賃貸経営を行うに当たって、賃貸管理にどういう方法を採るかは、その後の成否を大きく左右するものです。賃貸物件を持つ多くのオーナーが何かしらの賃貸管理サービスを利用していますが、それらのサービスの中には「管理委託」「サブリース」といった異なる枠組みのサービスが存在し、どちらのサービスを利用しているかによって、得ているメリットも多少なり異なっています。
また、それらの賃貸管理サービスを用いることなく「自主管理」という形で賃貸経営を行い、より大きな成果を上げているオーナーも存在します。
本稿では、「そもそも賃貸経営において賃貸管理とはどういう業務を指しているのか」、「提供されるサービスにはどういう種類があるのか」、また、「それらを自主管理で行う場合との違い」といったことについて説明していきます。これから賃貸経営を行う場合は、「どういう賃貸管理サービスを選ぶことにどういう意味があるか」といったこと、あるいは、既に自主管理で賃貸経営中の場合は「手数料をかけて賃貸管理サービスを利用すると何がどう変わるのか」といったことについて、考えるきっかけや参考にしてみてください。
賃貸経営を始めたからといって、必ずしも毎月家賃収入が得られるというわけではありません。
賃貸物件としてインターネット等で入居者募集されている物件の中には、入居者が決まらず空室のまましばらく経っている物件も存在します。
賃貸経営で安定した家賃収入を得るには、物件の規模、内容等を総合的に考慮した賃料を設定し、ターゲットにそのことが伝わるように広告活動を行ったうえで、入居者を獲得したあとは、退去が早まるようなことがないように適切に賃貸管理を行う必要があります。
ここではまず、賃貸管理において行われる業務の内容と、それらを行う上での方法に関する選択肢について解説していきます。
一般に賃貸管理と呼ばれる業務、具体的にはどういったことが行われるのでしょうか。大まかに分けると以下のような項目が挙げられます。
賃貸管理会社に管理を委託した場合、オーナーに代わって上記の管理をするほか、賃貸経営のプランニングについてオーナーの立場で考えて相談にのるコンサルティング業務も行います。
自主管理の場合は、賃貸運営に関する知識などを自ら収集し、自分自身でプランを立てて賃貸経営することになるため、リスクが高くなりがちです。
賃貸管理は自主管理、管理委託、サブリースの大きく3つに分けられます。
自主管理とは、先ほどの管理をすべてオーナーが行うことです。そのため、オーナーの負担が大きく、収益が得られるかどうかはオーナーの手腕にすべてかかっています。
対して管理委託は、手数料を支払い、管理業務を賃貸管理会社に委託する方法です。賃貸経営に必要なほとんど全ての業務をまとめて代行するようなサービスもありますが、入居者募集を中心に、会計業務、出納業務など、プロが関わることで楽になる一部の業務のみを行うといったサービスもあります。
そしてサブリースとは、業者がオーナーから賃貸物件を借りて、第三者に貸し出す転貸(てんたい)のことです。この場合の賃貸管理も、管理委託同様に手数料を支払うことでプロに管理業務を任せるものですが、オーナーと賃貸管理会社との契約について、ただ業務委託契約を結ぶだけでなく、物件について賃貸契約も結ぶという点で異なります。「賃貸管理会社はオーナーにとっての直接の借主」という関係がつくられることで、結果としてオーナーの業務負担が最も軽減されるのがサブリースの特徴です。
最適な管理形態は人それぞれなので、自分に合う管理形態を選ぶことが重要です。それぞれの管理形態のメリット・デメリットを整理していきましょう。
自主管理のメリットとデメリットは、以下の通りです。
メリット | デメリット |
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自主管理は、管理委託と異なり、入居者・建物とすべて自分で関わることになります。賃貸中に何かあれば、連絡は直接自分で受けることになるので、いち早く情報を受け取り、自分が望む対応を望むままに行う事が可能です。賃貸管理会社は様々なケースに立ち会って、スムーズに対処するための知識を身に付けていることが多いので、一般的には、状況の把握も業者の手配も個人で行う場合よりも、対処を速やかに行えます。しかし、もし自主管理を行う人が、十分に賃貸経営に熟達している人であれば、入居者との間で齟齬なくコミュニケーションを取った上で、互いに納得できる方法を選び取り、速やかに対処を実行といったことができるかも知れません。間に業者が入らない分スムーズに解決するということがあり得ます。また、入居者にとって、「〇〇さんという個人の家を借りている」という認識になりやすい分、互いに気遣いや遠慮が生まれやすいというような心理的な面での関係性の違いも生まれるかも知れません。この辺りは、良い面も悪い面もありそうです。
自主管理では、すべて自分で判断してコントロールができ、自由に賃貸経営が行えます。一般的に家賃収入の5~10%程度となる管理手数料もかかりません。そうしたメリットと引き換えに、業務の負担も責任もオーナー自らのものとなります。問い合わせや入居者の要望への対応、家賃の督促など入居者に要求を伝えなければならない場面もあり得ます。設備に不具合があれば修理の業者を手配し、時には物件に直接足を運ばなければならない場面もあるでしょう。また、賃貸経営を行う中では、賃料をいくらに設定するかなど、成否に関わる判断や、事故などの予期せぬ出来事に直面する場面がありますが、自主管理の場合、これらによって生じるリスクは自らで負うこととなります。
これらがあるので、自主管理を行うためには費用以外に、時間の余裕、気持ちの余裕だけではなく、豊富な知識、資金の蓄えといったものが必要です。
管理業務の多くを賃貸管理会社に委託するメリットとデメリットは、以下の通りです。
メリット | デメリット |
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費用をかけて賃貸管理会社を利用するメリットは、一言で言えば「賃貸管理会社のサポートを受けることで、賃貸経営が簡単に始められて、簡単に続けられるようになること」です。まず、覚えなければならないことや、考えなければならないことが随分減ります。それから、やらなければならないことも、利用するサービスによっては大部分がなくなります。
入居者からの問い合わせについて、オーナーが直接受ける必要がなくなり、サービスによっては24時間受付の入居者対応サービスなども提供されるなど、入居者への対応がスムーズに行われることで、入居者の満足度も高くなり、結果としては入居者が退去せずに長く賃料を払って住んでくれる期待が高まります。
自主管理では入居者獲得から賃貸管理まで、賃貸経営の多くがオーナーの手腕に左右されます。対して管理委託ではプロのサポートを受け、これらを代行してもらえるほか、適切なタイミングで修繕等も行われ、資産価値の大幅な下落を防ぐ効果が期待できます。
本業などほかの仕事に普段どの程度の時間を割いているかにもよりますが、副業として賃貸経営を考えている場合には、賃貸管理会社のサービスを利用することは、ほぼ必須と言えるでしょう。多忙なサラリーマンが空いた時間で行うには、自主管理で行う賃貸経営の諸業務は量が多く難しくもあります。賃貸経営の収入面だけでなく、必要な時間の面、かかるストレスの面も考えたとき、管理委託は手数料として支出も増えますが、代わりに得られる恩恵は大きなものになります。
サブリースを選択するメリットとデメリットは、以下の通りです。
メリット | デメリット |
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サブリースは賃貸管理会社が契約当事者となるのが大きな特徴です。管理委託よりさらにオーナーの負担を軽減できる点が、大きなメリットといえるでしょう。賃貸管理会社が契約当事者となり、家賃滞納者に対しての家賃督促や明け渡し訴訟等の法律行為も行うことができます。
そのため、可能な限り管理の手間やリスクをなくしたい人には、サブリースがおすすめです。特に転勤等で賃貸管理に割ける時間が少ない場合や、遠方の物件(居住エリアから)を相続して管理が難しい場合などによく選ばれる賃貸管理方法です。
賃貸管理会社の負担や責任が重くなるため、賃貸経営はさらに簡単になり、オーナーの管理業務の負担は軽くなりますが、一般的には管理委託よりも手数料がやや高めに設定されています。
各管理形態の特徴はわかったものの、どの管理形態を選べばいいかよくわからない人も多いと思います。
各管理形態のうち、どれを選んだらいいかの大まかな基準を以下にまとめました。選ぶ際の参考にしてください。
・賃貸経営を本業にして生計を立てたい→自主管理
未経験の方であれば、まずは集客の進め方、契約の交わし方など最低限の知識を習得することが必要です。事前の知識が多いほど、始めたときのリスクを下げられますが、ある程度学習したら覚悟を決めて、失敗しながら身に付けるということも時には必要かも知れません。
業界の理解のために、最初は管理委託やサブリースといった何らかのサービスを利用してみるというのも一つの方法かも知れません。
・手軽に賃貸管理を始めたい→管理委託
程度は利用するサービスによってまちまちですが、賃貸管理会社に業務を委託すれば、賃貸経営を始めるハードルは随分と下げられます。人によっては、ローンや確定申告のことで銀行や税務署に問い合わせたり、調べたりしなければならないことがあるかも知れませんが、賃料設定、入居者募集、出納、契約・解約、精算といった賃貸管理に関する業務を殆ど任せられます。サービスによっては基本的に任せっきりにしてしまうこともできますが、時にはオーナーとしての判断が求められる場面もあります。賃貸管理会社からはどういうことを任せられるサービスなのか、どういうときにどういう判断が要るのかを聞いて、自分が任せたい範囲で頼れそうなサービスを選びましょう。
・可能な限り管理の手間やリスクをなくしたい→サブリース
賃貸管理会社とも賃貸借契約を交わし、貸主と借主の間で生じる法的な義務や権利を活かして賃貸中のリスクを賃貸管理会社により強く負わせることができるのが、サブリースによる契約です。賃貸管理会社が賃貸管理を行う中で、貸主・借主でないとできないことまでできるようになるので、より柔軟にサービスを提供できるようになります。
一般的には得られる利益が抑制される代わりに賃貸経営のリスクを抑えるために利用されるサブリースですが、サブリースの中には多様なサービスが存在します。運用を楽にするために転貸を行うだけの比較的シンプルなサービスもある一方で、空室時の家賃保証がつくようなものであると契約内容が複雑化しやすく、代わりにどういったリスクが生まれるのか分かりづらいものもあるので注意しましょう。
自主管理はそれを実現すること自体が難しいのですが、一方で、賃貸管理サービスを利用する場合は、業務を任せる賃貸管理会社、あるいはサービスを選ぶことに悩まされることが多いかと思われます。実際にいくつかの会社を調べて、それぞれと会ってみても、「渡された資料に書かれた値段以外に何が違うかよく分からない」といった人もいることと思います。
手数料がいくらかかるかはもちろん大切なことの一つですが、一般的には高いサービスほど楽になることや安全に運営できるということがあります。同じ業務を代行するサービスであっても、各社の規模や歴史によって生じる業務の質や重要視していることの違いは存在します。実際にサービスを利用しないと事前にすべてを理解するのは難しいことですが、ここでは少しでも自分にあったサービスが選べるように、事前に注目しておきたいポイントを挙げておこうと思います。
・サブリース(転貸)かどうか
多種多様な賃貸管理サービスの大まかな分け方として、前述したような、サブリースかどうかという観点があります。サブリースを取り扱っていない会社、サブリースも取り扱っている会社、専らサブリースで賃貸管理を取り扱っている会社、それぞれが存在します。
賃貸経営を安全重視で行いたい場合は、サブリースであることが一つ大きな安全性につながります。色々なサービスがあるため、サブリースならどれも安全ということは言えないのですが、それでも、転貸で契約を結ぶこと自体がオーナーの賃貸経営の負担を軽く、難易度を下げることは一般的に言えることです。それゆえ、転勤(リロケーション)などで初めて賃貸経営を行う方は、サブリースで提供されるサービスが推奨されます。
ちなみに、問い合わせ時に「サブリースは取り扱っていますか?」などと問い合わせると、賃貸管理会社は答えに慎重になるようなことがあります。これは「空室時の賃料を保証してもらえる賃貸管理は頼めますか?」という意図で質問をしている人が一定割合いると考えられるためです。たとえば、当社のサービスは転貸(=サブリース)で提供していますが、これには「空室時の賃料支払保証」を含みません(一部でこれを含むサービスも提供しています。また、空室時ではなく家賃滞納時の賃料は保証されます)。そうしたややこしい話があるので、「賃貸管理会社がオーナーと賃貸借契約を結ぶか」という意味でサブリースのサービスを提供しているか確認を行う際には「契約は転貸ですか?」などと聞いた方がきっとスムーズです。
・自分の委託したい賃貸管理業務が業務内容に含まれているか
管理委託では日常的な入居者対応業務や家賃集金、設備の修繕手配などが賃貸管理会社の主な業務です。サブリースではこれらに加えて入居者のトラブル対応や法的措置も任せられます。
その他、管理委託・サブリース問わず「これは任せたい」という業務があれば、委託できるかどうかまず聞いてみましょう。そもそもどういった業務やサービスが存在するのか知りたいときは、最初にリロケーション(転勤・転居に伴う賃貸)を取り扱っている会社から当たってみることをおすすめします。料金の安さよりもサービスの手厚さ・保証のラインナップといったことを重視している賃貸管理会社から話を聞くことで、実際に依頼しないとしても、一通りどういったサービスがあるのか効率的に情報収集することができます。賃貸管理サービスの中でもリロケーションサービスを利用する人たちの中には初めて賃貸経営を行うという人が多いため、そうした人たち向けにサービスやその説明が準備されている点もおすすめする理由です。
・管理委託費(手数料)が任せられる内容と比べて見合っているか
サービスの料金が妥当かを考えるときに、二つの観点があると思います。
一つは、サービスによって受けられる家賃などの恩恵が、かけている費用に釣り合っているかという絶対的な視点、もう一つは、似ている他のサービスと比較して料金の差があるときに、その差に対して受けられる恩恵が十分大きいか、という相対的な視点です。先に前者で考えて、サービスを受ける価値があると思えるものを見つけ、その上で慎重を期す場合には、よりリスクを小さくするために、必要なだけサービスの候補を増やし、後者の考え方で一番良いものを選ぶという順序で考えることが多いと思います。迷ったときには改めてこうした順序を考えて整理してみると良いかも知れません。
見つけたサービスがたくさんある場合、候補を広げすぎると、答えを出すのに時間がかかってしまうので、絶対的な価値が見合っているサービスがあるならば、ある程度の段階で見切りをつけることも調査の時間や労力を無駄にしないためには大切です。はじめは大手を中心に数社まで、既に他社との違いが見当たっていて、気になっている会社があれば、そこを含めて話を聞いてみることをおすすめします。
・頼れる経験や知識を持っているか
賃貸管理会社を活用するメリットのうち大きなことの一つは、賃貸管理会社であれば、個人レベルでは獲得できない量の知識や経験を保持しているため、それらを活かして業務を遂行してもらえたり、判断に迷ったときの相談にのってくれたりすることです。長期にわたり、沢山の戸数を管理していれば、それだけ豊富な知識を蓄えている可能性は高く、今後受けることができるサービスの発展も見込めます。そうした会社の賃貸管理サービスを利用すれば、得られる恩恵もより大きなものになります。単に事業年数と管理戸数が多いかどうかだけでなく、自身と同じような状況、同じような物件をより多く取り扱っているかが分かれば、選定するにあたってより重要な参考となるかも知れません。
賃貸管理とは、賃貸経営を行う上で、リスクをコントロールしながら家賃収入を安定的に生み出すために諸業務をこなしていく行為です。
具体的に業務とは、家を貸し出せる状態に整え、賃料などの貸し出しの条件を設定し、入居者を募り、契約を交わし、必要な集金や支払いを行い、設備の修繕など貸主の義務に応え、借主にも責任を果たしてもらい、最終的に精算を済ませ、必要であれば再度貸し出せる状態を作るといった一連のことです。
賃貸管理会社は手数料を受け取ることで、これらを部分的に、あるいは丸ごと引き受ける会社のことです。引き受けるにあたって、管理委託と呼ばれる方法とサブリースと呼ばれる方法があり、前者は代理や代行というように、単に賃貸管理会社がオーナーの業務を契約に従って代わりに行うのみですが、転貸とも呼ばれる後者は、賃貸管理会社が物件をオーナーから借りて、さらに入居者に貸し出すことで、借主貸主としてできる業務を増やしつつ、同時にその義務や責任を負うものです。
賃貸管理の方法には賃貸管理会社に任せるだけでなく、自主管理という方法もありますが、手数料がかからない代わりに、必要な知識や経験はかなりの量になるため、たとえ収入のために興味があったとしても、初めての賃貸管理であれば、まずは賃貸管理サービスをフル活用することがおすすめです。査定を申し込んで、話を聞くだけでも色々なことが得られると思います。
賃貸管理会社を選ぶ際のポイントもいくつか挙げましたが、まずは当社(リロケーション・ジャパン)のサービス「リロの留守宅管理」について、査定の申し込みなど、お問い合わせいただくことをおすすめします。それは、数ある賃貸管理会社の中で、当社がリロケーションという分野において、1984年から取り組んできたパイオニアであるためです。リロケーションをどこよりも長く豊富に取り扱ってきたからこそ、当社のサービスは、転勤中で遠方にいるオーナーや忙しいオーナーでも、安心して賃貸管理を任せられるサービスとして作られており、サブリース(転貸)であることや、数々の保証が組み合わせられることなど、リスクの抑制が重視されたサービスになっています。そのため、賃貸管理がどういうものかを理解する上でも、参考となるようなサービスを一通り取り揃えているという特徴があります。
また、賃貸管理をどこに頼むか探しているならば、まずは当社サービスについて問い合わせることをおすすめする理由について、当社が転勤中の賃貸に関する案件を多く取り扱ってきたことがあります。当社の場合、賃貸市場においてたくさん存在している、例えば「投資用の賃貸マンション、同じ造りのワンルーム中心で一棟丸ごと、長期間かけてうまくいかせるための賃貸」のようなケースではなく、一般的に賃貸管理が難しいとされる、市場においては希少なケース、「賃貸期間が一時的」「一戸建てや分譲マンション(戸別)の物件、ファミリー向け」というような案件を比率として多く取り扱ってきています。多種多様なケースにおいて知識や経験を保持しており、そのことを賃貸管理の業務に活かせるという強みが当社にはあるのです。
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