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公開日2019年12月20日/更新日2020年10月5日

古い家は更地にしてから貸すほうがいい?古い家を貸し出す際の注意点

古い家は更地にしてから貸すほうがいい?古い家を貸し出す際の注意点

築古の家は築浅に比べて不人気というのは事実としてあります。そのため、あえて更地にしてから売ったり貸したりするのがおすすめ、という声も聞かれます。ただし、これはあくまで条件付きの話であることを意識しなくてはなりません。今回は、古い家を解体することのメリット・デメリット、古い家を貸す場合の注意点といったことをご紹介します。

更地にするメリットは?

建物を解体し更地にすることは、古くなった空き家が持つデメリットのいくつかを軽減や解消できるということにつながります。

放置された空き家には、景観・治安の悪化や犯罪リスクの増加といったデメリットがあります。これを回避するためには、ご自身や親族が定期的に空き家へ訪れてお手入れをしたり、有料の空き家管理サービスなどを利用したりしなくてはなりません。

将来的にその家に住む予定がある、賃貸するつもり、ということなら、上記のような方法でそれまでの当面をしのぐことも有効でしょう。しかし、自ら行う空き家管理にかかる労力は小さくはありません。有料のサービスを利用する場合も、多少なり継続的なコストがかかってしまうものです。特に利用の予定がない建物を解体して更地にすることは、これらのデメリットを払拭し、管理にかかる労力・コストを軽減するには有効な手段となり得ます

貸し手・借り手の立場で考える更地のメリット

「更地は建物がない分、資産としての価値が低下する」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。しかし実際には、空き家の状態が続いて人が住めなくなってしまったような築古の建物であれば、ほとんど資産としての価値が残っていないことも多いです。そのような場合、売却時の査定で値段が付いているのは、土地の部分がほとんどと言えます。賃貸として活用する場合も基本的な考え方は同じです。古くなって住みづらくなってしまった家は、借主を求めても住んでもらえる人をなかなか見つけられませんが、築古の建物を解体してしまうことで住居以外の用途が可能性として生まれ、土地の価値が生きてくることがあります。もともとの建物に様々に手をかけて復旧によって借り手を募るよりも、より小さな手間や費用によって、残った土地の借り手を見つけられる可能性があります。住居として貸し出すつもりであれば、一度解体してしまうと建て替えにはさらに高額な費用がかかりますが、家の状態や賃料への期待、資金の状況といったことによっては、それすらも選択肢の一つとなります。

また、築古の建物を売却する場合、築浅の建物を売却するときには起こりづらいトラブルも想定されます。そのためのリスクヘッジとして、瑕疵担保の責任を負う期間を短く限定することや、責任を負う範囲を狭く限定することを特約として盛り込むことが対策として考えられます。しかし、一方でこの免責は、買い手にとって不利となる条項でもあります。盛り込んだ際には、そのせいで買い手が確保しにくくなることや、売値で妥協せざるを得ないという状況も想定しなければなりません。そこで建物を残さずに更地にしてしまえば、築古の建物において抱えがちな「買主売主の双方で十分に機能すると思っていた箇所が、いざ購入してみると不具合がある箇所や使用できない箇所として見つかる」という見えないリスクは大部分取り除くことができます。買主から見れば心配が減って購入しやすい物件となり、売主にとっても余計に厳しい免責を設けなくても良くなります。売却価格の設定も、すっきりして見積もりやすくなり、免責部分も考慮に入れて設定にするような面倒な調整を減らせます。

ちなみに、あまり多いことではありませんが、売却ではない場合も、「土地だけを借りてそこに自由に家を建てたい」というニーズを持つ一部の人にとっては、更地が魅力的に映ることがあります。良い場所を見つけて家を建てたいけど土地ごと購入して所有権を得ようとすると予算が足りないといったときに、借りられる土地を見つけてそこに家を建てるといったことが選択肢としてあり得ます。建物にあまり価値が残っておらず、将来の価値への期待などから、土地の方は手放したくないといった意向がある場合、更地になった土地は、整備して駐車場などに変えることもできますが、それ以外にも、そのままの状態で家を建てて住みたい人に借りてもらえるような可能性があります

更地の賃貸例

更地には収益を生み出すためのさまざまな活用法があります。たとえば以下のような用途が挙げられます。

● 駐車場(コインパーキング)
● トランクルーム
● 太陽光発電設備の設置
● 事業用地や資材置き場として賃貸
● 居住用の賃貸物件建設・賃貸運営(建て替え)

需要に合った整備を行うことで、そのための土地探しをしている人が借り手となってくれます。活用方法を選ぶときは、準備がどれくらい大変か、管理がどれくらい大変か、それと特に重要なこととして、立地と相性が良いか、需要のこともよく考えなければなりません

例えば、コインパーキング業者などに運営を一任して土地だけを貸すという場合は、初期費用も比較的少なく、手間もあまりかからなくて済むようなことが多いです。その代わりに、あまり高額な利益も期待できません。また、そもそもとして、車が多くて停める場所がないといった場所でなければ高額どころか全く収益を見込めないといったこともあり得ます。

また、詳細は後述しますが、住居が建っていない土地は、固定資産税が居住用地(住居が建っている土地)に比べて高くなってしまいます。

税金の変化も含めた総合的な想定収支を概算し、どれくらいまでの手間なら対応できそうかについても検討して決めましょう。

更地にすることのデメリットは?

住居が建っている土地から建物を解体して更地にする場合の代表的なデメリットとして、固定資産税が高くなってしまうことが挙げられます。固定資産税がいくら課せられるかについては、「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」というものが定められており、細かなことはここでは省きますが、住宅が建てられている敷地―住宅用地は、駐車場だけがある状態や更地などの状態で住宅が建てられていない敷地に比べて、課される固定資産税の額が最大で1/6まで抑えられています。住宅用地だった土地が住宅用地ではなくなってしまうと、固定資産税は6倍まで大きくなってしまうことがあるということです。土地を更地などにしないで住宅を残す(あるいは建て替える)べきかどうかは、固定資産税が今いくらかかっていて、それは特例措置によってどの程度まで減らされた状態のものなのかを把握した上で判断した方が良いでしょう。解体の費用でいくらかかるというだけでなく、税金の支払いが年間いくら増えるかを考慮に入れておかないと、オーナーは気づかないうちに損をしてしまう恐れがあります。

ちなみに、更地にすること自体のデメリットとは違い、これはどちらかというと、その土地を借地人が借地権を有する借地とした際のデメリットですが、前述した通り、住居を取り壊して更地にしてしまっても、住居をそこに建てるために土地だけ借りたいという人が見つかるようなケースがあり得ます。この場合に限らず、何か他の用途で運用するときも契約内容により同様の注意が必要なことですが、もしも、用途や処置を検討している不動産(土地・建物)について、違う用途に変更する当てや計画があるような場合は、これから行おうとする契約がどうすれば解約できるものなのかについて注意しておきましょう。一度売買の契約が成立してしまったら、新たに使いたい用途が見つかったとしても手遅れで、買い戻すことはそうそう簡単なことではない、というのは言うまでもないことかも知れませんが、建物を建てる目的で土地を貸し出すような場合も、特にこうした注意が必要なケースとなります。建物を建てる目的で土地を借りる借地人には30年間などの長期間で契約が有効となる借地権という権利が有効になるため、自身が住みたい場合など、土地のオーナーの都合で用途を変えることが難しくなってしまいます。

もし、土地ではなく、もともと建っていた家を住居として貸す場合や、建て替えた家を貸し出すような場合は、普通借家契約という契約を結んで貸してしまうと、同様に用途変更のコントロールは難しくなってしまいます。売ったり、住んだり、取り壊したりといったことを再検討する機会を何年かおきといった間隔で設けたい場合は、定期借家契約という契約を用いることでそれが可能になります

古い家を貸す際の注意点

更地にせず古い家をそのまま貸したい場合は、どのようなことに注意しなければならないのでしょうか。

築古の物件だと、設備の寿命が近づいているようなことが多いかも知れません。設備ごとの耐用年数を把握し、ある程度賃貸中に発生し得るメンテナンスのコストを見込んでおくと安心です。賃貸管理会社に委託するような場合は、そうした不具合発生時のサポートや保証サービスについても業者選定の参考とするのが良さそうです。

また、どこにどれだけリフォームやハウスクリーニングの手を加えるかといった、賃貸募集に向けて判断を要するポイントは、あまり手を加える必要がない新しい家よりも、古い家の方が多くなります。このことも、できるだけ予算が無駄にならないようにできないか、賃貸管理会社など知識や経験を持った業者に相談してみることをおすすめします。

それと、これは先述したような注意点というのとは少し違いますが、古い家を貸すときにご参考にしていただけるかも知れないことをもう一点。

築古物件だと、貸せる状態を整えるための費用負担が大変といったことがあります。当社(リロケーション・ジャパン)が提供している「リロの空き家再生」といった賃貸管理サービスも、当該サービス提供エリア内の物件であれば特におすすめですが、そうでない場合も、管理が行き届いていない空き家が増加しているという空き家問題を解決するために、自治体によっては一定の基準と予算を設け、解体や撤去だけでなく、改修についても補助を行っている場合があります。こちらもどこでもやっているわけではないようですが、もし検討中の内容に合った補助が見つかったなら活用しない手はありません。それによって古い家の賃貸運営にも新たな選択肢が見つかるかも知れません。物件がある自治体のWEBサイトを確認して、試しに問い合わせてみるなど、検討の際には少し調べておきましょう。

築古物件は本当に賃貸に向かない?

古い家を所有者が管理できていないのには、何らかの事情が考えられます。たとえば両親から受け継いだ実家に住んでいたものの、転勤などによってその地を離れなくてはならなくなってしまった場合などです。もしもその家に戻る必要性がないのであれば、解体や売却を行ってしまうことも有力な選択肢でしょう。しかし、数年後には実家に戻りたい、受け継いできた実家を資産として残したいということであれば、古い家だからと言って、賃貸をあきらめるには早いかも知れません。

「でも、古い家を借りてくれる人なんているだろうか?」と思われる方も多いかも知れません。確かに冒頭で述べた通り、一般論として新しい家の方が人気です。しかし、実際に貸せるか貸せないかを決めるのは、家の古さだけではありません。一戸建ては未だに人気の居住形態であり、賃貸ニーズは決して少ないとは言えません。マンションの場合も含め、エリアの需要をしっかりと把握し、需要に合わせたリフォームやリノベーションを行い、適正な賃料で募集することで、古めの物件でも賃貸を行えることは多々あります

まとめ

空き家の放置は勿体ないだけでなく大きなリスクです。そうしたときに建物を取り壊してしまうことで、問題を解決するための様々な選択肢が生まれます。住宅用地ではなくなると固定資産税が上がってしまうことや、更地にするには解体費用がかかってしまうといったことも念頭に入れた上で収支は見ていくと良いでしょう。古い家を貸す場合、売却をしてしまった場合などと異なり、自身で住まうなど用途を後から変えられる可能性が残ります。改修(あるいは建て替え)工事には費用がかかるものの、予算が無駄にならないようにうまく行うことができれば、賃貸期間中の賃料について期待が持てるだけでなく、最終的には自分たちが帰ってくる家としての期待も持つことができ、単なる出費というよりは、“住まいへの投資”としても捉えることができます。所有する不動産を将来的にどう活用したいかを十分に考えたうえで、解体なのかリフォーム・リノベーションなのかを検討しましょう。選択肢が多く難しい部分は、賃貸管理や売買を行う不動産会社に相談してみるのが答えへの近道かも知れません。

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