転勤には予想できないものもあります。会社から転勤を命じられたときには「購入した自宅をどうすればいいか」で悩む人も多くいます。家族で家を数年間も空けなければならないときに、資産を守るためにやらなければならないことは何なのか。転勤者は難しい判断をしなければなりません。
ここでは、「家を貸す」「家を売る」「家を貸すことも売ることもしない」というそれぞれの選択肢について、どういう場面ではどのようにしていくのが有効かということを解説していこうと思います。転勤に向けた自宅の活用方法・管理方法について、ぜひ参考にしてください。
転勤時に家をどうすれば良いかは、転勤がどれくらい続きそうであるかと、その後の家をどうできれば良いかという想定によって、およその方向性を決めることができます。具体的には次の方法があります。
転勤期間の伸び縮みや、未来の予定がどれほどはっきりしているかによっては、複数の選択肢が残ることもあるので、それぞれのメリットやリスクについて比較検討を進めると良いでしょう。ここからは各選択肢について、特徴を踏まえて、どういう状況でおすすめできるかということを順に解説していきます。
2年より短い期間で借りたい人が少ないため、一般的に2年未満の転勤では賃貸を行うことが難しくなります。
家を借りた人が引越しをするには手間も費用もかかります。引っ越すからには、しばらく留まりたいことの方が多く、短期間の賃貸は「家を改築する間だけ」などの一部需要があるのみです。住み良さそうなら短くとも2~3年は住みたいと考える賃貸需要が多いため、それより短い期間で借りてもらうことは難しくなります。
「公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会」の調査(日管協短観(2022年度データ-第27回)では、賃貸住宅の平均居住期間は、単身者で3年3か月、ファミリー層で5年2か月ほどのようです。
結果的に長く住むということもあるため、最初から長期の契約をする人ばかりではありませんが、物件探しの段階でも住み良さそうなら短くとも2~3年は住みたいと考える人は多く、それより短い期間で借りてもらうことは難しくなります。
参考:第27回賃貸住宅市場景況感調査[2022年4月~2023年3月]『8.平均居住期間(p.16)』)
自宅を貸し出すためには準備も必要です。
家の中を空にして、ハウスクリーニングを行う必要がありコストが発生します。貸し出せる期間が長ければコストの回収期間も伸びるため、それだけ利益を生み出し易くなりますが、期間が足りなければコストの回収が見込めなくなります。
限られた転勤期間中に賃貸をするのに、入居者を見つけるのが長引いてしまえば、それだけ収入も減ってしまいます。需要が少ない2年未満の期間では入居者を見つけることは難しいので、賃貸以外の手段で物件の管理を行い、「空き家」を保守することを推奨します。
転勤になった自宅を空き家にするメリットは次の通りです。
転勤期間が一定以上にあるならば賃貸という選択肢が有力ですが、そうでないならば空き家をそのままにしておくことにも前述のようなメリットが考えられます。
ただし、空き家の状態が長期化する場合には新たな問題が生じます。それらを回避するには一定の管理が必要になります。
転勤中に家を貸し出さないということは、誰も住まない期間が発生することになり長期間の放置には次のようなリスクがあります。
これらのリスクを避けるためにも空き家については一定の管理が必要です。
家の管理を近所の知人や親類に頼めることもあるかもしれませんが、そうでない場合も多い空き家の管理を代行するサービスを利用しましょう。通気、通水、室内清掃などを行い、巡回後には写真とレポートを提出するサービスがあります。
転勤先からしばらく帰れない状況が続いていても、家の状態を確認できることで、心配や不安の種を取り除くことができます。費用はかかってしまいますが、管理が行われることで、大切な資産である家の劣化を抑えることができます。
リロケーション・ジャパンでは、「空き家巡回管理サービス」としてサービスを提供しています。定期的に物件を訪問し、通気、通水、室内清掃などを行い、巡回後には写真とレポートを提出するサービスとなっているため、転勤先からしばらく帰れない状況が続いていても、家の状態を確認できることで、心配や不安の種を取り除くことができます。費用はかかってしまいますが、管理が行われることで、大切な資産である家の劣化を抑えることができます。
転勤期間が2年以上であれば、その間は家を貸し出すことができます。 賃貸を行えば次のようなメリットがあります。
定期的な家賃収入を得ることができるので、住宅ローンを組んでいる場合は賃料収入をローンや他の支払い、生活費にに充てることができます。「空き家」のままにしておくよりも、貸し出しによる家賃を得られる分、経済的なメリットが大きい管理方法です。
家を貸している間は通気・通水が行われ、入居者による清掃も行われます。メンテナンスが自然に行われることで、建物や設備の老朽化を抑えることができます。
空き家の室内は、長期間通気が行われないことで湿度が上がり、結露も生じるようになります。このことはカビや害虫の増殖を促してしまい、畳や建材の傷みを進行させる要因となります。
また、配管に通水が行われないことで、配管の中にある封水が蒸発してしまいます。封水は害虫や害獣、臭気の侵入を防ぐためのものですが、それがなくなることで、侵入した害虫や害獣は増殖し、充満した臭気は部屋に染み付いてしまいます。
人が住まない空き家はより短い期間で資産価値を失ってしまう恐れがありますが、入居者が居住することでこうしたリスクを特別な手間や費用をかけずに防げることは賃貸のメリットです。
売却してしまうと今後その家に住むことはできません。賃貸に出すことで「資産」として自宅を残せます。将来、資金が必要になったとき、売却して現金化することもできます。
転勤時に家を貸すことのデメリットはどのようなものがあるか挙げていきます。
家を貸し出すためには、家を空けなければなりません。室内の家具等は処分をしたり、運び出したりする必要があります。貸倉庫を借りること、荷物を運び出すこと、不用品を処分に出すこと、譲渡すること、売却すること、賃貸をする場合、こうしたことに多少の手間や費用をかけなければなりません。
家具や荷物をどかしただけで部屋を貸し出せるとは限りません。家を貸すには、入居者が借りやすい状態に部屋を整える必要があります。リフォーム等の工事は必ずしも必要とはなりませんが、ハウスクリーニングと呼ばれる清掃業務は多くの場合で必要となります。賃貸管理会社を介すなどして清掃業者を手配し、床や壁面、水回りなどを清潔にしていきます。余計な費用をかけてしまったり、賃貸がうまくいかなかったりすると、なかなか出費を回収できず、損をしてしまう恐れがあります。
入居者から設備(エアコンや給湯器)が壊れたと連絡があった場合、原因が入居者の側にある場合などを除けば、貸主は遅滞なく故障を直さなければなりません。空き家の設備がもし壊れていても、それをいつ直すかはその家の持ち主次第ですが、人に貸し出している家に関しては、設備も含めて問題なく使える状態に保たなければなりません。
参考:「第六百六条(賃貸人による修繕など)」[民法|e-GOV 法令検索]
転勤期間中だけ家を貸したい場合には、次の点に注意してください。
転勤のときは、賃貸期間を限定することができる定期借家契約、または一時使用賃貸借契約を契約として用いる必要があります。これらの契約では、入居者は賃貸期間終了までに必ず退去することが求められるため、帰任後にスムーズに自宅に戻ることができます。
注意点として、普通借家契約と異なり、賃貸が行われる期間を限定するため、家賃は普通借家契約の相場よりも、少し低めに設定することが一般的です。
普通借家契約は、貸主から契約解除や更新の拒否を原則的には行えないため、帰任のタイミングに合わせて自宅に戻ることは難しくなります。転勤で家を貸す場合は、予め明確な期限を定めておく定期借家契約か、転勤であれば用いることができ定期借家契約より柔軟に解約時期を調整できる一時使用賃貸借契約を選びましょう。
住宅ローンは、居住目的の住宅を取得する場合に限った融資です。住宅ローン対象の家に契約者本人(あるいは契約上で認められている家族など)が住まない場合、住宅ローンの完済または他のローンへの借り換えが原則必要になります。
ただし、転勤等のやむを得ない場合は元の条件をある程度引き継げる場合があります。この場合、融資元の金融機関やローンの契約内容によって変わるため、住宅ローンの残債が残る状態で家を貸したい場合には、契約を見返した上で金融機関にも相談しましょう。
家を貸し出し、家賃収入を得た場合、不動産所得に計上されます。
不動産所得が年間20万円を超える場合は、ご自身がお住まいの所轄の税務署に必要な書類を提出の上、不動産所得の所得税を納税しなければなりません。
納税期間は2月16日から3月15日で、前年の1月1日から12月31日までの1年間分の所得を計算します。
尚、海外に転勤の場合は、納税管理人を選定し納税します。
転勤期間が非常に長期間にわたると想定される場合や、今後も戻ってくるかどうか「よく分からない」というような場合は、売却によって家を手放してしまうのも選択肢です。
ある程度の築年数が経っているなど家の状態を考慮し、大規模なリフォームが必要になることもあります。賃貸でも売却であっても、リフォームが必要な場合はありますが、賃貸管理会社で概算の賃料査定をし 賃貸収入で得られる収入と、建物や設備のリフォームにかかる費用を考えたときに、賃貸収入よりも、リフォームなどの初期費用が大きくなるようであれば、リスクのことを考えて、売ってしまうことを検討した方が、資産の活用方法として有効ということもあり得ます。
中古の住宅やマンションであれば、好きなようにリノベーション工事をして入居したいと考える購入者もいるため、売却前に大きなリフォームをせずに済む場合もあります。
リロケーション・ジャパンでは、賃料の3年分をまとめて前払いすることで、初期費用のリスクを抑えて賃貸を行えるようにするサービスとして「リロの空き家再生」というサービスもありますが、近い将来に大きな出費が見込まれている場合や、ほかの投資先を検討する目的など、早期に確実に現金化しておきたい事情があるならば売却がおすすめです。
リロケーション・ジャパンは、賃貸だけでなく売買も取り扱っているため、両方合わせて検討している場合の相談にも対応することができます。
「リロの空き家再生」について、詳しくはこちら
転勤時に家を売却するメリットは次の通りです。
不動産は言葉通りに動かしづらい資産です。「物理的に」ということもありますが、権利の移動や価値の変動についても言えることでしょう。一方で現金は人から人へ自由に動かし易い資産です。物品やサービスの支払いに使うことが可能であり、不動産に限らない他の資産とも交換しやすいものです。
家を売却して、予め資産を不動産から現金に変えておけば、何か必要な支払いがあったときに困りません。
現金の貸し借りをすると金額や期間に応じた利息が発生します。
住宅ローン等で借金がある場合には、売却によって得られた現金で残債を減らし、利息の支払いも減らすことができますが、住宅ローンが残っている物件の売却は、ローンを組むときに設定された抵当権の抹消ができなければ難しくなります。
住宅ローンは売却に伴い完済することが一般的です。
現金の管理というと、入出金時や送金時の手間や手数料が考えられますが、不動産の管理には別途コストがかかります。マンションの場合は管理費や修繕積立金が維持費としてかかります。固定資産税や火災保険料を支払う必要もあります。家を売却すればそれらのコストは不要になります。
転勤時に家を売却するメリットは次の通りです。
家の売却は、不動産会社に売却価格の査定を依頼することから始まります。家の売却が成立するまでには、不動産会社とのやりとりや媒介契約、売買契約の締結など、賃貸とは異なる目的で時間と手間が発生します。
賃貸管理を委託するための手数料のように継続的に払い続ける費用は不要となりますが、売却であっても不動産会社への仲介手数料は必要となり、司法書士への報酬等といった費用も別途発生します。リフォームにかかる費用の差と合わせて、これら手続き等で必要となる初期費用の違いも賃貸と比べておく必要があるでしょう。
売却してしまうと帰任後に住む家を新たに見つけなければなりません。長期的に快適に過ごすための家を見つけようと思うと、慎重に決めたいと思いますが、それに伴い家探しの手間も増えていきます。 所有していたのが愛着のある地域の持ち家であるならば、転勤から戻ったときに、同じ地域や似た地域に、もう一度住みたくなるかも知れません。
マイホームの再購入を検討するにせよ、賃貸住宅を探すにせよ、手放してしまった家と似たような条件の家を、探しているタイミングで都合よく見つけられるとは限りません。見つけた家に住むためには、仲介手数料、引越し費用がかかり、賃貸住宅であれば家賃もかかります。マイホームの再購入であれば、登記費用もまた必要となりますし、場合によっては、審査を受け直して住宅ローンを組み直す必要も出てきます。 これらの手間や費用は、売却の際には覚悟しておくべきデメリットとして、予め見込んでおくべきでしょう。
家を貸す、家を売る、空き家のままで管理のみ行うといった家の管理方法・活用方法をご紹介しました。
見通しが立ちづらい状況や、初期費用の負担が心配であるならば、売却もメリットがあり、検討しやすく、また、転勤の期間が2年未満など短い場合は、賃貸を考えるより、空き家にし、かつ空き家の管理を依頼することで、家を守ることができます。賃貸期間を2年以上確保できるのであれば、帰ってきたときに家の心配をしなくて良く、経済的なメリットも大きい、家の管理にもつながるといった点で、賃貸運用が活躍する場面は多いでしょう。
どの管理方法を選んでも、それぞれにメリットとデメリットがあります。 家族の状況や金銭的な面、様々な希望を踏まえた上で、一体どの管理方法が最も適しているのか、悩ましい場合には専門家の意見を聞くことも1つの手段です。
リロケーション・ジャパンでは、賃貸管理サービスの「リロの留守宅管理」を提供しているだけでなく、売買、空き家管理サービスも取り扱っており、無料でこれらのご相談を承っております。 これまでの経験に基づいた我々の話がヒントとなることがあるかもしれません。 お悩みの際にはどうぞお気軽にご相談ください。
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