住宅価格の高騰の影響を受け、近年の大阪市の賃貸市場では「ファミリータイプの需要急増」という大きな変化が起き、貸しやすいタイミングを迎えています。
これまで「貸しにくい」とされていたファミリータイプの賃貸需要が強まっており、「貸せる」市場へと変貌しているのです。この記事では、不動産鑑定士の視点から以下の3点を中心に解説します。
・大阪市の賃貸市場動向と市場予測
・失敗しない管理会社の選び方と査定のポイント
特に、転勤などで一時的に自宅を空ける方や親から相続した実家をお持ちの方は、資産価値を維持しながら収益を得る絶好のタイミングであり、賃貸に出すチャンスです。まずは現状の適正賃料を知ることから始めましょう。【今すぐチェック】 資産価値が高騰中の今、あなたの家は月々いくらの収入を生み出すのか?無料賃料査定で最新相場を把握しましょう。
目次
1.大阪市でファミリー物件が求められている理由

- 住宅価格の高騰により賃貸市場に需要が流れている
- 大阪は職住が近接して便利
- 転勤者の需要が底堅い
- ファミリー物件の供給が少ない
大阪市でファミリータイプの賃貸需要が高まっている最大の要因は、住宅価格が高くなり家を買わない層が拡大しているためです。以下に、大阪市における直近10年間の中古住宅価格の推移を示します。

出典:「2024年度年刊市況レポート」
従来、ファミリー世帯は家賃を払い続けるのは無駄に感じることが多いため、賃貸よりも購入を選ぶことが一般的でした。
しかしながら、近年は住宅価格の高騰が続き、購入を諦める人も増加していることから、ファミリー向けの賃貸物件の需要が高まっているのです。
一方で、単身者向けのシングルタイプは、元々ローンを組んでまでシングルタイプを購入する人は少なく、賃貸を選択する人が主流です。シングルタイプに関しては、近年の住宅価格の高騰の影響はあまり受けておらず、家賃はそれほど上がっていません。

【ワンポイントアドバイス】
積極的な財政支出を標榜する政府の経済対策により、インフレはさらに加速するものと予想されます。住宅価格は引き続き上昇する見込みが高いことから、ファミリータイプの賃料はさらに上昇することが見込まれます。
ファミリー物件の賃料上昇が続く今、早めに賃料査定を依頼して相場を把握しておくことも重要です。
2.大阪市の賃貸市場動向

この章では、大阪市の賃貸市場動向について解説します。
2-1.大阪市のタイプ別賃料推移
大阪市の賃料は、近年、上昇傾向にあり、特にファミリータイプ向けの家賃の上昇傾向が顕著です。以下に、大阪市におけるタイプ別賃料の変動状況を示します。

出典:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会不動産総合研究所2025年9月「不動産市場動向データ集」
ファミリータイプの賃料は、2018年の後半頃から上昇しています。シングルやコンパクトのタイプも上昇していますが、近年の上昇傾向はファミリータイプが最も強いです。
2-2.大阪市の賃料相場
2025年9月時点における大阪市のマンションの平均賃料は下表のとおりです。
| 賃料単価(2025年9月) | 3,188円/平米 |
|---|---|
| 専有面積 | 54.35平米 |
| 平均築年 | 18.2年 |
出典:東京カンテイ「賃料月別推移」
平均の賃料単価は3,188円/平米、専有面積は54.35平米であるため、概ね17.3万円(=3,188円/平米×54.35平米)が平均賃料となります。
3.大阪市で物件を貸すメリット

大阪市で持ち家を賃貸に出すことは、収益面だけでなく資産防衛の観点からも多くの利点があります。主なメリットは以下の6つです。
- 職住近接のトレンドにより高く貸せる(梅田エリアなどの人気上昇)
- 転勤者の需要が底堅く、空室リスクが低い(支店経済都市の特性)
- ファミリーの賃貸物件は希少性が高く、競合が少ない
- 通水・換気が自然に行われ、建物価値を維持できる
- インフレ対策として、現物資産の強みを活かせる
- 転勤等の一時的賃貸であれば住宅ローンの返済負担を軽減できる
3-1.職住近接で高く貸せる
近年の若いファミリー世帯は、共働き世帯が多いです。共働き世帯は、住宅に対して閑静な住環境よりも利便性の高さを求める傾向があります。
例えば、梅田のような中心部が住みたい街として人気が高いです。
以前は梅田のような中心地は、あくまでもビジネス街であり、住宅街としてはみなされませんでした。
しかしながら、最近は梅田のような極めて利便性の高い街が住宅地として人気が高まっており、住宅に対するニーズが大きく変わっています。
大阪市であれば基本的に職住近接しており、若い共働き世帯のニーズを満たしていることから、貸しやすく、かつ、家賃も高く設定できます。
3-2.転勤者の需要が底堅い
大阪市は大企業の関西支店が多く存在する街でもあることから、転勤者の底堅い賃貸需要が存在します。
大阪支店へ異動になった人は、いずれ本社勤務に戻る人も多く、大阪で家を購入する人は少ないです。
大阪にいる間は賃貸物件を借りて住む人が主流となっており、大阪の賃貸需要は他の都市よりも底堅いというメリットがあります。
3-3.ファミリーの賃貸物件は希少性がある
昨今のようにファミリー世帯の賃貸需要が強まっていることは、賃貸市場全体で見ると大きな変化です。
従来、ファミリー世帯は賃貸需要が弱いことから貸しにくいと考えられがちでした。
一方で、単身者はわざわざ住宅ローンを組んで物件を買うことは少ないため、単身世帯の賃貸需要は元々強いです。
単身世帯は賃貸需要が強く、かつ、賃料単価も高いことから、大阪市のような都市部では単身世帯向けの賃貸物件が多く供給されました。
そのため、大阪市のような都市部では、単身世帯向けの賃貸物件は多く存在する一方で、ファミリー世帯向けの賃貸物件は少ないです。
ファミリー世帯向けの賃貸物件は希少性があることから、大阪市ではファミリー世帯向けの物件は優位に貸せるメリットがあります。
なお、近年は建築費の高騰により、同じ間取りでも新築物件の専有面積が狭くなっている傾向があります。例えば、3LDKは以前なら70平米台が主流だったものが、近年は60平米台が主流となっているケースです。
住宅の狭さは住みにくさに直結するため、中古物件でも広めのファミリータイプはさらに価値が上がっているといえます。
そのため、築年数が古くても、立地が良く専有面積の広い物件は、高く貸せることが期待できます。
3-4.空き家にするよりも建物価値を維持できる
賃貸に出すと、家賃を得ながら建物価値を自然に維持できる点がメリットです。建物は、定期的に換気や通水(台所等で水を流すこと)をしないと、家の価値が下がっていきます。
換気はカビ対策に必要であり、通水は下水からの汚臭の逆流を防ぐ封水の蒸発を防ぐために必要です。
賃貸に出せば借主が生活をする中で自然と換気や通水を行うため、貸主が特別なことをしなくても家の価値を維持することができます。

【ワンポイントアドバイス】
放置すると年間数十万円の赤字になることも? 人が住んでいない家でも、「固定資産税」や「都市計画税」はかかり続けます。また、定期的な空気の入れ替えなどの管理を業者に頼めば、その費用も発生します。
賃貸に出せば、これらの維持費(ランニングコスト)を家賃収入でカバーできるだけでなく、手元に収益を残すことが可能です。
3-5.インフレ対策になる
日本の不動産価格は2013年頃から上昇し始め、既に10年以上も上昇傾向が続いている状況です。
不動産に関しては、かなり以前よりデフレは脱却しており、インフレ状態にあるといえます。インフレは、不動産のようなものの価値が上がり、逆に現金の価値が下がる現象です。
インフレ時に不動産を売却すると、資産をこれから価値が下がる現金に換えることになります。そのため、インフレ時は不動産を売却するよりも、保有し続ける方がインフレ対策となるのです。
現状、日本は政府が巨額の国債を発行しており、金利を上げてしまうと利払いの歳出が増えてしまうことから、金利を上げにくい状況となっています。
近年のインフレは日銀の低金利政策によるところが大きいですが、金利を上げにくいことを踏まえると、今後もインフレは続く可能性が高いです。
特段現金が緊急に必要ではない人は、インフレ対策として不動産は貸しながら持ち続けることをおすすめします。

【ワンポイントアドバイス】
不動産は保有すると維持費がかかりますが、賃貸に出せば収入が維持費を上回るため、維持費の負担感を軽くすることができます。相応の収益を得ながらインフレ対策ができる点は、不動産の強みといえます。
3-6. 住宅ローンの返済負担を軽減できる
転勤などで持ち家を離れる際、住宅ローンの支払いが残っているケースも多いでしょう。
住宅ローンを支払い中の家を賃貸に出すことは、原則できませんが、転勤などのやむを得ない事情の場合は、金融機関に確認し許可を得ることで賃貸に出せることが多いです。
大阪市のような賃貸需要が高いエリアであれば、「毎月の住宅ローン返済額 ≦ 家賃収入」となり、ローンの持ち出しがゼロになるケースも珍しくありません。
家賃収入でローンを返済しつつ、将来的に自分が戻ってきたときには「ローン残債が減ったマイホーム」が手元に残ることになります。これは資産形成において非常に大きなメリットです。
ここまで解説した通り、大阪市での賃貸運用は、インフレやファミリー物件の希少性といった追い風を受け、「ローン返済額以上の家賃収入」を得られる可能性が高い状況にあります。
しかし、どれだけ市場環境が良くても、最終的な家賃は「物件の広さ・築年数・グレード」などで決まります。
「少しは古い家だが、本当に高く貸せるのか?」 「ローンを返済して、毎月いくら手元に残るのか?」
その答えを知るためには、近隣の募集事例だけでなく、精緻な査定が必要です。 まずは「今の価値(家賃)」を可視化し、収益性がどれくらいかを確かめてみてください。
物件の広さ・築年数などを反映した『現在の正確な家賃収入』を算出しませんか?ローンの持ち出しがゼロになるか、どれくらい手元に残るかを算出します。
4.大阪市の今後の賃料予測│ファミリータイプは今後も賃料上昇が期待できる理由

賃料の動向は、ある程度予測することが可能です。
理由としては、不動産の賃料は価格に遅れて動く遅行指数だからです。
以下に過去50年における全国の地価公示平均価格と家賃指数の推移を示します。

出典:地価公示「国土交通省 地価公示」
出典:家賃指数「総務省 消費者物価指数」
地価公示とは毎年国が公表している土地価格、家賃指数とは全国の住宅の値動きを示したものです。過去の長期的推移を見ると、家賃のピークは地価のピークに遅れて生じることが分かります。
仮に地価が下がったとしても、家賃はしばらく上昇し続けるという点が大きな特徴です。ここで、直近15年における大阪市の地価公示価格の推移を紹介します。

出典:地価公示「国土交通省 地価公示」
出典:家賃指数「総務省 消費者物価指数」
大阪市の地価はコロナのときは一瞬下落しましたが、それ以外の時期は2013年頃より総じて上昇傾向が続いています。2025年も大坂の不動産取引は堅調であり、地価は2026年以降も引き続き上昇する見込みが高いです。
地価が上昇傾向を示している以上、大阪市の家賃はさらに上昇することが見込まれます。

【ワンポイントアドバイス】
不動産価格は株価の遅行指数です。2025年も株価は2024年に比べて上昇したことから、不動産価格も引き続き上昇する見込みが高いです。仮に株価や不動産価格が下がっても、家賃はしばらく上昇し続けるものと見込まれます。
データが示す通り、大阪市の賃料相場は上昇トレンドの真っただ中にあります。
これはつまり、数年前の感覚で家賃を想定していると、本来得られるはずの収益を過小評価してしまう可能性が高いということです。
「築年数が経っているから」「リフォームしていないから」と思い込んでいませんか?
もし、これらが気になるようでしたら賃貸管理会社にご自宅の状態を見せて、貸し出す上で最低限の提案を受けることをおすすめします。場合によってはリフォームが必要ないこともあります。
賃貸管理会社視点での簡単な工事に留めた方が工期も短く、費用の早期回収も可能です。
市場全体が底上げされている今、あなたが所有する物件の価値も、想像以上に上がっているかもしれません。
まずは今の市場動向を反映した「最新の適正賃料」をチェックしてみませんか? 現在の家賃収入を知るだけでも、今後の資産運用の大きなヒントになります。最新の市場動向を反映した正確な賃料を知り、資産の可能性を最大限に引き出しましょう。
5.貸すなら管理会社に委託した方が良い理由

家を貸すなら、管理会社に管理を委託すべきといえます。この章では、管理は管理会社に委託した方が良い理由について解説します。
5-1.適正賃料の設定と入居者募集をしてくれる
管理会社の大きな役割としては、入居者募集があります。
相場に精通している管理会社は適正賃料の設定ができ、入居希望者に刺さるような戦略的なインターネット広告等を行って早期に借主を決めてくれます。
賃料の設定は、安過ぎると損をしますし、高過ぎれば貸すことはできません。いざ自力で貸し出そうとしても、一般の人にとっては適正賃料の設定というのが実はとても難しいです。
賃貸市場に精通している管理会社であれば、トレンドを踏まえて適正な賃料を設定できるため、損をせず確実に貸すことができる賃料とすることができます。

【ワンポイントアドバイス】
入居者募集は管理会社が行うことから、賃貸経営の成否は管理会社で決まるといっても過言ではありません。家を貸す場合には、適切な管理会社を選ぶことが極めて重要となります。
5-2.入居者トラブルに対応してくれる
管理会社には、入居者トラブルやクレームへの対応をする役割があります。
入居者トラブルとは、例えば騒音等で近隣住民に迷惑をかける、退去時の原状回復で揉める、家賃を滞納する等です。
入居者からのクレームには、例えばお湯が急に出なくなった、設備が壊れた等が挙げられます。
入居者トラブルやクレームはいつ発生するか分からず、対応も緊急に実行しなければならないことも多いです。
また、家賃滞納への対処には、後に裁判に発展することも考慮して法的知識も必要とします。管理会社に管理を委託すれば、知識やノウハウのない人でも安心して家を貸すことができます。
5-3.適切な契約方法を選択してくれる
マイホームの賃貸には、永続的に貸し出すケースの他、転勤等で一時的に貸し出すケースも存在します。
永続的に貸し出す場合と一時的に貸し出す場合では、採用する賃貸借契約の種類が異なります。
具体的には、永続的に貸し出すときは普通借家契約、一時的に貸し出すときは定期借家契約を採用することが一般的です。
普通借家契約とは更新のある契約であり、定期借家契約とは更新のない契約を指します。住宅の賃貸では、普通借家契約と定期借家契約では賃料の相場も異なることが多いです。
管理会社は貸主の希望によって適切な賃貸借契約を選択し、それぞれの適正賃料も設定することができます。
6.大阪市で賃料査定を依頼すべき会社の選び方

家を貸す際は、まず管理会社に無料の賃料査定を依頼し、査定結果を踏まえて適切な管理会社を選びます。
そのため、どこに賃料査定を依頼するかで、選べる管理会社も異なってきます。
この章では、適切な管理会社の選び方について解説します。
6-1.賃貸仲介の力がある会社を選ぶ
管理会社には空室時に次の入居者を決めるという大きな役割があります。
空室は長期化すると募集家賃を下げるきっかけとなってしまうため、空室は早期に埋めることが望ましいです。空室は物件の立地や築年数、設備の仕様等だけで決まるものではありません。
管理会社の力によっても左右されるため、管理会社は賃貸仲介の実力がある会社を選ぶことが何よりも重要なのです。
賃貸仲介の実力を推し量る指標としては、外部企業との提携数の多さが挙げられます。
例えば、提携法人数が多い管理会社は、転勤者のニーズをいち早くとらえることができるため、借主を見つけやすいです。
また、地元の不動産会社や大手フランチャイズの不動産会社とのネットワークが豊富な管理会社も、情報を広く浸透させられることから借主を決めやすいといえます。
6-2.管理実績が豊富な会社を選ぶ
管理会社には、入居者トラブルにいち早く対応し、トラブルを解決する役割があります。
トラブルが早期に解決される物件は、借主にとって住み心地が良くなるため、早期退去の防止に繋がります。
賃貸経営では、早期退去が繰り返されると、その都度、貸主には新たに入居者を募集するための仲介手数料やハウスクリーニング費用等が発生します。
貸主の支出を抑えるには、借主には長期間住んでもらい、入居者の入れ替え頻度を抑えた方が良いです。
あらゆる入居者トラブルに迅速に対応するためには、管理会社が豊富なノウハウを有していることが必要となります。
管理実績の豊富な会社は、必然的に十分なノウハウも有しているため、管理会社は実績のある会社を選ぶことが重要です。
6-3.サービスが充実している会社を選ぶ
管理会社は、差別化のために様々なサービスを提供しています。管理会社を選ぶ際は、サービスが充実した会社を選ぶことが望ましいです。
管理会社のサービスの中には、例えば貸主が負担すべき修繕費用を一定額まで負担してくれるものや、借主に家賃の不払いがあっても賃料を保証してくれるものがあります。
管理会社のサービスを十分に調べずに査定を依頼すると、実はサービスの不十分な会社を選んでしまったという失敗があります。
そのため、管理会社のサービスは、査定を依頼する前にしっかり調べておくことがコツです。

【ワンポイントアドバイス】
サービスは貸主向けではなく、借主向けのものも充実している会社が望ましいです。借主向け―サービスが充実している会社は、借主を決めやすく、また借主の入居期間も長くなることが期待できます。
7. 大阪市での賃貸成功のカギは「エリアごとの適正価格」

大阪市といっても広く、エリアによって賃料は大きく異なります。
これまでの解説で、大阪市の市場全体が上昇トレンドにあることはデータが示しています。 しかし、実際の賃貸経営において最もリスクが高いのは、「賃料の平均値」や「ポータルサイトの募集価格」を、そのまま自分の物件に当てはめてしまうことです。
最後に、不動産鑑定士の視点から、失敗しないための重要な考え方を解説します。
7-1. 大阪市は「通り一本」で家賃が変わる
大阪市は、エリアによって賃貸ニーズが全く異なります。
例えば、「キタ(梅田周辺)」や「ミナミ(難波周辺)」のような都心部は利便性が最優先されますが、ファミリー層に人気の「天王寺区」や「阿倍野区」、「北摂寄りのエリア」などでは、「学校区(校区)」や「治安」が家賃にダイレクトに反映されます。
また、同じ町内であっても、大通りに面しているか、一本入った閑静な場所かによって、適正賃料が数万円単位で変わることも珍しくありません。
こうした「ミクロな地域特性」を正確に把握しているのは、地元の取引実績が多い管理会社や事例の多い大手の管理会社だけです。
7-2. 「募集家賃」と「成約家賃」の違いを知る
インターネットで見かける家賃は、あくまで貸主の希望である「募集家賃」です。実際にその価格で入居者が決まった「成約家賃」とは乖離が生じるケースが多々あります。
- 相場より高すぎる設定: 数ヶ月も空室が続き、結果として機会損失(入るはずだった家賃が入らない)を生む。
- 相場より安すぎる設定: すぐ決まるが、年間で見ると数十万円の損をしてしまう。
この「高すぎず、安すぎない」絶妙なライン(成約家賃の最高値)を見極める作業こそが、プロによる賃料査定なのです。
7-3. 「売る」か「貸す」か迷っている方こそ査定を
今は不動産価格が高騰しているため、「貸すべきか、いっそ売却すべきか」と悩まれる方も多いでしょう。
正解を出すためには、正確な数字での比較が必要です。
「今の売却相場」と「将来にわたる家賃収入の合計」を天秤にかけるためにも、まずは「今、貸したらいくらになるのか」というベースラインを知っておく必要があります。
査定を受けた結果、「やはり売却の方が良い」と判断されるのも正解です。 重要なのは、憶測ではなく、専門家が算出した根拠ある数字をもとに、ご自身の資産の最適な活用法を選ぶことです。
ファミリー需要の高まりと賃料上昇トレンドは一過性ではありませんが、最も良い条件で貸せる『今』を逃す手はありません。
8.まとめ
本記事では、不動産鑑定士の視点から「大阪市の賃料動向や市場動向、今後の賃料予測」について解説しました。
大阪市内では、不動産価格の高騰により「マイホーム購入」から「賃貸」へと流れるファミリー層が急増しています。
- 住宅価格の高騰で、購入から賃貸へ切り替えるファミリー層が増えている
- 職住近接を求める世帯が多く、「大阪市内のファミリー物件」は高く貸しやすい
- 転勤者の需要も底堅く、入居付けが安定しやすい
- 不動産価格の上昇に伴い、今後も家賃は上昇しやすい環境にある
かつては貸しにくいと言われた広めの家や分譲マンションが、今では「希少価値の高い資産」として高値で取引される市場に変わりました。記事内でも触れましたが、持ち家を賃貸に出すことは単なる収益化にとどまりません。
誰かが住むことで建物が維持され(通水・換気)、さらに現金ではなく不動産として保有し続けることが、昨今の物価上昇(インフレ)に対する強力な防衛策にもなります。
これらの状況から、空き家やいま使っていない自宅を持っている方にとって、まさに“貸し出しの有利なタイミング” といえます。そして、この好機を活かすには、「適正な賃料設定」と「集客力のある管理会社選び」にかかっています。
「まだ貸すと決めたわけではない」という方も多いかと思います。また、賃料査定を受けたからといって、必ず貸し出さなければならないわけではありません。
しかし、まずは「今の自分の家には、月額いくらの価値があるのか?」 「売るのと貸すのでは、どちらがトータルで得をするのか?」を知っておくことが、将来の選択肢を広げる第一歩です。
そうした将来の判断材料を持つために、まずは現在の資産価値(適正賃料)を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。