな手間をかけずに副収入を得られるかもしれません。まずは賃料査定を行い、可能性を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。

記事検索