転勤などで自宅のマンションを空けることになった場合、自宅のマンションを「貸すか」「売るか」どのように決めたらよいのでしょうか。
当記事では、マンションを貸すか、売るかという大きな決断に際して判断基準となるそれぞれのメリット、デメリットや費用、住宅ローンがある場合の注意点などのポイントをお伝えします。
マンションを「貸す」か「売る」か、どちらが良いかは状況によって異なります。まずは診断チャートでおおまかに確認してみましょう。
マンションを貸す場合の契約方法は複数あり、種類によって契約の期間や条件が異なります。
いま持っているマンションに、将来的な活用用途を期待できる場合、一度売却してから買い戻すという選択肢はほとんどないでしょう。マンションを貸す場合であれば、契約次第で一定期間だけ貸すこともできるので、将来の用途変更を選択肢に残せることが一つのポイントです。
また、将来そのマンションに自身や家族が住むことを考えていない場合であれば、収益を優先するための契約方法もあります。現時点で期待できる賃料で何年か賃貸した後の売却と、現時点での売却について、それぞれの収支を想定したうえで、どちらがいいかを検討するとよいでしょう。
一般的に用いられる契約であり、最も高い賃料で貸すことができます。入居者の権利が強く、基本的に入居者が希望する限り、契約は更新されます。
投資用マンションや相続したマンションなど、当面自分で住む予定がない場合に適しています。
契約の更新がない契約です。契約時に定めた賃貸期間が満了すると、契約は終了となります。貸主と借主の双方が契約の延長について合意すれば、再契約を締結することで賃貸を継続できます。
2年未満の短期間で貸し出したい場合や、次に家を使う予定が決まっている場合に適しています。
転勤期間中だけの賃貸など、一時的な使用を目的とした契約です。一時使用の目的を果たしたときに解約となります。転勤であれば、「帰任」をもって解約となり、解約通知の3か月後に退去してもらうことができます。
契約時に設定した賃貸期間経過後も目的が果たされていないときは、契約は延長されます。転勤期間が延びてしまっても、そのまま貸し続けることができます。
転勤などで自宅を離れた後、再び戻りたいと考えている場合に適しています。
将来マンションに自分で住みたいという場合以外は、マンションが売却可能かどうか、調べる方も多いでしょう。マンションを貸すのと比較して、どちらがいいかを考える際に、収支の面、つまり「いくらで売れそうか」に関心を寄せる方は多いでしょう。ローンの状況等にもよりますが、売却額の見込みは、現状での売却が可能かどうかにも関わります。
マンションを売る場合にも売り方には種類があり、売却額の目安は売り方や売る相手によって変わります。
不動産業者を通じてマンションの購入希望者を探し、売却を行う方法です。人気のあるマンションの場合は、早く高く売却できることもありますが、条件によっては買い手が見つからず、売却までに時間がかかる場合もあります。
不動産業者がマンションを買い取ります。市場で購入希望者を募る仲介とは異なり、不動産業者の提示する査定額での売却となるため、売却額は低くなります。できるだけ早く不動産を現金化したいと考えている方に適しています。
「貸す」「売る」それぞれの選択肢を見てきましたが、一般的に「貸す」か「売る」かどのような基準で選んでいるのでしょうか。国土交通省のデータを見てみましょう。
三大都市圏の持家戸建住宅、分譲マンションに居住している30歳以上の世帯主を対象に行われた調査です。これまでに所有してきた住宅を「賃貸した理由」と「賃貸しなかった理由」がそれぞれ挙げられています。
まず、賃貸した理由は下記のようになっています。
出典:「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」の最終報告について
「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会 報告書(別添資料集)」をもとに作成
「空家にするよりはよいと考えたから」という回答が最も多くなっており、なかでも「売却は考えなかった」という回答が多くなっています。
住んでいない住宅を賃貸した理由として、4人に1人が「老後の収入源を確保したかったから」を挙げており、資産活用で安定的な収入を得ることを選択しています。
また、「家賃収入を住宅ローンの返済に充てようと考えたから」という理由が、それぞれ17%程度あります。原則として住宅ローンのまま賃貸を行うことはできませんので、「転勤」や「住宅ローンの返済が困難となった」などの事情があったと考えられます。
出典:「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」の最終報告について
「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会 報告書(別添資料集)」をもとに作成
一方、前に住んでいた住宅を賃貸しなかった理由としては「売却した方がメリットがあったから」が、もっとも多くなっています。賃貸をしなかった理由として具体的に挙げられている中には、契約方法に注意したり、賃貸管理会社を利用するなどすれば対応できるものもあります。
例えば、次のようなものです。
期間を限定して貸す契約方法を用いることで、契約時に定めた期間に限って賃貸できます。将来的に使う予定があっても、空いている期間を賃貸して有効活用できます。
賃貸管理会社を利用すれば、入居者募集から退去まで、入居者からの問い合わせや家賃滞納時の対応など、賃貸にかかるほとんどの手間を任せることができます。
これらの懸念から貸すことを迷っている場合は、賃貸管理サービスを利用することで、マンションを有効活用できるかもしれません。サービスによって内容が異なるので、いくつかの会社を比較検討してみるとよいでしょう。
住宅ローンは自分が住む家を購入するためのローンであるため、賃貸を行うためには原則としてローンを返すか借り換える、あるいは契約を見直す必要があります。結果として金利はそれまでよりも高くなる場合が多いです。ただし、転勤などやむを得ない理由の場合は、賃貸が認められる場合もあります。住宅ローンが残っていてマンションを手放したくない場合は、まず借入先の金融機関へ相談してみましょう。
住宅ローンに限らず、ローンが残っている場合は売却時にも返済を要します。売却額も返済に充てることができますが、売却額を含めた資金で返済できない場合には売却できません。
貸すか売るかの検討にあたって、借り換えが必要か、返済可能かを考える必要があります。
結局のところ賃貸経営で儲かるかどうかは、ローンの金利やマンションの立地などによってケースバイケースです。
仮に賃貸で得られた収入が賃貸を始めるために支払った費用を賄える程度であったとしても、経費について確定申告を行い給与所得と合算することで、使っていない持ち家をそのままにしているより節税できるといった場合もあります。
まずは収支について、試算してみましょう。詳しくは関連記事でご紹介しています。
前項では、調査データから他の人が賃貸を選んだ理由を見てきました。ここでは、「貸す」「売る」それぞれのメリットや注意点、費用を見ていきましょう。
【貸し出し時にかかる費用】
【貸し出している間にかかる費用】
今後マンションに住む予定がなく、資産として持っている必要もない方は、売却をおすすめします。
マンションを売る場合も、様々な費用が発生します。売却金額がそのまま収入となるわけではないので注意しましょう。
200万円以下の場合:売買価格の5%+消費税
200万円超400万円以下の場合:売買価格の4%+2万円+消費税
400万円超の場合:売買価格の3%+6万円+消費税
1,000万円以上5,000万円以下の場合:1万円
5,000万円以上1億円以下の場合:3万円
双方の契約書に印紙を貼り付けます。
マンションを貸すときや売るときは、不動産会社に依頼することが一般的です。特にマンションを売却する際は高額な取引となるため、個人間取引は避けた方がよいでしょう。どの不動産会社を選ぶかによって、その後の成果が変わってきます。ここでは、マンションを貸すとき、売るときの後悔しない不動産会社選びの基準をお伝えします。
マンションを貸す時も、売る時も確認すべき、共通の内容をお伝えします。
マンションの売却が1回きりの取引であるのに対し、賃貸では賃貸管理会社へ入居者募集から賃貸期間中の管理までを任せることが一般的です。 長期的な観点や貸す場合ならではの賃貸管理会社のチェックポイントを解説します。
管理会社によってサービスの内容は異なります。必要なサービスが受けられるか、事前に確認しておきましょう。
それぞれを詳しく説明した、関連記事もご覧ください。
複数社に相談をすることをおすすめしますが、相談する社数が増えるにつれて、応対する時間や手間も増えます。2~3社の話を聞いた時点で、サービスの共通点や違いがある程度見えてくるかと思います。いくつかの会社の話を聞いてみることで、「一般的な賃貸管理サービスの内容」、「会社ごとのサービスの特徴」を理解し、相性がいいサービスを選択しましょう。
マンションを貸すか、売るかを判断する場合に、まずは「実現困難な選択肢」がないかを確認しましょう。難しい、現実的ではない選択があれば、消去法で判断できることがあります。
「貸す」と「売る」のどちらも現実的な選択肢として残る場合には、具体的な手間と収支について理解することが有効です。
転勤などで一時的に空けるマンションの話であれば、帰任時には元のマンションで暮らすことを考える人が多数を占め、あえて売ることを選ぶ人は少ないでしょう。
しかし、それ以外の理由で空いているマンションを所持している場合でも、その家を再取得することはほぼ不可であると留意した上での判断が要ります。同じ家ではなく似た物件だとしても、再取得は容易ではありません。
今はマンションが不要と考えていても、後々振り返ってほかより住みやすかったと感じたり、家族構成が変わったりしたときに、あれば都合がよかったということが考えられます。いくつかの想定を行い、何かしらの懸念が残るようであれば、現段階での売却を選択肢から排除することが考えられます。
マンションを売るためには、現在の住宅ローンを返す必要があります。残債に比べ、期待できる売却金額が小さい場合、売ることのハードルは上がるでしょう。売却額とあわせて自己資金を用意しても返済が難しい状況では、物件を売ることがより困難となります。
将来売却するためにも、維持費を支払い、価値を保ちつつ、計画的にローンの支払いを進めていく必要があり、賃料に期待して貸すことを検討したいところです。
賃料を安くしても需要を生み出せないほどに老朽化が進んでいる、交通の便が悪い、一部の人しか快適に暮らせないといった物件は、リフォームで補うなどしても、期待できる賃料と費用の釣り合いが取れないことがあります。物件によって貸すことが難しい場合です。
「貸す」と「売る」を選ぶべき状況として次のようなことが想定されます
前者の判断で重要になるのは収支の試算、後者の判断で重要になるのはどちらが楽で解決まで速いかという手順の確認でしょう。もちろん前者も楽な方が良く、後者にも収支は重要です。重視する傾向の違いは考えられますが、いずれも判断には収支の予測と手間や手続きへの理解が要ります。これらは、個々や家々によって大きく事情が変わるため、調べてみなければどちらが良いかわかりません。
収支については、査定を行えば賃料や売却額がわかります。加えて、必要なサービスにかかる費用、税金について調べます。手間や手続きについても同様に、サービスに任せること、自分で行うことは何なのかを、賃貸と売買の場合それぞれで知る必要があります。
賃貸については賃貸管理会社に、売買については売買仲介を取り扱う不動産会社に相談することで、収支とサービスの概要が見えてきます。税金については税理士に相談することも考えられますが、インターネットでおよそのことを調べられます。
収支や実現までの流れが分かると、「貸す」か「売る」について、価値観や将来設計に合う選択肢が見えてくるでしょう。調べる中で、例えば予算が高額過ぎるなどして一方の不可が定まるかもしれません。
両方が選択肢として残っていて選べないという時に、まずは情報収集です。どちらからでも問い合わせてみてはいかがでしょうか。決断に向けた行動の動機付けとなる期待もあります。
マンションを「貸す」か「売る」か、どちらが最適な選択肢であるかは、マンションや状況によって異なります。
ひとくちに「貸す」といっても、期間を限定した契約や一時的な賃貸を目的とした契約方法もあり、空いている期間だけ有効活用することも可能です。賃貸中の管理の手間は、賃貸管理会社を利用することで減らすことができ、転勤中の自宅を賃貸できるサービスもあります。住宅ローンを利用している場合は、原則貸すことはできませんが、転勤などのやむを得ない事由であれば柔軟に対応してくれる金融機関もあるようです。
また、「売る」場合も、不動産市場で購入者を探す仲介と不動産会社に買い取ってもらう買取の2種類があり、仲介の方がマンションの売却金額が高く、買取の方が早くマンションを現金化できます。いずれにしても、ローンが残っている場合は、ローンを完済しなければ売却できないため、売却金額でローンの残債がまかなえるか、足りない場合は自己資金を用意できるか、計算してみるとよいでしょう。
マンションを「貸す」か「売る」か、検討するポイントは大きく次の3つです。
これでも決められない場合は、賃貸と売却を同時に募集し、より条件の良い方で契約してみるのもよいでしょう。
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