海外赴任中の持ち家をどうするかの選択肢として、売る・貸す・空き家の3つの方法があり、本記事ではそれぞれのメリット・デメリットなど解説します。
中でも、海外赴任中だけに持ち家を賃貸に出す方法をリロケーションといい、リロケーションの注意点や確定申告の方法についても解説しています。
海外赴任が決まり、「持ち家をどうするか」不安をお持ちの方に対して、分かりやすく解説していきます。
家族をマイホームに残して単身赴任という選択肢もありますが、やはり新しい土地でも家族と一緒に暮らしたいものです。その場合、持ち家については「売却」「賃貸」などの選択肢が考えられます。また「空き家」として残す方法もあります。海外赴任中持ち家をどうするかは、赴任期間が2年以上であるかと自宅に戻る意思があるかが大きなポイントになります。
赴任期間が2年未満であれば、単身赴任または家族帯同でも空き家として持ち家を維持管理していくのがよいでしょう。
赴任期間が2年以上であり、帰任時に持ち家に戻りたいと考えている場合は、赴任期間中の持ち家を賃貸で活用しながら維持管理していくのがよいでしょう。
赴任期間終了後に別の赴任先へ向かう、持ち家に戻る予定がないという場合は、売却してしまうことで資金を新たな用途に充てることができます。
それぞれの選択肢のメリット・デメリットについて解説していきます。
赴任期間が長期間にわたる場合でも、愛着のある持ち家を手放したくない、他人にも使われたくない、という場合は空き家として残しておくのが良いでしょう。
持ち家を空き家として残す場合は、次のようなメリットがあります。
まず帰国した際に宿泊施設を探す必要がありません。これが最大のメリットと言えるでしょう。また、赴任先に持っていかない荷物をそのまま保管しておくことができるうえに、海外赴任が終わり、日本に完全帰国する場合にも住居が確保されているという安心感があります。
持ち家を空き家として残す場合は、次のデメリットがあることを把握しておかなければいけません。
高温多湿の日本では、空き家で閉めっぱなしにしておくと、湿気などで大切な家が傷んでしまいます。キッチンやお風呂、トイレなどの設備も、長期間使われない状態が続くと劣化してしまい、適切な管理をしていないと、海外赴任から戻った際に住めなくなってしまいます。
また、人が住んでいない家は、不法侵入や放火など、犯罪にあいやすくなります。戸建の場合は防犯カメラを設置するなど、防犯対策をしっかり行いましょう。
固定資産税は家を所有している限り、支払い続けなければなりません。住宅ローンが残っている場合は、住居費が赴任先の家賃と二重の支払いになる可能性があります。海外赴任中は住宅ローン控除が受けられないため、家計の状況によっては支払いが重荷となるでしょう。
空き家を維持するためには適切な管理が必要です。月に1回程度、通水や換気などを行い、雨漏りなどがないかも確認し、劣化を抑制します。親戚や知人などに頼む、または不動産会社などが提供する空き家管理サービスを利用する方法がありますが、いずれにしても管理費用を支払う必要があるでしょう。
持ち家を空き家として残すのは、次のような人におすすめできます。
赴任期間が短ければ短いほど、管理費を安くすませられます。さらに、住宅ローンの支払いが終わっていれば、二重支払いを避けられるので、低コストで家を維持できます。
また、赴任中に定期的な一時帰国の予定がある場合も、空き家のままにしておくのが良いでしょう。一時帰国の際に住み慣れた家で過ごすことができ、帰国後も赴任前の生活にスムーズに戻ることができます。
赴任期間が長期化する場合は、家の売却も検討しましょう。
持ち家を売却するメリットは次の通りです。
買主が決まり、家が売却できればまとまった現金を得られ、住宅ローンの返済や赴任先での生活費に充てることができます。
さらに空き家や賃貸にした場合と異なり、売却後は持ち家を管理する必要がなくなり、固定資産税などの管理コストもなくなるため、余計な出費に頭を悩ませる必要がなくなります。
持ち家を売却する場合、次のようなデメリットが発生します。
売却時に得たお金で住宅ローンを完済できれば問題ありませんが、住宅ローンが残ってしまった場合は、持ち家の売却はできません。それでも売却したい場合は、抵当権を設定している金融機関の了承のもと、任意売却をするか、競売にかけることになるでしょう。
売却を不動産会社に依頼する場合、契約成立時に仲介手数料が発生します。取引額によって異なりますが「売買価格×3%+6万円+消費税」となることが一般的です。加えて、持ち家の売却によって利益が得られた場合には所得税が課せられます。確定申告が必要になりますので、忘れずに行いましょう。
なお、一度持ち家を売却してしまうと、同じ家を買い戻すことは非常に難しくなります。人気の地域であれば、似たような物件を見つけることも難しいでしょう。
持ち家を売却する際には、次のような注意点も把握しておきましょう。
売却の条件が揃っていたとしても買主がすぐに見つかるとは限りません。代理人を立てれば赴任先からでも売却は可能ですが、手続きが煩雑になるため、売却すると決めた場合は赴任までに売れるようすぐにでも行動に移しましょう。
また、不動産市場の状況によっては、売却時に損をしてしまうことも考えられます。まず、新築で購入したばかりの物件は、売却の際は中古扱いとなり、価値が大幅に下がってしまいます。一方で、持ち家のある地域の不動産価格が上昇傾向にある場合は、数年後により高く売却できる可能性や、売却して買い直す際に売却額よりも高い価格で購入しなければならない可能性もあるでしょう。
メリット・デメリットを踏まえたうえで、持ち家の売却は次のような人におすすめです。
赴任期間が長期化すればするほど、管理費がかかるため、長期赴任が決まっている人ほど売却のメリットを享受しやすいでしょう。特に家族構成が変化する見込みがある場合は、元の家では手狭に感じ、帰任後に結局売却するというケースも考えられます。帰国後に新居を探すことになるのであれば、赴任と同時に売却しておけば無駄に管理費がかかるのを避けられます。また、帰任予定がない場合も、売却して現金化することで、赴任先での新居購入などの費用に充てることができます。
デメリットでも触れたとおり、住宅ローンの残債がある場合は売却できないので、住宅ローンを完済する必要があります。全額を現金で用意できていなくても、売却金額で一括完済できれば問題ありません。
不動産価格の上昇の見込みがなく、むしろ今後売却しづらくなるような地域の場合は、売却して資産を現金化しておくことで、赴任中の悩みを減らすことができます。
海外赴任をきっかけに持ち家を賃貸として、他人に貸し出すのも1つの手です。賃貸にする場合は、次のような契約方法があります。
普通借家契約 | 定期借家契約 (リロケーション) |
一時使用賃貸借契約 (リロケーション) |
|
---|---|---|---|
契約期間 | 2年ごとが基本 | 期限となる日付を予め設定する |
帰任するまで ※ただし、「短くても○年間」という保証期間を2年以上設ける |
更新の有無 | ○ | × ※双方が合意した場合を除く |
× |
中途解約の可否 |
× ※正当な事由がある場合は除く |
× ※期間満了の半年~1年前に予告が必要 |
○ ※保証期間内での解約不可 ※解約日の3か月前に解約予告が必要 |
海外赴任で持ち家を賃貸に出す場合は、契約期間が帰任するまで、かつ3か月前までに予告すれば中途解約が可能な一時使用賃貸借契約が特におすすめです。
持ち家を賃貸に出すメリットは次の通りです。
住宅ローンが残っている場合は継続して支払いが必要ですが、賃貸に出す場合は家賃収入を得られるため、これを充てることができます。固定資産税などのランニングコストも同様です。
空き家と異なり、入居者がいることによって雨漏りや設備故障に気づいてもらいやすいため適切な管理が期待でき、修繕費などの管理コストを家賃収入で賄えます。
リロケーションであれば帰任時に賃貸を終了できるため、帰任後に持ち家に戻ることができる点もメリットのひとつといえるでしょう。
持ち家を賃貸に出す際には、次のデメリットが発生することを頭に入れておかなければいけません。
賃貸に出す場合、入居者が持ち主と同じくらい家を丁寧に使ってくれるとは限りません。小さな子どもがいる場合やペットを飼育している場合などは、破損や汚れによる修繕リスクが高まります。
また、家賃の滞納や設備の故障といった入居者からの問合せに対応しなければなりません。経年劣化など通常の生活での使用による故障であれば、貸主に修繕義務があるため、修繕コストもかかります。
こうしたデメリットを最小限に抑えるためには、賃貸管理会社に持ち家の管理を委託するのが良いでしょう。契約内容にもよりますが、設備故障時の対応から家賃滞納時の督促まで任せることができます。また、一定額までの修繕費用を賃貸管理会社に負担してもらえる保証サービスなどを利用すれば、急な出費を抑えることができます。賃貸管理会社に委託することで管理費用が発生しますが、デメリットの大半が軽減でき、賃貸運営のほとんどを自分がやらなくても、家賃収入を得ることが可能になります。
持ち家を賃貸に出す際には、次の注意点にも気をつけましょう。
住宅ローンを利用している場合、原則として賃貸に出すことが認められていません。転勤や海外赴任中の賃貸であれば認められる場合もありますが、金利の高い賃貸ローンに借り換えが必要となることもあります。
また、入居者が決まらなければ家賃収入を得られず、維持管理費用だけかかり続けてしまいます。転勤期間が短い場合や賃貸需要のない地域など、借り手が見つかりにくい場合は、空き家か売却を検討しましょう。
持ち家を賃貸に出すのがおすすめの人の特徴は次のとおりです。
赴任期間が2年以上であり、ある程度決まっていて、帰任後に子どもの学校の関係や住み慣れた環境に戻りたいといった理由で、自宅に戻る意思がある場合は賃貸がおすすめです。賃貸でも特にリロケーション(定期借家契約、一時使用賃貸借契約)を選択すれば、帰任後もスムーズに日本の家に戻れます。
また、賃貸に出せば家賃収入が得られるので、住宅ローンの返済に充てられるのもメリットです。
家賃収入がどれくらいになりそうかは、管理会社へ賃料査定を依頼することで、大まかな金額を把握できます。海外赴任であれば、リロケーションに強そうな賃貸管理会社を中心に、賃貸実績が多い大手の賃貸管理会社にも合わせて査定依頼をしてみましょう。
海外赴任の間、持ち家を賃貸に出す場合は、リロケーションがおすすめです。リロケーションとは、転勤や海外赴任の間だけ貸し出すことを言います。家賃収入を得られ、入居者に生活してもらうことで持ち家を維持管理できます。通常の賃貸と異なり、契約期間は貸主によって決められるうえに、基本的には更新もありません。そのため、帰任後はスムーズに自宅に戻れます。
リロケーションを行う流れは次のとおりです。
リロケーションを行うためには、まずリロケーション会社を選ぶ必要があります。会社によって提供されるサービスや対応が異なるため、リロケーションを行う場合は早めにリロケーション会社の比較を行いましょう。
住宅ローンの返済中にリロケーションを行う場合は、次の点に注意が必要です。
住宅ローンは契約者本人が住むことを前提としたローンであるため、賃貸には適用されません。そのため、住宅ローンの残債があるうえで賃貸に出す場合は、金融機関の許可が必要になります。交渉次第では住宅ローンを継続できますが、一括返済や金利の高い不動産投資ローンへの借り換えとなるケースがあることを頭に入れておきましょう。
また、リロケーションを行った年は住宅ローン控除を受けられない点にも注意が必要です。リロケーションでない場合は、単身赴任で家族が住宅に住み続けることで住宅ローン控除を受けられますが、家族帯同で海外赴任する場合は住宅ローン控除の対象外となります。ただし、いずれの場合でも帰任後に住宅ローン控除の期間が残存している場合は、再適用を受けられます。
海外赴任の際の住宅ローン控除については、下記の記事で詳しく解説しています、
海外赴任中に国内の持ち家をリロケーションで賃貸した場合の家賃収入は、不動産所得となり所得税がかかるため、確定申告が必要です。課税対象額は、次の計算式で求められます。
不動産所得=総収入金-必要経費
1年以上の海外赴任の場合、1年以上日本に住所を有していない「非居住者」として扱われます。そのため、海外赴任中の確定申告は代わりに確定申告をしてもらう「納税管理人」を選任し、納税義務者に代わって一切の手続き(納税通知書の作成・受領・納税・還付通知の受領・還付金の受領など)を行ってもらいます。納税管理人の専任は必須で、個人法人を問いません。
当社では海外赴任者ためのサポートサービスとして「確定申告サポートサービス」があります。海外赴任中に日本国内で発生する不動産賃貸収入等の確定申告を、弊社が所得税の納税管理人となり申告手続きを代行します。
海外赴任中の持ち家をどうするかは、赴任期間と赴任後に自宅に戻る意思があるかどうかで対応が分かれます。自宅に戻る意思がある場合は、売却の選択肢はなくなります。自宅に戻る意思があり、かつ2年以上の赴任期間があり、空いている自宅を活用して家賃収入を得たい人は賃貸が最適な選択肢になり得るでしょう。
賃貸の場合は、赴任期間中に家賃収入を得られるので、住宅ローンの支払いがあってもそれほど苦に成りません。一方、空き家のままにしておくと、通水や換気が行われないため持ち家へのダメージが蓄積されていく懸念があり、耐久年数や資産価値の減少が考えられます。また固定資産税も掛かることから出費の面でも懸念があります。
結論として海外赴任時の持ち家をどうすれば良いかは赴任期間や帰任後にどうしたいか、子供の状況などで様々な選択肢があります。海外赴任期間中にも状況は変わるでしょう。そのような時は信頼できる不動産会社に相談しアドバイスを求めると良いかもしれません。
「リロの留守宅管理」はリロケーションを日本で初めて事業化した会社として、40年以上の賃貸管理実績があります。海外赴任時に持ち家をどうするかお困りの場合は、ご希望やご状況をお伺いしながらサポートいたしますので、ぜひ一度ご相談ください。
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