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公開日2020年10月9日/更新日2021年3月22日

空き家対策の方法と知っておきたい基礎知識

空き家対策の方法と知っておきたい基礎知識

空き家の放置はさまざまなデメリットを生み、リスクを招きます。しかし、適切な対策を行えば、問題の解決は難しくありません。こちらでは、空き家に関する基礎知識と、空き家対策のポイントを紹介します。

空き家は今や社会問題

現在、空き家の増加は、日本における重大な社会問題の一つとして位置づけられています。平成30年に行われた総務省の調査によると、当時の空き家の数は約849万戸。5年前の平成25年時点で行われた調査に比べて約29万戸増加しており、過去最高となっています。総住宅数に占める空き家の割合、こちらは平成30年時点で13.6%であり、平成25年の調査結果から0.1ポイント増でした。ちなみに、空き家の比率を都道府県別で見ると、もっとも高かったのは山梨(21.3%)、次いで和歌山(20.3%)、長野(19.6%)でした。

空き家が増加している背景にはさまざまな原因が考えられますが、それらの中でも代表的なものとして、少子高齢化や核家族化の影響が挙げられます。たとえば、親子のうち、子どもは既に独立して他の地域に住んでいて、親だけで暮らしている実家があったときに、その親が施設に入ったり亡くなったりした場合、実家が空き家になってしまいます。

空き家を取り壊すには多額の解体費用がかかります。また、更地の状態よりも、土地に建物があったほうが固定資産税の支払いを少なくできることがあります。こうした理由からも、空き家をそのままの状態で放置してしまうケースが増えているのです。

空家等対策特別措置法の施行

社会問題となる空き家への対策は各自治体が独自の条例をつくるといったかたちで対処してきましたが、人口減少などにより空き家問題は更なる深刻化が懸念されていました。そこで空き家対策をより強固なものにするとして施行されたのが「空家等対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)」です。平成26年に施行された本法は、通称“空き家法”とも呼ばれています。

空家等対策特別措置法では、自治体が空き家の管理体制などを調査し、家の状態や管理体制に問題があると判断した場合には、これを“特定空家”に指定します。その後特定空家の所有者に対しては、助言や指導を行うだけでなく、必要に応じて勧告や立ち入り調査、所有者の個人情報取得など行政命令も出せるようになっています。

空家等対策特別措置法の“特定空家”とは?

空家等対策特別措置法では、「倒壊の可能性などで周囲に危険を及ぼしていたり、不衛生であったりする建物」「きちんとした管理がなされておらず、そのことで景観を損なっているような建物」、そうした、そのままにしておくと周辺の生活環境に害をなすような「空き家(等)」を「特定空家等」として定めています。所有している土地に住宅があると、「住宅用地の特例」というものが適用されて、課される固定資産税が軽減されるものなのですが、もし空き家が特定空家として指定されてしまうと、その後、その状態を改善するよう自治体からの勧告を受けるようなことがあり得ます。そうした場合、住宅用地の特例は適用されなくなり、資産を維持する上で、ランニングコストにおいて損をしてしまうことになります。下記は特定空家の定義を表す「空家等対策特別措置法」の原文です。

「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう

(空家等対策特別措置法)

空き家の発生を抑制するための特例措置で3,000万円の控除も

空き家対策の措置は空家等対策特別措置法だけではありません。そのほかにも、国や自治体がさまざまな対策・取り組みを行っています。

たとえば、空き家を活用できる状態にしやすくするための制度として、「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」というものがあります。空き家になった住まいを相続人が被相続人から受け継ぎ、その土地や建物を売却などで第三者に譲渡するような場合、譲渡で発生した相続人の所得には譲渡所得税が課されますが、譲渡前に耐震リフォームを施すなどして耐震性があると認められている住まい(あるいは元々耐震性が認められている住まい)、取り壊して更地にしてしまった土地、これらを相続した日から三年後の年末までの期間で譲渡できた場合には、課税に際して「特例措置」が適用されることで、対象となる譲渡所得から3,000万円までが特別控除されます。特例措置の適用を受けるためには、ほかにも昭和56年5月31日以前(建築基準法改正によって耐震基準が見直される前)に建築されていることや、譲渡価額が1億円以下であることなどの条件を満たす必要があります。

この特例措置ですが、定められた当初は、適用期間が2019(令和1)年12月31日までとされていました。そして、適用の対象となる相続人は、被相続人が相続開始の直前にその家に住んでいた場合のみに限定されていました。しかし現在は、特例措置の適用期間は2023年(令和5年)12月31日まで延長されており、さらに、平成31年4月1日以降の譲渡については、適用の対象となる相続人の範囲も拡充されています。被相続人が相続開始の直前にその家に住んでいなかった場合でも、相続開始の直前まで老人ホームなどへ入所していた場合であれば、入所直前までは当該家屋で居住していたことなどの条件も満たしている一部のケースでは、特例措置の適用対象となるように制度の改正が行われています。

国主導ではない、各地の自治体によって行われている取り組みとしては、「空き家」と「空き家を有効活用したい人」のマッチング、空き家のごみ処理補助といった取り組みが空き家対策として見られます。

参考: 起業家による空き家活用モデル事業(東京都産業労働局)

空き家を放置することで考えられる問題

空き家を放置することは、その空き家のオーナーがリスクを負うだけではなく、隣接する住居の住民、さらには周囲の地域住民にとってのリスクや迷惑となる可能性もあります。空き家を放置してしまうことで起こりうる代表的な問題をご紹介します。

経済的なデメリットや問題

空き家を適切に管理せずに放置することは、経済的なデメリットを抱え込むことにつながります。

まず空き家を保持していることでランニングコストが発生します。不動産は所有しているだけで固定資産税都市計画税の課税対象です。将来に向けてその物件を活用する用途を考えているが、その機会をうかがっている、あるいは何かしら選択を迷っているといった状況であれば、状況次第で仕方がないこともあるかも知れません。しかし、使ってもおらず、ただ持っているだけの空き家に、税金などの負担ばかりがかかり続けているのであれば、それはやはり不経済としか言えません。

また、支払うコストが無駄になるというだけではなく、管理が行われていない空き家は、老朽化が進んだり害虫が発生したりすることで、物件の資産価値が低下していく恐れがあります。将来的に売却をするときの売却価額が下がるほか、賃貸や居住の用へと転用しようとしたときには、まとまった改修費用が必要になってしまいます。

空き家を放置していると、その空き家が自治体から「特定空家等」として認められてしまうリスクも高まります。そうした場合、前述の通り「住宅用地の特例」といった税負担を軽くするための制度が受けられなくなってしまうことがあります。それまで「住宅用地の特例措置」を利用できていた場合、この制度が利用できなくなることで、固定資産税は6倍、都市計画税は3倍に膨らんでしまいます。また、行政から解体命令が出された場合は、その費用をオーナーが負担しなくてはなりません。

空き家放置による物件価額の低下やムダなコストを避けるためには、空き家を売却によって手放すことや、賃貸運用などの方法で管理を行うことが大切です。

犯罪リスクの温床となる問題

空き家には、ホームレスや不良、犯罪者招かれざる客が勝手にそこに棲み着いてしまうリスクがあります。不法占拠が行われるだけでなく、空き巣、放火、詐欺の拠点など、他の犯罪に派生する危険性も伴います。それらは結果として、周辺地域の治安を悪化させることにもつながってしまいます。特に犯罪リスクが高くなりやすい空き家の特徴としては以下のようなことが挙げられます。

  • 出入り口が施錠されておらず、簡単に侵入できてしまう
  • 囲いがない、もしくは壊れてしまっている
  • 庭の手入れが行われておらず、雑草や木が生い茂っている
  • 視界を妨げる障害物などが多く、建物内部の見通しが悪い
  • 人が住んでいる形跡、もしくは管理が行われているような形跡がない

空き家をこうした状態にしないためには、定期的な巡回やメンテナンスを行うことが必要です。

災害問題

もしも空き家の建材が腐食し、倒壊を起こしたとします。家が倒壊してしまったこと自体も十分に大きな問題となりますが、このときに間が悪く、通りすがりの人にケガをさせてしまったとしたら……オーナーとして、管理を怠ったといった事実があった場合にその責任が負わされるだけではなく、悪意や不注意の有無に関わらずに負わされる責任である無過失責任と呼ばれる責任も負わされてしまうことがあります。空き家を放置しておくことで、そうした倒壊による災害が発生し得ること以外には、空き家にゴミが溜まっていることや、庭の枯れ草が放置されているといったことがあると、火災時に延焼を引き起こすなどといった防災上のリスクも大きくしてしまうといったことが問題となります。

衛生問題

空き家の敷地には、ゴミの不法投棄をされやすくなってしまいます。そうした際にそれらを片付ける人がいなければ、不衛生な状態で放置されてしまいます。その結果、害虫や害獣が殖える温床になったり、悪臭が発生する原因になったりすることが考えられます。ゴミの不法投棄は犯罪です。しかし犯人が捕まらない限り、その処分を行うための負担はオーナーが被ることになってしまいます。

衛生問題もまた、他の問題と同様に、自身だけに関わることではなく、近隣への迷惑になると同時に、トラブルへと発展する可能性があります。

景観問題

空き家の劣化が放置されると、家の見た目も次第に悪くなっていきます。その家自体に関する外観の清潔感や美しさといったことだけが問題になるだけではなく、その家が視界に入る様々な場所からの景観を悪化させてしまうことにもつながります。たとえば、雑草が茂り、害虫が湧き、建物の外壁が剥がれているといった状態が周囲の景観を損ねることへとつながります。劣化の放置を続けた結果、廃墟のような建物になってしまうと、周囲から浮いた異様な見た目は、近隣住民の生活に不安を与えるだけではなく、そこに整然とした美しい景色があったならば、それを廃墟と化した空き家が台無しにしてしまうといった可能性もあるため、そのことで周辺にある住居の資産価値をも下げてしまいます。こうして空き家の長期間に及ぶ放置は、見た目が荒れていくことによって、周りの人々にも多大な悪影響を及ぼします。

しかし、一度深刻なダメージを負ってしまった空き地の復旧には大きな費用が必要になってしまいます。人が住まない空き家は放置せずに、きちんとした手入れを定期的に行うことで外観をキレイに保つようにしておくか、場合によっては取り壊すなどしてしまうことで、これも一度は費用がかかることですが、今後発生し得る余計な管理費用や復旧費用をなくしておくことが対策となります。

そのほかの問題

ここまで、「空き家を放置することの問題」として空き家オーナーにとっての代表的な問題をいくつか挙げてきました。しかしもう一方で、空き家の問題には、「空き家が放置されることによる社会問題」としての面があります。

「景観問題」の中でも挙げましたが、たとえば、管理されていない空き家があることで、その一帯の土地の価値・評価が下がってしまうことは、空き家が抱える見た目以外の問題からの影響としても起こります。また、再開発などが進められているエリアにおいては、放置された空き家の存在が有効な土地活用の障害になることがあります。

このように、空き家の放置はオーナーだけの問題ではなく、地域や社会の問題でもあると言えるのです。

主な空き家対策5選

空き家に関するデメリットやトラブルを回避するためには、また、周囲の迷惑にならないためにも、空き家を放置しなくて済む何らかの対策を考える必要があります。

売却〜空き家を現金化して問題をクリア〜

空き家を抱えるデメリットを回避するための根本的な対策として、空き家を売却してしまう方法があります。空き家を手放してしまうことで、今後はランニングコストや管理の手間、トラブルのリスクに悩むこともありません。無事売却が行えれば、抱えている空き家の問題をまとめて解決できてしまいます。さらにまとまった現金を得られることで、異なる形の資産への投資や他の必要な出費を賄うことができます。

ただし、当然のこととして、売買を成立させるために、売主は買主を見つける必要があります。もしも物件やエリアにあまり人気がない場合は、期待していた金額で売却できないこともあるかも知れません。また、一度売却が成立してしまうと、その後同じような物件を見つけて買い戻すことは難しい場合が多いので、そのこともしっかり納得した上で手放すことにしましょう。

メリット:維持管理の手間をなくし、まとまった現金を得ることができる。

デメリット:一度売却してしまうと似たような物件を買い戻すことは難しく、売却後に価値が上がった場合や物件を使いたい用途ができた場合に後悔するリスクがある。

賃貸〜家賃収入を得ながら不動産を保持〜

地域や物件に賃貸ニーズが見込めるならば、空き家を賃貸に出すのは、空き家をそのままにしておかないためのおすすめの方法です。

入居者がいれば、その間は家賃収入が得られます。「経済的な問題」として挙げたうち、固定資産税や都市計画税、家の資産価値を保つためのメンテナンス費用といった維持費の負担を賃料の範囲でうまく賄うことができれば、自宅以外の家を保持することによる経済的なデメリットはほとんど感じられなくなるでしょう。むしろ、それ以上の家賃収入が得られるようになれば、使っていなかった空き家がお金を生むようになるチャンスもあり、賃貸は空き家を保持しているリスクへの対策として有効な方法の一つと言えます。また、メリットは、賃料が得られるという直接的で経済的なメリットだけではなく、入居者が住んでいると通水・通風といったことが日常的に行われるため、物件が劣化していくスピードも緩やかになり、また、入居者が住んでいることで犯罪のリスクも低減できます。

一方で予め認識しておいた方がいい注意点もあります。入居者が退去するなどして次の入居者が決まるまで、賃料を得られない空室期間が生じるリスクがあり、修繕・リフォームの手配、そのほか契約・更新・解約時の対応など、賃貸管理を行うには手間もかかります。入居者募集に向けてハウスクリーニングを行うなどの必要もあるので、賃貸をするには別途必要となるコストもありますが、自主管理で賃貸運営を行うことは、管理業務が多岐に渡るため、個人がこなすには難しいことが多いです。費用はさらにかさんでしまいますが、賃貸管理会社に様々な管理業務を委託することで、小さな手間でも賃貸運営を行うことが可能になります。

メリット:空き家を活かして長期的に収入を得られる。

デメリット:適切な賃料を設定しないと入居者が見つからないまま、かけた手間と費用の割に収入が安定しないということがある。

空き家管理〜定期巡回・メンテナンスで資産価値を維持〜

不動産を売ることも貸すことも行わず、放置してしまうのではなく、きちんと維持管理のみを行っていく方法です。定期的なメンテナンスを行っていれば、空き家であっても価値を保つことができ、人が訪れることや清潔さが保たれていることで様々なトラブルが起こるリスクを軽減できます。キレイで安全な状態に空き家を保つことで、空き家が経済的なデメリットとなる要因の一つとして挙げた「特定空家等として認められてしまうこと」も避けられます。

空き家の管理を行う場合、その方法としていくつかの手段が考えられます。まず一つ目はオーナーによる自主管理です。手間や労力はかかってしまいますが、業者委託時には必要となる、手数料といった実費以外のコストを節約できます。しかし、自主管理を行う場合、管理を行う空き家が生活圏からどれくらいの距離にあるかが重要です。空き家が現在住んでいる場所から遠いような場合は、移動の手間も時間も交通費も多くかかってしまい、返って無駄が多くなってしまうかも知れません。

もし、オーナー自身が空き家から遠方にいる場合でも、近くに住む兄弟や親戚などがいれば、管理をお願いできることがあるかも知れません。面倒ごとを頼めるかどうかはお互いの間柄にもよりますし、申し訳ないという思いから気が引けてしてしまい難しいということもあるかも知れませんが、業者に管理を委託する費用を支払う代わりに、何かしらの形でお礼を約束するなどすれば、結果的に互いに助かるということもあるかも知れないので、空き家を放置するよりはずっと良く、これも場合によっては有効な空き家管理の手段です。

最後に挙げるのは、様々な企業が提供している空き家管理サービスを利用する方法です。管理を委託するためにはコストがかかりますが、手間や労力がかからず、オーナーや親戚が空き家の近くに住んでいる必要もありません。最初から賃貸や売却を希望しない、あるいはできないために空き家管理サービスを利用するといったこともありますが、もし賃貸や売却を行いたい場合でも、空室となっている期間、物件の状態を守っておくといった目的で空き家管理サービスを利用することが可能です。

メリット:あまり費用をかけずに、いつでも利用することができる家として維持することができる。

デメリット:物件を維持管理するための手間や費用がかかるが、空き家を活かした収入を得ることはできない。

解体~建物を壊して更地にすれば多くの問題はクリア~

特に戸建てが空き家だった場合、売却するにしても、貸し出すにしても、土地の上に建っている建物についてはそれほど価値を期待できないならば、建物の劣化による倒壊や不法侵入・空き巣といった犯罪リスクを避ける目的で、ひとまずはその土地の建物を解体してしまう方法が有効となる場合があります。建物がなくなれば管理の手間もほとんどなくなり、そのほかの先に挙げたような問題も大部分をクリアできます。更地にすることで、住居以外の新たな用途が生まれ、貸し出し方の選択肢が広がるだけでなく、そのことにより元の家がある状態よりも売却しやすい資産に変わることもあります。

しかし、空き家対策を選ぶ上で、解体を行うには費用がかかることも忘れてはいけませんし、その状態だと支払わなければならない税金が増える可能性もあることを、経済的なデメリットとして注意しておいた方が良いでしょう。多くの場合、土地に住居が建っていると、その土地の固定資産税と都市計画税は、住宅用地の特例によって課税額において優遇を受けています。家を解体して更地にしてしまうと、税率の優遇は受けられなくなってしまいます。

解体はその後の用途を検討する上での一つの段階なので、それを行うことによって、できなくなってしまうことと、引き換えに生まれる選択肢をしっかりと見比べた上で、解体を行っておくべきか検討しましょう。その後の用途について具体的には判断がつかないといった場合にも、建物の価値が、維持管理しておくのに見合わないと見たならば、解体して空き地にしてしまうことは、空き家のままよりも維持管理を楽にする方法として有効です。

メリット:物件を管理する手間がほとんどなくなり、犯罪リスクや周辺へ迷惑をかけてしまうリスクはなくなる。

デメリット:住宅用地の特例による税制優遇が受けられなくなるほか、空き家の解体には費用がかかり、再び建物が必要な場合には再建築となる。

住宅賃貸経営以外の事業利用~所有不動産でビジネスにチャレンジ~

空き家を「家」として活用することで収益を得る方法が先に挙げた住宅としての賃貸ですが、貸し出すことで収入を行う方法はそれだけではありません。空き家を解体して空き地となった土地や、用途に合わせてリノベーションを行った家を他の用途への転用によって積極的に活用するという選択肢もあり得ます。たとえばコインパーキングトランクルームなどは、空き家・空き地のよくある転用例です。空き家・空き地の用途として、住居、事務所、店舗、駐車場、収納スペースといった様々な用途のうち、どれがより大きな収入を生むかは、地域の需要や土地ごとの向き不向きによるところが大きく一概には言えませんが、家の状態によっては、売ったり貸したりするために直すよりも、取り壊してしまった方が早くて安上がりということや、少し費用と手をかけることで、住居以外の用途にならば使えるようになるといったことも、建物の状態次第であり得るため、そうした場合は特に、住居以外の用途で不動産をビジネスに活用する方法も空き家対策として選択肢の一つです。

メリット:事業内容によっては、賃貸経営よりも高額な収益を得られる。

デメリット:初期投資として空き家の解体や改修のための費用がかかり、事業の選択を誤った場合は、想定していた収入が得られないことがある。

空き家活用方法別―収支や手間の概要
売却 賃貸 空き家管理 解体 事業利用
短期的な収入 売却価格 なし なし なし なし
短期的な支出 仲介手数料・諸費用 修繕・工事費・家財処分 ほぼなし 解体工事費用 工事費用など事業内容による
長期的な収入 なし 賃料収入 なし なし 事業による収入
長期的な支出 なし 手数料・修繕費用・固定資産税・所得税等 管理費用・修繕費・固定資産税 固定資産税
(税制優遇なし)
固定資産税・所得税・運用費用など事業内容による
長期的な手間 なし 契約手続き・修繕・確定申告等 契約手続き・修繕 土地の管理のみ 事業内容によるが基本的にはいろいろある
将来の用途 なし 賃貸期間中の使用制限
解約時期の制限
いつでも自由に使える 建物を利用するには再建築が必要
費用と工期をかければ選択肢は多い
事業開始以降はあまり自由に使用できない

収支や手間に関するメリット・デメリットの傾向イメージ図
収支や手間に関するメリット・デメリットの傾向イメージ図

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シチュエーション別対策方法

最後に、シチュエーションごとの空き家対策方法について考えてみましょう。以下では、よくある3つのケースと、おすすめの解決法をご紹介します。

両親から相続で実家を受け継いだが、遠方に住んでおり、将来的に居住する予定もない、今後この家について発生する手間も極力なくしてしまいたい……

この場合、許容できる手間がどの程度までかというところによって、判断が分かれることが多いと思われます。家を解体など行わずにそのまま残しておく場合で、「売却」「賃貸」「空き家管理」の3つの空き家対策について、先々における手間の大小だけで見比べるならば、手間が大きい順に「賃貸(賃貸管理・保守管理・納税)」>「空き家管理(保守管理・納税)」>「売却」となります。ですが、「賃貸」の場合も「空き家管理」の場合も、これらの手間は、もしその家が居住地から遠方に離れていたとしても、賃貸管理会社などが提供しているサービスを利用し、運用業務を委託してしまうことで、実は大部分において省くことができるものです。委託するための手数料はかかってしまいますし、委託先業者とのやり取りなどが手間として多少は残ってしまいますが、オーナー自ら様々な管理を行うことに比べれば随分と楽に管理できるようになります。家はもう使う予定がないということなので、無理に残しておくこともないかも知れませんが、いつまでも借りられそうだということは、借り手となる入居者にとっても好条件となります。物件次第では、それほど大きくない手間で、意外なほどの賃料が期待できるということもあり得るので、まずは試しに賃料査定の依頼や、そのためにどういった連絡が入ったり、どれくらいの手間がかかったりするものなのかという相談をしてみると良いかも知れません。

とはいえ、それら管理の手間の一切をなくしてしまいたいという方には、やはり空き家は売却してしまうのもおすすめの方法です。物件を手放してしまうことで、今後は管理の手間や、納税も含めた維持費といったことを気にしないで良くなりますし、資産が整理されて考えることが減るということ自体に選択肢としての魅力を感じる方もいるかも知れません。

また、今回の例は相続の場合なので、相続税の納税が要ります。相続税の納付には、特殊な例として延納や物納といった制度もありますが、基本的には期限内に金銭により一括で行うものです。物件の購入者を見つけられれば、資産をまとまった現金へと変えられるということも、売却という選択肢の大きな特徴です。大きな金銭の支払いが発生するタイミングで現金が得られるようになるので、保有資産のバランスを調整するのに都合が良いといった考えから売却を選ぶという方も多いかも知れません。

当社のように、賃貸だけでなく売買も取り扱っているというところもあるため、判断が難しい場合には、両方併せて不動産会社に相談してしまうというのも一つの解決策です。

転勤によって一時的に海外へ赴任することになった。家族帯同となるので留守宅になるが、そのまま放置・空き家管理だけではもったいない……

一度家をしばらくの間空けることになっても、将来的には元の家に帰ってきたいオーナーであれば、売却を選択肢として考える方は少ないことと思います。次に住むのが必ずしも元の家に限らなくても良いといった方にとっても、帰任前に改めて新居を探すのは、元の家に帰ってくることよりもやはり大変なことです。かといって、2年以上などの長期に渡って、家を留守宅とするのであれば、空き家にして維持管理のためのコストだけをかけ続けるのももったいないと思われます。ここは、空けている資産はその間賃貸することで収益化しつつ、必要になったらまた自宅として使えるように返してもらった方が、都合が良い方も多いのではないでしょうか。

賃貸を行う場合、賃貸借契約にはいくつかの種類があります。普通借家契約の場合、オーナー都合に合わせて入居者に退去してもらうことは難しくなります。これは、普通借家契約が解約条件の面で入居者有利に作られているためです。入居者から同意が得られなければ、基本的には契約が更新されてしまい、すると解約してオーナーの居住が可能になる時期は先送りとなってしまうのです。

一方、定期借家契約一時使用賃貸借契約を用いていれば、通常明け渡しはスムーズに行われます。これらの契約を用いて賃貸を行うリロケーションサービスの利用は、一時的に自宅を貸したい転勤者に最適な方法です。転勤などの場合を除く住居の賃貸では、通常あまり用いることができない一時使用賃貸借契約ですが、転勤中に一時使用賃貸借契約を用いて賃貸を行った場合、解約時にはこの契約が大きなメリットを発揮します。入居者にとっての借りやすさと、オーナーにとっての貸しやすさのため、一定の期間その契約が続くことを保証する保証期間を設けることが一般的であり、このことがオーナーから解約を行う上での制限となりますが、この期間を過ぎて以降は、転勤期間の延長や短縮に合わせてフレキシブルに解約や明け渡しのタイミングを調整しやすくなる点がこの契約で賃貸を行うメリットの一つです。入居者からの解約でなければ、基本的にはオーナーの帰任に合わせた解約となるため、転勤中に契約の更新や、一度切れた契約の再契約といったことに煩わされづらくなることや、限られた転勤期間の中で、賃貸が行われる期間を最大化しやすいといったこともメリットです。

賃貸をしていたが入居者が退去してしまった。半年後に活用することが決まっているが、賃貸を再開するには残っている期間が短すぎる

賃貸が行われるとき、入居者にとっては引越しや契約といった手間もかかるため、通常、賃貸物件は数年単位で貸し借りされるのが一般的です。他の募集の条件にもよりますが、契約できる期間がだいたい2年よりも短くなると、そうした賃貸物件を探しているのは、「家の建て替え中」など、特別な事情を抱えた一部の人に限られてしまい、なかなか入居者獲得がうまくいきません。

賃貸募集を行うには期間が足りないが、ただ空けておくには心配なときには、空き家管理サービスが有用です。数カ月程度であっても、人が住んでいない密閉状態にしておくより、隔週・毎月といった間隔で定期的な通風・通水が行われていた方が、建物の価値を保つ上では安心です。

まとめ

社会問題にまで発展している空き家問題。その対策としては、売却・賃貸・管理・解体といった方法があります。どの方法が適切かは、例に挙げた通り、それぞれのオーナーが置かれているシチュエーションによって異なります。判断の基準や検討の方法を考える際には、プロに相談して情報収集から始めてみるという方法があります。様々な対策の全てに精通している業者はなかなかいないかも知れませんが、賃貸管理会社やリロケーション会社と呼ばれる業者の中には、賃貸だけではなく、売買や空き家管理といった、主要ないくつかの方法についての相談に応えられる会社も、当社を含めて複数社あります。空き家の放置は長引くほどにオーナーの腰もさらに重くなりがちなため、そうこうしているうちに悪影響がますます深刻化していってしまいます。気づいたときにはいつの間にか選択肢が狭まってしまっていることもあります。現時点であればどのような選択肢が採れるのか、早めに調べてみてはいかがでしょうか。将来の資産に大きな違いが出るような発見がそこにはあるかも知れません。

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