これまで住んでいた自宅から引っ越すことになり、自宅を賃貸として活用する検討をした場合に、まず気になるのが「家賃」です。「賃貸経営なんてしたことがなく、家の査定なんて初めて」という方もいるでしょう。
この記事では、家の査定を依頼するときに一般的にどんなところが見られているのか、査定に必要な事前準備や注意点について解説します。
賃貸市場では、需要と供給のバランスによって家賃が変動します。通常家賃は、入居者が物件に対していくらなら払ってもいいと思えるか、という金額に近いものとなります。入居者が物件を選ぶ際に見るポイントが、査定においても重要なポイントです。家の査定で見られるポイントは、一般的に次の5つになります。
1つずつ確認していきましょう。
一般的に、年数が経過するほど、建物の資産価値は減少します。たとえ外観は綺麗でも、建物の躯体などは劣化していくと考えられ、税法によって建物の価値が1円となるまでの耐用年数が定められています。これを「法定耐用年数」といい、構造によってその年数は大きく異なります。実際の建物の寿命とは異なるので、法定耐用年数を過ぎた建物が使用できないわけではありません。
賃貸住宅(事業用建物)の法定耐用年数は以下の通りです。
区分 | 耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
木骨モルタル | 20年 |
(鉄骨)鉄筋コンクリート | 47年 |
金属造①(軽量鉄骨造のうち骨格材肉厚3mm以下) | 19年 |
金属造②(軽量鉄骨造のうち骨格材肉厚3mm超4mm以下) | 27年 |
金属造③(軽量鉄骨造のうち骨格材肉厚4mm超) | 34年 |
家の間取りは居住スペースの快適さを大きく左右するため、入居者が重視するポイントです。内装、外装が綺麗か、お風呂・洗面などの水回りは使いやすいか、各部屋への動線はどうか、収納は充分かなどが見られます。そのため、査定にも影響を及ぼします。
間取り | 建物 |
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日当たりや風通しは重要なポイントですが、地図や間取り図などの書類からはわかりづらく、家に訪問して実際に見てみなければ査定に反映することは難しいでしょう。中でも、リビングや居室は重視されるポイントです。一般的には昼間に日光が多く差し込む南向きが好まれ、逆に日が入らない北向きは敬遠されがちです。
物件の立地や利便性も査定に大きく影響します。駅からの距離や徒歩分数は、物件を探す際の絞り込み条件となっていることが多く、駅から近いほど賃料が高くなる傾向です。学校やスーパーなど、生活に欠かせない施設も影響を及ぼします。
家そのものに問題がない場合でも、周辺環境によって資産価値が下がってしまうこともあります。
たとえば、以下のような例があります。
これらは、持ち家を購入する場合でも気になるポイントでしょう。査定のポイントは自分が選ぶ立場であったらどうか、という視点も入れて考えてみてください。
家の査定を依頼する際は、不動産会社と何度もやり取りを繰り返さず、スムーズに進めたいものです。ここでは、査定の事前準備として用意しておくもの、確認しておくことをご案内します。
持ち家の賃料査定の前に準備しておく書類は、次の通りです。対応する不動産会社や求める査定の精度によっても異なる場合があります。
築年数の経っている家の場合は、これまでの修繕履歴をまとめておくとよいでしょう。シロアリ対策や外壁塗装、耐震性能の強化などの維持保全は建物の価値を維持、場合によっては建物の寿命を延ばすものです。さらに、リフォーム・リノベーションによって、建物の価値が上昇するような場合もあるでしょう。これらは査定額への影響だけでなく、入居者に対してのアピールポイントとして「2022年リフォーム済み」などと広告掲載することができます。
次に、持ち家の査定をする際に注意することをご案内します。不動産会社の選定をする際のポイントとなりますので、詳しく解説していきます。
査定を行う際は1社のみでなく、複数社に依頼しましょう。査定を行う際は、過去の成約実績や現在募集中の物件などのデータから類似物件を抽出し、類似物件の賃料をベースとして査定対象となる持ち家に合わせて調整を行っていきます。設備や周辺環境の違いによって、どの程度査定額の調整を行うかは、担当者や会社の経験によって異なります。また、ファミリー向けの物件や店舗付き物件など、市場全体において割合が少ないタイプの物件の場合は、取り扱い実績が豊富な不動産会社に依頼しましょう。
他社と比較して高額な査定額を提示する不動産会社には、注意が必要です。査定額は、過去の成約実績とその時点での賃貸市場での類似物件をもとに算出されますが、実際に借り手がつくかどうかは、持ち家を賃貸市場に出してみなければわかりません。不動産会社から提示された相場よりも高額な査定額で入居者募集を開始した場合、入居者が見つからずに空室期間が長引いてしまうこともあります。
不動産会社から提示された金額が想定していたより低い額であっても「確実に借り手がつく賃料」として算出されている場合もあります。反対に査定額が高い場合は「借り手がつく上限金額」が提示されている可能性もあります。不動産会社から査定結果を受け取ったら、金額に一喜一憂せず、査定額の根拠を確認しましょう。
ポータルサイトに掲載されている入居者募集中の物件は、まだ入居者が決まっていない物件であり、掲載金額で入居者が見つかるとは限りません。なかなか入居者が見つからない場合は、値下げを行う場合もあります。入居者を見つけられた成約価格の相場を確認しましょう。
「売る」と「貸す」では、その目的や得られるものが異なります。ここでは家を売る場合、貸す場合それぞれのメリットやデメリットを解説していきます。
貸す | 売却 | |
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メリット |
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デメリット |
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メリット、デメリットを説明しましたが、多くの皆さんが家を貸さない理由をご存知でしょうか?
前に住んでいた家を賃貸しなかった理由として1番多かったのは「売却した方が、メリットがあったから」、2番目に多かったのは「一度貸し出すと返してもらうのが大変だと思ったから」です。
売却にメリットを感じるのは、手にする金額の大きさやその後の家の使用予定など個々の事情があるかと思います。2番目に多い「一度貸し出すと返してもらうのが大変だと思ったから」は、きちんと家を返してもらうことができる契約方法があることを知っていれば、賃貸で活用できたかもしれません。
持ち家を返して貰うことを難しいと考えている方に、比較的簡単に返してもらう方法をご説明します。
家を貸すと、様々な手間がかかると考えている方は多いでしょう。たしかに、家賃や募集条件を決めたり、入居者との契約締結したりなどの手間はあります。しかし、不動産管理会社を利用すれば、多くの手間を任せることが可能です。 入居者募集時は条件を設定すれば、入居希望者への物件案内や入居申込の手続きは不動産管理会社で対応します。賃貸期間中の入居者からの問い合わせも不動産管理会社が対応し、必要に応じて貸主へ連絡がくるので、賃貸管理に割かれる時間はそれほど多くありません。ほかにも、不動産管理会社によっては滞納保証などのサービスがついていることもあり、安心して賃貸経営を行うことができるので想像しているより容易なのではなでしょうか。
また、「一度家を貸すと返してもらうことは難しい」と考えている方もいますが、これも誤解です。「定期借家契約」や「一時使用賃貸借契約」を利用すれば、契約期間満了とともに入居者に退去してもらうことができます。定期借家契約はどなたでも使用できますが、「一時使用賃貸借契約」は転勤などにより一時的に空いてしまう家を貸し出す場合に用いることが可能です。入居者が確実に住むことができる期間を設定し、期間経過後は帰任などのまた家を使うことになったタイミングで解約となります。
家を売ってしまうと、基本的に二度とそこに住むことができなくなります。「将来的には住みたいと考えている」「子供たちにあげられる資産がなくなってしまう」「今後地価が上がる可能性がある」など迷いがある場合は、売却して手遅れになる前に貸すことも視野に入れて検討してみてはいかがでしょうか。最近では管理会社を利用して、空いている家を維持管理しつつ有効活用できる方法があります。良い管理会社を見分けるポイントは、次の通りです。
それぞれの詳細についてはこちらからご確認ください。
利益を出すために、手数料が安い会社に任せた方がよいと考える方もいるでしょう。しかし、トータルコストが高くなったり、オーナーと管理会社の利害が一致しないことがあったりするので注意が必要です。その他のポイントもあわせて、詳しくは関連記事をご確認ください。
査定を行うと、不動産管理会社に連絡先を伝えるため、査定完了後も連絡がくることがあります。その不動産管理会社を利用する予定がない場合は、はっきりとその旨を伝えて断りましょう。それでも勧誘を続けてくる場合、消費者生活センターなどの相談窓口に相談してください。
「査定金額が高いから」という理由で入居者募集を依頼する会社を決めたとしても、必ず査定金額で借り手が見つかるとは限りません。入居者が見つからずに賃料の値下げを続け、空室が続くあまり相場以下の賃料で貸し出さなければならない状況に陥ってしまうこともあります。提示された査定金額の根拠を確認し、適正金額であるのか確認しましょう。
不動産管理会社の人手不足などによって、賃貸中の管理について対応が遅いなどのトラブルもあります。これは入居者の満足度が下がり、早期解約にも繋がりかねません。また、不動産管理会社が、リフォームが必要な箇所の指摘や設備の点検を実施しない場合、契約直前に不具合が発覚してキャンセルや入居日の延期に繋がることや、入居後すぐの不具合として入居者からのクレームにも繋がります。不具合の度合いによっては、事故に繋がる可能性もあるでしょう。また、このような不具合をきちんと把握しておかなければ、将来的に売却を行う場合、不具合について契約不適合責任を追及されるかもしれません。
査定額は想定賃料です。査定金額が高くても安くても、査定額で必ず貸せるとは限りません。あくまでも賃料を決める際の目安の金額としましょう。
査定額の根拠を確認することで、提示された査定額は「確実に入居者を見つけられる査定額なのか」「入居者が決まる家賃の上限額なのか」という点を把握することができます。不動産会社によっては、ある程度の幅を持たせて査定額を提示する場合もあります。
査定を依頼する前に、不動産ポータルサイトなどから相場を把握しておくことも大切です。各サイト独自のロジックでまとめられた、相場一覧のページが用意されていることもあります。ただし、賃貸に出す場合は、入居者募集中の物件がライバルとなるため、比較対象とされそうな入居者募集中の物件についても確認しておきましょう。
万が一不動産会社とトラブルになってしまった場合は、一人で解決しようとせず、プロに相談しましょう。消費者庁の「消費者ホットライン」では、地方公共団体が設置している最寄りの消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してもらうことができます。大きなトラブルへ発展してしまった場合は、弁護士などに相談しましょう。
ここまで、家を貸すときの査定では、どのような点が見られているのかについて、お伝えいたしました。査定においては、築年数や間取りなど、家そのものだけではなく、周辺施設や交通事情などの周辺環境もチェックされます。
査定の前に、家を購入した時の書類や修繕履歴、リフォーム・リノベーション歴についても、あらかじめ準備しておくとよいでしょう。不動産会社に惑わされないためには、査定の際は複数の会社に依頼し、自分自身でも賃料相場を把握しておくことが大切です。売るか貸すかを迷っている場合には、それぞれのメリット、デメリットについても確認しておきましょう。
万が一、不動産会社とトラブルになった場合は、ひとりで解決しようとせず、消費者センターなどに相談しましょう。
カテゴリ:家を貸す・賃貸管理 関連記事
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