転勤や介護、相続などによって持ち家やマンションを賃貸しようとお考えの方にとって、家賃収入がいくらくらいになるかは非常に気になるポイントです。
賃料査定とは、さまざまな資料から算出された目安であり、その額で貸せることを保証するものではありません。家を貸そうか迷っている方にとって、判断材料の一つになるのが「賃料査定」です。
賃料査定は無料で手軽にできるので、家を貸そうかと思っている方は、一度利用してみてはいかがでしょうか。
賃料査定とは、保有している不動産を貸し出す際にどのくらいの家賃で貸し出せそうか、不動産会社に依頼して査定してもらうことです。
賃貸経営する場合、収入源である家賃の設定によって経営がうまくいくか否かが分かれます。利益を追求しすぎて賃料を高くすると、入居者が現れず空室が続くという本末転倒な状態になるでしょう。一方で賃料を低くしすぎると、借主は見つかるかもしれませんが、利益が減って損をしてしまいます。
つまり適切な家賃設定は、安定した賃貸経営の要であり、市場相場や物件の資産価値から大きく外れた家賃設定は、長期的に経営を圧迫するリスクがあります。
また、適切な家賃設定に欠かせないのが、不動産会社が行う賃料査定です。査定方法には「机上査定」と「訪問査定」の2種類がメインになります。不動産会社は地域の相場観や需要動向、物件の立地・設備などを総合的に判断し、最適な家賃を提案します。
特に訪問査定では精度の高い査定が行われるので、賃料の設定に大いに役立つでしょう。
賃料査定には大きく分けて、以下の3種類があります。
以下で、それぞれの特徴についてご紹介します。
机上査定とは、不動産仲介会社の査定担当者による訪問は行われず、過去の実績や周辺の相場から算出する査定方法です。物件に関する情報のみで賃料が査定されます。なお、状況に応じて物件の写真や登記簿謄本の提出が求められる場合があります。
机上査定は、電話やメールのみで完結することも多く「とりあえずどれくらいの賃料になるかを知りたい」と考える方に最適です。
依頼から査定額提示までは、早くて数時間から1日程度です。リロの留守宅管理では、翌営業日までに結果を報告しております。
訪問査定は、不動産仲介会社の査定担当者が現地に赴き、設備や内装など物件を目視で確認したり、最寄りの商業施設や公共施設など周辺環境を調査したりした上で賃料が算出される査定方法です。現地での調査は通常1~2時間程度で終わり、査定結果は調査から1週間ほどで通知されるのが一般的です。
訪問査定では、精度の高い賃料査定が行われるので、机上査定よりも実際の賃料に近い査定額が提示されます。
査定の精度を上げるため机上査定の情報に加えて、間取り図やリフォームの履歴がわかる書類の提出が求められる場合があります。
訪問査定といっても、必ずしもその査定額で貸し出す必要はなく、あくまでも参考として捉えて構いません。また、訪問査定の当日は立ち会いが必要となるため、事前に日程調整が必要です。
理想の賃料に近付ける相談もできるので、賃貸に前向きであれば活用してみましょう。
【訪問査定に必要な書類(一例)】
不動産会社により異なるので賃料査定を依頼する会社に確認しましょう。
AI査定とは、人工知能(AI)技術を用いて膨大な不動産取引データを分析し、入力された物件情報から適正賃料を数10秒で算出する査定方法です。主な入力項目は以下のとおりです。
24時間いつでも賃料査定ができる利便性の高さが、AI査定の大きなメリットとなります。
一方で、以下のようなAIならではのリスクや限界も指摘されています。
そのため、AI査定はあくまでも参考価格にとどめ、最終的な賃料設定に際しては不動産専門家による訪問査定とアドバイスを受けるのがおすすめです。
賃料査定額は以下の手順を行い、算出されます。
以下は、ほとんどの会社に共通する項目例です。
不動産ポータルサイトや、不動産会社共通のデータベースである「レインズ」などを参考に、賃貸する家と似た条件(間取りや築年数、立地など)の物件が、現在いくらで貸し出されているかを調査します。
現在募集中の物件の家賃だけでなく、入居中の物件の家賃も確認しながら、現実的なラインを探るのが一般的です。アナログな作業となるため手間もかかりますが、時間をかけて丁寧に調査が行われます。
なお、不動産ポータルサイトは個人でも閲覧できるため、オーナー自身でも類似物件の調査は可能です。しかし、不動産ポータルサイトで確認できるのは募集中の物件のみ。前述している「レインズ」には成約した賃料も掲載されていますが、不動産会社しかアクセスできません。そのため、より詳細な調査を行うためにも類似物件の調査は不動産会社に依頼するのがおすすめです。
類似物件調査でピックアップした物件を参考に、平均賃料や坪単価を算出。それを基に、調査物件の面積等を掛け合わせていきます。
なお、当然ではありますが設備や立地などに違いがあるので、その点を考慮し賃料の加点・減点要素を洗い出す作業も行います。
前項までの算出結果に、査定担当者の経験に基づいた加点・減点を行います。たとえば「この地域はファミリー層に人気だから、追い炊き機能付きのバスルームがあると入居者が決まりやすかった」といった経験則です。
ただし、この調整幅は査定担当者の主観が入るため、必ずしも一定ではありません。これまで、どれだけの不動産仲介を行ってきたかが重要になります。
賃料査定の大まかな流れは、以下のとおりです。
まずは、各社が用意している賃料査定のフォームに必要事項を記入し、査定依頼を行います。数時間から1日ほどで、不動産会社から机上査定の結果報告があります。結果内容を確認した上で、訪問査定の日程調整を行うのが一般的です。
訪問査定時には、現地で1〜2時間ほどかけて査定を行います。また訪問査定時に、登記簿謄本や建物図面などの書類を確認する不動産会社も多いので、書類を用意しておきましょう。
訪問査定の結果は、その場で報告を受ける場合もあれば、1週間ほどで通知が届くケースもあります。そのため、結果報告の目安を確認しておくと安心です。
賃料査定を不動産会社に依頼するメリットは、以下の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
不動産会社は、専門知識と豊富な経験により、物件の特性や市場の動向を的確に把握し、適正な賃料を算出できます。
たとえば物件の立地や築年数、間取り・設備の状態などを細かく確認し、近隣エリアの成約事例も参考にしながら最新の相場情報に基づいた査定を行います。また、地域特性や競合物件の賃料に精通しているため、多岐にわたるデータから精度の高い賃料を導き出すことが可能です。
訪問査定によって、建物の状況をプロの目で確認することも、精度の高い査定結果が得られる理由の一つです。
不動産会社の査定結果を知ることで相場感が養われ、市場価格の理解が深まります。物件の査定額だけではなく、地域ごとの需要と供給のバランスや賃料相場の変動傾向なども、査定担当者から詳しく説明してもらえるでしょう。
市場相場と比較して自身の物件の位置づけが明確になるため、競争力のある価格設定が可能です。過小な賃料設定による収益の減少や、過大な賃料設定による空室リスクを避けることができ、収益の最大化が期待できます。
不動産会社に依頼することで、以下のような物件の価値を最大化するための提案が受けられるのも、大きなメリットの一つです。
さらに「賃貸契約に関する法的アドバイス」「税金や保険」「地域の条例や規制」など、賃貸経営に欠かせない情報も得られます。入居希望者の反応や解約に至る要因からは、家賃の変更提案や入居者ニーズに合わせた設備の更新に関するアドバイスを得られるでしょう。
長期的な資産活用の観点からの提案も受けられるため、将来を見越した運用計画を立てやすくなります。
ここでは、賃料査定を不動産会社に依頼する際の注意点を5つ紹介します。不動産オーナー自身が納得した上で賃料を設定できるように、以下の注意点を確認してみてください。
賃料査定は1社だけでなく複数社に依頼しましょう。なぜなら賃料査定額には「担当者の経験に応じた賃料の調整」が入るからです。
ただし担当者によって得意とする物件タイプや地域が異なり、主観的な判断も入るため必ずしも参考になるとは限りません。より客観的に判断するためにも、複数人(社)の意見を聞いて、賃料設定における判断材料を多く持っておくのがおすすめです。また、複数社から提示された金額を比較して物件の家賃相場を理解することで、極端に高いまたは低い査定額を排除できます。
さらに各社の対応やサービス内容によって、信頼できる不動産会社を選ぶことも可能です。
賃料査定において、物件の状態や設備・周辺環境などの情報が不足していると、査定結果が不正確になる可能性があります
リフォームの履歴や特別な設備、景観の良さなど「物件の価値を高める魅力」を不動産会社に伝えることで、適切な賃料算出に役立ちます。内容によっては近隣の競合物件にない特徴として、入居希望者にアピールできるかもしれません。
また、物件の不具合なども隠さずに伝えることで後々のトラブルを防ぎ、改善提案を受けられる可能性があるでしょう。
査定額の根拠の確認は、自身を守ることにもつながります。賃貸物件のオーナーであれば、なるべく高い賃料査定を希望するでしょう。
しかし、高い査定結果を出した会社が、必ずしも高い家賃で入居者を見つけられるとは限りません。なぜなら、実際に入居者を募集する時点での賃貸市場の相場や需要が、最終的な家賃を決定するからです。
入居希望者が集まらず空室が続くと本末転倒ですので、査定額を提示してもらった際には必ず根拠を確認しましょう。根拠がわかりにくい場合は、比較対象となった過去事例を提示してもらうのがおすすめです。根拠をもとに各社の査定額を比較すると、提示された賃料の異常値を見抜く力が身に付きます。
賃貸査定では、賃貸借契約の条件が査定額に影響を及ぼすこともあります。賃貸借契約の種類と特徴は、以下のとおりです。
特徴 | 普通借家契約 | 定期借家契約 | サブリース |
---|---|---|---|
契約更新 | 自動更新が原則 | 契約期間満了で終了 | 契約内容による |
契約期間 | 通常2年(1年未満の場合は期間の定めがないものとみなされる) | 上限なし(1年未満も可能) | 契約内容による |
解約 | 借主の保護が強く、貸主から解約することは困難 | 期間満了で自動的に解約 | 契約内容による |
家賃 | 相場と同程度 | 普通賃貸借契約よりも割安な傾向 | 契約内容による |
家賃設定において、相場と同程度の賃料設定をしやすいのは、普通賃貸借契約です。普通賃貸借契約は契約期間が通常2年で設定されており、借主が更新を希望する場合、貸主は正当な理由がない限り契約を継続する必要があります。
ほかの契約と比較して高い賃料を設定しやすい傾向にあるので、長期にわたって安定した収入が見込めます。さらに仲介手数料や管理費・広告費用など「どのような費用が発生するか」を事前に確認することが、適切な予算管理にとって重要です。
不動産会社の担当者とやり取りする際には、事前に情報を整理しておいたり、話した内容をまとめたりすることが大切です。
複数の会社とやり取りをしていると、会話の内容を忘れたり混同したりすることもあるため、打ち合わせごとにメモを取り記録に残しておきましょう。また、事前に調べた情報をまとめておくことで、担当者に迅速に伝えられて査定がスムーズに進みます。
特に複数社に査定を依頼している場合は、会社ごとの提案内容を一覧にして比較できると査定金額の違いを把握しやすく、要望や質問も的確に伝えられます。
賃料査定を依頼する不動産会社を選ぶポイントは、以下のとおりです。
査定はその金額で貸せる目安であり保証するものではないため、査定額が高いからという理由で依頼する不動産会社を決めるのは危険です。大事なのは本当にその額で貸せるかです。その点、実績が多い不動産会社ほど、多くの情報やノウハウを持っており、それらのデータに基づいて、より精度の高い賃料査定をしてもらえるでしょう。
不動産会社の規模や実績の大きさは、担当者のスキルやサービスの信頼性を計る指標の一つになると考えられます。
必ずしも「大きい会社のスキルやサービスが優れている・合っている」とは言えません。しかし、長くやってきた会社、多くの案件を取り扱ってきた会社であれば、営業担当の教育やサポート体制等が充実していることが考えられます。培ってきた経験がサービスにも活かされており、一定水準の質が保たれている期待を持てるでしょう。
営業活動をするにあたり、一般的な営業網に加え独自のネットワークがあるかでも提案のボリュームに差が出ます。
独自のルートがあることで、早期に納得いく賃料が決まるでしょう。担当者からの提案、会社の規模や不動産会社の特徴を生かした他にはないような営業ルートがあれば、その分お客様の数が多いので、事例を用いて説明してくれることを期待できます。
難しいことが多い業界なので丁寧に説明してくれるか、又、電話やメールなどの返信も含め迅速な対応、色々な提案などを積極的にしてくれるか、こちらの意見を聞いてくれるかなどはとても重要です。
提示した査定額はどういう要素を元に査定されたのか、根拠や説得力のある説明がなされているかがポイントです。また、将来の資産価値を高めるため、リフォーム等のアドバイスやリフォーム費用を回収するシミュレーションなどがあれば、信頼のおける担当者といえるでしょう。
不動産会社にも、得意不得意があります。
たとえば賃貸より売買の実績が多い会社では、賃貸経営・賃貸管理のノウハウが少ないため、適切な賃料査定への期待は小さくなるでしょう。一方、賃貸の専門性が高い管理会社は、効果的な提案や入居者募集対策を行うため空室リスクを低減できます。
また入居者募集や契約管理、トラブル対応などのサポートだけではなく、物件の価値を高めるアドバイスも期待できます。
専門性は、不動産会社のホームページを通して、対応業務や取り扱い物件、実績の内容を確認するのがおすすめです。
実際に賃料を決める際には、賃料査定を参考に以下のポイントを意識して決めると良いでしょう。
これらのうちいずれかだけを判断材料にして賃料を設定してしまうと、競合の物件に入居者を奪われてしまいます。そのため、賃料は上記のポイントを総合的に判断して決めるのがおすすめです。なお、物件の市場価値や状態の良し悪しについては、不動産ポータルサイトで周辺の物件を調べることでわかります。
重要なポイントは、自分だけの感覚で賃料を決めてしまわないことです。賃料の設定はさまざまな要素が加味されるため、プロの目線も必要です。さまざまなアドバイスがもらえる点からも、最終的には不動産会社に相談することをおすすめします。
保有する物件が希少性や人気の高い物件である場合は、相場よりも高めに賃料を設定できます。たとえば、ファミリー層に人気のエリアでなかなかファミリー層向けの物件の空きがない場合、ファミリー層向けの物件は希少価値が高くなります。この場合、ファミリー層向けの物件の賃料を多少高めに設定したとしても、入居者は決まりやすいでしょう。
物件の賃料は家の状況や周辺環境によっても上下します。
当然ですが、治安もアクセスも良く、利便性の高いエリアにある物件の方が、そうでないエリアにある物件に比べて賃料を高めに設定できます。物件自体に備わっている設備や建物・室内の状態においても同じことが言えます。
賃貸の賃料は契約の条件によって変動します。特に貸出期間は、賃料に与える影響が大きくなります。
契約の種類 | 貸し出し期間 | 更新の有無 | 賃料 |
---|---|---|---|
普通借家契約 | 2年ごとが一般的 | 有 | 相場と同程度で設定可能 |
定期借家契約 | 貸主都合 | 無 | 相場よりも安く設定されるのが一般的 |
一時使用賃貸借契約 | 貸主都合 | 無 | 相場よりも安く設定されるのが一般的 |
上記のうち、定期借家契約と一時使用賃貸借契約は、貸主の都合で貸し出し期間が限定されます。また、更新もできないため、入居者にとってデメリットが大きくなることから、賃料は相場よりも割安に設定するのが一般的です。
家賃の決め方については「【初心者必見】家を貸すとき家賃はどうやって決めればいいの?家賃の目安になるものとは」でも詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。
期間の決まっている転勤や海外赴任で家を空ける方は、賃貸活用を検討してみましょう。賃貸物件として貸し出すことで、家賃収入を得ながら帰任した際の居住も確保できます。
実際に貸し出すと決めた場合には、まず賃料査定を受ける必要があります。賃料査定では、会社の方針や担当者の経験が影響することも多いため、複数社に依頼して査定金額と査定に至った根拠を比較するのがおすすめです。
ただし査定額の高さだけで選ぶのではなく、物件の管理やトラブル対応など、オーナーが不在でも安心して任せられるかも大切なポイントです。担当者とのやり取りや査定額の根拠、会社の方針などを踏まえて、検討してみましょう。
また、転勤時の賃貸を日本で初めて事業化した実績のある「リロの留守宅管理」でも、無料の賃料査定を行なっています。転勤する方向けの特別プランを用意しており、期間が見えづらい転勤の場合でも具体的な期日を設けず、帰任のタイミングに合わせての明渡しが可能です。
大切な住居を、安全に無駄なく活用する選択肢として「リロの留守宅管理」をぜひご検討ください。
賃貸経営の命運を分ける募集賃料をなんとなく設定してしまうと失敗する確率が高まります。そのため、参考資料として必ず賃料査定を行いましょう。不動産のプロに見てもらうことで、入居者が見つかりやすく、かつ利益も上げやすい賃料設定が可能になります。
賃料査定は不動産会社によって結果が違ってくるので、複数社に依頼するのがおすすめです。転勤時の賃貸を日本で初めて事業化した実績を持つ「リロの留守宅管理」でも無料で賃料査定を行っています。不動産投資としての賃貸から、転勤などによる期間限定の賃貸まで、賃料設定に迷われている方はぜひお気軽にお問い合せください。
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