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公開日2022年9月14日/更新日2024年3月12日

家賃収入について確定申告が必要なケースと確定申告の手順を解説

家賃収入について確定申告が必要なケースと確定申告の手順を解説

家やマンションを貸し出して家賃収入を得ている場合、原則として確定申告が必要ですが、不要なケースもあります。

確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があり、青色申告では申告方法や記帳方法の違いによって受けられるメリットが増えます。

今回は、確定申告の目的や方法、確定申告が必要なケースとともにそれぞれのケースに適した確定申告の方法について解説します。

家賃収入があると確定申告が必要

家賃収入があると確定申告が必要

家賃収入がある場合は、基本的に確定申告が必要となります。家賃収入は、所得税の課税の対象となる10種の所得のうちの1つである不動産所得に該当するからです。

収入を得るためにかかった経費を得られた収入から差し引き、さらに所得控除を差し引いた金額を課税所得といい、課税所得がある場合は確定申告が必要です。

所得金額=総収入金額-必要経費

確定申告では、1月1日から12月31日までの1年間分の所得について、翌年2月16日から3月15日までに税務署に必要書類を提出の上、所得税額を納付します。

ここでは、次の3つの状況別に確定申告が必要になるかどうかを解説します。

不動産所得(家賃収入等)のみの場合

賃料を含めた賃貸経営で得られる収入の総額から、賃貸経営のためにかかった費用(経費)を差し引いた額に対して課税されます。

総収入金額には月々の賃料収入のほか、毎月の共益費や管理費、契約時の礼金や契約更新料なども含まれます。経費は「2.必要経費として申告できる項目」で詳しく説明します。

赤字になるなどして課税対象となる所得がない場合は、所得税がかからないので確定申告は不要です

さらに所得があっても、所得税額を計算する際には「配偶者控除」や「扶養控除」等の所得控除があり、一定の要件に当てはまる場合は所得の合計金額から所得控除額を差し引くことができます。所得金額から所得控除額を差し引いた結果、所得額が課税対象額以下となれば、確定申告は不要です

参考:No.1100 所得控除のあらまし(国税庁)

給与所得または退職所得がある場合

不動産所得を含めた他の所得が20万円以下であれば、確定申告は不要です

ただし、住民税については別途申告が必要であり、控除額なども所得税と異なります。住民税のみ申告をする場合は、お住まいの自治体のHP等を確認してください。

参考:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(国税庁)

申告義務がなくても確定申告をした方が良いケース

不動産所得」「事業所得」「譲渡所得」「山林所得」があるものの、経費の方が大きくなるなどして、計算上で損失が発生し、赤字となっている場合です。このような赤字の場合に確定申告を行うと、黒字となっている他の所得から損失分を控除する損益通算という方法で、所得税額を抑えることができます

参考:No.2250 損益通算(国税庁)

給与所得または退職所得以外の所得がある場合

各種所得の合計額から所得控除を差し引いた所得金額に所得税の税率を乗じて所得税額を求め、配当控除額を差し引いた金額があれば、確定申告が必要です。

参考:確定申告が必要な方(国税庁)

必要経費として申告できる項目

必要経費として申告できる項目

賃貸に関わる総収入額と必要経費がそれぞれいくらかをまとめて、総収入額から必要経費を差し引いた残りが不動産所得となります。

原則として、必要経費として認められるものは、賃貸経営のためにかかる費用のみです

税金

土地や建物を所有していることで毎年納付が必要となる固定資産税・都市計画税、土地や不動産を取得した時にかかる不動産取得税・登録免許税・印紙税、一定規模の賃貸運営を行っている場合に課せられる事業税は、必要経費として計上することができます。

所得税住民税は経費計上できません。

火災保険、地震保険等の保険料

火災保険地震保険など、建物にかかる損害保険料も必要経費として認められます。

借入金の利子

土地や建物を取得する際に借り入れたことによって生じる借入金の利子についても必要経費に計上できます。

ただし、不動産所得が赤字となっており、損益通算を行う場合は土地にかかる借入金の利子分を除外しなければなりません

なお、ローンの元本は経費計上できません

広告宣伝料、仲介手数料、管理料等

入居者募集にかかる広告宣伝費や不動産会社への仲介手数料も必要経費として認められます。

管理会社への費用

賃貸管理を依頼している管理会社に支払う管理料手数料は必要経費として認められます。

また、マンションの場合は、管理組合や建物管理会社に支払う共用部分の管理費についても、経費計上が可能です。

修繕費

貸し出す建物の修繕にかかった費用や設備の修繕にかかった費用も必要経費として認められます。

ただし、大規模リノベーションなど建物の価値を上げたり、耐用年数を延ばしたりするための改修費用は、修繕費ではなく資本的支出とみなされます。費用はいったん資産として計上され、毎年の必要経費は改修費用を耐用年数で割った金額を減価償却費として計上します。

修繕積立金

修繕積立金の支払いについて、マンション標準管理規約に沿った適正な管理規約に従い、次の条件を満たしている場合には、支払った年の必要経費と認められます。

  • 区分所有者となった者は、管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負うことになること
  • 管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと
  • 修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと
  • 修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていること

<これらを満たしていない場合には、修繕積立金を修繕に使用した際に経費計上できます。/p>

参考:賃貸の用に供するマンションの修繕積立金の取り扱い

減価償却費

建物は時間の経過とともにその価値が低下します。減価償却費とは建物の取得価格を耐用年数に応じて、各年に配分した金額です。減価償却費も必要経費として計上できます。

税理士等への報酬

税理士に確定申告を依頼した場合の報酬や、司法書士へ不動産登記を依頼した場合の報酬も、必要経費として認められます。

家賃収入を確定申告するときの流れ

家賃収入を確定申告するときの流れ

確定申告の方法には「白色申告」「青色申告」の2種類があります。また、記帳方法や申告時の提出書類の様式も、複数あります。最適な確定申告方法は、賃貸経営を行う状況などによって異なります。

白色申告とは

白色申告は、事前の届出が不要で、青色申告に比べて手続きが簡単な申告方法です。白色申告で提出すべき書類は「確定申告書B」と「収支内訳書」の2つであり、記帳も簡易的な単式簿記という方法で問題ありません。

提出書類が少なく、簡易的な手続きで申告ができる点が白色申告のメリットですが、特別控除等が適用されないため、青色申告のような節税効果はありません。

青色申告とは

青色申告とは

青色申告ができるのは不動産所得、事業所得、山林所得の3ついずれかの所得がある人です。事前に「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に届け出ていなければ、青色申告を行うことはできません

「確定申告書B」に加えて「青色申告決算書」の提出が必要になるほか、複式簿記での記帳が原則として求められます。青色申告では、所得から最大65万円の控除を受けられる青色申告特別控除が適用され、所得の中で赤字が生じた場合に、その赤字分を3年間まで繰り越しすることができるといったメリットがあります。

保存すべき帳簿の数も多くなり申告に手間がかかるものの、青色申告では課税額を抑えやすいメリットがあります。

不動産所得の場合、青色申告特別控除額は事業的な規模で賃貸経営を行っているかどうかで変わります。マンションやアパートを10室以上貸しているか、または独立した家屋を5棟以上貸しているかなどが判断基準の1つとなっています。事業的な規模で家賃収入を得ている場合は、青色申告で最大65万円の控除を受けることが可能です。

マンション1室を貸している場合や転勤の間だけ自宅を貸しているケースなど、事業的な規模に該当しない場合であると、65万円の控除を受けることは難しいですが、その場合でも10万円の控除は受けられます。

【賃貸の規模による青色申告の違い】
青色申告(最大65万円控除) 青色申告(10万円控除)
対象となる経営規模等 10室以上の部屋or5棟以上の貸家賃貸経営の規模がいずれかに相当するなどして事業的な規模として認められる 事業的な規模として認められない場合

事業的な規模であっても最大65万円の青色申告特別控除の要件に該当しない場合
家族や親族への給与 必要経費になる 必要経費にならない
青色申告特別控除 最大65万円 10万円
提出書類 確定申告書B
青色申告決算書(損益計算書・賃借対照表)
確定申告書B
青色申告決算書(損益計算書)
記帳方法 複式簿記 単式簿記

確定申告書の作成方法

確定申告書の作成方法には次の4つの方法があります。

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成するのが最も手軽な方法です。青色申告を利用する場合は、青色申告決算書の提出も必要になるため、確定申告ソフトの利用や税理士への依頼を検討しても良いかもしれません。

確定申告に必要な書類

家賃収入に関する確定申告を行うためには、収入や経費を正確に把握しなければなりません。税金の通知書や領収書等の書類を準備しましょう。ここでは入手先ごとに確認していきます。

勤務先(給与所得者のみ)

  • 源泉徴収票

自治体

  • 固定資産税通知書

不動産会社(物件購入時)

  • 不動産売買契約書
  • 売渡清算書
  • 譲渡対価証明書

金融機関

  • ローンの返済計画表

建物管理会社/管理組合(マンションのみ)

  • 管理費の領収書
  • 修繕積立金の領収書

賃貸管理会社

  • 賃貸借契約書
  • 年間収支報告書

工事会社

  • 修繕工事の見積書/請求書/領収書

損害保険会社

  • 火災保険証券
  • 地震保険証券

確定申告の提出書類

家賃収入に関する確定申告では、次のようなものが必要となります。

確定申告書B(第一表、第二表)

確定申告書B

家賃収入(不動産所得)に関する確定申告では、確定申告書Bを使用します。白色申告をする人も青色申告をする人も、必ず提出が必要になる書類です。

収支内訳書(白色申告をする人のみ)

収支内訳書

収支内訳書は確定申告書を作成するために、1年間の家賃や礼金等による収入、固定資産税・修繕費・仲介手数料・管理料・減価償却費などの必要経費を記載するものです。収支内訳書は複数種類ありますが、家賃収入がある場合は「不動産所得用様式」を使用します。

青色申告決算書(青色申告をする人のみ)

青色申告決算書

青色申告決算書は、1年間の利益を表す「損益計算書」と資産や保有資産や負債などの状況を表す「貸借対照表」の2つからなる書類です。

青色申告決算書においても、収支内訳書と同様に、家賃収入がある場合には「不動産所得用様式」を使用します。

ただし、事業所得と不動産所得の合計所得金額が300万円以下の人で、事前に「所得税の青色申告承認申請書(兼)現金主義の所得計算による旨の届出書」を提出している場合には、「現金主義様式」を使用でき、「貸借対照表」の提出が不要になります。

現金主義とは、年末までに現実に金銭等を受領した金額を収入として扱う考え方です。前述した条件を満たしている人であれば、現金紙器簡易簿記というより簡便な方法で記帳しても構いません。現金主義を用いた場合は、最高55万円の特別控除が適用される事業規模であっても、最高10万円の青色申告特別控除のみの適用となります。

参考:確定申告に関する手引き等(国税庁)

確定申告書の提出方法

確定申告書の提出方法には、次の3つの方法があります。

  • e-Taxによる提出
  • 管轄税務署に持参する
  • 税務署に郵送する

青色申告の場合、e-Tax以外の提出方法で青色申告特別控除の限度額である65万円の特別控除を受けるためには、電子帳簿保存法の申請承認書を事前に税務署に提出し、市販の会計ソフトを用いるなどして電子帳簿保存を行い、他の条件について問題なく満たしていることが必要です。電子帳簿保存がない場合は、青色申告特別控除額は55万円までとなります。

持参や提出が必要な書類については、国税庁の「申告書に添付・提示する書類」のページでご確認ください。

これらの書類は物件を管轄している税務署に提出します。提出先の税務署が分からない場合は国税庁の「国税局・税務署を調べる」から住所を確認できます。

確定申告をしなかった場合のリスク

所得が発生したら確定申告によって自ら所得を申告し、納税を行わなければなりません。必要な申告と納税を怠った場合、次のような罰則が科せられます。

無申告加算税

期限内に確定申告をしなかった場合、本来の課税額に加えて、無申告加算税が課税されます。追加で課される金額は元の納税額によって変わります。納税額が50万円までは15%を掛けた額が上乗せとなり、50万円を超えている場合には、50万円を超えた分に対して20%を掛けた額が上乗せされます。

なお、期限内に申告していなかった場合でも、税務署からの調査を受ける前に自分から申告をすれば罰則は軽くなります。その場合追加されるのは元の納税額の5%です。

また、申告期限を過ぎてから1か月以内に自ら申告をしたときには、無申告加算税を無し(不適用)にしてもらえることもあります。ただし、不適用が認められるのは、期限内に申告をする意思があったと認められた場合です。

参考:No.2024 確定申告を忘れたとき(国税庁)

延滞税

期限内に税金を納めなかった場合、納付期限の日から納付するまで1日ごとに延滞税が加算されます。2か月経過までは元の納税額に対して最大で年7.3%ですが、2か月経過後は最大で年14.6%と高くなります。

参考:延滞税の計算方法(国税庁)

「無申告加算税」と「延滞税」を合わせると多額の納税が課せられることになります。これらの罰則を受けるリスクを避けるためにも確定申告は定めに従い、期日までにしっかりと行うべきでしょう。

もし何かしらの事情で期日を過ぎてしまった場合には、まずは所轄税務署を調べて相談してみるなど、課税額がさらに大きくならないように対応を急ぎましょう。

領収書をなくした場合

領収書をなくした場合

不動産所得が発生する事業を行う場合、収入や必要経費を記載した帳簿および業務に関する帳簿、決算に関して棚卸表などの書類や業務に関する領収書などの書類の保存が義務付けられています

紛失してしまった場合は、発行元へ再発行を依頼しましょう。

また、クレジットカードや口座振替などで支払った場合は領収書が発行されない場合があります。利用明細や通帳など、取引が明記されている書類で代用できる場合がありますので、保管しておきましょう。

参考:記帳や帳簿等保存・青色申告(国税庁)

まとめ

家賃収入で得られる利益は不動産所得に該当し、基本的には確定申告が必要となります。しかしながら、家賃収入があっても確定申告が不要なケースもあります。課税対象となる所得は総収入から必要経費を引いたものであり、所得額から要件に該当する所得控除を差し引いた残額があれば、確定申告が必要です。確定申告が不要であった場合でも、損益通算を行うことで他の所得にかかる税額を抑えられる可能性もあります。

確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、書類の提出方法にもいくつかの方法があります。申告方法や書類の提出方法によって課される所得税額は変わり、事業的な規模であると認められる場合にe-Taxを使用して青色申告を行うと、青色申告特別控除の最大額65万円の控除を適用できます。一方、事業的な規模に該当しない場合は青色申告を行っても10万円の控除しか受けられません。

確定申告が必要であるにも関わらず確定申告を行わなかった場合は、罰則によって多額の税金を納めなければならなくなるリスクもあります。

まずは所得額を計算し、確定申告が必要かどうかを確認するようにしましょう。

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