転勤などで住めなくなったマンションを貸し出せば、家賃収入が得られるなどのメリットがあります。
一方で住宅ローンを組んでいる場合で貸し出すときは、注意が必要など、いくつかの注意すべき点があります。
本記事では、賃貸管理実績40年の管理会社であるリロケーション・ジャパンが、マンションを貸す際の注意点をはじめとした基礎知識を解説していきます。
マンションを貸す際は以下の注意点を参考に、事前に確認しておけることは無いか把握しておきましょう。
【マンションを貸す際の注意点】
以上のことを踏まえて、次項で各注意点の詳細を確認していきましょう。
マンションを貸す際に対象の物件が住宅ローンで購入されており、その残債がまだ残っている場合には貸し出すことができません。住宅ローンは契約者本人やその家族が居住することを前提とした融資だからです。もし住宅ローンを利用した状態でマンションを貸し出すと融資先との契約違反になり、場合によっては違約金の支払いや残債の一括請求をされる可能性があります。
マンションを貸す場合には基本的に住宅ローンを利用していないことが前提となります。例外として、急な転勤などやむを得ない事情がある場合には、融資先との相談次第で賃貸に出せるケースもあるため、このような場合には一度相談をしてみてください。
住宅ローン控除が適用される期間であっても、マンションを貸し出した年は控除を適用できません。住宅ローン控除の要件は「自身が住むこと」のため、マンションを貸し出す場合には要件を満たすことができず、適用外になる点を知っておかなければいけません。
住宅ローン控除の適用期間中にマンションの貸し出しを終了して、自身が再度住み始める場合は、残存期間に限り住宅ローン控除を受けられます。転勤などの理由でマンションを貸す予定をしており、再度戻ってくる可能性があるのならこの点はしっかりと押さえておきましょう。
マンションを貸す場合には、エアコンや給湯器といった設備は耐用年数があり、10年くらい使用すると故障リスクが高くなります。これらのような設備が故障した際は物件の所有者である貸主が修繕費を負担しなければいけません。室内の電球や蛍光灯といった軽微な負担については借主が負担するケースがほとんどですが、上記のような負担が大きい設備の負担については貸主が負担するものとして準備しておくことが大切です。
設備が故障した際の修繕費の負担は貸主が持ち出すことになりますが、確定申告で修繕費を計上すれば還付されるため負担を軽減できます。ですので、修繕が発生した場合には必ず確定申告で計上するようにしてください。
マンションには必ず規約が設定されています。もし借主が規約違反を犯した場合には、その責任は最終的に所有者が負うことになります。ですので、マンションを貸す際には必ず規約を確認しておき、その内容を借主に把握してもらわなければいけません。
規約には主にペットや喫煙の可否、そのマンション独自のルールなどが記載されています。内容はマンションによって異なるので、細かい部分までしっかりと内容を把握しておきましょう。
マンションを貸し出す際の一般的な契約方法は普通借家契約です。普通借家契約の場合、正当な理由がない限り、貸主側から契約を途中で解除することができません。借主が強い契約となりますので、基本的に借主が住み続ける希望をすればそれに合わせて契約を継続するのが一般的です。
ただし、住宅の過度な劣化(命にかかわる場合)など正当な理由があれば退去を促すこともできます。とはいえ、基本は途中解除ができないので、それを前提にマンションを貸す場合には検討する必要があるでしょう。
マンションを貸すと収益が発生するため、確定申告が必要です。転勤などのやむを得ない理由だとしても、年間20万円を超える所得が発生すれば申告が必要です。赤字になった場合は義務ではありませんが、確定申告で損失分を給与所得などのほかの所得から差し引く「損益通算」をすることで、納税額を減らすことができます。
確定申告については、管理会社が代わりに行うことはできません。初めて確定申告をする人にとっては大きな負担になることが想定されますが、国税庁に相談したり代行サービスを利用したりすれば負担を軽減できるでしょう。どうしても自分で行うことが難しい場合は、税理士に相談しましょう。
実際にマンションを貸すことを前向きに検討し始めた場合には、実際に貸すときの流れも確認しておきましょう。いざ実行する際にスムーズな動きを取れます。
【マンションを貸すときの流れ】
管理会社の選定から契約締結まで、具体的にイメージしやすいように解説していきます。
まずは、賃貸に出すマンションの賃料査定を依頼しましょう。賃料査定は不動産会社のホームページから物件情報を入力すれば、家賃相場などから概算の賃料を調べてくれます。ポイントは複数の不動産会社に依頼することです。概算の賃料が分かったら、貸し出すマンションに訪問してもらい、詳細な査定結果を出してもらい、家賃を決める際の参考にします。
マンションを貸すにあたっては、賃貸契約の締結や設備故障が起こった際の対応など、賃貸管理に掛かる業務が発生します。これらは、賃貸管理会社に任せることが一般的で、家賃の管理から入居者からの問合せ対応まで、マンションを貸す際に発生する管理業務をまとめて引き受けてもらえます。
本業などがあり、賃貸管理に専念することが難しそうな場合は、賃貸管理会社に賃料査定を依頼しましょう。
賃貸管理会社選びは非常に重要です。インターネットで検索すると不動産屋を回ることなく効率的です。
ポイントは複数の不動産会社に「賃料査定」を依頼することです。インターネットでマンションがある「市区町村 賃貸管理会社」などと検索すると色々出てくると思いますので、会社の規模や賃貸実績、会社の強みなどを調べて気になる所に2~3社に賃料査定を依頼してみましょう。
その際、賃料査定の結果が良い賃貸管理会社を選びたくなりますが、他社よりも査定結果が良すぎる場合は本来、そこまで大きな差は出ることはないので「本当にその賃料で貸し出せるのか、その査定に根拠があるか?」担当者から査定の根拠を聞き出す必要があります。
こういったリスクを最小限に抑えるためにも信頼できるかどうかは、賃貸会社選びの大きな要素の一つと言えます。本記事では以下のようなポイントを押さえて信頼できるかどうか判断してみることを推奨します。
手数料の安さや賃料査定額の高さだけにとらわれず、信頼できる会社選びをしてみてください。
賃貸管理会社を決めたら、貸し出す際の契約方法と入居条件、家賃を決めていきます。
貸し出す際の契約方法については、将来的にマンションに住む予定がなく、得られる賃料を最大化したいのであれば普通借家契約、将来的にマンションに住む予定があり、期間限定で空いているマンションを貸すのであれば定期借家契約が最適です。転勤の場合は一時使用賃貸借契約を用いることもあります。詳細は「4-3.契約方法を決める」でお伝えします。
入居条件はペットや喫煙の可否が該当し、自身の物件をどのように保持していきたいかなどを踏まえて決めましょう。
家賃は訪問査定で提示された査定結果をもとに、契約方法や入居条件を踏まえながら検討していきます。たとえば、賃貸期間が転勤期間中に限定されている場合は契約更新ができず借主が不利になるため賃料を相場の8~9割程度に設定したり、ペットが飼育可能な物件は需要が多いため、少し高めに設定したりすることもあります。
入居条件や賃料を決めたら、実際に入居者の募集をかけていきましょう。入居者の募集は、主に不動産ポータルサイトへ物件情報を掲載することが一般的です。これらは不動産会社が掲載の手続きを行います。
外観や室内の写真の綺麗さや、最新の設備が備わっているかなどの情報が入居者の目に留まりやすく、募集の進捗にも関わります。掲載された広告を確認して、逆光になってないか、室内写真が見切れてないかなど、写真の撮り方を周りの物件と比較し、積極的に改善していきましょう。
入居希望者が集まってくると内見希望が増え、内見の結果次第で申し込みが入るかどうかが決まります。内見時に少しでも見栄えが良くなるように、物件内はできる限り綺麗にしておくことを推奨します。リフォームの予定があるなら、内見が入る前に全て済ませておきましょう。
内見完了後に入居希望の申し込みが入ったら、実際に賃貸借契約を結びます。契約をするかどうかは貸主が決めます。申し込みが入った段階で、支払い能力などに問題がないか確認する「入居審査」を実施します。審査結果に問題がなければ契約条件の調整を進め、契約締結後マンションが貸し出せるようになります。
ゴミ出しのルールや共有部分の使い方など、マンションの細則も賃貸管理会社が伝えますが、生活している中で気付いた設備の使い方などあれば、管理会社に伝えて合わせて入居者に伝えてもらいましょう。
マンションを貸すと家賃収入を得られる一方で、賃貸のための費用も掛かります。貸し出す前にかかる費用もあるので、確認して準備しておきましょう。
マンションを貸す前にはハウスクリーニングを行います。設備が古くなっているなど、必要に応じてリフォームを検討するのもよいでしょう。リフォームの内容によっては、現状のまま貸し出すよりも家賃を高く設定できる場合もあります。
貸主には、賃貸中は入居者が支障なく生活できるようにする義務があります。賃貸中に設備などが故障した場合には貸主の費用負担にて修繕を行います。ただし、借主の故意や過失による場合は、借主の費用負担によって修繕を行います。
入居者の退去後は損傷や経年劣化による傷みが少なからず発生します。借主の故意・過失によるものは借主が費用を負担しますが、経年劣化など通常の使用においても発生するようなものは貸主が負担します。修繕費用の負担についてのトラブルを防ぐための対策としては、入居前の状態を写真に残しておくことや、負担する範囲を契約書に記載して、事前に借主に了承を得ることが有効です。
なお、マンションの修繕積立金は、所有者である貸主が負担します。
マンションを貸し出している間の管理を賃貸管理会社に依頼する場合は、管理手数料を支払います。管理手数料の相場は5%程度で、サービスや保証が手厚くなるほど高くなります。また、契約時に事務手数料が発生する場合もあります。
手数料については、賃貸管理会社選びの際に確認しておくとよいでしょう。
賃貸中は火災保険と施設賠償責任保険に加入しましょう。
借主も火災保険に加入しますが、借主の故意過失による場合にしか適用できません。近隣からの延焼などは対応できませんので、借主自身で加入しておく必要があります。
建物や付帯設備が原因で他人に損害を与えてしまった場合、貸主が補償しなければなりません。施設賠償責任保険では、損害賠償金や裁判費用などについて補償されます。
自分では気づかないうちに進行していた傷みから外壁の剥がれなどが発生する場合もあるので、万が一に備えて加入しておくことをおすすめします。
ここでは「マンションを貸す前にすべきこと」の代表的なものを解説していきます。
【マンションを貸す前にすべきこと】
先述した通り、住宅ローンは契約者本人やその家族が居住することを前提とした融資のため、住宅ローンを利用した状態でマンションを貸し出すことはできません。
例外として、急な転勤などやむを得ない事情がある場合には、融資先との相談次第で賃貸に出せるケースもありますが、金融機関に無断で賃貸を行った場合は、契約違反として住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。
必ず、事前に借入先の金融機関に相談をしましょう。
賃貸経営が赤字とならないよう、事前に家賃収入とかかる費用を事前にシミュレーションしておきましょう。マンションを貸すときの代表的な収入と支出は次のようなものがあります。
マンションを貸し出しているときの収入
マンションを貸し出し中にかかる出費
マンションを貸して利益が得られるかどうかのシミュレーション方法は下記記事にて紹介していますので、参考にしてみてください。
マンションを貸す際の契約方法は主に以下の3種類です。将来的にマンションを使用する予定がある場合は、契約方法に注意しましょう。
普通借家契約は、契約期間が1年以上で設定され、期間満了後は借主の希望に応じて契約が更新されます。一般的には普通借家契約になるケースがほとんどです。借主に有利な契約方法として知られており、一度契約すると正当な理由が無い限りは貸主から契約を途中で解除できません。
定期借家契約は、契約期間があらかじめ決められている契約方法です。期間が決まっているため、希望する時期に手元に戻すことができるメリットはありますが、期間が決まっているぶん入居希望者が集まりにくい可能性があります。
一時使用賃貸借契約は、転勤など一時使用目的で使われる契約方法です。転勤など一時的な使用であると認められる理由でなければ契約できません。一時使用賃貸借契約では、転勤を理由に賃貸を行う場合、転勤の終了が解約要件となるため、自身が戻ってくるタイミングで貸し出しを終了することが可能です。また、解約予告が3ヶ月前と融通が利きやすくなっています。
これまでご紹介した3つの契約方法「普通借家契約・定期借家契約・一時使用賃貸借契約」については、以下の記事でも取り扱っております。
入居者条件としてペット飼育や喫煙の可否などを設定します。
マンション自体でペット禁止や禁煙がルールとして定められている場合もあるため、募集条件を決める際はマンションの規約も必ず確認しましょう。
賃貸の終了後は、原状回復の費用を借主にどれくらい負担してもらうか「物件の劣化状況」をもとに判断しなくてはいけません。
原状回復とは、おもに借主の故意過失によって発生した損傷を復旧することです。金銭賠償とすることが一般的で、敷金を受け取っている場合は、敷金の中で負担費用が収まるかどうかも確認する必要があります。
貸している間にどの程度物件が劣化したのかを判断するためには、貸し出す前の状態を把握しておく必要があります。そのため、必ずマンションを貸し出す前に写真にて原状を記録しておきましょう。
マンションを貸すと家賃収入が得られます。マンションを貸すことによって得られる所得は不動産所得とされ、所得税が課されます。不動産所得が年間20万円以上となる場合は確定申告が必要です。
不動産所得は収入から経費を差し引いた収益に課されます。経費には、賃貸のためにかかったハウスクリーニングや修繕費用、賃貸管理会社への報酬や保険料など、前述した費用を計上できます。経費をきちんと計上することで収益を圧縮し、納税額を抑えることができます。
具体的に4つのポイントで解説します
所得税や住民税は、課税所得金額を減らすことで節税できます。課税所得金額は、収入から必要経費や各種控除を差し引いて求めるため、かかってしまった費用のうち、計上可能な費用は漏れなく経費として計上することが節税のポイントといえるでしょう。
減価償却費は、マンションの購入費を耐用年数で分割し、毎年計上できる費用のことを指します。購入した年の次年度以降、耐用年数で分割した購入費用を経費として計上していくこととなるため、長期間にわたって所得税と住民税の負担を抑えられます。
例外として、急な転勤などやむを得ない事情がある場合には、融資先との相談次第で賃貸に出せるケースもありますが、金融機関に無断で賃貸を行った場合は、契約違反として住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。
確定申告時に簡単に行える白色申告ではなく、少し手間のかかる青色申告をすることも大きな節税ポイントです。青色申告を行うことで最大65万円の青色申告特別控除が受けられるため、課税所得金額を大きく減らすことができ、結果として所得税や住民税を節税できるのです。
副業に関する費用も経費として計上することで、節税の効果が得られます。副業が黒字の場合、全体の収入が増えるため所得税額も上がりますが、逆に経費が多くかかって赤字となっている場合は他の所得から赤字分を差し引くことができ、所得税を下げられます。
事業で利益が出ている場合は申告をしなければなりませんが、事業が赤字の場合でも、経費がかかったことをしっかりと申告することで税金を減らすことが節税には有効です。
マンションを貸す上で失敗しないためのポイントや貸す際の注意点をここまで解説してきました。ただ、実際のところ本当に貸すのがお得なのかどうか判断できかねている人も多いのではないでしょうか。
ここでは、「マンションを貸した方が良い人」と「マンションを貸さない方がいい人」それぞれの特徴についてご紹介します。
まずは、マンションを貸した方が良い人の特徴をご紹介します。該当する人は前向きにマンションを貸すことを検討してみてはいかがでしょうか。
将来的にその物件に住む予定がある場合には、マンションを貸した方が良いでしょう。マンションを貸すことで、転勤や一時帰省など様々な理由でマンションを離れることになっても、再度手元に戻すことができます。
相続で受け取ったり昔から住んでいるマンションで思い入れがあったりすることで、マンションをそもそも手放したくないと考えている人も貸すのがおすすめです。リフォームなどをしてしまうと、柱に付いた思い出の傷などは消えてしまうかもしれませんが、その物件自体は残しておくことができます。ただ、しっかりと空室対策を行って運用をしないと費用面の負担が増えてしまうので注意が必要です。
転勤で一時的にマンションを離れるけれど、先々子供などに資産としてマンションを残すことを考えていれば、貸すことをおすすめします。持ち家を確保していることは生活する上でメリットの一つにもなります。
マンションがある土地の価格が今後上昇していく見込みがある場合にも、マンションを貸すことをおすすめします。価格が上がっていく見込みがある土地の場合、入居希望者も比較的多くなる期待が持てるため空室リスクを下げることもできます。さらに、最終的に売却で大きな利益を出すことができれば、家賃収入と合わせて大きな利益を得られます。
続いては、マンションを貸さない方が良い人の特徴をご紹介します。該当する場合は売却やそのまま貸さずに空き家にしておくことなどを検討して、賃貸運営をしない方向で考えることをおすすめします。
物件の価格が将来的に上昇する見込みがない、転勤からいつ戻ってくるか分からないうえに収支で黒字が出せなさそう、といった場合には、貸さずに売却など別の方法を検討した方が良いかもしれません。所持し続けることで自身の負債が増えてしまうような将来があるなら、再度そこに住みたいと考えているような特定の場合を除いて、手放すことを検討するのも一つです。
すぐに現金を確保したい場合にも、貸し出しを検討せずに売却してしまうことをおすすめします。長期的に見て家賃収入で利益を出し続けられるとしても、すぐに現金を用意しなければいけない状況があるのなら売ってしまう方が得策の可能性があります。
マンションを貸す際の注意点や流れ、費用などの基礎知識を解説してきました。
注意点を把握しておくことでリスクを最小限に抑えてマンションを貸せます。また、注意点だけでなく貸す前のポイントも押さえておけば、マンションを貸す際の全体像がご理解いただけると思います。
マンションを貸すことで資産の有効活用をする場合、費用と支出を把握し、ある程度のシミュレーションをしておくことをおすすめします。
そのためには経験豊富な賃貸管理会社に家賃の設定や契約方法などを相談し、細かい質問や不安にも答えてくれる信頼できる不動産会社を選びましょう。
リロの留守宅管理は、40年以上の賃貸管理実績があります。そのため、独自の集客ルートや保証サービスなどでマンションの貸し出しをサポートします。転勤期間中だけの貸し出しもサポートできますのでお気軽にご相談ください。
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