マンションを貸したい!流れ・費用・税金・住宅ローン・注意点を解説
急な転勤などの理由で購入したマンションに住めなくなった場合、マンションを「貸す」という選択は、資産を活用するための有効な方法として考えられます。
この記事では、マンションを貸すときのメリット・デメリットや節税のコツ、貸す流れや知っておきたい注意点を紹介します。リスクを避けつつ資産を有効活用したい方は、このコラムをぜひ読んでみてください。
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目次
1. マンションを貸したい!貸す前にすること
分譲マンションを貸す前には、まず「本当に貸せる状態か」「貸して採算が合いそうか」を確認することが大切です。
実際には管理会社への相談とあわせて進めることが多いものの、その前にご自身でも押さえておきたい基本事項があります。ここでは、マンションを貸す前に確認したいポイントを整理して解説します。
1-1. 金融機関へ確認する
分譲マンションを貸す際、住宅ローンが残っていたら原則貸すことはできません。
住宅ローンが残ったマンションを貸すにはローンの一括返済が条件になります。
ただし、転勤や親の介護など、やむを得ない事情で将来的に再入居の予定があれば、住宅ローンのままで賃貸を認めてもらえることもあります。
金融機関によって対応は異なるので、融資先の金融機関に事前相談しましょう。
また、再審査が必要になる場合もあり、貸すことが決まったら早めに相談しましょう。
関連記事
【住宅ローンでも賃貸に出せる】転勤時に持ち家を賃貸する方法|金融機関への伝え方、注意点を解説
1-2. 火災保険の切り替えをする
持ち家として加入していた火災保険は、多くの場合「居住用」を前提とした契約になっています。
賃貸に出す場合は、賃貸用(施設賠償責任などを含むプラン)への切り替えが必要です。
自宅用の火災保険のままにしておくと、入居者の過失で水漏れなどの事故が発生した際に、補償の対象外となってしまう可能性があります。
また、昨今の気候変動により大雨や地震などの自然災害で被害が出そうなことを想定して
「水災補償」のオプション、「地震保険」への加入を検討してもいいでしょう。
保険会社や代理店に「賃貸に出す予定がある」ことを伝え、適切なプランへの変更手続きを行いましょう。
1-3. 管理規約や使用細則の確認をする
分譲マンションには、管理組合が定めた管理規約・使用細則があります。
多くのマンションでは賃貸に出すこと自体は禁止されていませんが、以下のような点を事前に確認しておく必要があります。
- 賃貸に出す際の管理組合への届出義務の有無
- ペット飼育の可否や楽器演奏など、入居者にも適用されるルール
- 民泊など特定の用途を禁止する規定がないか
管理規約に違反した募集をしてしまうと、入居後にトラブルとなり、契約解除や損害賠償に発展するケースもあるため注意が必要です。
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2. マンションを貸したい!貸すまでの流れ
分譲マンションを貸すまでの一般的な流れは、以下の通りです。
2-1. 賃貸管理会社へ相談と賃料査定
分譲マンションを貸す際、まずは賃貸管理を専門とする会社に相談し、賃料査定や募集条件のアドバイスを受けます。
仲介(客付け)に強いだけでなく、入居後のトラブル対応や退去時の精算まで、ワンストップで適切に処理できる管理会社を2~3社を選定し、賃料査定を申し込みます。
担当者の知識量やレスポンスの速さサービス内容を比較しましょう。
貸す目的が転勤による期間限定の貸し出しの場合は「リロケーション」の実績がある管理会社を選定するなど貸し出す目的によって、管理会社を使い分けましょう。
2-2. 契約方法と管理方法を選ぶ
「普通借家契約」で長く貸し出すか、「定期借家契約」等で期間を区切るかを決定します(詳細は9章にて解説)。
目的によって契約方法も使い分けましょう。また、管理会社にどこまでの業務を委託できるか(サービスの範囲)もこの段階で確認しましょう。
2-3. 賃料や募集条件を決める
2-1.賃貸管理会社へ相談と賃料査定で行った査定から相場に合った適正な家賃を設定します。
家賃を相場より高く設定すると空室期間が長引き、結果的に得られる総収入が下がってしまうケースが多いため、管理会社に相談しながら現実的な水準に設定することが重要です。
賃貸サイトに出ている賃料は募集賃料になり厳密にいえば成約賃料と異なります。
成約賃料は募集賃料にくらべ、少し固めに考えておくとよいでしょう。
近隣エリアの類似物件の賃料価格を調べておくと相場感がつかめます。合わせて、ペット飼育、喫煙、楽器演奏、などの条件を加えていきます。
2-4. 入居者の募集・審査
賃貸管理会社により、広告作成や不動産ポータルサイトへの掲載手続きが行われます。
申込みが入ったら、入居審査(勤務先・年収・連帯保証人や保証会社の利用有無など)を行います。
「入居して近隣とトラブルを起こさない常識的な人物か」という定性的な部分や家賃の滞納歴、過去のトラブルの有無も明確になります。
審査結果は管理会社が共有され、貸すべきか、否かのアドバイスもあります。
最終決定は貸主ですが、プロの意見も参考に賃貸借契約に進むかどうかを判断します。
入居審査も賃貸管理会社(仲介会社)の業務内で費用が発生しません。
2-5. 賃貸契約を締結する
条件が整ったら賃貸借契約を締結し、敷金・礼金・初回家賃等の受領後、鍵の引き渡しを行います。
契約時には入居者へ重要事項説明が必要になり、仲介会社・管理会社が対応します。
この段階で、家具や家電を搬出しハウスクリーニングも済ませておきましょう。
マンションを貸す際に不明確な点や「こんなときはどうすれば良い?」ということがあれば、リロの留守宅管理に一度ご相談をください。賃貸管理に関する、資料のご請求はこちら
3. マンションを貸したい!適してた物件は?
分譲マンションを貸すにあたり適しているマンションは一般的に次の傾向があります。
- 駅近であるか
- 病院や学校、ショッピングセンターなど商業施設が徒歩圏内にあるか
- 宅配BOX、ドアモニター、オートロックなど利便性、セキュリティ性のある物件か
- 遮音性、遮熱性のある造りになっているか
築年数が古いマンションの場合はリフォームをすることで貸しやすくなるかもしれません。
リフォーム時は、マンションの規約でリフォームの制限をしている場合もあります。事前にマンション規約や管理組合に確認しましょう。
もし、上の4つに当てはまらなくても、心配する必要はありません。
駅から離れた静かな立地が好きな方や、子供がおらずこだわりの少ない方など、それぞれのニーズに合う入居者は必ずいます。
マンションを貸すのが適しておらず、賃料が思ったほどではなくても転勤期間中だけ貸す場合なら、賃料は生活費の足し程度に割り切ることも、ときとして必要かもしれません。
大きな公園が近い、高速道路の入口までのアクセスが良いなど、自分では気づきにくい魅力が実は評価されるケースも少なくありません。
そうした物件ならではの強みを見つけ出すのも、不動産会社の腕の見せどころです。
4. マンションを貸すと儲かる?収支シミュレーションの考え方
分譲マンションを貸して「儲かる」かは、ケースバイケースで必ずしも「儲かる」とは限りません。
また、投資の世界では1物件よりも複数物件や1棟を運用することで儲けにつなげている場合もあるようです。
その場合も、ある程度の年収や蓄えが必要なことなど様々な諸条件が必要になります。
一方、転勤期間中に限ってマンションを貸す場合は儲けを追求するより、貸主が対応できないことがほとんどなことから、いかに安全に貸せるかを主眼においたほうが良いでしょう。
簡易的な収支の考え方は以下の通りです。
家賃収入 −(管理費+修繕積立金+管理委託手数料+固定資産税・都市計画税÷12+ローン返済額)=月々の手残り
「家賃収入がまるごと利益になる」というイメージとは大きく異なります。
さらに、退去時のハウスクリーニング費用(10万円〜20万円程度)や、空室が1〜2ヶ月発生した場合の逸失家賃を年間ベースで考慮すると、より正確な収支が分かるかもしれません。
儲け=収益を優先するあまり、相場より高い賃料を設定したり、委託手数料の安さだけで選んだりすることは考え直した方が良いでしょう。
下記の関連記事でマンションを貸す際に詳しいシミュレーション方法や考え方を解説しています。
関連記事
マンションを貸して本当に儲かる?失敗しない全知識と収支シミュレーションを徹底解説
5. マンションを貸したい!貸す際の費用

家賃収入は全て儲け(収益)にはなりません。マンションを貸す際の賃貸運営に関わる「経費」が必ず発生します。資金計画を立てる上で、これらの費用を事前に把握しておくことが必須です。
5-1. 貸す前にかかる費用(初期費用)
賃貸に出す前段階でかかる主な費用は以下の通りです。
- 軽微な補修・修繕費用(数万円~数十万円)
壁紙の張替え、床・畳の修復/交換、建具の立て付け修理など、生活に関わる箇所を中心に行います。 - 火災保険(賃貸用)の保険料
- 仲介会社への広告料(客付けを強化したい場合に貸主が任意で支払う費用。広告の強化を実施し借主が決まれば成功報酬として仲介会社へ支払う費用です。家賃の1か月相当を支払うことが慣例です)
- 鍵の交換費用
セキュリティの観点から、貸し出す前にシリンダー交換を行うのが一般的です(1.5万〜3万円程度) - 事務手数料
不動産会社によっては、契約手続きなどに対する事務手数料が発生する場合があります。費用の名称や金額、発生するタイミングは会社によって異なるため、不動産会社に確認しましょう。
5-2. 賃貸中にかかる費用
賃貸中は、以下のような費用が継続的に発生します。
- 管理費・修繕積立金(マンション管理組合へ支払うもの、貸主負担)
- 賃貸管理委託手数料(契約種別によるが家賃の5~10%程度が相場)
- 固定資産税・都市計画税
- 賃貸用火災・損害保険料
- 修繕費(エアコンなどの設備故障時の工事費)
5-3. 退去後にかかる費用
- ハウスクリーニング費用(10万円~20万円程度)
入居前に貸主が負担する費用で水回り、キッチンの汚れなど専門の業者に依頼します。
6. マンションを貸すか売るか判断するポイント
実際にマンションを「貸す」か「売る」で迷う方は多くいらっしゃいます。どちらが正解ということではなく、ご自身の状況に合わせて判断する必要があります。
6-1. 将来また住む予定があり流動性の高いエリアなら貸す選択肢
転勤からの帰任予定がある、など、将来的にそのマンションを使う可能性が考えられる場合は、貸すことをおすすめします。
売却してしまうと再び同条件の住まいを探すコストがかかるため、期間を区切って貸せる「定期借家契約」などを活用しながら、空き家にしておくよりも多くのメリットを享受できます。
6-2. 住む予定のないマンションは売却
相続されたマンションなどで「今後住む予定が一切ない」マンションの場合、売却して早期に資金化する方が賢明です。
特に、前述した「賃貸向きの立地(駅が近い、周辺に利便施設があるなど)」に該当しない物件は売却がおすすめです。
駅から遠く賃貸需要が薄いエリアで無理に賃貸経営を始めると、長期間の空室リスクに晒され、
家賃収入がないのに毎月の管理費や修繕積立金だけを支払い続ける「負債」になってしまう恐れがあります。
マンションを貸す、売るか、一般論だけでは決めきれません。
想定賃料やローン残債、築年数、今後の住む予定まで含めて整理すると、自分に合った方向性が見えやすくなります。
マンションを貸すか、売るかを関連記事で詳しく解説していますのでこちらもご確認ください。
関連記事
マンションは貸すか売るかどっちがいい?【メリット・デメリットを解説】
迷う場合は、賃料、売却の査定を行い両方の条件を並べて比較してみるのが近道です。
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7. マンションを貸すメリット

分譲マンションを空き家のままにしたり売却せず、マンションを貸すときにはどのようなメリット・デメリットがあるのか、整理しておきましょう。
7-1. 家賃収入を得られる
最も分かりやすいメリットは、毎月安定した家賃収入が得られる点です。
管理手数料は発生しますが、空室にしておくよりも、たとえ手残りが少額でも収入があることは資産活用として大きな意味を持ちます。
仮に家賃滞納があっても、保証会社が補償してくれます。
また、貸すことで自然と通風や通水が行われることで室内を密閉した空き家に比べ、物件が痛まない、人が住むことで放火などの犯罪の抑止にもつながります。
7-2. 将来また住むことができる
売却と違い、将来的に自分や子供が再びそのマンションに住める余地を残せるのは、貸すことの大きな利点です。
今すぐの可能性がなくても子供が大学生になったときに住まわせる という選択肢も生まれます。
あらかじめ、定期借家契約で貸しておけば、契約期間満了時に契約を終了させ、
自分たちの住まいとして戻すことも可能です。
7-3. 資産として活用できる
マンションを貸すことは、資産を保有しながら収益を生み出せるため、
将来の資産形成の選択肢を広げておけるというメリットもあります。
マンションという不動産を保有し続けることは、現金だけでなく複数の資産を持つ「分散投資」の一環にもなり、リスクヘッジの観点でもメリットがあります。
また、周辺エリアの再開発など地価が上がりそうな売却のタイミングを見極めながら、当面は賃貸で活用するという柔軟な戦略が取れます。
7-4. 節税できることがある
マンションを貸して家賃収入を得る場合、所有している物件にかかる固定資産税や管理費、修繕積立金などは確定申告で経費として計上できます。
その結果、課税対象となる所得金額を抑えられ、節税につながります。
経費として計上できる項目については、11章で詳しく解説します。
また、将来の相続対策としても有効です。
売却して現金で残すと相続税は高いので不動産で保有したほうが、相続税を抑えられる可能性があります。
これは、相続税の計算基準となる「相続税評価額」が、実際の売買価格(時価)よりも低く設定される傾向があるためです。
特に、賃貸に出している物件は「貸家」としての評価減(借家権割合の適用)が加わり、
空室のまま保有するよりも評価額がさらに下がるケースがあります。
8. マンションを貸すデメリット

8-1. 空室リスクがある
入居者退去後、次の入居者がなかなか決まらないことがあります。
特に周辺の賃貸需要が乏しいエリアや、築年数の古い設備のままの部屋は、空室期間が長期化するリスクがあります。
空室中も管理費・修繕積立金・固定資産税の負担は続くのでその間は負債を抱えることになるでしょう。
賃貸募集では、退去から次の入居までに平均で3ヶ月程度かかることが多い傾向があります。
募集時期により、賃料も増減する傾向があるので家賃設定は賃貸管理会社とも相談し、
「家賃収入が途絶えるより、少し安くしてでも早く入居者を決めた方が家賃が入るから得」と考えるのがおすすめです。
8-2. 近隣トラブルなど賃貸経営特有のリスクがある
マンションを貸す際、入居者による騒音・ゴミ出しルール違反・家賃滞納などのトラブルは、発生し得るリスクです。
特に自主管理の場合、貸主自身がクレーム対応や督促を行う必要があり、精神的・時間的な負担が大きくなります。
管理会社に管理を委託していれば、こうした一次対応を任せられる点は大きな安心材料になります。
実際の管理現場でよくあるのは、「上下階・隣戸との生活音トラブル」「共用部での自転車・駐車場をめぐる苦情」「ゴミ出しルール違反への注意」といった、分譲マンション特有の細かなトラブルです。
持ち家として住んでいた頃は気にならなかったルールも、入居者には明確に伝える必要があり、募集時の要項や契約時の説明や書面での案内が重要になります。
海外赴任などですぐに現地対応ができない貸主にとっては、こうした一次対応を管理会社に任せられるかどうかが、賃貸経営を安心して続けられるかの分かれ目になります。
8-3. 賃料の下落リスクと費用の発生
築年数が経過し価値が下がることで賃料を下げざるを得なくなることが考えられます。
長期的な視点で考えると賃料の値崩れ、人件費の高騰から手数料が上がる可能性もあります。
また、築年数の経過と共にエアコンや給湯器の設備も故障しやすくなり、故障した場合は10万円以上の出費になりやすいです。
加えて、賃貸管理会社に管理を委託する場合、賃料に対し5~10%前後の管理手数料が発生するのと、初期費用としてハウスクリーニング費が発生します。
8-4. 使いたいときに使えない
例えば、海外赴任での一時帰宅、療養で自分のマンションを使いたいと思っても入居者がいれば、そのようなことはできません。
空室の場合は使えるのでは?と思いがちですが、家具や家電は搬出していること、鍵を賃貸管理会社に預けること、その期間に内見の予定が入っているなどしたら、なお難しいでしょう。そのような場合は、ホテルやウィークリーマンションを借りるのが一般的です。
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9. マンションを貸す際の契約方法と管理方法
分譲マンションを貸す際には3つの契約方法と管理方法があります。
9-1. 賃貸借契約の種類
賃貸借契約には、以下のように「普通借家契約」「定期借家契約」「一時使用賃貸借契約」の3つがあります。
| 普通借家契約 | 定期借家契約 | 一時使用賃貸借契約 | |
|---|---|---|---|
| 契約期間 | 基本的に1年以上の期間を設定(※1) | 契約時に契約期間を設定 | 一時使用の目的を果たすまでの期間 |
| 契約の更新 | 可 | 不可 | 不可 |
| 貸主からの解約申し出 | 正当事由がない限り不可 | 期間満了をもって解約可(※2) | 一時使用の目的を果たすことにより解約可(※3) |
| 契約方法 | 口頭でも書面でも可 | 書面(または電磁的記録)でのみ可 | 口頭でも書面でも可 |
| 賃料 | 賃貸市場の相場 | 普通借家契約の8~9割 | 普通借家契約の8~9割 |
| 用途 | 対象の家に住まず永続的に貸し出す場合 | 転勤などの場合 | 転勤などの場合 |
- ※1:期間の定めのない契約も可
- ※2:期間満了の6ヶ月〜1年前までの間に解約予告が必要
- ※3:解約日の3ヶ月前までの事前告知が必要
各契約の特徴は以下の通りです。
普通借家契約
普通借家契約は入居者側の住む権利が強く守られる契約方法です。
普通借家契約では、契約期間を1~2年とすることが一般的です。入居者の意向があれば、基本的に契約は更新されます。貸主側の理由で契約を解除することは難しい契約となっています。
貸主からの契約解除には、正当事由が必要とされ、単に自分が住みたいので明け渡してほしいという理由では、契約解除できません。
再び住む可能性がある場合や、転勤などで一時的に貸し出したい場合は普通借家契約ではなく、他の契約を用いた方が無難です。
定期借家契約
定期借家契約はあらかじめ満了日を設定し、契約期間の満了とともに契約が終了し更新ができない契約方法です。
ただし、貸主・借主双方が合意すれば再契約をすることができます。
確実に退去を求められる安心感がある一方で、普通借家契約での賃料に対して1~2割安くしないと決まりにくい注意点があります。
理由は、借主が長期で住めず、物件探し、引っ越しの費用や手間が発生するからです。
退去を求める際は、契約期間終了の1年~6か月の間に解約予告を行います。
ここでの注意点は、最初に設定する契約期間は貸す際の保証期間になり、この期間は貸主から解約をすることはできません。
予定が早まったとしても、保証期間内は解約を求めることはできません。
例えば、最初に設定する期間が2年であれば、その2年間は貸主へ物件を貸す保証期間になります。1年半で家が必要になっても、残りの半年間は仮住まいを探すことになります。
一時使用賃貸借契約
一時使用賃貸借契約は、法律上の理由から利用できるケースが限られており、一般的には転勤期間中の一時的な賃貸であることが明白な場合に限り利用できます。
契約方法は、定期借家契約同様、あらかじめ満了日を設定し、契約期間の満了とともに契約が終了し更新ができない契約方法で、貸主・借主双方が合意すれば、再契約をすることができます。
賃料設定も定期借家契約同様で、相場に対して1~2割安くしないと決まりにくい注意点があります。
定期借家契約との違いは、「契約条件をどこまで柔軟に設計できるか」にあります。
定期借家契約は、あらかじめ「○年○月○日まで」と契約期間を定め、その期間が満了すると契約が終了します。
一時使用賃貸借契約も同様に契約期間をあらかじめ定めますが、転勤という目的に合わせて、解約予告のタイミングなどを個別の特約として柔軟に設計できる点が特徴です。
ただし、どちらの契約であっても、最初に設定した契約期間中は貸主都合で契約を終了させることはできません。
転勤が延びたからといって契約期間が自動的に延長されるわけではなく、逆に予定より早く帰任が決まったからといって、すぐに契約を終了できるわけでもありません。
転勤期間や帰任予定を踏まえ、契約内容と特約をあらかじめ明確にしておくことが重要です。
なお、契約種別に関わらず、借主が騒音やゴミ出しなどで近隣住民とトラブルを起こすような社会生活上、通常受忍すべき限度を超えていれば退去は可能であると考えられます。
ただし、その判断は関係する事情を総合的に考慮してなされることに加え、借主が退去に応じない可能性もあります。
参考:民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改定版)[国土交通省]
9-2. マンションを貸すときの管理方法
マンションを貸すと入居者の対応など、多岐に渡った「賃貸管理」が発生します。
- 自主管理:入居者募集から家賃回収、入居者対応、退去立ち合いや敷金の清算まで賃貸管理に関わる全てを貸主自身が行う方法です。管理手数料はかからないものの、専門知識や手間が必要になります。
- 管理委託:管理会社に入居者対応や家賃回収などの業務を委託する方法。賃貸借契約の種類(難易度)によって異なりますが家賃の5~10%程度の手数料がかかります。
日常的な対応は管理会社が行うので大幅に負担を軽減されるため、賃貸運営では管理委託が一般的な管理方法となります。
ちなみに、3つ目は「サブリース」という管理方法になりますが、一般的に一棟物件での管理方法になることが多く、マンション1室を貸すことを想定しているため、割愛させていただきます。
10. 管理会社選びで確認したいポイント
例として「管理手数料と募集力の差に因果関係があるとしたら」考えてみます。
一般的な普通借家契約の管理手数料は5%程度です。
管理手数料3%の賃貸管理会社と契約したが、借主募集の客付け力が弱く、入居開始が伸びた場合以下のように収益が悪化し取り返せない事態に陥ります。
つまり、賃貸運営で重要なのは、手数料の安さより募集ルートの多彩さを活用した早期成約ができるかです。
加えて、マンションを貸す社内体制(経験やノウハウ)や会社全体の管理実績や物件周辺の管理実績の多さも決め手になるでしょう。
手数料が安い分、サービス範囲が狭く、自身が対応するようだと本末転倒です。対応範囲、トラブル時のサポート体制までトータルで確認することが大切です。
11. マンションを貸すときにかかる税金と節税のポイント
分譲マンションを貸して得た収入には税金がかかりますが、経費を正しく計上することと、支出が収入を上回った年の制度を理解しておくことの2点を押さえておけば、必要以上に税金を払いすぎることを防げます。
11-1. 不動産所得にかかる税金
マンションを貸して得た家賃収入は、不動産所得として所得税・住民税の課税対象になります。
不動産所得は「総収入金額−必要経費」で計算され、給与所得など他の所得と合算して総合課税により税額が決定します。
年間の不動産所得が20万円を超える場合(給与所得者の場合)は、年末調整とは別に確定申告が必要です。確定申告は、所得があった翌年の2月16日〜3月15日の間に行います。
11-2. 経費にできる主な費用
不動産所得の計算上、以下のような費用を必要経費として計上できます。
- 管理費・修繕積立金(管理組合へ支払うもの)
- 賃貸管理委託手数料(管理会社へ支払うもの)
- 固定資産税・都市計画税
- 賃貸用火災保険料(その年の分のみ)
- ローンの利息部分(元本部分は経費にできません)
- 減価償却費(建物部分について、耐用年数に応じて計上)
- 広告費(客付けを強化したい場合に貸主が任意で支払う費用。必須ではなく、広告を実施するかどうかは貸主が判断します。)
- 交通費(不動産会社と打ち合わせにかかった費用)
- 通信費
- 修繕費・ハウスクリーニング費用
これらを漏れなく計上することで、課税所得を適正に抑えることができます。
特に減価償却費は現金の支出を伴わない経費であるため、収支上は黒字でも税務上は赤字になる、というケースも珍しくありません。
なお、経費にできるのはあくまでマンションの賃貸経営に関わる支出のみです。
プライベートな支出まで含めてしまうと、後から追徴課税の対象になることがあるため、領収書は必ず保管しておきましょう。
11-3. 赤字が出た年の損益通算と確定申告
修繕費が多額にかかった年や、減価償却費の計上によって、帳簿上の「不動産所得」がマイナス(赤字)になることがあります。
これは、実際の手取りが減ったという意味ではなく、経費を漏れなく計上した結果、税務上の所得計算だけがマイナスになるというケースがほとんどです。
この赤字は、会社員としての給与所得から差し引くことができ、これを損益通算と呼びます。
結果として全体の所得が低く計算されるため、払い過ぎていた所得税が還付され、翌年の住民税も安くなります。
青色申告承認申請書を提出しておくと、区分マンション1戸を貸す場合でも10万円の青色申告特別控除が受けられるなど、税務上のメリットもあります。
12. マンションを貸すときの注意点
分譲マンションを貸すときの注意点を解説します。注意点を知ることで事前に準備できることもあり、貸す前に項目だけでも知っておいてください。
12-1. 家具や家電は置いていけない
マンションを貸す際は、物件から家具や家電を搬出いただくことになります。
転勤期間中だけの期間限定で貸す場合でも同様です。
「室内の一か所にスペースを作り、そこに家具家電を置いたままでも問題ないか」事前相談できる場合もありますが、故障や傷つけた際の対応などが煩雑になるのでトランクルームに預けるなど貸す前に家具家電の処分を決めておくようにしましょう。
ただし、エアコンやカーテン、照明(シーリング)、洗浄機能つき便座、ビルトインタイプの食器洗浄機などは置いたままで構いません。
12-2. 住宅ローン控除と適用期間を確認する
住宅ローン控除は自己居住が前提としているため、マンションを貸している期間は、原則として住宅ローン控除(減税)を受けることができません。
たとえば、10年間の住宅ローン控除の適用期間中のうち、転勤によって4年間控除を受けられなかった場合、住宅ローン控除は6年しか受けられません。 住宅ローン控除の適用期間は延長できません。
ただし、転勤などの「やむを得ない事由」で一時的に転居し、その後再びそのマンションに戻ってきて居住を再開した場合、控除期間の残存年数分については、手続きを踏むことで再び適用を受けられる特例があります。
事前に「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を税務署に提出する必要があるため、必ず手続きを確認してください。
関連記事
転勤中の住宅ローン控除(減税)はどうなる?賃貸する場合や適用条件と手続きについて解説
12-3. 禁止事項を設けておく
契約書の特約として、バルコニーを含む専有部分内での喫煙禁止、ペットの飼育禁止や楽器演奏の禁止、又貸し(転貸)の禁止など、管理規約に基づく禁止事項を明記しておくことがトラブル防止につながります。
管理規約の内容を入居者にきちんと伝えることも、貸主・管理会社の重要な役割です。
12-4. 入居前に室内の状態を記録する
入居前の室内の状態を写真や動画で記録しておくことは、退去時の原状回復費用をめぐるトラブルを防ぐ上で非常に重要です。
入居者が退去する際の「原状回復費用」の負担割合(貸主が払うか、借主の敷金から引くか)は、マンションを貸す際に揉めやすいポイントです。
貸主、借主の相違を防ぐため、入居者が鍵を受け取る前の段階で、管理会社の担当者に「室内の現状写真(壁の小さな傷、フローリングの凹み、建具の状態など)」を詳細に撮影してもらい、チェックリストを作成して貸主・借主双方で合意・共有しておくことが、防御策となります。
13. よくある質問
13-1. 転勤中だけマンションを貸すことはできる?
可能です。
将来戻る予定がある場合は、契約の更新をしない「一時使用賃貸借契約」や「定期借家契約」を活用することで、あらかじめ契約期間を決めて貸し出すことができるので、帰任後にスムーズに再入居できる契約です
ただし、住宅ローンが残っている場合は、必ず事前に金融機関へ相談してください。
13-2. 管理会社の手数料相場はどれくらい?
一般的な管理委託の相場は家賃の5~10%程度が相場です。
賃貸管理会社のサービス内容、マンションを貸す目的で賃貸借契約の内容も変わるため詳しい手数料は管理会社に確認しましょう。
管理会社の業務範囲が多いほど手数料にも反映されやすいですが、手数料の安さだけで選ぶと結果的にオーナーの負担が増えたり、入居決定まで時間がかかるケースも考えられるため、サービス品質とのバランスで判断してください。
13-3. 空室期間を短くするにはどうすればいい?
空室期間を短くするためには、周辺相場に見合った家賃設定にすることが何より重要です。
相場より高すぎる家賃設定は、内見数自体が減ってしまい、結果的に空室が長期化する原因になります。
許せる範囲ギリギリで競合物件より賃料を落とすことを検討しても良いでしょう。
また、集客チャネルが多彩の管理会社に委託することで一般的な募集ルートに加えて独自のルートがあれば、それだけ空室期間が短くなる可能性があります。
加えて、小規模のリフォームを実施しても競合物件との差別化につながる可能性があります。
周辺の類似物件はどのような設備が完備しているかなどを確認して自分の物件と比較し、管理会社に回収期間のシミュレーションをしてもらい決定しましょう。
管理会社は複数社相談し、募集開始時期や条件を柔軟に見直せる体制のできるか確認しておくことをおすすめします。
13-4. 退去時の原状回復費用は借主に請求できる?
退去時に原状回復費用の全額を借主に請求することはできません。
国土交通省のガイドラインでは、原状回復を「借りた当時の状態に完全に戻すこと」ではないと明確に定めています。
通常使用による損耗(自然損耗)や年月の経過による劣化(経年劣化)の修繕費用は、貸主(オーナー)負担となるためです。
【借主(入居者)負担となる範囲】
入居者の故意・過失、不注意、あるいは掃除を怠ったことによる汚損・破損は借主負担となり、敷金から精算(不足する場合は差額を請求)します。
【経過年数による負担割合の調整】
ただし、借主負担となる場合でも、入居期間に応じて負担割合が考慮されます。
例えば、壁紙(クロス)の耐用年数は6年とされており、6年経過すると残存価値は1円(または10%程度)まで下がります。
そのため、仮に入居者の過失で壁紙に傷をつけてしまった場合でも、借主に請求できるのは残存価値分の費用で全額を請求できないのが実情です。
なお、家具設置によるへこみ、日光による壁紙の色あせ、冷蔵庫裏の黒ずみ(電気やけ)などは経年劣化・自然損耗にあたるため、原則として貸主負担となります。
13-5. マンションは貸すのと売るのではどちらがよい?
将来また住む予定がある、資産として保有を続けたいという場合は「貸す」、
収支が見合わない、今後住む予定が全くないという場合は「売る」を検討するのが一般的な考え方です。
どちらが適しているかは、立地・収支・今後のライフプランによって異なるため、賃貸管理会社と不動産売買の担当者、双方の意見を聞いた上で判断することをおすすめします。
所有している物件や自身の状況に照らして、どの進め方が適しているかを具体的に見ていく段階といえるでしょう。
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14. まとめ
分譲マンションを貸すことは、家賃収入を得ながら資産を手放さずに活用できる有効な選択肢です。
一方で、住宅ローンの取り扱い、火災保険の切り替え、管理規約の確認、税金の申告など、事前に押さえておくべきポイントは数多くあります。
特に賃貸経営の経験がない方にとっては、収支シミュレーションを甘く見積もってしまったり、契約方法の選択を誤ってしまったりすることが、後々のトラブルにつながりがちです。
転勤や相続をきっかけに「マンションを貸す」ことを検討している方は、まずは信頼できる賃貸管理会社に相談し、ご自身の状況に合った契約方法・管理方法を選ぶことから始めてみてください。
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