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公開日2013年5月28日/更新日2022年1月26日

海外出産の際に必要な手続きと日本国籍

海外赴任していると、大切なライフイベントを現地で迎えるというケースも考えられます。日本のご自宅をリロケーションによって賃貸し、ご夫婦やご家族で長期にわたって海外赴任される場合はなおのことでしょう。出産もそのひとつです。では、海外で出産した場合、出生の届出などの手続きはどうすればいいのでしょうか。

日本国内で生まれた場合と同様に出生の届出が必要

海外出産の際に必要な手続きと日本国籍

日本人夫婦の子どもは、海外で生まれたとしても、日本の戸籍に生まれた子どもの記載をする必要があります。日本国内で生まれた場合と同様に、出生の届出をしなければなりません。届出の期間は、日本国内で生まれた場合は子どもが生まれた日から14日以内ですが、海外で生まれた場合は3カ月以内です届出先は、出生した国の日本の大使館・領事館、または夫婦の本籍地の市区町村役場です(郵送による届出も可能です)。

■海外で子どもが生まれた時の手続き

①現地国の方法に従って、出生の届出を行う
まずは出産した国に、出生の届出をします。それぞれの国によって手続きの仕方が異なるので、事前に確認しておきましょう。

②出生証明書の取得
出産した病院で『出生証明書を作成してもらう、または、その国の官憲(役所など)に『出生証明書』を作成してもらいます。

③和訳文の作成
②の書類の和訳文を作成(訳中文に訳者の署名押印が必要)します。
※訳者はどなたでも大丈夫です。

④日本に出生届を提出する
出産した国の日本大使館・領事館に備え付けの『出生届』にて、日本に出生届を提出します。この際、出生届けのその他欄に「日本の国籍を留保する」と記載し、署名捺印します。(これがないと、日本国籍を喪失します)
添付書類として、②③の書類も提出します。
届出時には、父親または母親が日本国籍であることの確認ができるパスポート、その国での滞在を証明する書類(ビザ、米国なら永住者カードなど)、現住所が確認できる書類などが必要になります。手続きする国によって②③の必要な枚数、確認書類などが異なりますので、あらかじめ在外公館にて確認しておいてください。
※④日本への出生届は、直接日本に郵送で手続きすることも可能です。その際は、夫婦どちらか(届け出をする人)の本籍地の市区町村になるので、必要書類を確認のうえ、郵送してください。

二重国籍を持つ際には「国籍留保の届出」を忘れずに

日本人夫婦から生まれた子どもであっても、アメリカ、カナダ、ブラジル、ペルーなど、その国で生まれた者のすべてに国籍を与える制度を採っている国(生地主義国)の場合、その子どもは二重国籍を持つことになります。

ただし日本は二重国籍を認めていないので、その子どもの出生の届出と同時に「国籍留保の届出」をして国籍留保の意思表示をしておかないと、その子どもは生まれた時にさかのぼって日本国籍を喪失してしまいます。国籍留保の届出は簡単で、出生届をする際、出生届書の「その他」欄に「日本の国籍を留保する」と記入し、署名押印をすれば完了です

そのうえで、二重国籍者(厳密には日本国籍は留保状態)となった子どもは、22歳になるまでにどちらか1つの国籍を選択することになります。なお、令和4年4月1日より施行される成年年齢の引き下げを含む民法の一部改正を受け、施行日以降は「20歳に達するまで」となります。

もし日本国籍を取得(留保)し忘れたら…?

生まれた子どもの出生届けの際日本国籍の留保をしていなかった場合、出生国の国籍だけになってしまいます。日本国籍がないということは、日本国籍のある者だけが有する日本の「選挙権」や「被選挙権(議員などに立候補する権利)」を持つことができません。また、もし出生国が兵役義務のある国だった場合、将来徴兵される可能性が生じるなど、出生国の義務に従う必要があります。

大切な子どもの権利・義務に大きな影響を及ぼすことですから、出生の届出・国籍留保の届出は期限内に正しく手続きしてください。

条件がそろえば国籍の再取得は可能

もし3カ月の期限内に日本に出生届を提出できなかった場合でも、以下の条件①②をいずれも満たしていれば「国籍の再取得(国籍法第17条第1項)」により日本国籍を取得することができます。
① 届出の時に20歳未満であること。
※ 20歳以上の場合「再取得」はできないので、「帰化」手続きすることになります。
② 日本に住所を有すること。
※ 届出の時点で生活の本拠が日本にあることをいい、観光・親族訪問などで一時的に日本に滞在している場合などの場合には、日本に住所があるとは認められません。

海外出産でも日本の健康保険の適用を受けられる

日本の健康保険に加入している場合、本人や家族が出産した際には、日本の健康保険の適用範囲内の治療であれば、海外療養費の払い戻しを受けられます。また、出産育児一時金の支給申請もできます。手続きの詳細については、会社の担当者や健保組合、全国健康保険協会に問い合わせれば確認できます。

また、海外赴任の際に日本で加入する駐在員向けの海外旅行保険では、基本的に妊娠を起因とする治療や出産に関しては補償対象外となります。ただ、なかには条件付きで対象となる保険もありますので、保険会社にご確認ください。

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