リロの留守宅管理 > リロケーション基礎知識 > マンションを貸す > 海外赴任中にマンションを貸した場合の確定申告
公開日2019年12月20日/更新日2023年10月31日

海外赴任中にマンションを貸した場合の確定申告

海外赴任中にマンションを貸した場合の確定申告

転勤などで自宅マンションをリロケーションした場合、年間20万以上の不動産所得があった場合、確定申告が必要になります。この場合、海外赴任中であっても日本で所得税を納税します。
海外赴任中は現地の税制度に従って納税するのが原則ですが、日本で発生した家賃収入に関わる税金は日本で納税します。
申告しなかった場合ペナルティを課される可能性もあります。しかし海外赴任となると、税務署へ出向くことも難しくなるでしょう。
そこで今回は、海外赴任中に発生した不動産所得の確定申告について解説します。

海外赴任で自宅マンションを賃貸した場合にかかる税金

前提として、海外赴任期間が1年以上を経過した場合、当該者は「非居住者」と見なされます(公務員を除く)。これは平たく言うと「日本に住んでいない人」という意味であり、国外勤務で得た給与には所得税が課税されなくなります。ただし、日本国内で発生した所得については別です。

海外赴任に際し、国内に所有する自宅マンションを賃貸した場合の家賃収入は、不動産所得となるため所得税がかかり、日本で確定申告が必要です。課税対象額については以下の計算式で求められます。

不動産所得の金額=総収入金-必要経費

次の項より、具体的な総収入金額や必要経費について解説します。

総収入金額の例

賃貸経営における代表的な不動産収入は家賃です。しかし、それ以外にも入居者から受け取ったお金はすべて収入として見なされます。例を挙げると以下のようなものが収入となります。

◆ 家賃
◆ 駐車場賃料
◆ 敷金(返還を要しない部分)、礼金、保証金、更新料、承諾料、名義書換料、権利金(返還しないお金)
◆ 共益費、管理費、水道光熱費

このように、“収入”となるお金はすべてが総収入金額に算入されます。確定申告の際に必要となるため、銀行口座への記帳や、領収書の控えの保管など、忘れないようにしましょう。

必要経費の例

マンションを貸して賃貸経営をする場合には経費として申告可能なさまざまな支出について合計いくらになるかを計算する必要があります。対象となる支出には次のようなものがあります。

◆ 租税公課(固定資産税・都市計画税・印紙税)
◆ 物件管理にかかる費用(リロケーション会社へ支払う管理手数料なども)
◆ 賃借人募集にかかった広告宣伝費
◆ 減価償却費
◆ 収入印紙代
◆ リフォーム・メンテナンス費用、修繕費
◆ 損害保険料
◆ マンション管理会社に対して支払う管理費、駐車場賃料
◆ 借入金の利息(住宅ローン等)

上記以外にも、賃貸経営に関連して支払った支出は経費として認められる場合があります。確定申告の際に経費を正しく申告できることで、課される税金を抑えることができます。領収書などは必ず保管しておきましょう。

海外赴任中の確定申告は納税管理人に依頼する

国内で所有する自宅マンションを賃貸して家賃収入を得た場合は、日本での確定申告が必要になります。しかし、海外赴任で外国にいる場合、わざわざ日本に戻って確定申告をするのは現実的ではありません。そこで、海外赴任中に日本で発生した所得税の確定申告をするために確定申告を代わりにしてもらう「納税管理人」を選任します

納税管理人とは、納税義務者に代わって一切の手続き(納税通知書の作成・受領・納税・還付通知の受領・還付金の受領など)をする人のことをいい、納税管理人は個人でも法人でも構いませんが選任は必須です。

納税管理人の選任、申告方法

納税管理人は、できる限り納税者の納税地を所轄する税務署の管轄域内に住所等を有する者から選任することになっています。

参考:納税管理人の選任

納税管理人を申告するには、納税地を所轄する税務署に対して納税管理人を定めた時、または出国の日までに「所得税の納税管理人の届出書」を提出します。
納税管理人の届出書は国税庁のホームページから「所得税・消費税の納税管理人の届出書(提出用・控用)」をダウンロードできます。

参考:所得税・消費税の納税管理人の届出手続

納税管理人になる人に特別な資格は要りません。ただし、納税者本人が作った確定申告書を代わりに提出してもらうだけではなく、代わりに作成してもらう場合には税理士に依頼する必要があります。確定申告書の作成等は税理士資格を持つ人の独占業務と定められているため、有資格者以外は対応することができません。

ちなみに、リロの留守宅管理では海外赴任中の貸主に変わって所得税の納税管理人となり、還付申告手続きを代行する特定確定申告サポートサービスも提供されています。

確定申告のタイミング

海外赴任に伴う確定申告は、出国時までに納税管理人の届出書を提出したタイミングによって異なります。

まずは出国日までに納税管理人の届出書を税務署へ提出した場合。不動産所得が入った翌年の2月16日から3月15日までに、納税管理人経由で確定申告を行います。なお、海外への転勤に際してリロケーションを行う場合は、この例に該当します。

一方、出国日までに納税管理人の届出書を税務署へ提出できない場合は、出国日までにいったんご自身の手で確定申告(準確定申告)を行う必要があります。たとえば国内転勤などの関係で自宅をすでに賃貸していて、その後海外赴任が決まったという例では、出国前に不動産所得が発生していたことになります。そのため、その年の1月1日から出国日までに発生したすべての所得(源泉分離課税になるものを除く)を確定申告(準確定申告)しなくてはなりません。

また、1月1日から3月15日までの間に出国する場合も、前年分の所得に関わる確定申告をする必要があります。タイミング次第では、早めに確定申告の用意が必要ということです。

このように、納税管理人の届出書を出国日までに提出していないと、思わぬ手間が発生することになります。国内の持ち家を賃貸するのであれば、忘れない内に納税管理人の選定と届出書の提出準備を進めましょう。

なお、e-Taxで確定申告ができるのは「居住者」のみになり、1年以上の海外赴任になる場合は非居住者となるため、e-Taxでの確定申告はできません。

赤字の場合でも確定申告は重要

不動産所得は確定申告義務が発生する所得ですが、赤字の場合には課税対象となる金額がマイナスになるため、放置してもよいのではと考える方もいるかもしれません。 確かに、家賃収入よりも経費が高く、収益上赤字となっていれば、課税対象となる所得がないため、確定申告の義務は発生しません。

しかし、確定申告をすることで支払うべき所得税を減らすことができる場合があります
給与所得など一定の所得がある場合、不動産所得のマイナス分をほかの所得から差し引くことができ、所得税を減らすことができます。未申告のままにしておくと、本来より余分に税金を支払うことになります。

また、1年以上の海外赴任で法人に自宅マンションを貸していた場合、賃料に対して20.42%の源泉徴収が課されます。 確定申告をすることで、源泉徴収されていた金額から不動産所得税を差し引いた分が還付されます。 無視できないほど高額な還付金が発生するケースも多いため、確定申告は確実に行いましょう。

海外赴任中に確定申告をしなかったらどうなるか

海外赴任中であっても、期限内に確定申告をしなかった場合には「期限後申告」として本来の納税額以上の税金を支払う義務が課されます。ここでは、本来必要となる確定申告をしなかった場合に課される無申告加算税と延滞税などについて解説します。

無申告加算税

無申告加算税は、確定申告の提出期限までに申告を行わなかった際に課されます。税務署からの調査後に確定申告をした場合と調査前に自主的に期限後申告した場合で税率が変わります。調査後に確定申告をした場合、本来の税額が50万円までは15%50万円超部分は20%、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税については300万円超の部分については30%が加算税として徴収されます。調査を受ける前に自主的に申告した場合は5%に軽減されます。

ただし、以下の場合は加算税の対象になりません。

  1. その期限後申告が、法定申告期限から1か月以内に自主的に行われていること。
  2. 期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当すること。

なお、一定の場合とは、次の(1)および(2)のいずれにも該当する場合をいいます。

(1) その期限後申告に係る納付すべき税額の全額を法定納期限(口座振替納付の手続をした場合は期限後申告書を提出した日)までに納付していること。

(2) その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと。

参考:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」

なお、加算税の他に納付までの日数に応じて延滞税も追加徴収されますので、次でみていきましょう。

延滞税

延滞税とは、税金の納付が期限に対して遅れることで課されます。金融機関の預金残高不足であっても延滞税の対象になります。
本来納めるべき税額に定められた税率(年率)を乗じた金額が課されます。延滞の期間によって税率が変わり、期限後から納付するまでの日数が長引くほど金額が増えていきます。

納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までの分:税率7.3%
納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降の分:税率14.6%

参考:国税庁「No.9205 延滞税について」

税率は年率のため、下記のように計算します。

2か月以内の延滞分は下記(1)の通り計算します。
(1) 本来支払うべき税額 × 7.3% × 延滞期間(完納までの日数) ÷ 365

2か月を超えて延滞した場合は(1)に下記(2)で算出した金額が加算される。
(2) 本来支払うべき税額 × 14.6% × 2か月経過以降の延滞期間(日数) ÷ 365

なお、特例基準割合というものが設けられており、状況によっては「7.3%」や「14.6%」より軽減される場合があります。詳細については国税庁のページでご確認ください。

参考:国税庁「延滞税の計算方法」

確定申告をしなかった場合は、上記のようにペナルティが課される他、意図的と判断された場合は、上記に加え税率が35~40%の「重加算税」を課されます。滞納が続くとマンションなどの持ち家や財産の差押えをされる可能性もあり、悪質な場合は刑事事件にも発展します。確定申告を忘れてしまった場合、遅れた場合は速やかに確定申告を行いましょう。

まとめ

海外赴任に際して自宅を貸し出すのであれば、早めに納税管理人を選定することが大切です。加えて、確定申告に必要となる書類も確実に保管しておきましょう。未申告で損をしないためにも、必ず確定申告を行ってください。

リロケーション・ジャパンは、賃貸管理サービスご利用時のオプションとして、海外赴任中の貸主に代わって納税管理人となり、還付申告手続きを代行するサービス―「特定確定申告サポートサービス」もご用意しております。海外赴任中の賃貸をご検討されている方は是非ご活用ください。

記事検索