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公開日2022年10月25日

海外赴任前~赴任後、住民票に関する必要な手続きをまとめて解説

海外赴任前~赴任後、住民票に関する必要な手続きをまとめて解説

日本国内で引越しをする場合、住所が変わるので、いま住んでいる自治体から転居先の自治体に住民票の異動を行わなければなりません。

一方、海外赴任などで海外への引越しを行う場合、住所は海外へと移ります。そのような場合、住民票はどのようになるのでしょうか。何かしなければならない手続きはあるのでしょうか。

今回は、海外赴任が決まり、国内から海外へと出て行く時、海外に居住している間、海外から帰任する時、それぞれの場面での住民票に関することを順にお話していきます。

海外赴任が決まったときの住民票に関する手続き

国や地方自治体が、選挙や保険、医療といった住民の生活に関わる行政事務を行うために、必要となる情報を世帯ごとにまとめた公簿として住民基本台帳があります。この住民基本台帳を構成している、個人や世帯の住所、氏名、生年月日といった情報をまとめたものが住民票です。住民基本台帳に関して、住民が異動について正確に届けなければならないことや、記録の管理がしっかりと行われるように市区町村長が必要となる措置を行っていかなければならないことが、住民基本台帳法という法律の中で定められています。

出典:e-Govポータル「昭和四十二年法律第八十一号 住民基本台帳法(法令検索)

では、海外に移住する際の必要な届け出とは、どういったものになるのでしょうか。まずは、このことから解説していきましょう。

住民票の異動届を届け出ること

転居で住所が変わるときには、住民票の記録を更新しなければならないので、そのことを住民から申し出なければなりません。

ある市区町村の中で転居するときには、転居してから14日以内の期日で、その市区町村の役所に転居届を届け出ますが、住所の市区町村が変わるときには、先にいま住んでいる地域の役所に転出届を届け出て転出証明書を受け取っておき、引っ越してから引越し先の役所に転出証明書と併せて転入届を出す必要があります。ちなみにこのときの期日も転居から14日以内です。異動のための各手続き、転居届、転出届、転入届、これらを定められた通りに行わなかった場合には、5万円以下の過料に処されることがあります。また、前述の通り、住民票は様々な行政事務で使われています。正しく手続きをしておかないと、後々生活の中で不便が生じることが考えられます。

海外赴任で国外に住所が変わるときに届け出ること

ある市区町村から異なる市区町村へと転居するとき、転出届で引っ越す前の地域の住民基本台帳から個人や世帯の住民票を取り除き(除票)、その後、転入届によって行き先の地域の台帳へと住民票を加えてもらいます。海外赴任のように国外が行き先となる場合は転出届を行いますが、このとき、国外で暮らす期間が1年未満になりそうであるなどして、生活の本拠(=住所)が移っていないと認められるような場合には届け出ないことによる罰則等はありません。

①1年未満の海外赴任
住所とは生活の本拠を指します。1年未満の赴任期間が予定されているのであれば、基本的には一時的な国外滞在と見なされるので、その場合にはもともと住んでいた場所を生活の本拠として、転出届を届け出ないことでも問題ありません。そこで暮らす住民の一人として、これまで通りに行政からその地域で暮らす上での必要となるサービスが受けられます。転出届を出して除票した場合との違いに関する詳細については、次の「2.海外赴任中の住所が国内の場合と国外の場合でどのような違いがある?」の中で解説いたします。

②1年以上の海外赴任
赴任期間が1年以上となると、基本的には生活の本拠が移ったと見なされるため転出届を提出しなければなりません。

海外赴任中の住所が国内の場合と国外の場合でどのような違いがある?

海外在住となる場合には転出届を届け出ます。そうすることで、今まで住んでいた地域の住民基本台帳から住民票が除票されます。住民票は様々な行政事務において、対象となる住民の抽出、住民の住所確認などで参照されています。ある地域から住民票が除票されるということは「その人がその地域に住まない」と示すことになります。住所が国内ではなくなることで、例えば、自治体からの各種の通知や案内が届かなくなることなどが考えられます。そのほかに、生活にはどのような変化が考えられるでしょうか。主なものを挙げていきましょう。

住民税の支払い義務について

住民税は都道府県民税と市町村民税(特別区民税)を合わせた呼び名で、地域の住民として住所のある場所に納めなければならない税金です。金額は前年分の所得によって変わり、算出の際には確定申告などの申告内容が参照されます。支払いは給与からの天引きによって行われることが多いです。誰がどこに対して支払わなければならないかということについては、1月1日時点で誰がその地域を本拠として生活していたか、住民票に記録されている住所が参照されています。

出典:総務省「やさしい地方税 個人住民税

海外に発つにあたって、転出届を届け出ていないなどして1月1日時点で国内に住民票が記載されていれば、住民票の記載がある都道府県・市区町村から住民税の納付を求められます。出国してしまって自ら支払うことができない場合でも、代わりに納税の手続きをしてもらう納税管理人を事前に届け出ておき、納税を行う必要があります。

一方で、転出届を届け出て除票が済んでいるということは、住所(住民登録)が国内ではない人ということなので、基本的には住民税の支払いも不要となります。ただしこのとき、出国の目的やその期間、生活の実態といった状況から、生活の本拠があくまで国内であると判断される場合であると、やはり納税が必要です。

年金について

国民年金の被保険者は、国内に住む20歳以上60歳未満の人たち(強制加入被保険者)です。国内で勤める会社員の多くは厚生年金保険にも加入していますが、この場合も国民年金(基礎年金)には同時加入しています(第2号被保険者)。海外に居住する場合、国民年金は加入が必須なものではなくなりますが、日本の会社に所属し、国内で給与が支払われる状態で海外に住んでいる場合、厚生年金保険を支払っていれば、国民年金にも加入していることになります。ちなみに、現地法人で勤めるなどして厚生年金保険に入らなくなった場合など、海外にいても国民年金に任意で加入することは可能です。また、国籍が外国人でも、日本に住んでいれば保険料を納めなければなりません。

また、こうした社会保障制度は国ごとに制度があります。海外で暮らすときには、基本的にはその国に存在する社会保障制度に加入する必要があります。そのため、国内の年金と二重払いになることもありますが、国によっては社会保障協定というものが結ばれており、どちらかだけ払えばよくなるように調整されることもあります。

・国内の年金制度について
海外に居住していても日本の会社から給与を得ている場合には、厚生年金保険の保険料を納め、国内の年金への加入も続けられることが一般的です。現地法人に勤めるなどして、国内の法人から給与を受け取ることなく住所が国外になる場合、国民年金(基礎年金)に任意加入することで支払いを続け、将来に備えることもできます。

出典:日本年金機構「国民年金の任意加入の手続き(日本の年金制度への継続加入)

・国外の社会保障制度について
海外で暮らすときには、その国の社会保障制度に加入することになります。

出典:厚生労働省「海外の年金制度

日本の会社から海外に派遣されるなどしている場合に、海外に住んでいても国内の厚生年金保険に継続して加入しているなどして、国内と国外で保険料が二重にかかってしまうことがあります。また、年金を受け取る資格の中で、「一定期間の制度への加入」が条件になっているものも多く、年数が足らないと年金が受け取れないということもあります。日本では、こうした問題を解決するための社会保障協定というものを各国との間で結んでいます。社会保障協定の中で定められていることは主に二つです。

一つは、二重負担にならないように、5年以内の派遣のときには派遣先の国の制度に加入せずに、国内の制度を適用し、5年を超えるときには国内の制度ではなく、派遣先の制度のみを適用させること適用調整

もう一つは、国内・国外、どちらかの加入期間が足りないと年金の受給ができないということにならないようにするために、加入期間を通算します。そして、受給のために必要な加入期間に足りる場合には、それぞれの加入していた期間分の年金を受給できるということです保険期間の通算。(例えば、10年間加入していないと受給条件を満たせない国外の年金制度に6年間加入していたとして、国内の年金制度に14年間加入していたとすると、合わせて20年間加入していたことになるので、10年間加入の条件を満たすことができて、国外の年金制度の6年分と、国内の年金制度の14年分はそれぞれ受給できるようになるということです。)

出典:
日本年金機構「社会保障協定」
厚生労働省「海外で働かれている皆様へ(社会保障協定)

医療保険について

会社員(被用者)であると、社会保険として厚生年金保険とともに、医療保険である健康保険にも入っていることが一般的です。厚生年金保険と同様に、国内の法人に所属したまま海外に赴任となる場合には、住所に関わらず支払いも加入も継続します。

ただし、加入をしていても海外の医療機関では日本の健康保険を利用できません。医療機関を受診した際には、後日所定の手続きを踏むことで、負担の一部について払い戻しを受けられる場合があります。なお、住所が国内のままである場合に、被用者保険ではなく、国民健康保険に入っていることもありますが、このときも同様です。海外では利用できないので、あとから払い戻しの手続きを行います。海外に住所を持ち海外の企業で勤めるなどして、国内の健康保険から脱退する場合、現地での事故やケガには、赴任先の国の医療保険や、海外旅行保険の赴任者向けプランなど、海外でも利用可能な民間医療保険に加入して備えましょう。

住民票に関する手続き①―国外転出届の提出

住民票に関する手続き①―国外転出届の提出

1年以上の海外赴任など、生活の本拠(住所)が海外に移るときには、転出届を提出して、住所が国内ではなくなることを伝えなければなりません。転出届が出されることで、住民基本台帳上のもともと住んでいた地域から住民票が除票されて、行政事務が適切に運用されます。転出届を出す際に、誰が何をどこに提出すれば良いのかについて整理してみましょう。

※執筆時点における複数の市区町村の自治体サイトを元に一般的と思われる内容を調査して記載しております。自治体ごとに運用が異なる場合や、今後の変更が考えられます。具体的な方法については事前に対象となる自治体でお確かめください。

転出手続きに関する基本的なこと(いつ・どこで・誰が)

・手続きをする人
手続きの対象は、転出する本人と、一緒に転出する家族です。自治体ごとに、本人または世帯主、本人の同一世帯の人が手続きを行なうといった決まりがありますが、委任状を提出して代理人が手続きを進めることも可能です。

・手続きのタイミング
転出の前に行います。転出予定のどれくらい前から受け付けるかについて、自治体ごとに受付開始の時期が異なります。

・手続きの場所
現在の住所がある自治体の担当窓口に必要書類を提出します。提出先の所在地や窓口の名前はインターネットで「市区町村名」+「転出届」などで事前に調べておくと安心です。役所や事務所、出張所の「戸籍住民課」や「住民記録係」などの部署が窓口を担っている場合が多いですが、郵送で受け付けている場合もあります。

転出手続きに必要な書類等

転出手続きに基本的に必要となるものは、届け出る転出の内容(いつ予定でどこに転出するか、誰が転出するか)を記載した転出届(住民異動届)と、届け出る本人の本人確認書類です。そのほかにも状況によって必要となるものがいくつかあります。

・転出届
転出の内容を記載するための書類です。役所等の窓口で受け取ってその場で記載することもありますが、郵送での受付が可能な自治体もあります。自治体のサイトに郵送届出用の書式がPDFのデータとして公開されているので、確認しておきましょう。

・本人確認書類
虚偽の届け出ができないように本人確認が行われます。本人確認書類には本人しか持ちえないものや、それが本人のものだと分かる顔写真が付いている物の提出が求められます。運転免許証やマイナンバーカードのように、顔写真が付いた一部の書類ではそれ一枚でも本人だと認めてもらえますが、被保険者証や国民年金手帳の場合、学生証などの身分証明書と組み合わせることで本人確認を済ませることができます。住民基本台帳カードには写真付きのものとそうでないものがありますが、写真付きのものであれば単体でも本人確認の書類として有効です。

・マイナンバーカード(個人番号カード)又は住民基本台帳カード
住民票に紐づいているマイナンバーカードや住民基本台帳カードは、国内非居住者となることで除票に伴い失効となり、返納手続きが必要です。マイナンバーカードには、国外転出により返納した旨の記載が行われ、失効となったカードを返してもらいます。国内に帰ってきた際には、同じ番号を再び使うため、カードは保管します。

・転出時に同時に行う住民票の異動以外の届け出のために必要となる書類
住民であることで加入できているサービスや保険については失効となるので、証明書等を返すなどの手続きがあります。

例として、国民健康保険に加入している場合、国民健康保険などの脱退の届け出の提出が求められます。国民健康保険被保険者証・国民健康保険退職被保険者証・後期高齢者医療保険被保険者証・介護保険被保険者証、これらは返さなければなりません。高額の医療費負担に備えて、限度額適用認定証を所持している場合、こちらも返却します。ひとり親家庭等医療証なども同様です。

住民票に関する手続き②―海外赴任から戻った際の転入届の提出

海外赴任に伴い、住民票が一度除票された人について、帰任後には住民登録を行わなければなりません。この際の手続きについても、ここで整理してみましょう。

転入手続きに関する基本的なこと(いつ・どこで・誰が)

・手続きをする人
転出時同様、基本的に転入する本人と家族について手続きを行います。委任状を受けて代理人が行う場合もある点も転出届と同様です。

・手続きのタイミング
新しい住所に住み始めてから14日以内に届け出なければならないことが「住民基本台帳法」で定められています。

出典:e-Govポータル「昭和四十二年法律第八十一号 住民基本台帳法(法令検索)第二十二条」 

・手続きの場所
基本的に転出時と同様です。役所や事務所、出張所の「戸籍住民課」や「住民記録係」といった自治体の担当窓口で必要書類を提出するか、郵送などによって行います。

転入手続きに必要な書類等

転入届(住民異動届)と本人確認書類が必要になる点は転出時と同様です。それら以外に必要となるものを確認してみましょう。

・パスポート
転出時とは異なり、転入の届け出の際にはパスポートが必要になります。パスポートから帰国日の確認が行われます。準備するパスポートは転入する全員分です。空港の自動化ゲートを利用して入国している場合、パスポートに入国日のスタンプが押印されないので、その場合には入管職員に押印をお願いするか、もしくは帰国日の飛行機搭乗券の半券など、入国日が分かるものを持参します。

・戸籍全部事項証明(戸籍謄本)と戸籍の附票の写し
本籍地が転居先の新しい住所と異なる自治体の場合に、準備しておく必要があります。取得の方法として、コンビニのマルチコピー機、オンライン申請、本籍地の市区町村役場の窓口、郵送での請求などがあります。コンビニのマルチコピー機で取得する場合や、オンラインで申請する場合にはマイナンバーカードが必要です。

海外赴任が決まった時に必要となり得る住民票以外の手続き

海外赴任が決まった時に必要となり得る住民票以外の手続き

ここまで住民票に関する転出時・転入時の手続きについて、概要や必要書類をまとめてきましたが、海外赴任の際に気にしなければならない手続きは、住民票のこと以外にもあります。最後に、それらの中にはどういったものがあるか、主要なものをいくつかピックアップしていきます。

銀行口座の手続き

海外赴任のために住民票を除票した場合、日本で所有している口座を解約しなければならない金融機関もあります。また、解約の必要が無くても取引できる内容に制限が課せられるケースも多いため、海外赴任前に予め金融機関に必要な手続きを確認しておくとよいでしょう。

免許証の更新

海外赴任のため更新期間内に運転免許の更新ができない場合は、特例として更新期間前でも更新手続きをすることができます。免許の更新タイミングを確認し、必要に応じて運転免許センターや警察署で免許証の更新手続きを行うようにしましょう。

電気、ガス、水道、新聞、携帯電話、インターネット回線の解約・休止手続き

電気やガス、水道、新聞、携帯電話、インターネット回線など、赴任期間中に使用しない場合は、解約もしくは休止の手続きをしておきます。

持ち家の売却・賃貸・空き家管理に関する手続き

持ち家を所有している場合、赴任期間中に誰も住まなくなってしまう家をどのように扱うかも決めなければなりません。帰任後に再度、自宅に住む予定があるかによって、売却するか賃貸に出すか、空き家として維持するかを判断し、必要な手続きをすすめます。

賃貸住宅の解約手続き

賃貸住宅の場合は、転居の日程に合わせて解約の手続きをします。契約によっては、解約日の1ヶ月前までの通知が必要などの規定が存在する場合もあります。

自動車の廃車・売却の手続き

自動車を所有している場合、国内に居住していなくても自動車を保有していると毎年自動車税がかかります。渡航前に自動車の扱い方についても判断し、必要な手続きを行います。

民間の保険会社への渡航届

民間の生命保険等に加入している場合は、加入している保険会社に渡航届を提出します。

証券会社への届け出

日本の証券口座を所有している場合、赴任期間中の取引に制限が生じることがあります。証券会社によって対応は異なりますが、いずれの証券会社でも手続きが必要です。

(日本国内で所得がある場合)納税管理人などの準備

海外赴任中も日本国内において所得がある場合は、納税管理人の届出をしておかなければなりません。また、持ち家を賃貸に出す場合も不動産所得が発生するため、納税管理人の届出が必要です。

まとめ

海外赴任に伴い住民票がどのように取り扱われるかといったことと、そこから転入時、転出時の住民票関連の手続きは実際にはどのように進めるのかといったことを解説いたしました。

海外赴任の赴任期間が1年未満であれば、住民票の除票のための手続きは不要となりますが、1年以上の赴任においては手続きが必要です。1年未満の海外赴任の場合でも、除票のための手続きを行うかどうかで、住民税、年金、医療保険といったものに違いが出ます。

転入時も転出時も、手続きは役所などの担当窓口で本人と家族について行います。転入届は新しい住所となってから14日以内に行いましょう。手続きの際には住民異動届と本人確認書類が共通して必要となります。転入時の手続きには加えて、パスポート(入国日が分かる飛行機搭乗券の半券などでも可)と戸籍全部事項証明なども準備が必要となります。

また、海外赴任時には、住民票関連以外についても、併せて進めておきたい手続きがいくつかあります。インフラに関するもの、住宅に関するもの、様々な手続きがありますが、順番に整理しながら進めていきましょう。

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