賃貸経営の成功は、信頼できる賃貸管理会社を選べるかどうかが成功の鍵を握ります。
トラブル対応や入居率の向上は管理会社の実力で決まることから、管理会社は将来にわたってオーナーの負担軽減や物件の収益性に長期的に影響を与える重要な存在です。
適切な管理会社を選ぶことができれば、より良い賃貸経営を行うことができるようになります。
この記事では、「賃貸管理会社の選び方」に焦点を当て、失敗しないための具体的なポイントを解説します。
目次
1. 賃貸管理会社の役割とは?貸主を多角的にサポート

管理会社は、賃貸経営における実務的な役割を果たす会社です。
アパート経営を1つの会社に例えるとすると、賃貸オーナーは株主兼社長、管理会社は実際に働いてくれる「社員」というイメージになります。
株主兼社長である賃貸オーナーの役割は、経営判断することに対し、
社員である管理会社は、経営判断を実行に移す実働部隊といえます。
具体的には入居者との直接の窓口となり、借主(顧客)からの要望やクレーム、入金の管理、家賃の不払いに対応等多岐に渡る業務を行うのも管理会社の役割です。
関連記事:賃貸管理とは?業務内容と管理会社を活用するメリット、デメリット、選定時のポイントを解説
また、賃貸オーナーが修繕を行うという経営判断を行えば、適切な業者を手配し、修繕を実行に移してくれるのも管理会社の役割です。
このように管理会社は実際に手を動かして多角的にサポートしてくれる存在であるため、貸主の負担を大幅に軽減し、ストレスの少ない賃貸経営を実現してくれる存在となります。
関連記事:家を貸したい人に管理会社をおすすめする3つの理由!賃貸管理会社を選ぶ際のポイントを5つ紹介

竹内英二【資格】不動産鑑定士、賃貸不動産経営管理士
【ワンポイントアドバイス】
入出金管理やクレーム対応、業者の手配だけではなく、空室が発生した際に次の入居者をすぐに決めてくれることも管理会社に期待される大きな役割といえます。
2. 賃貸管理会社と賃貸仲介会社との違い
厳密には賃貸管理会社と賃貸仲介会社は異なりますが、管理会社は賃貸仲介を兼ねていることもあり、両者の違いを理解することは重要です。
- 賃貸管理会社:狭義では物件の管理に特化した会社のこと
- 賃貸仲介会社:入居者募集や契約手続きを行う会社のこと
賃貸管理会社の狭義の業務内容は、以下のようなものが挙げられます。
【狭義の賃貸管理会社の業務内容】
- 家賃の入出金管理
- 鍵の管理
- クレーム対応
- 設備業者・清掃業者等の手配
- 家賃の督促業務
- 契約更新手続き
- 原状回復の確認
一方で、賃貸仲介会社の業務内容は、以下のようなものが挙げられます。
【賃貸仲介会社の業務】
- 入居者募集
- 物件の案内・入居審査
- 借主に対する重要事項説明
- 契約締結業務
賃貸仲介を行うには、宅地建物取引業法の免許が必要となります。
一般的な不動産会社とはこの免許を取得している「宅地建物取引業者」を指します。
つまり、狭義の賃貸管理会社は宅地建物取引業法の免許が不要であるのに対し、賃貸仲介会社は宅地建物取引業法の免許が必要であるという点が違いです。
一般的に賃貸オーナーにとって、空室が発生したときに賃貸管理会社が次の入居者を決めるという役割期待は大きいといえます。
そのため、管理会社には賃貸仲介の役割も求められていることが通常であり、多くの管理会社は賃貸仲介もできる不動産会社が担っているのです。
ただし、仲介部門を持たない賃貸管理会社であっても、賃貸仲介会社と強固な連携を持つことで自社で全てを行う会社より早く借主が決まることもあります。
賃貸仲介会社と連携している賃貸管理会社は、それぞれの地域に特化した賃貸仲介に強い会社と連携しており、自社で全てを行っている会社よりも、その地域の見込み客を効率的に確保できるからです。

竹内英二【資格】不動産鑑定士、賃貸不動産経営管理士
【ワンポイントアドバイス】
賃貸仲介も自社で行う管理会社が必ずしもベストとは限りません。
管理に特化していて、賃貸仲介に強い外部企業と連携している会社なら、サービス全体の質は高くなります。
3. 管理手数料の相場と費用対効果の考え方
管理会社に管理を委託すると、管理手数料が生じます。
管理手数料には一定の相場があり、管理方式によって異なります。3-1.管理委託
オーナーと賃貸管理会社が管理委託契約を締結する管理方式のことです。
管理委託では、賃貸オーナーは管理会社とは管理委託契約、入居者とは直接賃貸借契約を締結する形式になります。 管理委託による管理料の相場は、家賃収入の5%程度です。
管理の種類 | 管理料の相場 |
---|---|
管理委託 | 家賃収入の5%程度 |
パススルー型サブリース | 家賃収入の5%程度 |
家賃保証型サブリース | 満室想定賃料の10~20% |
3-2.サブリース
賃貸管理会社が物件全体を一括で借り上げ、入居者に転貸する管理方式のことです。
サブリースでは賃貸オーナーは管理会社と一棟全体の賃貸借契約を締結し、管理会社が各入居者と賃貸借契約(賃貸オーナーから見ると転貸借契約)を締結し、管理会社が各入居者から直接受領する賃料の中から管理委託料相当額が差し引かれた残りが貸主(賃貸オーナー)に家賃として支払われます。
サブリースには、パススルー型サブリースと家賃保証型サブリースの2種類がありますが、いずれも転貸による管理方式である点やお金の流れは共通です。
パススルー型サブリース
空室状況に応じて管理会社から支払われる賃料も変動するという管理方式になります。
パススルー型サブリースによる管理料の相場は、家賃収入の5%程度です。
家賃保証型サブリース
空室状況に関わらず、管理会社から支払われる賃料が固定となる管理方式のことです。
家賃保証型サブリースは、満室想定賃料の10~20%となります。
例えば、満室想定賃料が100万円で、家賃保証型サブリースの管理手数料が15%とした場合、実際の入居状況に関わらず、賃貸オーナーには常に85万円の家賃が入ってくるということです。
費用対効果としては、管理委託やパススルー型サブリースは費用が少ないですが賃料変動リスクが高く、家賃保証型サブリースは費用が高いですが賃料変動リスクが低くなります。

竹内英二【資格】不動産鑑定士、賃貸不動産経営管理士
【ワンポイントアドバイス】
管理委託やパススルー型サブリースの管理料は、空室部分には管理料が生じていない点が特徴です。そのため、管理会社には空室を埋めようとする動機が働きます。
4. 賃貸管理会社選びの9個のポイント

賃貸管理会社は、やみくもに選ぶのではなく、以下のポイントに着目することで最適な会社を選ぶことができます。
4-1. 物件がある地域での管理実績が豊富である
賃貸管理会社は、物件がある地域において豊富な管理実績がある会社を選ぶことが望ましいです。
地域に根差し、周辺で多くの物件を管理している会社は、地域の相場と借主のニーズに精通しており、周辺地域で物件を探している見込み客も多く抱えています。
間取りや建物の状態を見て適切な賃料を設定でき、見込み客もすぐに案内できることから、借主も早期に決まりやすく、収益が将来に渡り長期的に安定しやすいです。
また、借主のニーズもよく把握しているため、入居者がなかなか決まらない部屋について賃貸オーナーにリフォームの適切なアドバイスを行うことができます。

竹内英二【資格】不動産鑑定士、賃貸不動産経営管理士
【ワンポイントアドバイス】
実績豊富な会社は多くの借主とも接していることから、入居審査も適切です。
トラブルを生じさせにくい善良な借主を選別してくれるため、入居者トラブルを抑制できます。
4-2. 管理物件の入居率が高い
管理実績に自信のある会社は、ホームページで自社の管理している物件の入居率を公開している場合もあります。
目安としては、入居率が95%以上と公表している会社は、管理を託するのに適切な会社です。
ただし、入居率を公開している会社はむしろ少ないため、公開していない場合でも他の項目を考慮して総合的に選んでも問題はありません。
4-3. 賃貸仲介に注力している
不動産会社が行う仲介には、売買仲介と賃貸仲介の2種類があります。
管理を委託するのであれば、賃貸仲介に注力している会社を選ぶべきです。
また、自社に仲介部門を持たない賃貸管理会社であっても、全国の賃貸仲介会社と豊富なネットワークを有している会社や法人集客に強い会社も、賃貸仲介に注力しているといえます。
法人集客に強みを持つ会社は、例えば社宅管理や海外赴任サポートに豊富な実績があり、法人の従業員を借主として直接斡旋できるため、安定した入居者確保に繋がります。
リロの留守宅管理は1万社以上の法人取引が1万社以上。多くの優良法人を抱える独自のチャネルから従業員の方々に物件をご紹介できます。安心して自宅を貸し出したいと思っていたら、ぜひご相談ください。
4-4. 対応できる物件の幅が広い
対応でききる物件の幅が広いことも、管理会社を選ぶポイントです。
アパートや一棟賃貸マンションだけでなく、戸建て賃貸や社宅、店舗、シェアハウス等多様な物件に対応できる管理会社は豊富なノウハウを持っているでしょう。
対応できる物件の幅が広いと、例えば「店舗付き賃貸マンション」のような店舗と住宅が混在している建物でも管理を依頼することができます。
ノウハウの豊富な会社は、トラブルが生じたときの対応力も高いため、早期に解決されることが期待できます。
また、管理の幅に関しては、戸数に関しても柔軟に対応できる会社が望ましいです。
例えば、1戸から管理を対応できる会社であれば、アパートの1室だけをお試しで任せることもできます。
4-5. 複数の管理方式を提案できる
賃貸管理には複数の方式があり、複数の管理方式を提案できる会社の方が貸主の希望をかなえやすいです。
賃貸物件の主な管理方式には、以下の4つがあります。
- 管理委託
- パススルー型サブリース
- 家賃保証型サブリース
- リロケーション
リロケーションとは、主に転勤期間中等の一時的な期間でマイホームを貸し出すことです。
期間限定の賃貸における賃料設定の知識や貸主が転勤先から戻ってきたときに、借主から確実にマイホームを返してもらう必要があるため、特殊なノウハウを有します。
また、契約期間が短期であることから、賃料設定は相場よりも安くすることが多く、適切な賃料設定にはリロケーション市場にも精通していなければなりません。
関連記事:リロケーションとは?特別な契約方法や掛かる費用、注意点を詳しく解説
管理委託やサブリースであれば対応できる会社は多いですが、リロケーションまで対応できる会社は限られています。
転勤期間中だけマイホームを貸したいと考えている人は、リロケーションの実績とノウハウを有している会社を選ぶことが望ましいといえます。
リロの留守宅管理は転勤者の留守宅管理(リロケーション)を日本で初めて事業化した会社です。40年以上の賃貸管理実績で、用途に合わせた様々な賃貸プランをご案内します。
4-6. 幅広いターゲット層の借主に対応できる
これからの賃貸経営では、外国人や高齢の単身者など幅広いターゲット層の借主に対応できる管理会社が非常に重要です。
今後、日本では外国人労働者の増加が見込まれています。
外国人労働者は家を借りることが多いため、賃貸市場において将来性の高いターゲット層です。
外国人労働者は入居を断られるケースが多く、市場のミスマッチが生じています。
このようなミスマッチはビジネスチャンスとしても捉えることができ、貸すことによって収益性の高い物件とすることもできます。
また、単身高齢者も市場でミスマッチが生じているターゲット層です。
単身高齢者は貸主が孤独死の発生を懸念して、貸さないケースがよくあります。
単身高齢者に対応している管理会社は、事故物件化させないノウハウを有しているため、単身高齢者にも安心して貸すことができます。
外国人や高齢者に対応できる管理会社は、これらの層への賃貸ノウハウや、万一の事故物件化を防ぐ対策を持っています。一般的に物件の差別化は通常、投資を伴うものが多いですが、管理会社を変更するだけでターゲット層を広げ、空室対策と収益性向上が期待できるため空室が増えて困っているという方は、外国人や高齢者にも対応できる管理会社を検討すべきでしょう。。
4-7. サービスのIT化が進んでいる
近年は、オンライン内見やIT重説(契約前の重要事項説明をオンラインで行うこと)、電子契約等の賃貸仲介でもサービスのIT化が進んでいます。
賃貸仲介のIT化は、遠方に住んでいる人が物件を探し、契約手続きまで進めることを容易にしてくれました。
IT化に対応している管理会社であれば、遠方の入居希望者を獲得しやすいため、見込み客を多く抱えることができます。
そのため、管理はIT化に対応している管理会社に委託した方が、早く借主を見つけやすいです。
4-8. 営業担当者の対応が誠実である
賃貸管理はサービス業であるため、営業担当者の対応力がそのままサービスの質を決定します。
賃貸管理は一旦管理を依頼すると、長期間、管理会社との関係が続きます。
なんとなく気の合わない営業担当者に依頼してしまうと、その後のやり取りがストレスになってしまうことが多いです。
誠実で信頼できる担当者であれば、今後、些細なことでも相談しやすいため、依頼後の満足度も上がりやすいといえます。最初の面談時などで、担当者の人柄や専門知識、丁寧さなどをしっかり見極めましょう。
4-9. 借主向けサービスが充実している
借主向けサービスが充実していることも、管理会社選びの重要なポイントです。
借主向けサービスとしては、例えば引っ越しをサポートする管理会社も存在します。
引っ越しは賃貸物件を借りる際に同時に検討しなければならないため、このようなサポートがあると借主を決めやすくなります。
また、24時間体制でトラブル対応ができる会社や外部業者との連携ができている賃貸管理会社であれば、借主の満足度も高まり、早期に解約されてしまうことを防ぎやすいです。
入居者の入れ替え時にハウスクリーニング費用や次の入居者を決めるための仲介手数料等の費用が発生するため、借主には長く入居してもらった方が支出の頻度が抑えられ収益性が向上します。
借主向けのサービスが充実しており、入居期間を延ばすサービスを工夫している管理会社は、オーナーの収益向上にも貢献してくれるので管理会社を選ぶ時の指標になります。
関連記事:信頼できる不動産会社の選び方とポイント、家を貸すときは管理会社が重要!
5. 賃貸管理会社で「失敗」を避けるための注意点

管理会社探しはいくつかのコツがあります。
この章では、賃貸管理会社探しの注意点について解説します。
5-1. 安易に一括査定サイトを利用しない
近年は、インターネット上に無料で複数の管理会社に賃料査定を依頼し、管理会社を探すことができる一括査定サイトが登場してきました。
一括査定サイトは、簡単に複数の管理会社との条件を比較できるため、便利なサイトです。
管理会社を選ぶ際、条件を比較することは重要ですので、一括査定サイトの使用には一定の効果はあります。
しかしながら、一括査定サイトはそのサイトに登録されている管理会社の中でしか比較できないため、必ずしも良い管理会社を選べるとは限らないという問題点があります。
実績が豊富で独自に賃貸オーナーを見つけることができる優良な管理会社は、一括査定サイトに登録していないことも多いため、管理会社を探す際は、安易に一括査定サイトを利用せず、自分で管理会社を2~3社探すことをおすすめします。

竹内英二【資格】不動産鑑定士、賃貸不動産経営管理士
【ワンポイントアドバイス】
どのような会社に査定依頼されるかわからない一括査定サイトを使うよりも、実績等を調べて自分で管理会社を探した方が、良い会社を見つけやすいといえます。
5-2. 新築物件では施工会社に任せきりにしない
新築でアパートや賃貸マンションを建てる場合、そのまま施工会社の関連会社に管理を委託するケースが多いです。
施工会社系の管理会社は、建物を熟知しているため、修繕の対応が依頼しやすいというメリットがあります。
しかしながら、施工会社系の管理会社が必ずしも最適な管理会社とは限りません。
特に、施工会社系の管理会社は店舗数が少ないことから賃貸仲介が弱い傾向があります。
施工会社系の管理会社は都市部の中心市街地に店舗を構えているものの、物件が郊外にある場合など、営業範囲外となることがあります。
その場合、賃貸仲介を物件近くの不動産会社に丸投げすることが多く、空室が発生しても賃貸仲介が他社に任せきりとなるため、空室が発生すると次の入居者が決まりにくいという問題が生じることがあります。
そのため、周辺部にある物件では賃貸管理会社を施工会社系の管理会社から独立系の管理会社に切り替えることで、空室が改善されることも多いです。
5-3. 不安があれば一戸からお試しで任せてみる
管理会社によっては、アパートのような集合住宅でも一戸からお試しで任せることができます。
いきなり全部の管理を切り替えることに不安がある場合には、一戸からお試しで管理を任せることをおすすめします。
もちろん、既存の管理会社とは調整が必要です。
例えば「203号室だけ別の管理会社に任せたい」といった対応も可能で現在の管理会社に203号室の管理を外れてもらい、他社に203号室だけの管理を委託します。
お試しで一戸だけを依頼する場合、なかなか入居者が決まらない部屋を任せるのが適切です。
なかなか入居者が決まらない部屋は条件が悪いことが多いため、管理会社の実力を見極めるには都合の良い物件といえます。
任せた部屋ですぐに入居者が決まる、もしくは理にかなったリフォームの提案があるようであれば良い管理会社であるため、全室切り替る検討をすることをおすすめします。
6. まとめ
以上、賃貸管理会社の選び方について解説してきました。
賃貸管理会社は、単なる委託先ではなく、収益性を向上させ、オーナーの負担を軽くしてくれるパートナーです。
管理委託料や知名度だけで判断するにではなく、実績や対応力、提案力等を総合的に見極めて選定することが不可欠といえます。
本記事で紹介した9個のポイントを意識して、長期的に信頼できる管理会社を選んでいただけると幸いです。